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児童・ティーンズ(22)

LV2「温室デイズ」

瀬尾まいこ著/角川書店/1365円

温室デイズ
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「幸福な食卓」を読んでとても良かったのと、学級崩壊の描き方がスマートで好感がもてたので、続けて瀬尾まいこの「温室デイズ」を読んだ。

テーマはまっすぐ学級崩壊とイジメ。
とはいえ全然ドロドロしてなくて、あっさり推移していく。この、真っ向から立ち向かわないあっさり感が逆にリアリティを生んでいる。上から見て書くとお説教っぽくなったり、懸命に生徒たちに寄り添って書くとオーバーになったりするところを上手に避けて通ることによって、逆にリアルな空気感が出てきているのである。金八なら解決できるところをあえて解決させない「流し感」。このあっさりした収め方は逆に勇気がいる気がする。なかなかやるなぁ。

ただ、じゃあそのリアル感だけで小説が持つかというとそうでもない。小説全体として考えると物足りなかったのも確か。収めどころがどうしても欲しくなる。あっさり終わって好ましいけど物足りない。複雑な感じ。あと「幸福の食卓」に出てきたような秀逸なキャラがひとり欲しかった。不良役がそうとも言えるがもう少し突っ込み足りず。惜しい。

2007年4月21日(土) 8:57:03・リンク用URL

ジャンル:小説(日本) , 児童・ティーンズ

LV4「DIVE!!」

森絵都著/角川文庫/上580円下580円

DIVE!!〈上〉
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「飛び込み」という全く縁がなかったスポーツの実際を教えてくれる青春小説。
「一瞬の風になれ」で陸上に親近感を持ったように(そういえば佐藤多佳子はこの文庫の解説を書いていて、こんな本が書きたい、と言っている。その後「一瞬…」が生まれたわけね)、この本以降、ボクは飛び込みという競技をかなり注目して見るだろうな。世界が広がった。それだけでも読んだ価値があったと思う。

もちろんこの本の魅力はそれだけではない。
知己、飛沫、要一という3人の少年の気持ちによりそうように丁寧に描かれていて、思春期小説としても秀逸である。3人の視点、そして最終章では脇役たちによる客観視点、と、視点をぐりぐり変化させる手法もよい。いろんな青春を体験できるお得感もあり、楽しい。いろんなタイプの読者の共感を引きつける構成とわかりやすいエンタテインメント感がいい意味でテレビっぽい印象だった。

逆にそこがこの本の弱いところでもある。テレビドラマっぽすぎる。それぞれのエピソードがステロタイプぽすぎる部分があり、ボクみたいなスレっからし読者にとっては物足りない。もう少し突っ込みようも深めようもあると思うのだ。惜しいなぁ。

でも、ハッキリ言ってボクはターゲットじゃないので仕方がない(笑)。基本的に児童&若者がターゲットだろう。彼らに読みやすく理解しやすい展開にわざとしていると思う。若者に対する強い応援歌にもなっている。その辺、さすがだなぁ、と思う。若者はもちろん、ちょっと昔の熱い気持ちを思い出したい人や飛び込みを知りたいという人、サッと読めるスポーツ小説で時間を潰したい人などに最適。

2007年3月 1日(木) 9:20:32・リンク用URL

ジャンル:小説(日本) , 児童・ティーンズ , スポーツ

LV5「13歳のハローワーク」

村上龍著/はまのゆか絵/幻冬舎/2600円

13歳のハローワーク
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この本を読むといままで子供たちに「自分のやりたいことを見つけなさい」とか言ってきたのがいかに無責任かわかるであろう。
これは村上龍が彼独自の「教育とは有利性の獲得」という持論に基づき、13歳前後の子供たちがこれから職業を選択していくための指針を具体的に示した職業百科である。全部で513の職業が収められており、子供たちがいま「好きでたまらないこと」の延長にどんな職業があるのか、それになるためにはどういう勉強・訓練が必要なのかが的確に示されている。いわば、人生の513択。

