トップ > おもしろ本 > ジャンル別一覧 >

時事・政治・国際(67)

LV3「2050年のわたしから」

金子勝著/講談社/1200円

2050年のわたしから
amazon
副題が「本当にリアルな日本の未来」。イラスト:ヤマザキマリ。

2005年における現実の統計を使って、その平均的傾向をグラフ上でずぅっと2050年まで延長してみるとどういう世界になっているか、ということをシミュレーションした本。だから少子化もこの減少率を保って45年続くので、0.11になっている。巨人戦の視聴率は0%。国民年金の納付率は20年前にゼロ。大卒就職率ゼロ。農家もゼロ。商店街もゼロ。日本は落ちぶれきり、アメリカも落ちぶれ、中国がナンバーワンの世界…。

もちろん単純計算なのでありえない数値なのだが、この本では2005年に20歳である主人公を狂言回しに2050年の社会をわりとドラマチックに報告しているので、意外とリアルで怖いのだ。

第三章では、そうならないための逆シミュレーションもしてくれる。第四章では著者の論説も展開されている。だから救いもあるし、読み終わると「あぁ脅かして安心させて自説を主張するプレゼン・パターンね」と気づくのだが、でもまぁこのうちのいくつかは本当にそうなってもおかしくない感じではある。

意外とさらっと読めてしまって物足りないが、現代日本について問題意識をわかりやすく持つためにはなかなか良い本。頭を整理し、問題点を絞るのに有益。

2007年3月17日(土) 18:02:52・リンク用URL

ジャンル:時事・政治・国際 , 評論

LV4「おい、ブッシュ、世界を返せ!」

マイケル・ムーア著/黒原敏行訳/アーティストハウス/1600円

おい、ブッシュ、世界を返せ!
amazon
原題は「Dude,where's my country?」。邦題はギリギリの距離感かな。
相変わらず痛快な内容である。というか、前作「アホでマヌケなアメリカ白人」に比べると共和党批判が激しくなっており、ほとんど「みんなで民主党を応援しよう!」になっているので、アメリカ国外に住むボクたちにとっては少し鼻白む部分も多い(特に後半)。が、前半から中盤にかけての論点の鋭さはさすがなもので、ブッシュやネオコンたちにぜひ反論してほしいと熱望するほど。どう反論するのか是非聞きたい。そして小泉首相にも。そんな勢いに満ちた快著である。

この中であるエピソードが明かされている。あのベストセラー「アホでマヌケなアメリカ白人」が発売中止寸前だったというのだ。
あの本の初版5万部はたまたま9.11の前日に刷り上がった。出版社は内容の50%にものぼる我らが愛国的指導者ブッシュ大統領への批判を削除するよう求め、削除しなければ全部パルプに戻すと通告した。一語たりとも変更しないと突っぱねたムーアのせいで、それから5ヶ月間、本は倉庫に眠り続けた。そのことを著者の講演会で耳にした、友人でも何でもないニュージャージー州の図書館司書アン・スパラニーズは、闇に葬られようとしているその本のことを大勢の司書仲間にEメールで教えたのである。メールはネット上を駆けめぐり、数日内に怒れる司書たちのメールが出版社に殺到し、ついに出版社が折れて発売にこぎつける。出版社側はイヤイヤで、何の広告も打たず書評依頼すらしなかったらしいが、この本は発売後数時間でアマゾンの売り上げランキング1位に躍り出て、5日以内に9刷(現在52刷)。アメリカのハードカバー・ノンフィクション部門で年間ベストセラー1位まで行ったという。

ブッシュ批判の数々や「フランスは本当の意味で友達だ」と言及したあたりに並んで、このエピソードが特に印象に残った。ここから何を感じるかはみなさんにまかせますが。

2004年1月 1日(木) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:時事・政治・国際

LV2「他者の苦痛へのまなざし」

スーザン・ソンタグ著/北條文緒訳/みすず書房/1800円

他者の苦痛へのまなざし
amazon
大雑把に言えば、戦争写真論である。
戦争の苦痛と戦争写真によって伝えられる映像の苦痛、その直接性と間接性の差に起因する様々な問題を具体的な写真例を取り上げながら(本書に写真は一枚も載ってないが)論じていく。スーザン・ソンタグの論はチョムスキーなどよりも読みにくいという印象があったボクだが、この本はわりと平易でわかりやすかった。ただし、比較的当たり前な論の展開だなぁと思ったのも事実。ひとつひとつ命題をつぶしていっているあたりは、きっと必要なのだろうけど、一般読者としてはわりと退屈かもしれない。

第五章で指摘されている「アメリカに奴隷制の歴史博物館がないのはなぜか」「写真を見ることでわれわれが攻める権利をもっていると信じている対象は誰なのか」というあたりの論展開、そして第六章の、死体や暴力を受けた肉体、苦痛の映像などが性的興味を喚起するという出発点からの論展開が興味深かった。

というか、この本の秀逸な部分はその題名が大きい。いい題名だなぁ。原題は「Regarding the pain of others」。

2004年1月 1日(木) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:時事・政治・国際 , 評論

LV4「いったい、この国はどうなってしまったのか!」

魚住昭・斎藤貴男著/NHK出版/1700円

いったい、この国はどうなってしまったのか!
amazon
憂国の書というより憂マスコミの書である。
だから題名はストレートに「いったい、この国のマスコミはどうなってしまったのか!」の方がキャッチーだし扇情的だしずっと内容に近いと思う。もちろん国民や国の政策も憂えているのだが、それらの原因をメディア報道としている部分が多く、マスコミの功罪という切り口でまとめてしまった方がずっとわかりやすく読者の胸にささると思うのだ。そして、マスコミに従事する人々に直接届くメッセージになったはずなのである。題名で一般化してしまったのがちょっと悔やまれる。

著者はふたりとも元マスコミ記者で現フリージャーナリスト。だからこそ同業の裏がわかり、偽善に満ちたマスコミ報道を厳しく指弾し、同業なら見えているはずの重要問題点を看過する彼らを憂うことができる。ただ、憂えた先に、大いなる諦めと絶望しか見えないのが気に入らない。がんばらなきゃ、と自分を励ましつつ、その奥に自己憐憫的諦観が読者に見えてしまう。だからとてもイイコトを伝えてくれているのに、読者も一緒になって虚無感に苛まれ、大いなる諦観に酔っていってしまう。刺激的な本だからぜひいろんなヒトに読んでもらいたいと思うが、嘆くだけで終わっているように読後思えてしまうのがただただ惜しい。

2003年10月 1日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:時事・政治・国際

LV2「ASAKUSA STYLE」

曽木幹太撮影・文/文藝春秋/1900円

ASAKUSA STYLE 浅草ホームレスたちの不思議な居住空間
amazon
副題が「浅草ホームレスたちの不思議な居住空間」。ホームレスたちが工夫を凝らして住んでいる様を取材したフォトドキュメントなのである。

ソーラーシステムがある家、リアカーで移動する家、哲学書が並ぶ家、芸術的ペイントが施された家、ちゃんと主婦がいる家……基本的に定住者(つまり普通に家を持っている人)のゴミで構成されているのだが、その生活は驚くほどバリエーション豊かで工夫に満ち、そしてモノに溢れている。食事もそれなりに豊かだし、なんだか国の基礎体力を感じるなぁ。やっぱり日本は豊かなのだ。

著者はホームレスたちの意外な生活を発見し、情熱を持って我々に紹介してくれている。個人的には写真以外の突っ込んだ描写(つまり文章)が物足りなかった。素材がとてもいいからこそ、もっと突っ込んだことを知りたくなる。あと、これはプライバシー上仕方ないのかもしれないが、人物をもっともっと写して欲しかった。もしくは、人物の個性が匂い立ってくるようなモノのアップが欲しかった。全体的に客観的な写真で、事実を伝えてくれてはいるが、その裏にあるものが乏しい。惜しい感じ。

2003年7月 1日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:写真集・イラスト集 , 時事・政治・国際

LV5「毎月新聞」

佐藤雅彦著/毎日新聞社/1300円

毎月新聞
amazon
まぁなんつうか、サスガですね。
毎日新聞で連載しているときから読んではいたが、こうしてまとめるとまた面白い。新聞という形式を借りたエッセイ集なのだが、形式が新聞(ニュース媒体)であることをちゃんと計算に入れた構成で飽きさせない。相変わらずの知能犯ぶり。社会に対する視点の新しさや理系的実験(三角形の内角の和とか)の楽しさはこの著者独自のものだなぁ。
そのうえ最近は知能犯的部分だけでなくブンガク的な部分も出てきて、なかなか泣ける回(「真夏の葬儀」)もある。「ねっとのおやつ」や「日本のスイッチ」みたいな別企画の発想が生まれる様も見えたりして、いろいろ面白いのである。

マジでうまいなぁと思うのは「こういう発想だったらボクでも出来るかも♪」と読者がギリギリ競えるバランスで止めておいているところ。この人の本質はこういうバランス感覚なのだろうと思う。

2003年7月 1日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:エッセイ , 時事・政治・国際

LV5「アホでマヌケなアメリカ白人」

マイケル・ムーア著/松田和也訳/柏書房/1600円

アホでマヌケなアメリカ白人
amazon
なんだかんだ言っても、この本が全米でミリオンセラーになっていることをひとつの希望にしたいと思った。
非常にエキセントリックな文章と展開で、慣れるまではちょいと鼻白む部分もあるのだが、慣れるととても素直に心に入ってくる主張の数々。とはいえ、ブッシュ批判の数々は日本人ならちょいと引くかな。感情的すぎる。でもこのくらい言わないと対抗できないのかもしれない。日本だとここまであからさまな批判は嫌われるが、アメリカではこのくらいやらないと主張は伝わらない部分もあるだろう。
ブッシュ大統領選出問題(話がすべて事実だったらマジで酷い)、イラク問題、教育問題、環境問題などなど、それぞれの主張はとても説得力がある。書名はおふざけだが、内容はまさに真の愛国書。イラク問題を語るなら必読の書かもしれない。

ちなみにマイケル・ムーアは映画監督でもある。もうすぐ公開する「ボウリング・フォー・コロンバイン」はコロンバインでの銃乱射事件を題材に社会風刺をしているという。必見。
※追記:2003年アカデミー賞ドキュメンタリー長編映画賞をこの映画が受賞。授賞式でめちゃめちゃ過激なブッシュ批判をして痛快だった。勇気あるな。全文を載せておこう。

「Whoa. On behalf of our producers Kathleen Glynn and Michael Donovan from Canada, I'd like to thank the Academy for this. I have invited my fellow documentary nominees on the stage with us, and we would like to ? they're here in solidarity with me because we like nonfiction. We like nonfiction and we live in fictitious times. We live in the time where we have fictitious election results that elects a fictitious president. We live in a time where we have a man sending us to war for fictitious reasons. Whether it's the fictition of duct tape or fictition of orange alerts we are against this war, Mr. Bush. Shame on you, Mr. Bush, shame on you. And any time you got the Pope and the Dixie Chicks against you, your time is up. Thank you very much.」

2003年3月 1日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:時事・政治・国際

LV1「ブッシュ妄言録」

FUGAFUGA Lab.編/ぺんぎん書房/900円

ブッシュ妄言録
amazon
ブッシュ現大統領の、失言というにはあまりにつたない語録の数々を集めた本。
もうね、ホントに呆然とします。いくつか例を上げようと思ったが、どれを選んでいいかわからない。笑える本、として興味本位で買ったが、真ん中あたりまで読んで気分は暗黒。このアホが「世界の実質的トップ」である不幸をどう受け取ればいいかわからなくなる。もちろん1日24時間マスコミに監視されていて、失言しないわけにはいかないが、これはもう失言のレベルを超え、アホが滲み出ている。アホの坂田なら芸ですむが、アホのブッシュは洒落にならん。

