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詩集・歌集など(4)

LV3「カヴァフィス全詩集」

カヴァフィス著/中井久夫訳/みすず書房/3700円

カヴァフィス全詩集
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どの新聞だったかなぁ。カヴァフィスの詩を引用しているコラムがあって、その詩におお~っと感動して、ネットでこの本を注文した。で、1ページ目から丁寧に読んでいってその詩を探したのだけど、訳の違いもあるのか何度読んでもその詩が見つからず。その新聞のコラムは切り抜いておらず(出先だったのかも)、結局その詩とは再会できず仕舞い。がっくりである。(もしかしたら「市(まち)」という詩かもしれないという漠然とした印象はあるのだが)

ま、結果的にカヴァフィスと出会えたわけで良かったのです。
カヴァフィスは今世紀最大のギリシャ語詩人と言われ、20世紀言語芸術の極北のひとつとされているらしいが(本の紹介から)、彼が紡ぎ出す言葉は現代日本に住む我々にも平易でわかりやすく、実に示唆に富んでいる。ローカルな題材やギリシャ神話系題材も多いのでそっち方面の教養に薄いボクとしてはその手の詩は読み飛ばすしかなかったのだが、それでも十分に楽しめた。性の悦びをうたった官能詩も多いし。

ちなみに、エドワード・サイードが今年9月に亡くなった時、娘さんが父のお気に入りだったというカヴァフィスの「野蛮人を待つ」を朗読したそうだ。この詩はいい。ボクもかなり気に入った。また上述の「市」や「せめて出来るだけ」「認識」「隣のテーブル」「絶望して」など、わりと初期の詩が好きかも。

2004年1月 1日(木) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:詩集・歌集など

LV3「世界音痴」

穂村弘著/小学館/1365円

世界音痴
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39歳独身総務課長代理、な、歌人である著者のさえない日常を淡々とつづったエッセイ集。
恋人も持たず、青春の明るさに乗れず、都市の暮らしに馴染めず、とにかく世界全体に適応できない彼の静かな告白的文章が続く。まさに世界音痴。題名はとてもナイスだ。

それぞれのエッセイの自分自身を見る目はとても確かで、ああそういう気持ちよくわかる、の連続である。文章も独特で味がある。いいエッセイ集だと思う。
ただ、各エッセイの最後に短歌がつくのだが、この短歌がエッセイを超えていれば(少なくともエッセイを強烈に引き立てていれば)、もっともっといい本になったと思う。桝野浩一だったらそれを果たすだろう。エッセイでなさけなさを書いておいて、短歌でそれを逆手にとって読者になにかを残そうとするだろう。寒川猫持も上手に計算してそれをすると想像する。
でもこの著者はそうしない。そこが味でもあり不満でもある。エッセイはおもしろいのに(後半のエッセイはいまひとつなんだけど)、全体として印象がいまひとつなのはそのせいかもしれない。この本を出した時点で、ある意味著者のなさけない日常は「売り」のひとつになったはず。そこを独自の視点で切り取ったいい歌を、ボクは読みたい。贅沢かな?

2002年9月 1日(日) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:エッセイ , 詩集・歌集など

LV5「君の鳥は歌を歌える」

桝野浩一著/角川文庫/590円

君の鳥は歌を歌える
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自称「日本一の特殊歌人」桝野浩一が、他人が作った映画や小説やエッセイや演劇をその内容をふまえつつ短歌にしてみた、という「鳩よ!」連載の企画を一冊にまとめたもの。題名はビートルズの「And your bird can sing」から。ボクがビートルズの曲の中でもっとも愛する一曲である。それにも惹かれて熟読。

実際、熟読に値する。 もともと実にクレバーである著者が、彼が良いと思って選んだ元ネタのエッセンスを抽出してくれたうえに、その本質を短歌にしてくれるわけで、つまりは人生のエッセンス満載なのだ。なんというか赤ペン持って線引きながら読みたい気分になるくらい啓示的な文章に満ちている。
そして肝心の短歌が実にしっくりくるのも参る。名作もいくつかある。いや、いくつもある。読み終わるのに4時間かかるような本より、一行の短歌の方が強いことがあることを改めて知った気分。著者のファンたちにとっては今更何を褒めているのだ?だろうが、まぁ今更にしろ、彼にちゃんとのめりこんでみたいとちょっと思ったのでした。

2002年7月 1日(月) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:詩集・歌集など , エッセイ

LV5「蕪村春秋」

高橋治著/朝日新聞社/2300円

蕪村春秋
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ここ2カ月間の「寝酒」みたいな本。寝る前に1~3コラムくらい読んで蕪村の世界に浸りつつ眠った。蕪村を、いや俳句自体をほとんど知らなかったボクとしては、この本に非常に感謝している。

もともと朝日新聞で連載していたものらしい。
与謝蕪村の俳句を季語に沿って110コラムに渡り取り上げて(句にしたら375句)エッセイにしたものだ。冒頭、著者はこう語る。「のっけから乱暴なことをいうようだが、世の中には二種類の人間しかいない。蕪村に狂う人と、不幸にして蕪村を知らずに終わってしまう人とである」 つまり、蕪村を知れば必ず蕪村に狂う、ということだ。わかる。実に広大で芳醇な世界がそこに広がっている。それが著者の卓越なる視線によって浮き彫りにされているから、ボクみたいな俳句無知にも実に楽しく蕪村の世界が読み取れ、もう一歩踏み込んで行きたくなるのだ。

いいなぁ、蕪村。芭蕉が想像力のない朴念仁に思えてくるようなその色彩感覚と映像感覚。もちろん著者の誘導もあるのだが。
ちなみにこの本、現代の俳句界に対するすぐれた批評の書にもなっている。

1998年12月 1日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:エッセイ , 詩集・歌集など

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