たとえばこの本は、いま子供が「おしゃれが好き」ということなら将来的にこんな職業がある、と提示する。
ファッションデザイナー、ジュエリーデザイナー、ファッションモデル、靴デザイナー、バッグデザイナー、帽子デザイナー、テキスタイルデザイナー、ソーイングスタッフ、テーラー、和裁士、リフォーマー、アパレルメーカーで働く、スタイリスト、フォーマルスペシャリスト、着物コンサルタント、着付師、美容師、理容師、調香師、メイクアップアーティスト、ネイルアーティスト、エステティシャン。

そしてそれぞれの職業の内容、功罪、なるための方法などをわかりやすく書いている。
ボクたちが13歳のころこんなに将来を具体的に意識しただろうか。すばらしいなぁ。もちろんすべて村上龍が書いたわけではないだろう。著というよりは編著に近い。

いい学校を出ていい会社に入るという生き方が必ずしもいい人生と限らないのは、ほとんどのサラリーマンが実感していることだ。
ボクを含めたサラリーマンたちは「何になるか」ではなく「どの会社に入るか」で人生を考えてしまった。このライフモデルは幸せになれるわけではないという点でとっくの昔に崩壊している。なのに新しい指針を子供たちに示せずにいるボクたち。村上龍はそこに具体的な職業紹介で応じた。さすがである。このコンセプトは切れ味がある。目指す職業を決めて一刻も早く社会に出て、アドバンテージを獲得しサバイバルせよ、という明確な指針。これがいまの大人たちに一番欠けているものかもしれない。

というか、ボクたちが13歳のころにこの本があったら…と強く思う。ボクたちはどんな生き方がこの世にあるか、具体的に知らずに大学生になり、大学3年のころにはもうつぶしがきかなくなっていた。そういう漠然とした生き方ではこれからは生き残れないだろう。

要所で入る、著者のエッセイもかなりシャープ。とてもよい。
特に最後にまとめてある「いろいろな働き方の選択」という項など、ほとんど人生論である。前書きで彼は「わたしは1日に12時間原稿を書いて、それを何ヶ月も、何年も続けても平気です」とある。そういう職業を見つけるために、この本をいま読もう。子供を持つ親だけでなく、すべての大人に勧める。人生100年時代。40歳とかだって13歳みたいなものなのだ。

2004年1月 1日(木) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:教育・環境・福祉 , 児童・ティーンズ

LV5「HARRY POTTER and the Philosopher's Stone」

J.K.ROWLING著/BLOOMSBURY/£5.99

Harry Potter and the Philosopher's Stone (UK) (Paper) (1)
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原書読み。
3巻4巻と原書を読了したので、どうせなら全巻読了!と目標を立て、まずは第1巻。筋はよく了解しているし、第1巻のせいかわりと読みやすい英語だったのか、すぃすぃ読了。読み慣れてきたのかなともちょっと思うが、少し難しい文章になるとまるでわからないので、単に筋を知らなかった第4巻の苦労に比べて読みやすく感じたってだけのことのようだ。次は第2巻「秘密の部屋」。映画が来月公開されるヤツ。公開までには読めないだろうが、筋を良い具合に忘れているのでわりと勉強になるかも。

2002年12月 1日(日) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(海外) , ファンタジー , 児童・ティーンズ

LV5「十一月の扉」

高楼方子著/リブリオ出版/1900円

十一月の扉
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著者は「たかどのほうこ」と読む。帯に「小学校高学年から」と書いてあるしルビも多いし内容も女子中学生の成長小説なのでジュブナイル小説系に分類されるのだろうが、大人が読んでも充分おもしろい。
つか、35歳以上くらいの方が楽しめるかも。とうの昔に忘れてしまった中学生のころのみずみずしい気持ちが読み進むに従ってどんどん蘇ってくる。その感じはある程度歳をとった人の方がより新鮮に思えるだろうし、そろそろ思い出すべき年齢でもあるから。

ある十一月、ある中学生が二ヶ月だけ十一月荘で暮らすことになった・・・そこで起こるいろいろなふれあいを丁寧に丁寧に描いた本。女性作家が女性向けに書いたのだろうが、オッサンのボクでもそこここで「あぁそうだったよなぁ」と感慨を覚える(悪いか?)。窓の外に枯葉舞う11月に、ゆっっっくり読みたいいい本である。ちなみに第47回産経児童出版文化賞フジテレビ賞を受賞している。