が、最後まで読み通すと、逆に「これはこれで逆にオオモノなのかもしれない」と思い始める自分もいる。いわゆる大愚な人はある意味人格者でもあるしな。ただ、このアホさ加減は平和な時代ならまだしも、戦争や人殺しが絡むとやっぱりヤバイ。ヤバすぎる。ま、なんつうか、思ったより笑えない。暗い気分になる本だ。悲しーくなる。そういう意味でボクのLOVE度合いは低い。

2003年3月 1日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:時事・政治・国際

LV5「イラクの小さな橋を渡って」

池澤夏樹著/本橋成一写真/光文社/952円

イラクの小さな橋を渡って
amazon
アメリカによるイラク侵略戦争(とあえて呼びたい)がいまにも起こりそうな雰囲気の中、ひとりの作家がペンの力を持って戦争への流れを止めようとした気高い試みとして評価したい本。本橋成一の写真に池澤夏樹の文章がつき、「この子たちをアメリカの爆弾が殺す理由はなにもない」と訴えている。

本は「もしも戦争になった時、どういう人々の上に爆弾が降るのか、そこが知りたかった」と始まる。実際にイラクを訪れ、人々の生活を見、それをウェブと本で世界に伝えた。国際政治的に進行する戦争について思考していくと、ふと、人々の暮らしという身近なレイヤーを忘れそうになる。作家の目はそこを鋭く突き、ボクたちに「想像力を取り戻せ」と訴える。そしてアメリカとの関係についても平明な論点で訴える。戦争を正当化する理由など、やっぱり何もないではないか、と。巻末の年表も役に立つ。イラクがいままで何をやってきたか。客観的事実も出しておくことでより狙いが明確になっていると思う。

国際政治を情緒で語るなと思う人もいるかもしれない。でもこの本に実は情緒はほとんどない。理系の目と感じるくらいである(写真はちょっと情緒的)。しかし、人を殺すかもしれない戦争に、情緒的になって何が悪い?ビジネスライクに考えていて良いのか? そんな反省を強く求められる一冊でもある。
※英語版・フランス語版・ドイツ語版が無料でダウンロードできます。

2003年3月 1日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:時事・政治・国際 , 写真集・イラスト集

LV3「だからアメリカは嫌われる」

マーク・ハーツガード著/忠平美幸訳/草思社/1600円

だからアメリカは嫌われる
amazon
原題は「The Eagle's Shadow:Why America Fascinates and Infuriates the World」。邦題とはニュアンスが違うが、反語的でどちらも面白い。

帯に「米国人ジャーナリストが、あえて自国の無知・非常識ぶりを明らかにする!」とあるように、著者は世界19カ国を巡った経験からアメリカの勘違いと非常識ぶりを事実に基づいて書いていく。世界の人々がアメリカをどう思っているか。アメリカが世界になにをやっているか。それをアメリカ人は知っているのか…。本書の中盤に出てくる「じつに厄介なことに、アメリカ人の大半は外の世界のことをほどんど知らず、とりわけ、政府がアメリカ人の名を借りて何をしているかという情報が不足しているのである」という一文がこの本の嘆きのほとんどを言い尽くしている。

なるほどな。アメリカ人は無知でマッチョなだけなのだな。一般アメリカ人の本音は「われわれはこんなに世界に貢献し、ちっとも悪いことをしていないのに、なぜ一部の国から嫌われ攻撃されるのか。ぜーんぜん理解できん!」なのだ。それが本書でよくわかった。そして著者は「いやいや、こうこうこうだから、アメリカは嫌われているのだ」と愛国者の立場で客観的に語っている。アメリカ人たちに是非読んで欲しいが、どうなのかな、売れているのだろうか?

2003年3月 1日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:時事・政治・国際

LV5「スコット・リッターの証言 イラク戦争〜ブッシュ政権が隠したい事実」

ウィリアム・リバーズ・ピット+スコット・リッター著/星川淳訳/合同出版/1200円

イラク戦争―元国連大量破壊兵器査察官スコット・リッターの証言 ブッシュ政権が隠したい事実
amazon
帯に「イラク攻撃は前代未聞の愚行だ」とある。
アメリカ人の元国連査察官で長くイラクを査察したスコット・リッターが書いた薄い本だが、内容は戦争に傾きつつあるアメリカ(というかブッシュ)の暴走に警鐘を鳴らしてあまりある。なにしろ査察官自身が自信を持って「核兵器は議論の余地なく廃棄され、化学兵器や生物兵器も破棄され、残っているとしてもすでに用をなさない」と言い切っているのである。それも実に冷静沈着かつ「発言を裏付ける文書を持って」である。そのスタンスは戦争反対論者というより科学者のそれである。そしてきちんと愛国者である。アメリカを愛するがゆえの告発だ。胸に響く。

特に41ページから始まる、ピットによるリッターのインタビューは圧巻。
チェイニー、ラムズフェルド他がどれだけ薄弱な根拠に乗っ取り、さまざまなことをごまかしているかがよく見えてくる。また、ハディル・ハムザ、リチャード・バトラーたちの大嘘にも「裏付ける文書を持って」反論している。ここらへんの「体制側による情報の作られ方(メディア・コントロール)」は背筋が寒くなるほどである。まさに「ブッシュ政権が隠したい事実」であろう。

リッターの言っていることが事実なのかどうかの検証資料をボクは持っていない。が、詳細に読んでいっても、論説は実に明解で反論の余地がないように思える。今回のイラク攻撃について少しでも思考しようとする人は、まずこの本を読むべきだ。そして客観的に眺めてみることだ。たった120ページの薄い本だが、これだけで充分じゃんと思うくらいブッシュの論理を打ち破っていると思う。

2003年2月 1日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:時事・政治・国際

LV4「現代史の対決」

秦郁彦著/文藝春秋/1810円

現代史の対決
amazon
現代日本史の諸問題をもう一度客観的に考え直すにはうってつけの本である。

南京事件、従軍慰安婦問題、教科書論争、靖国参拝問題、夫婦別姓問題、嫌煙権問題、など、それぞれ明解な視点をわかりやすく与えてくれ、ひとつひとつ考え直させられる。
帯に「歴史を書き手の政治的信条や倫理観を裏付けるために利用したり、人を裁く行為と混同する露骨な風潮はいっこうに変わっていない。とくに歴史専門家とみなされ、教育界でも影響力を持つ人たちによるこの種の所業を、歴史家として放置できないと私は考えている」という意味のことが書いてあるが、著者のスタンスはまさにこの通り。バイアスのかからない現代史の見方を丁寧にそして勇気を持って論じてくれている。南京事件みたいに風当たりの強そうな問題でもまるで怯まず対処している。

微妙な問題が多いせいもあってか、少々展開がわかりにくい章があるのが残念(たんにボクの理解力不足ということもあるとは思うけど)。あと、客観論旨と主観印象が混じるのも、人によっては読みにくいと感じるかもしれない。でもある種の現代史テキストとして、ボクはしばらく手元において参照したいと思っている。

2003年2月 1日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:時事・政治・国際

LV2「私の仕事」

緒方貞子著/草思社/1600円

私の仕事
amazon
副題は「国連難民高等弁務官の十年と平和の構築」。
そう、あの「日本一格好いい女性」緒方貞子が自分の仕事を振り返って書いた本である。うはーこりゃ激務だー!とビックリする仕事日記や回顧録、各地での講演、若い人達への提言など、内容は盛り沢山。じっくり読んでいくとそれはそれは立派な仕事と主張が散りばめてあり、圧倒されるし偉いなぁと客観的に思う。どういう仕事をしているかを知るためだけでも読む価値はあるかもしれない。特に「はじめに」で書かれている著者の基本スタンスは熟読に値する。

が、偉いなぁと感心していることを前提に、敢えて苦言を呈したい。
まず、学者が書いた本みたいになってしまっていること。国際政治学者や記者向けならこれでいいが、一般向けであるならある程度の噛み砕きは必要。忙しいだろうが、後進や若者のために、いかに意義深くすばらしい仕事かをやさしくわかりやすく書くことに大きな意味があると思う。何人かのトップクラスの科学者が科学用語を使わずに自分の仕事をきっちり紹介し若者たちを啓蒙しているようなことを著者にも期待したいのだ。
今のままではある程度の知識がある人以外とはコミュニケーションしようとしていない文章と言わざるを得ない。読み進めるのに国際政治の広い知識が必要な本であるのが非常に残念だ。また、全体にお行儀が良すぎて、教科書を読んでいるような気分になった。各方面に気を遣いつつ失言を避けて発言しないといけない仕事だということはわかるが、そういう発言を集めて本にしても読む側はいまひとつ乗れない(過去の出来事であるから特に)。「世界へ出ていく若者たちへ」と題された若者への提言の文章もとても硬い。彼女にこそ、自分の言葉で熱く訴えて欲しい。

もちろん、ちゃんと書く時間がないからこうしてまとめたのだろうし、出さないより出した方が著者の仕事への理解・普及になるからいいのであるが、著者だからこそ、期待してしまう。いい本であることを前提としてだけど。

2003年1月 1日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:時事・政治・国際 , 自伝・評伝

LV5「永遠の不服従のために」

辺見庸著/毎日新聞社/1429円

永遠の不服従のために
amazon
第二次世界大戦前の日本人が特別に愚かだったのだと思っている人はかなりおめでたい。
自分だったらあんな好戦的な風潮に乗らず冷静に時代をながめて戦争に反対しただろう、などと考えている人はおめでたいのを通り越してバカかもしれない。戦争は一夜にして起こるものではない。じわじわと起こるのだ。気が付いたときには戦争しないといけない環境になっていて、反対しようにも出来ない状況になっているのだ。戦争は宣戦布告で始まるのではない。その何年も前からじわじわ始まっているのである。

サンデー毎日に連載している「反時代のパンセ」をまとめたこの本は、その「じわじわ始まっている戦争」への反戦活動である、と言ったら乱暴か。戦争状態へとじわじわ突入していくことを関心あるふりしてにこやかに許しているボクやアナタたちへの少々いらついた叱責でもある。でも著者は叱責だけして自分は安全な「評論家」のスタンスを良しとしない。自分の身をきっちり危険に晒して叱責言論・反戦活動を行っている。そのことが文章に底知れぬ迫力を与えている。

彼は「坑道のカナリア」になろうとしているのではない。カナリアよりもっと強い存在になろうとしている。この本を読んで感心しているに留まっているくらいなら、読まない方がマシかもしれない。さてアナタはどういう態度にでるのだ?とナイフをつきつけられるような本である。

2003年1月 1日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:時事・政治・国際

LV1「まだまだまともな日本」

フロリアン・クルマス著/山下公子訳/文藝春秋/1714円

まだまだまともな日本
amazon
日本って全然ダメ〜!って新聞や本ばかり読んでいるので、たまには「日本も捨てたもんではない」というニュアンスを読みたくて購入。最初に言っておきたいが、256ページの小版本で1714円は暴利と感じる。質的にも量的にも内容的にも新書で700円くらいで出すべき本だ。

