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SF(11)

LV5「エンディミオンの覚醒」

ダン・シモンズ著/酒井昭伸訳/早川書房/3800円

エンディミオンの覚醒
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二段組800ページのSF大作にして、大傑作「ハイペリオン」シリーズ全4作の完結編。

この本を読むために2カ月かけて前3作を読み直したボクは、めちゃくちゃな期待と共に「エンディミオンの覚醒」に取りかかったのである。世界観を復習し、結末を予想し、残された膨大な量の謎を推理しつつ読み始めたのだが、結果はいい方に裏切られた。なるほど!こうなるのか!の連続。推理もハズレまくり。ラストにかけてそれこそゴマンとある謎がドンドコ解かれまくるのである。めちゃめちゃ快感であった。

だが、それでもまだ謎はいくつも残されたままである。
読後すぐに、4日ほどかけて駆け足で再読してみて「あ、こんなところに伏線が!」「あ、この思わせぶりな記述はこういう意味だったのか!」みたいな発見をいくつもした。「あー、この一行はこういう意味なんだ」「注意深く前作を読み返していないとわからない読者もいるだろうな」みたいな優越感にもいろいろ浸れる。が、いまだにわからない謎がいくつも残されている。タイムパラドクスも解決されているのかいないのかわからん。うーん。なんちゅう物語なのだ。

でも、著者は本当にこの結末を最初から念頭に置いて第一作の「ハイペリオン」を書き始めたのかなぁ。だとしたら驚異の構築力 & 忍耐力 & 粘り、だ。 だって、4作で二段組2500ページあるんだよ。参ったなぁ。
ただ、正直言うと少し冗長なものも感じた。この4作目に限っては、いろんな説明や描写が多すぎて途中つらかったのも事実。宗教に踏み込んだ部分も、説明しつつ筋を進める分かなりまだるっこしかった(一茶や良寛の短歌がいっぱい出てくるのは面白かったけど)。それと、どう考えても矛盾する部分がいくつもあるのも気になるな。大著にじっくりつきあった読者としてはすべてが細部まですっきり解けてほしかったのだ。

とはいえ、圧倒的筆力とは何か、が肌で感じられる名作だ。長くSFの傑作として語り継がれることでしょう。想像力とはこういうことを言うのだね。マジで脱帽します。

2000年4月 1日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:SF

LV5「ハイペリオン」「ハイペリオンの没落」

ダン・シモンズ著/酒井昭伸訳/早川書房/各2900円 3000円

ハイペリオン
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96年2月以来の再読。
ええ、読み返してしまいましたよ、両方合わせて1130ページ、しかも二段組を再読してしまいました。理由はひとつ。先月の「エンディミオン」の項でも書いたけど、このシリーズ4部作最終作の「エンディミオンの覚醒」を読むための予習ですよ。なにしろこの4作目ではいままでの重要出演人物総出演のうえ、すべてのナゾが解かれるというんだから、過去の忘れている細かい筋や伏線までも読み返したくなるではないですか。

で、読み返したんだけど、再読のくせに読み終わるのが惜しい出来。
やっぱり大傑作だあぁ。
ただ、4年前に読んだ時と印象が違う章がいろいろあったりして、それはそれで面白かった。再読の2冊が今月の最高というのも情けないけど、でもこの2冊を抜く本はそうはないから、仕方ない。

2000年3月 1日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:SF

LV5「エンディミオン」

ダン・シモンズ著/酒井昭伸訳/早川書房/3000円

エンディミオン
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はぁ。やっと読めた。
大傑作「ハイペリオン」「ハイペリオンの没落」を読んで以来ずっとずっと続編のコレが読みたかったのだけど、去年の2月に発売になってすぐ買ったにも関わらず、その分厚さ(二段組600ページ)と、「ハイペリオン」を読んでから3年経っていて筋を忘れている、という障壁に阻まれて手を着けなかったのでした。
で、正月休み。ここで読まねばいつ読むの !? と前の筋を忘れているのもものともせず読み始めたんだけど、これがまた期待に違わぬ面白さ。読み進むに従って筋や世界観、登場人物たちもどんどん思いだしてきて…つまりは堪能したのでした。やっぱりダン・シモンズ! さすがはダン・シモンズ!