2002年12月 1日(日) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(日本) , 児童・ティーンズ

LV5「読み聞かせる戦争」

日本ペンクラブ編・加賀美幸子選/光文社/1800円

読み聞かせる戦争
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戦争の悲惨さ無意味さを伝える数多くの文献・小説・日記・詩などの中から、特に印象的で読み聞かせるに効果的(?)なものを27篇選んで収録したもの。
題名からわかるように子どもたちに読んで聞かせる形式になっているため、少々説明的なものもあるし、ちょっと教科書的ラインナップでもあるのだが、目を背けたくなる戦争の現実を子どもに実感をもって伝えられるいい本に仕上がっていると思う。

収録されているのは「ヒロシマの空」「きけわだつみの声」「レイテ戦記」「私のひめゆり戦記」「今夜、死ぬ」「夏の花」など。特に「ヒロシマの空」は涙なしでは読めない。これを子どもに読み聞かせるだけでも買う価値があるかもしれない。戦争体験者がどんどん少なくなっていっている今、こういう正面切った企画が出版されるのはとてもいいことだと思う。必要以上に教訓的にならず、子どもに淡々と伝えていきたい。

加賀美幸子が朗読した付属CDにはその中から9篇が収録されているが、映像世代である今の子どもに本当に伝えようと志すなら、映像付きDVDの方が良かったかもしれない。それと、加賀美幸子の朗読はちょっと情緒的すぎる気がする。もう少し淡々としている方が好み。

2002年11月 1日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:時事・政治・国際 , 教育・環境・福祉 , 児童・ティーンズ

LV5「HARRY POTTER and the Goblet of Fire」

J.K.ROWLING著/BLOOMSBURY/£6.99

Harry Potter and the Goblet of Fire (UK) (Paper) (4)
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原書読み。
これを原書で読み終わったときは充実感あったなぁ。なにしろ796ページ。英語的にもわりと難しく(ボクにとっては)、筋も知らない状態で読んだので、苦労が多かった。時間もかかった(1ヶ月半)。でも、日本語版が出版される前に読み終えたのはうれしかったぞ。なんだボクもわりと根気あんじゃんと自覚できた意味で、思い出深い一冊になった模様。

内容的にはかなり高度で 子ども向きっぽさもほとんどなく、大人でも楽しめる。ラストなどとっても怖く、子どもによっては読み進められないのではないかな。シリーズ最高作といわれるのもわかる。とはいえ、クディッチのワールドカップや三校対抗戦がそれほど面白い物なのかという根本的な疑問が最後までつきまとったのが残念。日本語版もそのうち買って、ちゃんと読んでみようとは思うが…なんというか再読欲は起こらない本だな。

2002年11月 1日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(海外) , ファンタジー , 児童・ティーンズ

LV4「HARRY POTTER AND THE PRISONER OF AZKABAN」

J.K.ROWLING著/SCHOLASTIC/$7.99

Harry Potter and the Prisoner of Azkaban (US) (Paper) (3)
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ハリーポッターの第三巻、原書で読み下し。
英語力ないため不完全だが、とにかく読み下したという記録にここに載せておこう。これがあったがために日本語の本は冊数がはかどっていない部分もあるし。
この原書はUS版のようだ。意識せず買ったのだが、UK版とは単語や表現が少し違うらしい。ま、確かにUSとUKでは例えば同じゴミでもUSでは「trash」、UKでは「rubbish」のように、少しずつ違うよね。
原書を読んで思うのは、 日本語版で読んだ感じよりオドロオドロな単語が多かったこと。そしてリズムが非常に良い。わからないところなど、たまに日本語版と読み比べもしたが、邦訳は非常に苦労の後が見えるものの、ちょっとリズムが悪いなぁと感じるところが多かった。
ということで、いまは第四巻に挑戦中。700ページ超なので10月いっぱいでは無理だなぁ。11月にはなんとかしたい。 (邦訳は10/23に発売になる)