ま、それはともかくとして。著者は日本に12年住みドイツに帰ったドイツ人教授。
1999年に「制御不能の日本」という日本を憂う本を出しドイツに帰ったのだが、ドイツに帰ってみたら「日本ってこんなに住みよい国だったのか!」と驚くほどドイツがひどかったのよこれが奥さん! という、要するにそういう本だ。
まえがきにこうある。「日本社会がうまく機能しなくなっており、伝統的美徳も失われかけていると感じていらっしゃる方は、一度ドイツにおいでになるか、あるいは少なくとも本書を読んで、ドイツではどんな有様なのかをごらんになってみていただきたい」。んー、著者が「どこに住んでも文句を言うタイプ」という可能性もあるが、まぁ読んでみるとドイツ社会も確かにかなりひどいな。でも悪い国同士比べあってもどこにも行けないという気も。だいたい「まだまだまともな」って、日本はひどいけどもっと下がいるよってニュアンスでかなり自虐的。原題は全然違うので、訳者と編集者がつけたのだろうが、ヤな題名だ。

日本のイイトコロとして取り上げられている例が、それぞれ検証が薄く、反論がいくらでも出来るのも難点。
そして訳者の問題もあろうが、文章がかなり読みにくいのも難点。それでも我慢して読んでいくと最後に「訳者あとがき」が来るのだが、これがまた著者に冷たい。読後感をとても悪くする訳者あとがきだ。つか、買って損した気にさせるあとがきを訳者が書くのはどうだろう。
日本のイイトコロはもちろんたくさんある。いろいろ自信を失っている我々には一服の玉露的効果を与える本だろう。だが、いろんな意味で1714円の価値はないかも。新書だったらまた違う印象だったかもしれないが。

2003年1月 1日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:時事・政治・国際

LV3「一目でわかる国際紛争地図」

伊藤芳明監修/ダイヤモンド社/1400円

一目でわかる国際紛争地図
amazon
「世界の紛争がよくわかる本」を愛用してきたボクであるが、あれから2年、国際事情はいろいろ変わっている。で、今度はこれを購入。「世界の紛争がよくわかる本」は毎日新聞外信部編著だが、この本の監修は毎日新聞東京本社外信部長ゆえ、ま、同じ著者が編集したようなものと思ってもいいかも。作りもとても似ているし。

前書きに「それぞれの当事者が掲げる『正義』がいかに独りよがりで危ういものか、理解していただければ幸いである」とある。そういう視点に共感。ただ、編者の主観は極力排除してあり、客観的事実重視の作りなので偏向は特には感じられなかった。各紛争を短くまとめているので、事実の羅列に近くなってしまっているが、状況を頭に入れるにはなんの問題もない。1〜2年は愛用する予定。

2002年12月 1日(日) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:時事・政治・国際

LV5「戦争中毒」

ジョエル・アンドレアス著/きくちゆみ監訳/グローバルピースキャンペーン有志訳/合同出版/1300円

戦争中毒―アメリカが軍国主義を脱け出せない本当の理由
amazon
副題は「アメリカが軍国主義を抜け出せない本当の理由」。
60ページちょっとの短いマンガである。でも本当に大切なことは短く表現できるものだ。アメリカ人が書いたこの短いマンガの中にアメリカの醜い側面が余すところなく描かれている。すべてが真実かどうか判断する材料がないが、無批判にアメリカの善を信じてきた(信じている)多くの人々に、平らかに比較検討するチャンスを提供する意味で「必読」の一冊だろう。

驚くべきことにこの本の初版は1993年の湾岸戦争直後である。初版は7000部。すぐ絶版となり埋もれていたが、有志の手により発見、私立探偵を雇って著者を捜し出し説得して、2001年の911後、最新情報を盛り込んだ改訂版を緊急出版したという。著者の先見性&平明な視点に脱帽する。

その有志の中心人物は「アメリカの問題は、政府や米軍が海外でしていることを、アメリカ市民のほとんどが何も知らされていないことに尽きる」と語っている。
まさにその通り。というか、過去の戦争中、どの国もそういう状態で暗黒に突き進んでいったのだ。そういう意味でこれはアメリカ国民自身に読まれるべき本である。「『戦争中毒』を認知させる会」という活動があり「アメリカの若者が軍隊に志願する前に『戦争中毒』を読めるように、アメリカの学校と図書館に『戦争中毒』を寄贈する」活動をおこなっているという。この本の内容が絶対的に正しいとは言い切れないが、中立な視点を与える意味でとてもいい活動だと思う。ひと口乗ろうっと。(この本のサイトにくわしく載っている)

いままた冷静に読み直してみて、この本の内容はアメリカを無視できない現代社会を生きるのに「知っておかないといけないある側面」であることは確かだと思う。「今」と正面切ってつきあっていこうという人々には「必読」だろう。そこまで真剣でもない人々にも、マンガだし、読んで損はないと思うよ。

2002年11月 1日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:漫画 , 時事・政治・国際

LV5「読み聞かせる戦争」

日本ペンクラブ編・加賀美幸子選/光文社/1800円

読み聞かせる戦争
amazon
戦争の悲惨さ無意味さを伝える数多くの文献・小説・日記・詩などの中から、特に印象的で読み聞かせるに効果的(?)なものを27篇選んで収録したもの。
題名からわかるように子どもたちに読んで聞かせる形式になっているため、少々説明的なものもあるし、ちょっと教科書的ラインナップでもあるのだが、目を背けたくなる戦争の現実を子どもに実感をもって伝えられるいい本に仕上がっていると思う。

収録されているのは「ヒロシマの空」「きけわだつみの声」「レイテ戦記」「私のひめゆり戦記」「今夜、死ぬ」「夏の花」など。特に「ヒロシマの空」は涙なしでは読めない。これを子どもに読み聞かせるだけでも買う価値があるかもしれない。戦争体験者がどんどん少なくなっていっている今、こういう正面切った企画が出版されるのはとてもいいことだと思う。必要以上に教訓的にならず、子どもに淡々と伝えていきたい。

加賀美幸子が朗読した付属CDにはその中から9篇が収録されているが、映像世代である今の子どもに本当に伝えようと志すなら、映像付きDVDの方が良かったかもしれない。それと、加賀美幸子の朗読はちょっと情緒的すぎる気がする。もう少し淡々としている方が好み。

2002年11月 1日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:時事・政治・国際 , 教育・環境・福祉 , 児童・ティーンズ

LV3「報道は欠陥商品と疑え」

鳥越俊太郎著/ウェイツ/750円

報道は欠陥商品と疑え
amazon
題名が内容のほとんどすべて表している。
報道はもともと完成された商品ではないのだ。欠陥がありがちな商品なのだ。そこに気づかせてくれただけで、この本の存在意義がある。そういう視点を与えてくれてありがとう、という気分。

そう、マスコミ報道の多くは「欠陥商品」なのだ。人件費の安い国が粗製濫造している、3日持てばまぁいいや製品なのだ。そりゃそうだ。毎日新しい素材が納入されて、素材研究する間もなくそれを加工し出荷しないといけない。とにかく紙面・電波を埋めないといけない。クオリティ管理など無理である。そんな工場で作られた商品に文句を言う方がバカだ。バカではあるが、工場側も謙虚さが足りない。欠陥商品が混じっているのに謝りもせず、いや「国民が望んでいるのだ」と逆に威張り、商品を出し続ける傲慢さ。これがメーカーだったらとっくにつぶされている。

マスコミの煽動が戦争を導くことも過去にあった。国民もこの欠陥商品に心を奪われやすい。常に「欠陥商品かも」と疑ってマスコミ報道に接しないとヤバイのだ。もちろん、志の高い報道もちゃんとある。有用な情報もたくさん流れている。でもそれらを見分けるのは相当鍛えられた人でも難しいのが現状だ。我々はまず無批判に報道に接するのをやめることから始めよう・・・
と、いろいろ考えさせられる本なのだが、実は内容はそんなに濃くはない。でも、表題の言葉をしっかり理解するために、読んで損はないだろう。

2002年11月 1日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:時事・政治・国際 , 評論

LV1「フランスには、なぜ恋愛スキャンダルがないのか?」

棚沢直子・草野いづみ著/角川ソフィア文庫/600円

フランスには、なぜ恋愛スキャンダルがないのか?
amazon
6月にフランスに行き、その印象を不定期日記につづったら、やけに受けた。フランス特有の価値観に改めて感じいった人が多かったのだ。で、ある人から「日記を読んでこの本を思い出しました」とメールをもらったので読んでみた一冊。

ちょっと厳しすぎるかなと自分でも思ってはいる。というのも、資料としてとてもよく出来ているし、結論としての分析もとても面白いから。ただ、もうちょっとミーハー的な「フランス恋愛価値観のいろいろ」を読みたかった感じなので、そういう意味ではがっかりしたかも。だって恋愛観の歴史的必然性や宗教的裏付けを追うのにほぼ8割使ってしまっているんだもの。それらを読んでいるうちに、フランス人の恋愛について知りたかったワクワク感が、なんだか大学の研究室のほこりくささでかすんでしまったみたいな感じになったから。ちょっと惜しいなぁ。テーマは最高なのに。

2002年10月 1日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:時事・政治・国際 , 評論

LV5「コミック韓国 コリア驚いた!」

李元馥著/朝日出版社/1500円

コミック韓国
amazon
韓国で通算500万部売れている教養マンガの邦訳にして最新刊で、世界の国々を韓国人のためにわかりやすく解いていったシリーズの最終巻。

いよいよ著者の母国、韓国を取り上げている。相変わらずこの題名で通すんかい!とぼやいてしまうのだが、前作「コリア驚いた! 韓国から見たニッポン」に続き、今作も非常に楽しく非常に頭がクリアになる出来だ。母国の分析ということでかなり肩に力が入っている部分はあるが、半島国韓国の地政学的特質と歴史から国民性を明らかにし、イイトコロとワルイトコロをしっかり描き、将来への展望を説いている内容はかなりハイブロウ。とはいえマンガだから、それがスラスラ頭に入ってくる。今回はマンガ本来の大きな版形で出してくれたのでより読みやすくなった。

W杯共催で近しくなったようでいて、あの独特の熱狂具合に「やっぱり根本から違う国なんだぁ」と思わされた遠い国、韓国。そのトコトン熱狂する国民性の秘密が実にクリアに説明されている。韓国について「同じような顔しているのになんでこういろいろ違うのだろう」と不思議に思っていた部分がほとんど解きほぐされると言ってもいい。W杯共催後の今だからこそ、ぜひともお薦めしたい韓国理解本である。

2002年8月 1日(木) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:時事・政治・国際 , 漫画

LV5「からくり民主主義」

高橋秀実著/草思社/1800円

からくり民主主義
amazon
おもしろい。
別に民主主義のウソについて語っている堅苦しい本ではない。
著者曰く「からくり_民主主義」ではなく「からくり民主_主義」なのだそうだ。民主とは国民が主役ということ。国民みんなが主役なら主役はいないのと同じではないか…というところから、著者は「みんなというカラクリ」に迫っていく。それは細かいことを「国民の声」として声高にクレームする新聞投書欄から、小さな親切運動、統一協会の若いカップル、諫早湾干拓問題などまで及ぶ。ホントにそれは「国民の声」であり「みんなの思い」なのか? だいたい「みんなの思い」って何なのだ? 全員が同じことを思うならオウムや統一協会とどこが違う? 何かおかしくないか? と、じっくり悩みながらまだるっこしく追っていくのだ。
そう、そのまだるっこしさが著者の特性でもありおかしみでもある。大まじめに取材してまだるっこしく悩むあたりがとってもおかしい本なのである。

はっきり言うとつまらない章もある。でもおもしろい章は抜群。マスコミが作り上げたわかりやすい構図(悪者vsいい者)のからくりも見えてくる。諫早湾のことなど、まったくマスコミに洗脳されていたよ。最後のほうの章がテーマずれを感じるが、全体としてとても印象深い本だった。