「ハイペリオン」二作は要所要所にSFファン用のお遊びが隠されていたりしたが、今回はそれが少なかったな。わりと一直線的ストーリー展開。デ・ソヤとロールの交互展開は効果的で、物語に奥行きを与えている。ただ、もう少し強くデ・ソヤにカタルシスを感じさせてくれたらもっと深くなったと思う。妙に主観的な描写と妙に客観的な描写との乖離があって、デ・ソヤの部分はちょっと中途半端感があるのが残念。

次作「エンディミオンの覚醒」で4部作堂々の完結、となるのだが、「エンディミオンの覚醒」では過去の登場人物がすべて出てきて、すべての謎が解き明かされるらしい。
こうなったら「ハイペリオン」「ハイペリオンの没落」ももう一度読み返しておかねば!と、いまこの分厚い二冊を読み返しているところ。つまりはそのくらいは夢中になれる大傑作シリーズ。読んで損はないから、まだの人は「ハイペリオン」からじっくり、どうぞ。(このシリーズを初読する喜びが人生に残されている人がうらやましい)

2000年2月 1日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:SF

LV4「柳生十兵衛死す」

山田風太郎著/小学館文庫/上657円下657円

柳生十兵衛死す〈上〉
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なにをいまさら、の有名本。
実は山田風太郎って読みたい読みたいと思いながら初読。文庫になったのを機に読んでみた、というわけです。

剣あり、能あり、250年のタイムトラベルあり、一休さんあり、足利義満あり、そして世阿弥に二人の柳生十兵衛あり…。
「奇想天外の大幻魔戦」というのはウソではなく、まぁ時代劇を現代のエンターテイメントで塗り直して見事に再構築した逸品なのでした。全体的に作者の淡白さが目につくし、ラストがどうもあっけないのが腑に落ちないし、後日談ももうちょっと読みたいと思うのだけど。くだらない、と言う人もいるかもしれないが、これはこれ。ちゃんと値段以上分楽しめた。

1999年7月 1日(木) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:歴史小説 , SF

LV4「時間旅行者は緑の海に漂う」

パトリック・オリアリー著/中原尚哉訳/ハヤカワ文庫/820円

時間旅行者は緑の海に漂う
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カート・ボネガット・ジュニアばりの展開と文体で不思議な世界に誘導してくれるSF異色作。

前半が特に見事。純文学といっても通用するような無駄のない文章、そして荒唐無稽な語り口。が、後半その緊張が途切れてしまい凡作になってしまったのが非常に残念。でもまぁ楽しませてもらったけど。
通読してみて思うのだけど、こういうタイムトラベルものは変にリアリティがないほうが面白かったりする。その点このSFはリアリティがぶっ飛んでしまっているので印象は強い。破綻がいっぱいあるのだが、妙に印象に残る一作だ。

原題は「Door Number Three」。
この邦題は、内容からするとわかるんだけど、あんまりだ。著者は「第3のドア」という言葉に他の意味をちゃんと含ませている。なぜ素直に邦題にしないのだろう。こういう邦題にしたからといって売り上げが増えるとは思わないしなぁ…。

1997年11月 1日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:SF

LV5「ステーシー」

大槻ケンヂ著/角川書店/1200円

ステーシー
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オーケンのSF小説。というかホラーかな。

ボクはこの本、好き。
ひとつ間違えば単なる悪趣味ホラーに終わっちゃうような題材をしっかり愛が包んでいる。ちゃんと芯がある小説である。

15歳から17歳の少女達が突然死し人間を襲う屍体ステーシーとなって再生する…というストーリー。
時代におもねっているという印象がなくもないのだが、よくありがちな「設定負けSF」とはかなりレベルが違うのである。音楽という「飛躍を大切にする表現手段」の場にいる著者ならではの飛躍が随所に生きていて感心する。これからの「作家・大槻ケンヂ」にかなり期待するボクである。

1997年10月 1日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:SF , ホラー

LV5「時のかなたの恋人」

ジュード・デブロー著/幾野宏訳/新潮文庫/800円

時のかなたの恋人
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タイムスリップ・ラブ・ロマンス。
SFであり歴史小説でありハーレクイン・ロマンスであり一人の女性の成長記でもある。