2002年8月 1日(木) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:時事・政治・国際 , 評論

LV5「新世紀へようこそ」

池澤夏樹著/光文社/1400円

新世紀へようこそ
amazon
著者が9.11のテロ事件を受けて始めたメール・マガジンのコラムを収録したもの。
著者のサイトでもほぼ同じ内容が読めるが、やはり本の方が目的のコラムを探しやすく、寝ながら読めるのでボクには便利。読者の反応もきっちり載っていて、著者のそれに対する反省や反論も誠実に書かれていてわかりやすい。なにしろ毎日のように書かれているコラムなので、作家の思考構築過程も浮き彫りになっているのが面白い。推敲や論を寝かすということができない分、かなり日々の本音が出てきていると思う。そういう環境の中でこれだけ冷静で客観的な文章を出し続けられるあたりに、著者の真の力が見える。さすがだ。

2001年9月11日にボクたちは真の意味で新世紀を迎えた。この意識が題名になっている。
世界は変わった。変わり続けている。週刊誌や月刊誌ですら、もう発言が追いつかない。この想いが著者にメルマガを書かせたようだ。著者にそこまで焦燥感を持たせたもの。著者に表現手段として評論や小説ではなく「ひとりの人間としての発言」を選ばせたもの。それを考えるとき、ボク自身としても、生き方を試される気持ちになる。読みながら、ボクはのほほんと何をやっているのだろう、と何度も自分に拳を向けた。

2002年4月 1日(月) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:時事・政治・国際

LV3「目撃 アメリカ崩壊」

青木冨貴子著/文春新書/680円

目撃 アメリカ崩壊
amazon
9.11をワールドトレードセンタービルからたった13ブロック北のアパートで体験した著者による、迫真のレポート。

ピート・ハミル氏の奥さんでもある彼女の記事は冷静かつクレバーでわりと信頼しているが、このレポートも冷静な良さを残しつつ、実体験した人でないと書けない迫力に満ちていて貴重だ。
特にビル崩壊の現場での記述は力がある。思わず阪神大震災を体験した記憶が蘇ってくる。そして現場にいたからこその様々な怒りも蘇る。冷静な自分と怒りに身を任せている自分・・・大災害現場にいた人のそんな複雑な心境が著者にも見え、共感は強かった。著者自身のアフガンに対するフェアな視点や、たったひとりアフガン空爆に反対したバーバラ・リー議員に対する賞賛などのジャーナリスト的視点に、本能的怒りと恐怖が混じってくる微妙なニュアンス。

ただ、スーザン・ソンタグやノーム・チョムスキーがテロ直後に出した声明のような、圧倒的に冷徹な視点が欲しかったと思うのは贅沢か。アメリカという強大国に住む日本人トップジャーナリストのひとりとしての独自のスタンスを求めるのは贅沢か。感情に左右されたりウェットになったりすることなく冷徹に現場を見る視点がもっと欲しいと思うのは贅沢か。迫真のレポートだけで終わらず、一歩も二歩も踏み込んで欲しかったという贅沢な思いをこの本には持っている。

2002年4月 1日(月) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ノンフィクション , 時事・政治・国際

LV5「オバはん編集長でもわかる世界のオキテ」

福田和也著/新潮文庫/362円

オバはん編集長でもわかる世界のオキテ―福田和也緊急講義
amazon
「新潮45」で「オバはんでも45分でわかるニッポン」という題名で連載していたときから愛読していたものが一冊にまとまった。

362円でこれだけ現代世界をシンプルに理解できる本も珍しい。
テロやアフガン攻撃や日本国憲法や不審船騒ぎや……とにかくオバはんが先入観と感情と狭い理解のみで質問していき、著者はそれに根気よく丁寧に答えていく。
もともと著者はやさしくわかりやすく解説することに長けてはいるが、「新潮45」の新編集長(オバはん)のものの知らなさは抜群なので、それに対してサルにもムカデにもわかるように根気強く説明していく様は、さながら北京原人に車の運転を教えるが如し。ちょっと感動的ですらある。いや、サルよりたち悪いかも。サルはオバはんみたいなコテコテの先入観に毒されてないもん。世の中の深い部分を見ようとしないタイプの代表としてオバはんは完璧な配役なのだ。

説明する側は実にたいへんだろうが、読む側は実におもしろい。バイプレーヤーとして出てくる編集者たちも(描き方がいいのだろうが)とても面白い。読み飛ばすだけでも世界がかなりわかる。オススメである。
※ちなみにオバはんみたいなタイプの人こそ本当の意味で頭がいいと思っていたりもする。

2002年4月 1日(月) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:時事・政治・国際 , 対談

LV5「新・世界地図」

福田和也著/光文社/1200円

新・世界地図―直面する危機の正体
amazon
副題は「直面する危機の正体」。
つまり、別に地図のお話ではなく、世界のパワーバランスがこれからどうなっていくか、そうなると世界地図はどう塗り替えられるのか、を、著者特有の懇切丁寧さ&本質を捉える視点で解き明かしてくれる本である。
9.11やアフガン爆撃後のパワーバランスをかなりのリアリティで説いてくれるので、影響されやすいボクなど、目から鱗が何枚も落ち、「えー、あのアフガン爆撃強行の裏には石油と麻薬の影が!」とか「中国ってこうなっているのかー、あやや、こりゃ怖い!」とか、素直に感嘆することが多かった。そしてこの本がいいのは、世界を分析しつつ、では日本はパワーポリティクス的にどうすればいいのか、をちゃんと提言しているところである。世界を分析して日本のやり方に苦情を述べ立ててお終いという本が数多くあるなか、きちんと自分の旗色を明確にしているのが気持ちよい。

なんか印象に残ったのは、細部の話であるが、「国連」という翻訳はおかしいというところ。
正確に訳すと「連合国」というのだ。そう言われればそうだ。ユナイテッド・ネイションズだもん。連合国の利益のためにある機関なのだ。それを「国連」と呼んだ時点で、なにか「世界的に良いことをする機関」というニュアンスが出てしまい、国連幻想まで起こる。連合国と考えれば、ずいぶん見方が変わるよね。急に世界的パワーバランスまで見えてくるではないか。つまりはこういう目鱗がいろいろ散りばめてある本なのである。ちなみに中国はちゃんと「連合国」と訳しているらしい。

2002年3月 1日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:時事・政治・国際

LV3「たのしい不便」

福岡賢正著/南方新社/1800円

たのしい不便―大量消費社会を超える
amazon
副題は「大量消費社会を超える」。
毎日新聞西部版での人気連載を一冊にしたものらしい。簡単に言うと「不便を実践してみた」という連載だ。具体的には「電車や車を使わず自転車で通勤する」「自動販売機で物を買わない」「外食をしない(弁当を自分で作る)」「エレベーターを使わない」「野菜や米は自給自足する」などなど。んでもって、そこに見えてきた生活の楽しさ・充実さを語っている。

・・・と紹介すると、ストイックな「べき論」的本かと思われがちだが、そうではない。
著者は連載の早い時点で「楽しめなければ長続きしない」と気づき、ストイックさから離れていく。そこらへんの等身大な感じがいい方に働き、とても良い本になった。後半は「消費社会を超えて」と題し、野田知佑を初めとしたナチュラリスト系(と一括りにするのは大変失礼な面子だが)との対談。いろんな考え方に触れられ、タメになるし、視野が広がる。

この本で展開している論を一言で言うと「現実感とは何か」ということかもしれない。現実感が日々なくなっていっているこの日本で、いかにして現実感を持って生きるか。言葉が固く見出しも固く新聞記者ぽくなりすぎている文章が難と言えば難だが、身の回りの現実感を再度見直し発見してみたくなる良書である。

2002年3月 1日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:エッセイ , 時事・政治・国際 , 教育・環境・福祉

LV3「空から堕ちた」

黒田征太郎著/塩澤文男構成/新風舎/700円

空から堕ちた
amazon
ページ数にしたら30ページほどの本。9.11のテロの日から数ヶ月に渡り、黒田征太郎(NY在住)がNYから日本に出し続けたハガキや書簡の数々(全部イラスト)を一冊にまとめたものである。
題材は9.11。確かに薄い本だが、あの日に黒田征太郎の目がアソコにあったことを喜びたくなる、そんな独特の視点に満ちた本である。あの日の、そしてあの日以降のNYの空気を、実感として心に届けてくれる。イラストの力か。

9.11の当日、いつものようにジョギングする人々への黒田征太郎の視線。ヒロシマナガサキとツインタワーを重ね合わせる黒田征太郎の視線。そしてまた、そんなハガキイラストの上に、ペタペタとめちゃくちゃ多く消印を押しまくるNYの郵便局員(←共感か?呪詛か?とても面白いコラボレーションになっている)……印象深いイラストが多く、思わず何回も何回も読み直してしまった。そしてまた思う。やっぱり黒田征太郎という人の線は天才の線である。字も、捉え方も含めて。

2002年3月 1日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:写真集・イラスト集 , 時事・政治・国際

LV1「忘れてはいけないことがある」

鎌田慧著/ダイヤモンド社/1600円

忘れてはいけないことがある
amazon
社会派ルポライターである著者のいい評判は聞こえてきていた。著者と同時代に生きる光栄を語っていた文を誰かが書いていた記憶もある。で、ボクは著者初読。ちょっと期待して読んだ。

著者を褒めるヒトも多いので、この本だけで判断しにくい部分はあるのだが、客観的にこの本だけ取り上げると、かなりイマイチであった。「週刊女性」に連載されたコラムを中心としていることも影響しているかもしれないが、表層的で、論の展開に深みがなく、いたずらに告発的だったり、意味もなく嘆いてみたり、短絡的な結論付けが多かったり、なんだかなぁなコラムが多かった。
週刊誌のコラムを再編成するなら、出来がいい週のものだけを加筆してしっかりした論に仕立て上げ、後は捨てる。その方がいいのだろう。そんなことを思った。

2002年2月 1日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:時事・政治・国際

LV5「コリア驚いた! 韓国から見たニッポン」

李元馥著/松田和夫・申明浩訳/朝日出版社/1500円

コリア驚いた!韓国から見たニッポン
amazon
韓国の大ベストセラー漫画シリーズ「遠い国・近い国」の第7巻である。
あとの6巻は未邦訳。著者のイ・ウォンボクは漫画家でもあるが大学教授でもあり、また有名なデザイナーでもあり、韓国を代表する知性とも言われている異色の人。このシリーズは、外国の事情を鋭くも易しく漫画で読み解いたもので、待望された「近い国・日本」解読である第7巻も2001年4月の時点で60万部出ているらしい。

一読、目からウロコが数十枚落ちた。
韓国民用に書かれているだけあって、韓国民の愛憎入りまざった対日本意識に気を使いつつの展開であるが、平明な知性で語られるその日本論は西欧から見た日本論しか読んでいないボク(もしくは大半の日本人)には新鮮で妙に納得が行くことばかり。そして日本との比較として取り上げられる韓国の現状や歴史、国民性なども、とっても新鮮でわかりやすい。日本を解きながらの韓国論でもあるので、我々にも異様にわかりやすいのである。

島国論から説き明かす日本論はわりとありがちだが、それが「日本の7つの成功の理由」にきちんとつながっていき、その7つの理由がそのまま「現在の苦悩の理由」につながるその展開は見事。細部もとてもよく思考されていて、この著者の半端ではない日本理解の深さ(もしくは直感力の鋭さ)をうかがわせる。オタク論とかも実にしっかりしていて、いろいろ教えられちゃったり。

ギャグの質は日本的にはちょっと古いが、啓蒙系の漫画としてはバランスのいいもの。訳者がつけた(であろう)邦題がキワモノっぽいのが玉に瑕だが、オススメ本である。著者としては1巻〜6巻の西欧編の方が自信があるらしいが、それらを書くことで培った広い視野がこの日本論を深くしているのだと思う。このシリーズすべてを是非邦訳して欲しいと願ってやまない。マジで読みたい。

2002年1月 1日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:漫画 , 時事・政治・国際

LV5「9.11 アメリカに報復する資格はない!」

ノーム・チョムスキー著/山崎淳訳/文藝春秋/1143円

9.11
amazon
テロリズムという言葉をアメリカの正式文書は以下のように定義している。
「政治的、宗教的、あるいはイデオロギー的な目的を達成するため、暴力あるいは暴力の威嚇を、計算して使用すること。これは、脅迫、強制、恐怖を染みこませることによって行われる」…

この本の内容を簡単に言うと「この公式定義を当てはめればアメリカこそが世界最大最悪のテロ国家である、ということを歴史的事実を元に平明かつ精緻に論証し、今回の同時多発テロをめぐる一方的な見方に決定的な視点を提供するもの」となる。
天才言語学者として知られる著者が精緻に分析したその論証は、事実を元に平明かつ知性的に展開され、目からウロコが数百枚落ちる勢いである。著者は別に「反アメリカ」なわけではない。あくまでも平等な知性でアメリカを批判している。あのテロの直後にこうした冷静な論の展開が出来る知性がちゃんと存在し、欧州を中心としたメディアがそれをちゃんと取り上げていたということに安堵する。

読んでいて気分が悪くなるほど酷いテロをアメリカは世界各地で何度も繰り返してきている。9月11日の同時多発テロに関して「人類に対する犯罪」「自由に対する挑戦」などと言う資格すらアメリカは持っていないことは明白である。どう考えてもアメリカが世界各地で行ってきた行為はテロとしか呼びようがない。

戦慄する例がいくらも出てくるが、特に酷いのは98年にクリントンがスーダンのアル・シーファ工場に対して行った爆撃テロ。その攻撃が、貧困と病気に喘ぐスーダン国民の命綱であった安価な薬を作り続けた製薬工場に対して行われたという事実で、すでに9.11テロを上回る極悪非道犯罪である。薬を手に入れられずに一般人がどんどん死に続けていくということを計算した爆撃テロ……クリントンはビンラディンを軽く上回る冷酷な大量殺戮首謀者である。

また、1980年代のニカラグアに対するアメリカのテロ攻撃も許し難い。この攻撃でニカラグアは壊滅状態に陥ったのだが、彼らは今回アメリカがやったような報復に出ず、国際司法裁判所に訴えた。裁判所はアメリカを有罪とし賠償金を払うように命じたが、アメリカはこれを冷笑と共に退け(!)、攻撃をさらにエスカレートさせた。ニカラグアは国際法の遵守を求めて安全保障理事会に提訴し議会は「すべての国家は国際法を遵守すべし」という決議を行おうとしたが、アメリカ一国が拒否権を発動したのである……すなわち、「国際司法裁判所が国際的テロで有罪を宣告した唯一の国がアメリカであり、アメリカだけが国際法の遵守を求める決議案を拒否した」というまぎれもない事実。こんな例がぼろぼろこの本には出てきて、胸くそ悪くなるのである。

もちろん一方でアメリカはイイコトもたくさんしているだろう。過去にこういうことをした国だからテロを受けて当然だよ、などという気も全くない。また、日本はアメリカの庇護下にあり、アメリカを中心とした文化圏にどっぷり浸かっている。だから基本的に日本人がアメリカ側に立った認識を持ちがちなことにも文句はない。
ただ真の知性は平等・客観を立脚点にすべきである、とは心底思う。アメリカを中心とした世界に生きるからこそ、その世界が何たるかをきっちり知るべきであり、その世界を批判すべき目も曇らせてはいけないと思うのだ。そういう意味でこの本はアメリカ的世界に生きるすべての人にとっての必読の本と言ってもいい。同時多発テロ関連で多数出版された本の決定版としてオススメしたい。

2002年1月 1日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:時事・政治・国際

LV3「アフガン褐色の日々」

松浪健四郎著/中公文庫/743円

アフガン褐色の日々
amazon
ある掲示板で薦められた本。著者が1975年から3年間、アフガンで生きていた頃のノンフィクション・エッセイである。83年初版の少々古い本で本屋には置いてないだろうが取り寄せて読むことは出来た。

松浪健四郎~?と最初は懐疑的であったが、読み終わって、アフガンも著者自身も身近に感じている自分に気付く。アメリカ同時多発テロ事件の時節柄、他にもアフガン関係の書物はいっぱい出ており(この辺が日本人の好奇心の健全さを表しており頼もしい)、それらのきちんと突っ込んだアフガン分析に比べると本書はかなりお粗末に感じられるのも確かだが、ここには著者が肌で感じたアフガンの空気がある。シズルがある。平和の美しさがある。
著者自身、文庫版あと書きで「当時の情感のまま筆をとどめておくべきだと考え」直さなかったと書いていることでもわかるように、文章的には若く稚拙で、分析も甘い。でもその良さがいい方に出て、臨場感たっぷりの好著となった。

それにしても松浪健四郎が日本人初の国立カブール大学講師とは知らなかった。そしてこれだけ(まさに)肌でアフガンに接してきたとは…。時節柄、アフガン先駆者としての著者の「いまの」意見を聞きたいと思うのだが、マスコミに何故かほとんど彼の露出はない。マロムセイ、もっと発言を!

2001年12月 1日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ノンフィクション , エッセイ , 時事・政治・国際

LV3「ファストフードが世界を食いつくす」

エリック・シュローサー著/楡井浩一訳/草思社/1600円

ファストフードが世界を食いつくす
amazon
アメリカでベストセラーになった本である。
マクドナルドに代表されるアメリカの巨大ファストフードチェーン産業が目指す「世界中同じ味」「安価であるための効率至上主義」の経営方針が、伝統的な食文化や多用な農業形態を壊し、食の工業化を招き、産業構造自体を破壊し、他国の文化をも破壊していく過程をじっくりと描いて、読者に戦慄を与える本だ。

マクドナルドやケンタッキーがいかに生まれいかに大きくなったかの伝記的部分はわりと面白い。
そしてそれが目指す効率主義のため、食が工業化されていく実態、食肉処理場の劣悪かつ不衛生な現状、人間の労働環境を根底から変えるシステムの是非、フライドポテトに使われる天然香料のウソなどが、どんどん白日の下に晒されていく。そして、ファストフードが安価であることのカラクリも見えてくる。見た目は安価だが(だって65円だもん)、肥満解消にかかる費用や医療費、廃棄物が川や海を汚し牧場が森林をなくしていくことによる環境破壊による負の費用など、社会が負担するコストの高さも明らかにしてくれる。

問題意識を喚起するという意味においてこの本は素晴らしい。ただ、後半、問題点が分散してしまい、印象が散漫になってしまった。導入はいいのに詰めが甘い。題材はいいのに収束点がぼやけている。話題性十分なのにイイタイコトが伝えきれていない。せっかくいい本なのに~と地団駄踏みたくなる。また、巨大ファストフード産業がやったイイトコロももっときっちり評価して、そのうえで冷静に結論を導いて欲しかった。と、いろいろ惜しい本だけど、興味がある方にはとっても面白いと思う。

2001年12月 1日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ノンフィクション , 食・酒 , 時事・政治・国際 , 健康

LV3「東京の窓から日本を」

石原慎太郎著/文春ネスコ/1800円

東京の窓から日本を
amazon
TOKYO MX TVの人気対談番組「東京の窓から」の単行本化。
石原慎太郎をホストにした対談を活字にしてあり、脚注なども充実しており、とっても明快な「東京論」そして「日本論」になっている。単に「東京の窓から」という表題にせず、もう一歩踏み込んで「日本を」というひと言をつけた意味がよくわかる内容だ(続編は「変える」というひと言が入るのかにゃ?)

対談相手は、唐津一、佐々淳行、グレゴリー・クラーク、孫正義、米長邦雄、金美齢、志方俊之、はかま満緒、ビル・トッテン、竹村健一、徳間康快、ベマ・ギャルポ、中曽根康弘の13人。それぞれに頭脳明快な対談相手であるが、なにより全員「自分の分野から見た自分独自の意見」をしっかり持った対談相手だけに、ホストである石原慎太郎(独自の意見という意味では負けない)と意見が絡み合い出すとちょっと鳥肌ものの明快さに発展するところがあり、面白い。石原は各専門家たちに対してわからないところは率直に伺う姿勢を見せており、伺った意見を自分の中で整理する過程も透けて見えたりしてそれも興味深かった。

読んでいて「日本ってやっぱりヤバイよな」と危機感にさらされる本でもある。問題意識を持たないとヤバイことが次々に出てくる。どの対談も刺激的だったが、個人的に、唐津、徳間、竹村、クラーク、米長、孫あたりの対談が面白かった。

2001年12月 1日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:対談 , 時事・政治・国際

LV4「アフガニスタンの診療所から」

中村哲著/筑摩書房/1200円

アフガニスタンの診療所から
amazon
ちょっと有名になってきた中村哲医師。
らい(ハンセン氏病)根絶治療にたずさわり、難民援助のためにアフガニスタンに診療所を開設し、他のNPOがどんどん引き上げる中もひとり踏ん張り、現地スタッフを育成して農村医療・らい治療にチカラを尽くす日本人医師である。そんな著者の現地からの肉声がまとめられている(93年初版なので今回のテロにはもちろん言及されていない)。

過度に謙虚になったりもせず、過度に自己顕示になったりもせず、ちょうどいい距離感でまとめられた良書だと思う。
ただ、どうしても「本人はわかりすぎるくらいわかっていること」の説明が略されてしまっていたり「どうせこの悲惨な現状は文章では伝わらない」と諦めていたりする部分があって、読んでいる側としては歯がゆい思いをするところも多い。援助を始めたキッカケや志なども、もうちょっと読ませて欲しかった。変な国際交流ボランティアが来ないように予防線を張っているのかもしれないけど…。

真の国際協力とはいったいなんなのか…。
これはこの本を読んでボクの中に宿題みたいに残った命題であるが、実は混乱している。
真の協力をするためには人生を捧げる必要があることはよくわかった。異文化を身体ごと受けいれなければ真の協力はない。でもそれって文化を個人的に理解した部分で閉じていないか? この「開いているようでいて閉じている」感じがどうにも突破できない。個人的体験の量的な積み重ねが国際協力とは思えないし。うーむ。まだしばらく考え悩むべき命題なのだろう。中村哲医師を第三者が書いた本もあるらしいので買って読んでみたい。

2001年12月 1日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:時事・政治・国際 , 評論 , 健康

LV3「『テロリスト』がアメリカを憎む理由」

芝生瑞和著/毎日新聞社/1334円

「テロリスト」がアメリカを憎む理由
amazon
表題のテロリストに「」をつけた理由についての説明から本が始まる。つまりは彼らをテロリストと位置づけることの不公平さを言っているのである。
それはロイター通信社の国際ニュース責任者の言葉に端的に表されている。「ある人にとっての『テロリスト』は、他の人にとっては『自由の戦士』だ、ということをわれわれはみな知っており、ロイターでは、テロリストという言葉を使わないという原則を崩さないことにした」。素晴らしい言葉だ。こういうことを言うジャーナリストがいるということ自体が救いになる。そして、著者のスタンスもここにある。この本でも便宜上テロリストという言葉は使うが、彼らをそう定義したわけではなく「」付き引用である、ということである。

このスタンスと表題とでこの本の内容はだいたいわかるだろう。アフガン側に偏向することなく、なるべく公平な立場からアフガンや「テロリストたち」の立場を書いてみようという本だ。その過程でイスラエル建国に端を発するパレスチナ問題もわかりやすく総括してあり、西側の(特にアメリカの)すさまじいエゴが目の前に明らかにされていく。つうか、やっぱ西側の人々は心の底ではアラブ・アジア人を「人間」と認めていないな。