なかなかに荒唐無稽な筋で破綻もいっぱいあるのだが、この小説はとてもキュートで印象が強い。この小説自体を愛してしまう。なぜだろう。ひとつには主人公のキャラの魅力的なこと。そして時代考証がしっかりしていること。そしてなによりタイムスリップした登場人物たちのとまどいの描写の的確さ。著者の想像力のたまものである。そのとまどい加減のリアリティはH.F.セイントの「透明人間の告白」を思わせるものがある。不思議な魅力だ。

実はこの小説、初読時より再読時の方がずっと印象が強かった。なんかスルメのような「何度も読み返してみたくなる」感。なんだか面白い読後感なのだ。

1997年6月 1日(日) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(海外) , 歴史小説 , SF

LV5「うつろな男」

ダン・シモンズ著/内田昌之訳/扶桑社/1800円

うつろな男
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大傑作「ハイペリオン」シリーズに続くダン・シモンズの新作。

脅威の書き手ゆえ期待満々で迎え撃ったが、裏切られなかった。
まぁさすがに「ハイペリオン」の雄大な構築には全然及ばないまでも、迫真のリアリティで読者を引っ張るのは見事。このリアリティさは何かに似ているな、と考えたらあれ、H.F.セイントの「透明人間告白」に似ている。あっちが透明人間のリアリティならこっちはテレパスのリアリティ。どっちも素晴らしい想像力と表現力だ。

1人のテレパス(テレパシスト)の苦難の物語なのだが「ハイペリオン」を思わせるようなラストで救われる。ただこのラストへ持っていくための理屈が少々わかりにくいのが難といえば難。

1997年2月 1日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:SF

LV5「ナイチンゲールは夜に歌う」

ジョン・クロウリー著/浅倉久志訳/早川書房/2000円

ナイチンゲールは夜に歌う
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香り高いSF叙事詩&幻想純文学(ジャンルミックス小説と呼ぶらしい)が4編。

この著者の魅力はその文体にある。
ル・グインもヴォネガットもその魅惑の文体で1行目から読者を惹きつけて離さないが、この人もそう。特に表題作の見事さは文体の勝利だろう(訳文だから訳者がうまい、ということもいえる)。どんなに先を急ぐ読者でもゆっくり読まざるを得ない美しい文章だ。

4編のうちのひとつ「時の偉業」で世界幻想文学大賞ノヴェラ部門をとっている。
でもね、ボクは美しい表題作が好き。冬の静かな夜にうってつけの本。

1996年12月 1日(日) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(海外) , SF

LV4「マルチプレックス・マン」

ジェイムス.P.ホーガン著/小隅黎訳/創元SF文庫/上609円、下546円

マルチプレックス・マン
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ホーガンの新作。といっても去年の今ごろ刊。ボクはホーガン・マニアなので、今ごろ読んだというのは恥ずかしいけど、出てるの知らなかったのだ。

相変わらずストーリーテラーとしての面目は保っていてググッと最後まで引っ張りまくるが、今回はハードSFというよりサスペンスものといった方が良さそうな内容。ホーガン独特の超性善説な世界観・人生観は今回も健在でうれしかった。
主人公は普通の中学教師。で、ある朝目覚めると、記憶はないは、友達も誰も彼のことを知らないは、5ヶ月前に死んだことになっているわ…、という導入からグッと引きつけて楽しい。でも切れ味はちょっとだけにぶいかな…。

1996年3月 1日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:SF

LV5「ハイペリオン」「ハイペリオンの没落」

ダン・シモンズ著/酒井昭伸訳(早川書房)

ハイペリオン
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ものすごい想像力と構成力、そして哲学にあふれた大傑作長編SF2部作。

読み終わるのが惜しくて惜しくて、という感覚は久しぶりだ。そして「負けた~」と心底思うのも…(勝つはずもないのに)。華麗なストーリー展開に唸りや嵐のような謎解きにため息し、そのうえSFファンなら思わずニヤッとしてしまう小技も随所にちりばめられていて、いやはや参った。
タイム・パラドックスの解決がなされていなかったり、時間の墓標や聖十字架の必然性がわからなかったり、と、難はいろいろあるのだが全然許せる。続編が今年出るらしいので、そこでもろもろ解決されるのかもしれない。とにかくオススメ。この本の感想だけで数千字書けそうな勢い。ぼくにとってはJ.P.ホーガンの「星を継ぐもの」以来の感動だった。

ちなみにこの2部作は「本の雑誌」の1995年best1に選ばれている。

1996年2月 1日(木) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:SF

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