アメリカがいままで世界各地で行ってきた行為は間違いなく「テロ」である。
アメリカは世界最大のテロ国家なのだ。その辺の言及が個人的にはいささか物足りないが、アメリカ偏重の報道が多い中、こういう本は知のコレステロール・バランスを保たせてくれる美味しいサラダみたいなもの。興味ある方にはおすすめだ。

2001年12月 1日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:時事・政治・国際

LV5「痴漢犯人生産システム」

鈴木健夫著/太田出版/1500円

痴漢犯人生産システム
amazon
ある朝、いつもの通勤満員電車の中で突然「痴漢よ!」とえん罪を着せられた著者によるノンフィクション。
えん罪はどうやって起こるか、警察による一方的な決めつけ、失礼な取り調べ、留置場での生活、裁判の過程、会社の理不尽で冷たい対応……いやはや、背筋がゾゾゾと冷たくなる本である。怖すぎる。実に怖い。(秀逸なる)表題通り、痴漢犯人生産システムに乗ってしまったら、もう起訴有罪まで一直線である。

著者は逆転無罪を勝ち取るまで戦ったが、それは全くのラッキーでありいろんな状況証拠が有利に働いただけのこと。現実にはもっとえん罪がはびこっていると想像させられる。一部上場の会社をクビになりいまでは日雇労働者であるという著者。全くのえん罪で人生がすっかり変わってしまった例である。会社はなんにも守ってくれない。しかも国からのえん罪賠償金はすべて合わせても75万円程度。こわ~。

著者の体験記が前半、それを弁護した弁護士による述懐と対処方法が後半である。
ま、ボクはもう「満員電車に乗ったら両手をつり革、もしくは上の手すりに」と決意したが、それでも疑われた場合、「とにかく駅長室に行くな!」ということだけは守りたい。駅長も警察もすべて女性側の味方なので、駅長室に行った時点で有罪確定である。真面目な男ほど「警察に行って話せば誤解とわかるはず」と思って率先して駅長室や警察に行くらしいが、警察は絶対わかってくれないことがこの本を読むと怖いほどよくわかる。

決して痴漢を受けた側の女性の気持ちを無視するわけではない。ただえん罪だった場合、人生はそこで終わる。やりきれないではないか。男女ともに注意すべき事柄だろう。読むべし。

2001年11月 1日(木) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ノンフィクション , 時事・政治・国際

LV5「国家なる幻影~わが政治への反回想」

石原慎太郎著/文春文庫/上590円 下552円

国家なる幻影
amazon
雑誌「諸君!」に1996~1998まで連載し、1999年1月に文藝春秋から単行本になった本の文庫化。
1968年に参院選に出馬して以降1995年に辞職するまでの政界での活動や政治への思いを回想した本。芥川賞を取った作家でもある著者が書く政治の裏側は実にわかりやすく、そして面白い。読み始めたら止まらなくなった。特に要所要所で出てくる人物評価には笑わされたり暗澹たる気持ちになったり…。もちろん政治には裏も表もあり、ここに書かれているのは著者から見た政治の一側面ということもわかっているが、いまの日本の政治を知るには格好の一冊であろう。これを読んだあと新聞などを熟読するといままで見えなかったものが見えてくる(気がする)。

これを読んでよくわかったが、著者はナショナリストというよりもゲームメイカーなのだ。ナショナリストっぽい言動も、ヨットという高等ゲームで学んだ駆け引きという側面から捉えれば実に納得がいく。NOというのも駆け引き上当然のこと。彼にとってあらゆる政治的言動はゲームのカードなのである。だから臆面なく脅しや暴力まで使用する。そして国際政治の場ではそれが全く常識なのである。そういう国際的駆け引きが出来る政治家が日本にどれだけいるだろう。

この本は文筆家の作品であるが政治家の作品でもある。
だからこの本自体が「政治的ゲーム」の1カードである。著者が1カードとして出した本を鵜呑みにするのは危険だが、こういうカードが出せる著者のゲームメイクにそのまま乗ってみたい気もしてくる。そんな本である。

2001年11月 1日(木) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:時事・政治・国際 , 評論

LV4「忘れてはイケナイ物語り」

野坂昭如編/光文社/1200円

忘れてはイケナイ物語り
amazon
野坂昭如や黒田征太郎を中心にプロジェクト化された「戦争童話集」。その一環として公募された「戦争話」の中から野坂昭如が選んだ30編。戦争体験者たちによる短文を集めたものである。

こういった戦争ドキュメントはいろんな角度のものを定期的に読むようにしているが、やっぱり生の声はこたえる。
ドラマや小説のデフォルメされた叫びとは本質的に違う淡々とした叫びがそこにある。淡々としているからこそ、こたえる。これからもこういう生の声を定期的に読んでいこうと思う。
が、年々体験者は少なくなっていくのが現実である。「語り継げ」と大声では言わないが(語り継げと言った時点でなにか変質する気がする)、読み継ごうとは思う。で、子供たちにも読み継がせようと思う。

2001年6月 1日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ノンフィクション , 時事・政治・国際

LV5「ロシアは今日も荒れ模様」

米原万里著/講談社文庫/495円

ロシアは今日も荒れ模様
amazon
前に読んだ「不実な美女か貞淑な醜女か」も相当面白かったけど、デビュー作のそれにくらべてこれは慣れてきたのかもっとこなれていて、なんか安心して楽しめた感じ。
相変わらずどのエピソードも選り抜きで、ロシア人とロシアという国の素顔をよく伝えてくれていると思う。著者自身の感性に「ロシア的小話」が深く入り込んでいるようで、小話的「我を笑う」視点がそこここに出ているのが特によい。そういう感性もなく、文章も下手な人がこういう題材を書いたら(ありがちだよね)、自慢めいてめちゃめちゃつまらないものに仕上がっただろう。ボクたちは「ロシアという文化の翻訳者」に米原万里を得て、実に幸せなのである。

それにしてもこのなかにたくさん描かれているロシア人の酒量についてのエピソードには愕然とした。
その中のひとつ、実話らしいが、ソ連宇宙総局の幹部3人(というとわりとお年寄りだろう)が六本木のあるバーの飲み物を最後の一滴まで飲み干したというエピソードには特に。だって「ウィスキー15本、ウォトカ5本、ブランデー5本、ワインとビール数知れず」だって言うんだから……。3人で、だぜ。うーむ、ボクは若い頃「ウィスキーのボトル1本なら軽いです」って自慢してたけど、井の中の蛙とはまさにこのことだなぁ。

2001年3月 1日(木) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:エッセイ , 時事・政治・国際 ,

LV4「余は如何にしてナショナリストとなりし乎」

福田和也著/光文社/1200円

余は如何にしてナショナリストとなりし乎
amazon
ナショナリズムというのは誤解を受けやすい言葉である。本書はまずそこらへんから易しく説きはじめ、ナショナリズムとはなにか、それは「良識」なのだ「治者たること」なのだ「強者の徳」なのだというところまで丁寧に論を進めていく。そしてエセ右翼、エセ左翼、エセナショナリストに対して(名指しを含め)厳しい言葉を発していく。

国家主義や民族主義と別の次元にナショナリズムを置き、自己肯定と自己愛に満ちたいままでのエセ活動家たちをなじり、自らを(恥じ入りながらも)強者と設定し、ナショナリズムを滔々と語っていく気概は読んでいて気持ちがいい。迷いのない発信は人になにかを伝えるものだ。結果的に中学生の道徳の時間みたいな青臭さが匂い立っているし、後半の半生記は照れくさくて読めたものではないが、全体的主張にはしっかり共感できた。いや共感というより、自分の寄って立つ場所を確認できた、と言うべきか。難しく危険な論題ではあるが、論説にちょっと酔っている気がするのを除けば、一度読んでご自分の旗色を明確にする作業のきっかけにすることをオススメしたい。

2001年2月 1日(木) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:時事・政治・国際 , 評論

LV5「竹中教授のみんなの経済学」

竹中平蔵著/幻冬舎/1300円

竹中教授のみんなの経済学
amazon
佐藤雅彦と共著で「経済ってそういうことだったのか会議」をベストセラーにした著者による経済学解説書。

ひとこと、とってもわかりやすい。
経済学科だったくせに経済の「け」の字もわからないボクなのだが、経済学科だったということがどうやら後ろめたいらしく、わりと経済入門みたいな本は読む(読もうとする)。いろいろ読んだが、この本は最上クラスにわかりやすい。いいぞ。その上、いたずらに不安を煽っていないところが好ましい。いやそれどころか日本ってちゃんとすごいのだ、と自信さえつけさせてくれるところがある。こういうのを本当の意味で大局的というのだと思うな。

この本がいいところは、まだある。経済の解説書なのに、ちゃんと自分の言葉で語っている点。変に客観的になっていないのだ。あと要所で出てくる「つぶやき」の題材もいい。うん。数回読み直してみたい好著。

2001年1月 1日(月) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:経済・ビジネス , 時事・政治・国際

LV3「沖縄、基地なき島への道標」

大田昌秀著/集英社新書/660円

沖縄、基地なき島への道標
amazon
サミットもあっけなく終わり沖縄は祭りの後の空しさに包まれている頃であろうか。結局、沖縄でサミットを開いた、という意味を活かせなかったのは、首相の責任でもなんでもなく、日本国民すべての意識の足りなさなのである(もちろんボクを含めて)。

99年の選挙で沖縄県知事から降りてしまった著者であるが、主義主張の一貫度合いは実に気持ちいい。
主張が一貫している政治家は好きである。意見を変えてはいけないという意味ではなく、なんというか背骨のしっかり具合、みたいなこと。そういう意味では著者の背骨の太さは好きである。前著作とあまり変わらない主張に、もっとやれ、もっとしつこく続けろ、と応援したくなってくる。

基地問題は複雑だ。県民も基地に(経済的に)頼っている部分はある。だから一概に著者の主張がすべて正しいとは言わない。
でも、基地を存続させるのであれば、日本はしょせん「独立国家ごっこ」なのであることを我々は認識しなければならない。日本は独立していないのだ。どこぞの属国なのである。経済はそのどこぞの国のために発展しないと困るのである。株主様のために働く社員なのだよ、我々は。
じゃぁ、独立するとしたらなにが必要なのか。それをいい加減真剣に考えたらどうだろう? もしくは属国で居続けるか? だったら早く英語を公用語にしないと。通信費も関税も大幅に下げなくちゃ。基地も全国に置かないと。

いや、皮肉ではなく、やっぱり中途半端なのだ、日本という国は。背骨が太くなりようがない。

2000年8月 1日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:時事・政治・国際

LV5「図説・世界の紛争がよくわかる本」

毎日新聞社外信部編著/東京書籍/1700円

図説 世界の紛争がよくわかる本
amazon
待っていたなぁ、こういう本。帯に「テレビの横にこの一冊」とある。そのとおり! なにしろ世界中でおこっている内戦・紛争のほぼすべてが実にわかりやすく解説してあるのである。

ボスニア・ヘルツェゴビナ内戦やチェチェン紛争、クロアチアの独立、ルワンダ内戦、カシミール紛争・・・わかる? よくわからんことだらけだよね?(ボクだけ?)  毎日毎日新聞紙面を賑わせているわりにはまるでよくわからんこれらの紛争たち。「どうしていちいち紙面で解説し直してくれないのだ!」といっつも憤っていたのだが、この本があればすべての悩み・知識欲が解決される。文体のノリとしては中学の教科書的(ですます調でサルでもわかる風)でわかりやすく、図や絵も多用してあって実に丁寧親切。すばらしい。こんな本を待っていたのだ!

苦言も言おう。新聞記者としてはかなりの譲歩なのだろうが、これでもまだ漢字が多い。
こういう本を読むのは「消極的知識欲の持ち主」なのだ(積極果敢な人はもっと難しいのに行く)。だから、たとえばルワンダ内戦を読もうとしても、せっかくやる気だったのに漢字の多さにまずめげる。専門用語もまだ多い。もう一歩噛み砕いて欲しい。記者たちは社会事情優等生かもしれないが、社会事情劣等生の気持ちになってもう少しだけわかりやすく書いてくれればより良かった。まぁそれでも「待っていた感」で三ツ星。

2000年3月 1日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:時事・政治・国際

LV4「不肖・宮嶋 踊る大取材線」

宮嶋茂樹著/新潮社/1500円

不肖・宮嶋 踊る大取材線
amazon
週刊文春の愛読者なら誰でも知っている不肖宮嶋カメラマン。
彼のフリーカメラマンとしての修羅場の数々がここに書かれていて非常に面白い。関西弁そのままに書いた文章はちょっとアクが強すぎて長く読んでいると飽きも来るが、内容がいいから許せる。フライデーや文春でスクープした時の裏話が特に興味深い。あぁあの何気なく見飛ばしているグラビアページの裏にはこういう攻防があってこういう苦労があるのかぁ、と初めて知ったボクである。知らない世界のことを知るのは面白いなぁ。そういう読書的快感が味わえる一冊だ。

ただ、やっぱり文体がちょっと下品めかも。文春のルポで読む彼の文章にはわりと格調(日本人が失った戦前文体的な)を感じたものだが、書き下ろしとしての文章はイキオイを重視したのか、格調は感じられない。だからといってその分面白くなっているかと言われるとそれもハテナ。それだけが残念、かな。

2000年1月 1日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:時事・政治・国際 , ノンフィクション

LV3「最前線」

村上龍著/ラインブックス/1600円

最前線
amazon
村上龍の対談集。各界最前線を走っていて、かつ、その状況をノンフィクションとして発表している人たちを迎えていろんな問題に迫っている。河上亮一、諏訪哲二から、宇田川悟、宮崎学まで、何人かハズシた人はいるが、でもそれぞれ非常に面白く読んだ。時代は「超情報化社会」である。だのに、その最前線の現場の状況は驚くほど我々に伝わっていないのがこれを読むとよくわかる。特に教育現場。そしてヨーロッパの状況。

うーん。確かに村上龍の言うように日本は近代化を終えたのだと思う。そして彼のいう意味での「個人」がこれからの主役になっていくだろう。著者は文筆という表現形態を持っている最前線の人々(ノンフィクション・ライター)とこの本を作ることでネットワークを持ち、近代化の終焉などをしっかりアナウンスしていこうという野望があるのではないか、とちょっと思った。

2000年1月 1日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:対談 , 時事・政治・国際

LV5「誰か『戦前』を知らないか」

山本夏彦著/文春新書/690円

誰か「戦前」を知らないか―夏彦迷惑問答
amazon
副題が「夏彦迷惑問答」。

雑誌「室内」の連載をまとめたもの。
20代女性の聞き手と著者が会話するというカタチで進行するが、聞き手がなかなか上手で著者の味を見事に引き出している。この会話形態は著者の成功パターンのひとつであろう。一人称ぼやきエッセイより格段にリズムが出るし、なにより読者が置いてきぼりをくわずにすむ。注意して避けてもくどい説教になってしまう時がある題材なだけに、特に若い読者(この著者の場合50歳以下すべてか)にとっていいと思う。時になかなか笑えるし(著者が意識しているほどではないのだが)。

内容的には「戦前真っ暗史観」を実に明快に切り崩していて気分がよい。
戦前戦中共に飢えてはいなかった。これも明快。その他、忘れ去られつつあるいろんな物事を釣瓶落としに語ってみせる術は驚異的なものだ。資料としてもある意味一級。この著者がなくなるともう昭和ですら「時代劇」になってしまうのだろうな、とちょっと薄ら寒くなる。

1999年12月 1日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:エッセイ , 時事・政治・国際 , 評論

LV3「靖国」

坪内祐三著/新潮社/1700円

靖国
amazon
あなたは靖国神社についてどのくらい知っているだろうか? 靖国神社公式参拝の是非について騒ぐ大新聞の記事についてどういう意見を持っているだろうか? そもそも靖国神社ってなんなのだ?・・・そういう質問に「そういえばちょっと知ってみたい」と思った方は是非ともどうぞ。

読み物的な面白さは思ったよりなかったが、知的好奇心は十二分に満足させてくれる好著。
「え?靖国神社って超モダンでハイカラな祝祭空間だったの?」と次々目から鱗が剥がれていくこと請け合いだ。例えば神社でありながら神主がいなかったことなんて知っていた?

総花的評論になりがちな題材を一貫した視点から書いているのがうまい。「靖国的なものの消滅」についての著者の姿勢が一貫しているのもいい。上手だしなんだか古くさい名前なのでかなりのお年かと思ったら、この著者ボクと3つ上なだけの41歳。うーん。まいった。

1999年6月 1日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:時事・政治・国際 , 哲学・精神世界

LV5「おじいちゃん 戦争のことを教えて」

中條高徳著/致知出版社/1400円

おじいちゃん戦争のことを教えて―孫娘からの質問状
amazon
全日本国民は刮目して読むべし! などと書くと右翼っぽいか。えーと、もしあなたがボクの言うことを少しでも信頼してくださっているのなら、絶対読んでください。っていうか、読め! 必読! 日本に少しでも愛があるなら、読め! いや、愛がない人こそ、読め!

正式題名は「〔孫娘からの質問状〕おじいちゃん 戦争のことを教えて」である。ある日、アメリカに住んでいる孫娘から著者のもとに手紙が届く。ハイスクールの歴史の授業課題で「身近な戦争体験者に話を聞く」というのが出て、おじいちゃんが経験した戦争についての細かい質問状が届くのである。これに著者は姿勢を正して真摯に丁寧にわかりやすく答えていく。戦争当時の日本人の考え方、空気、状況が実に細やかに著者の人生を通して書かれていくのだ。

で、これがまたまるで説教臭くなく、押しつけがましくもなく、実に達意の文章で書いてあるのである。著者の目を通して、もやもやしていた近代史が実にクリアに見通せるようになる。まぁ確かにこれは著者という戦争体験者の個人的意見ではあるのだが、ボクはこの意見を、歴史の捉え方を支持する。というか、いままでずっと疑問に思ってきたことがこの本でかなりクリアになったのだ。

自虐史観に陥っている日本人に、いまこそ読んでほしい達意の名著である。少なくとも、戦争とは何か、を考える始点にはなるだろう。

1999年5月 1日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:時事・政治・国際 , 教育・環境・福祉 , ノンフィクション , 児童・ティーンズ

LV1「戦争論争戦」

小林よしのり×田原総一朗著/ぶんか社/1500円

戦争論争戦―小林よしのりVS.田原総一朗
amazon
田原総一朗の「仕切能力だけで論を展開する技術」が白昼のもとにさらけ出されてしまう様がかなり恥ずかしい一冊。

自分が展開したくない方に話が行くと、「それは違う!」と大声で発言を遮ったり話題をめちゃ強引に変えてしまったりする。その技術に乗せられてしまう小林よしのりはオコチャマに見えてしまうくらい人が好い。いや、わざとでも乗せられとかないと単にケンカになるだけか…。田原総一朗は別に好きでも嫌いでもないが、誰か言ってやれ、大声戦法で議論に勝とうとしている時点でそれは戦争肯定なんだ、と。声を使うか武器を使うかの違いだけじゃないか。

内容的には近代史を勉強し直したくなる一冊、ってところかな。まだボクは戦争に対する自分の意見が確立していないから(そろそろ確固たるものを持たないとなぁ)、そういう意味では参考になった。

1999年4月 1日(木) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:時事・政治・国際 , 対談

LV5「新ゴーマニズム宣言『戦争論』」

小林よしのり著/幻冬社/1500円

新・ゴーマニズム宣言SPECIAL 戦争論
amazon
終戦の日に読んだ。
彼の「ゴーマニズム宣言」は週刊「SPA!」連載中から愛読していたが、今回ここまでつっこんで戦争を語ったことにまず賞賛を贈りたい。

4月に沖縄を訪れて以来わりと戦争実体験者の本をパラパラ読むことが多かったが、それらを読む前に比べてどんどん「子孫としての誇り」をボクは感じるようになった。戦争が悪いことだとかどうだとか言う前に、国を想って戦った彼らをきちんと敬うべきだし、彼らが死を賭して守ろうとしたものをボクたちはもっと大事にしなければならない。著者はその想いを平明に語ってくれたと思う。

後半部はかなり自分に酔ってしまった部分があって破綻している気がするが、前半部は(その内容については反対意見を持つ人の本を読んでからボクなりに判断したいと思うが)目からウロコの部分もあった。
著者の感情のエスカレート具合が読んでいる人をちょっとひかせるのが残念だし信頼性を落しているところなのだが、「想い」は充分伝わった。それをボクがどう消化するか、である。

1998年9月 1日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:時事・政治・国際 , 漫画

LV5「初年兵の沖縄戦記」

仲本潤宏著/那覇出版社/1000円

初年兵の沖縄戦記
amazon
第二次世界大戦の沖縄戦で戦った兵隊さんの手記。負傷しながらほぼ奇跡的に沖縄南部戦線で生き残った初年兵の戦記である。淡々と事実を綴っているが、非常に感動的。もちろん文章を生業としている著者ではないのでかなりこちらの想像をたくましくしないといけない部分はある。が、実体験の迫力がそれを補って余りあるのだ。
こういう本を読んだからって「戦争はいけない」などと大声で叫ぶ気はない。ただ、こういう汚辱にまみれた戦争の現場を生の声で聞いておくのは戦争の次の世代である我々の義務でもあるかな、と思う。

1998年5月 1日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:時事・政治・国際 , 自伝・評伝 ,

LV3「沖縄 平和の礎」

大田昌秀著/岩波新書/640円

沖縄 平和の礎
amazon
沖縄戦関係の本をいろいろ読んだまとめとして、現知事であり沖縄戦では学徒動員されて戦った著者による県を代表する訴えを読んだ。
沖縄戦とはなんだったのか、基地問題とはどういうことか、21世紀の沖縄はどうなっていくのか…。
分断された知識がこれを読むことですっきり整理されボクの心の中におさまった感じである。やはり現職であるだけにちょっと演説臭いところはあるのだが、よくまとまっていると思う。マスコミの東京発想については阪神大震災で身に染みているが、ボク自身あまりに沖縄については他人事でありすぎたことを反省している。

1998年5月 1日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:時事・政治・国際

LV4「ひめゆり教師の手紙」

玉代勢秀文・玉代勢秀子著/ニライ社/1236円

ひめゆり教師の手紙
amazon
第二次世界大戦の沖縄戦で、「私のひめゆり戦記」の著者である宮良ルリなどと同じ壕にいて女子学生などを指導した教師・玉代勢秀文。宮良ルリと共にガス弾からは奇跡的に助かったがその後消息を絶ったこの教師が宮崎に疎開した妻に送り続けた手紙を中心に、妻がその想いを綴っている。
「私のひめゆり戦記」や「初年兵の沖縄戦記」などと比べるとどうしても逼迫した感が薄いのだが、切々とした想いが静かに伝わってくる。沖縄戦の現実を外から感じることが出来て、これも必読だろう。

1998年5月 1日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:時事・政治・国際 , 自伝・評伝 ,

LV3「ひめゆり平和祈念資料館公式ガイドブック」

平和祈念資料館編/1000円

ひめゆり平和祈念資料館公式ガイドブック「私のひめゆり戦記」「初年兵の沖縄戦記」「ひめゆり教師の手紙」などをテキストに、ボクは沖縄戦の跡を実際にたどった。
まずひめゆりの塔に行き、同じ敷地にある資料館に入ったが、ここの公式ガイドブックがとても良く出来ていたのでここで紹介する。ひめゆり関係だけでなくいろいろな証言がいろいろな人から集められていて、貴重な資料になっている。
まぁ、涙なしでは読めないガイドブックというのも珍しい。

1998年5月 1日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:時事・政治・国際 ,

LV4「平和への証言」

沖縄県立平和祈念資料館編/1000円

ひめゆり平和祈念資料館公式ガイドブックひめゆりの塔から東に数キロ。玉砕地に平和祈念公園があり、その中の資料館の公式ガイドブック。
「ひめゆり平和祈念資料館公式ガイドブック」と同じように証言がたくさんおさめられている。
こちらの方が大人の文章が多く長い手記が多いので読みごたえがある。宿に帰って熟読したが、腰が抜けそうな迫力であった。丁寧に作られておりそこらのおざなりのガイドブックとは一線も二線も画す出来である。これも涙なしでは読めないもの。

1998年5月 1日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:時事・政治・国際 ,

LV5「私のひめゆり戦記」

宮良ルリ著/ニライ社/1236円

私のひめゆり戦記
amazon
沖縄戦の第三外科壕、今のひめゆりの塔がある場所で奇跡的に生き残った著者の手記である。

沖縄出張の予定が入ったボクは沖縄戦についてあまりに知らないのを恥じて、まずこの本を読んだのだが、途中つらくて読めなくなるところが数カ所。淡々と綴ってある分だけ文章の意味は重く心にのしかかってくる。もし手に入ったらぜひ読んでほしい本だ。

ただ、これを読むとわかるのだが、彼女らは立派な戦士であった。女学生だからということで後生の人がお涙頂戴的に「ひめゆり」などと名を付けてたたえたことについてはちょっと違和感が残る。

1998年5月 1日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:時事・政治・国際 , 自伝・評伝 ,

LV3「イギリス人はおかしい」

高尾慶子著/文藝春秋/1429円

イギリス人はおかしい―日本人ハウスキーパーが見た階級社会の素顔
amazon
イギリス礼賛の本ばかり出ているし、またそういうのを好んで読んでいるので、たまにはイギリス非難本も読みたいと思い、探して読んだエッセイ。
副題に「日本人ハウスキーパーが見た階級社会の素顔」とあり、帯に「英国ベタ誉めはもう沢山!」とある。なかなか面白そうではないか。

内容は、著者がリドリー・スコット監督の家でハウスキーパーをした数年を中心に長年イギリスで暮らした経験を書いたリアルな英国生活体験記なのだが、スタンスが思ったよりも中立でもう少しエキセントリックなものを期待したボクにはちょっと大人しかった。
が、イギリスのいろんな問題点が一般人の目からきれいに浮き彫りにされており、日本という社会の良さをそれなりに見直す契機ともなる。サッチャー政権に対する批判もかなりしつこく展開されていて、ちょっとサッチャーの政策を調べ直してみたいなぁと向学心をくすぐられたりもした。

1998年4月 1日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:エッセイ , 時事・政治・国際 ,

LV5「寂しい国の殺人」

村上龍著/シングルカット社/1800円

寂しい国の殺人
amazon
1週間ほどこの本を毎日読んでいた。1回30分程で読めるから持ち歩いていた。

「イン ザ・ミソ・スープ」の随筆版とでも呼ぶのかな。
物語に昇華していない分とてもわかりやすいテキストとして時代を読み解く鍵になる。居眠りしがちな問題意識を揺り起こすチカラがここにはある。今のボクにこの本に書かれていることがたまたま合致したということもあると思うけど。

「イン ザ・ミソ・スープ」を読んで現代に生きるということはどういうことなのかについて考え込んだ人には是非この本も読むことを勧める。

1998年2月 1日(日) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:時事・政治・国際 , エッセイ

LV1「醜形恐怖」

町澤静夫著/マガジンハウス/1400円

醜形恐怖―人はなぜ「見た目」にこだわるのか
amazon
副題「人はなぜ見た目にこだわるのか」。
現役の精神科医が「顔やスタイルが人より悪い」と必要以上に悩む現代人の病理を解説している本で、そこに載っている様々な例はある意味非常にショッキングだった。なんてことだ…呆然とする。ただ、以前鈴木蘭々が「やっぱり人間、見た目ですから」とあるTVで言っていたが、そういう時代なんだなぁという感慨以上のモノをこの本からは得られなかった。
「醜形恐怖」という新しい言葉をスキャンダラスに紹介している本、というレベルで終わってしまっているのがちょっと残念。

1998年1月 1日(木) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:雑学・その他 , 時事・政治・国際

LV5「ひ弱な男とフワフワした女の国日本」

マークス寿子著/草思社/1600円

ひ弱な男とフワフワした女の国日本
amazon
イタタタタ!まったく耳が痛い本である。
優れた日本文明批評であり(日本にいま、文明があると仮定してのことだが)、地に足のついた人生論でもある。これを読んでいると日本というオコチャマな共同体に属しているのが本当に嫌になってしまう……

と、素直に感じてしまったら著者の思うつぼだ。それこそ精神的にひ弱な証拠となってしまう。こういう本こそ無批判に読んではいけない。が、しかし、現代日本を縦横無尽になじってみせる著者の目は平明でモグラの目すら開かせてしまう力を持っている。一読し、納得&論破してみてほしい。問題意識を刺激する秀作である。

1997年11月 1日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:時事・政治・国際 , 評論

LV5「勇気凛々ルリの色 2」

浅田次郎著/講談社/1600円

勇気凛凛ルリの色〈2〉四十肩と恋愛
amazon
先月に「勇気凛々ルリの色 1」を取り上げたけど、この「2」は前作以上に充実した内容で読みごたえがある。よくは知らないが、エッセイはこの一本に絞っているのだと思う。そうでなければ書けない切れ味がそこここに感じられる。

オウム問題、沖縄問題、薬害エイズ問題などの時事ものにも独特の視点、「人倫としてどうなのか」という揺るぎない視点から書かれており刮目させられる。エッセイも名手化してしまった著者はいったいどこまでいくのだろう。

1997年7月 1日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:時事・政治・国際 , エッセイ

LV3「お父さんには言えないこと」

清水ちなみ著/文藝春秋/1200円

お父さんには言えないこと
amazon
週刊文春の人気連載「おじさん改造講座」の番外編。

一見軽く見える本だが内容はとても重い。おじさん達を情け容赦なく切り捨てているように思える「おじさん改造講座」だが、実は近くて一番遠い存在である「父親」を理解するためのシミュレーションだったとは……気付かなかったぜ。で、会社のおじさん達を観察しているうちにわかったことが、つまり「父親も単なる未熟な1人の人間である」ということ。そこまでたどり着くのに娘たちはいかに苦労を重ねるか…。

著者は全国のOLを実際に訪ねて丹念に取材して書いている。労作。三ツ星級。でも、後半著者自身混乱してまとめ切らなかったようでものすごく散漫になってしまった。惜しいし残念。是非とももう一度腰を据えて取り組んでもらいたい。単純な感想としては、娘に暴力をふるう父親がこんなに多いことにビックリした。

1997年3月 1日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ノンフィクション , 時事・政治・国際

LV3「ヨーロッパ人の奇妙なしぐさ」

ピーター・コレット著/高橋健次訳/草思社/2300円

ヨーロッパ人の奇妙なしぐさ
amazon
わりと話題になった本。とにかくヨーロッパの国々をそのしぐさや習慣で比較しそれを文化論・哲学まで引きずって行く力技だから、興味がある方にはとてつもなく魅力的な本だと思う。

しぐさの比較と言っても手招きの仕方から清潔度比較といった一般的なものから「なぜフランス人は肩をすくめると口がへの時になるのか」「なぜ何もしていないときにイギリス人はおちょぼ口になるのか」「なぜフィンランド人は自分が無言でいることに気が付かないのか」などを、豊富なエピソードを添えて検討するのだから面白くないはずがない。

でもちょっと読みにくいのが難かも。それとボクはヨーロッパ経験が少ないから読んでいて実感がわかない。少なくともヨーロッパに1年くらい住んだことがある人じゃないと通り一遍の知的快感で終わってしまう本だ。別にそれでもいいけど。

1997年2月 1日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:時事・政治・国際 , 雑学・その他

LV5「神さま、それをお望みですか」

曾野綾子著/文藝春秋/1700円

神さま、それをお望みですか―或る民間援助組織の二十五年間
amazon
嫌な題名ではある。
著者もそれを認めている。題名に拒否感持つ人は読まなくてもいい、と開き直っている。でもボクは曾野綾子を無条件に信頼していたりするので読んだ。そうじゃなかったら読まなかったかも。

副題は「或る民間援助組織の二十五年間」。
そう、著者が主催する民間ボランティア活動の記録本。決して嫌味にならないように細心の注意を払って書いても嫌味になりがちな題材ゆえ、著者はぼやかすのを諦め、逆にそれを利用して書いているようなところがある。平明な記録に撤しつつ上手に主張を滲ませていく。その含羞が著者の真骨頂かも。ボクは嫌ではなかった。それどころか感動までしてしまった。活動にではない。なんというか人間の「ささやかさ」みたいなものに。抽象的だけど、こうとしか言い様がない。

1997年1月 1日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:教育・環境・福祉 , 時事・政治・国際 , 経済・ビジネス

LV5「エリゼ宮の食卓」

西川恵著/新潮社/1700円

エリゼ宮の食卓―その饗宴と美食外交
amazon
副題に「その饗宴と美食外交」とある。
フランス大統領官邸であるエリゼ宮はどんなメニューで米ロ大統領、英女王、天皇、そして日本の歴代首相をもてなしたか、というドキュメンタリーである。つまりフランス食卓外交のすべてを裸にした興味深い本なのだ。誰にどんな料理・ワインを出したか、でフランスがその人をどのくらい重要に考えていたかがよくわかるところが面白い。羽田首相の冷遇のされ方など悲惨だ。

各所に料理、ワインの話があり、エリゼ宮の仕入れや厨房のルポもある。フランス料理やワイン好きにはたまらない本。文章もいたずらに煽情的にならず抑えた筆致でよく書けている。

1996年10月 1日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:食・酒 , 時事・政治・国際

LV4「神戸震災日記」

田中康夫著/新潮社/1300円

神戸震災日記
amazon
ボクは田中康夫があまり好きではない。だけどこれは読んで欲しい本だ。「自分のできる範囲」で「自分のできること」を「継続して」やった彼のボランティア日記なのである。
ボクが夙川に住んで被災したというのもカタルシスとして大きかったのも事実だが、とにかく忘れるのが早い日本国民にちょうど一年後の1月17日に出たこの本を読んで欲しい。後半がちょっと散漫なのだが、とりあえずボクは彼を見直しました。これは売名本ではない。彼にどこかでもし会えることがあったら、まずいの一番にこの行動についてお礼を言いたいと思う。

1996年4月 1日(月) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ノンフィクション , 時事・政治・国際

ページの先頭に戻る

メニュー

Follow satonao310 on Twitter @satonao310

satonao [at] satonao.com
スパム対策を強化しているので、メールが戻ってきちゃう場合があります。その場合は、satonao310 [at] gmail.com へ。

ページの先頭に戻る

Google Sitemaps用XML自動生成ツール