2002年10月 1日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(海外) , ファンタジー , 児童・ティーンズ

LV3「六番目の小夜子」

恩田陸著/新潮文庫/514円

六番目の小夜子
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著者の処女作で、あとがきによると「最初に勤めていた会社を辞めて、三週間くらいで書いたこの小説が第三回ファンタジーノベル大賞の候補になり、酷評されてあっさり落選し、文庫として世に出たもののすぐ絶版になった」らしい。
で、大幅に加筆修正して再版したものがこれである。NHKでドラマ化され人気を博したのも記憶に新しい(あれは脚本の宮村優子が大幅に書き直したらしいが)。

酷評された理由も読めばわかる気がするが、要所要所が妙に印象的な本で、全体の筋は忘れても細部がやけに記憶に残る。そういう意味ではとても力がある小説だと思う。キャラがしっかり立っていて、作者はそれを良い勢いを持って書いているから、全体にドライブ感が生まれている。
でもまぁ、ジュブナイルノベル的かな。ボクは嫌いではなく、それなりに楽しんだけど、ミステリー好きが読むとちょいとつらいかもしれない。そんな感じ。

2002年9月 1日(日) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ファンタジー , 児童・ティーンズ

LV1「理想の国語教科書」

齋藤孝著/文藝春秋/1238円

理想の国語教科書
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昔、国語の教科書を読むのが大好きだったボクは、4月にはその年に習う文章をすべて読んでしまって、残りの11ヶ月を限りない欲求不満とともに過ごした記憶がある。
そんなボクにとって、「声に出して読みたい日本語」を大ベストセラーにした著者が選んだ、教科書に取り上げたい名文の集大成であるこの本は実に興味深いものである。期待して読んだ。全編ふりがな付きであり、一学期、二学期と章分けもしてあり、小学生にも読ませられる構成になっている。丁寧な編集だ。

ま、名文を読む作業は楽しかった。
でもこれらが本当に最高レベルの日本語なのかは非常に疑問が残る。かなり一般的すぎる選択だ。もちろん教科書であるから名文を読ませつつ文豪などの存在を教えたり子どもの倫理観などに影響を及ぼす名作を選ぶ必要はあるが、新たに世にプレゼンするのだから独自の視点で「これぞ名文」を発掘して提出してほしかった。
また、イマの作家を正面切って取り上げる必要はないのか。明治の作家中心で本当にいいのか。最高レベルの日本語はそこにしかないのか。そして「野口シカ」の手紙はそこに入るのか(感動的ではあるが教科書としてどうなのか)。などなど、疑問はいろいろ残る。作品の選び方がとってもありきたりだと思うのだ。残念。また、著者による解説がつまらないこともちょっと不満。

2002年7月 1日(月) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:教育・環境・福祉 , 児童・ティーンズ

LV3「南の島のティオ」

池澤夏樹著/文春文庫/437円

南の島のティオ
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南の小さな島で暮らすティオという少年の物語。
小さな物語を集めた本で、気楽に手軽にゆったりした島時間に浸れる。欺瞞的忙しさに追われる都会の日常からほんの数分逃避するには格好の本であろう。

描写が非常に自然。読んでいてどこにもつっかえるところがないし、ひっかかるところもない。一番難しいそういう技をなにげなくやっている著者の力量を感じる。そして、著者が沖縄に住んでいるところから来る問題意識もそこここに感じた。失ってしまったらもう元には戻らないもの、時間・精神・自然・精霊……そういったものを豊かに物語の中に棲ませ、違う方向へ行こうとしている現代人にそれらを思い出させる要素を散りばめている。とても好感が持てるのはそれが声高な主張ではないこと。しっかり物語の底に沈ませている。
第41回小学館文学賞を受賞している。

2002年6月 1日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(日本) , 児童・ティーンズ

LV2「ギグラーがやってきた!」

ロディー・ドイル著/ブライアン・アジャール絵/伊藤菜摘子訳/偕成社/1000円

ギグラーがやってきた!
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愛読している書評サイト「なまもの!」(←ダジャレたれ流しギャグ系裏日記がまた抜群)でガンガンに薦められていた童話。
その薦められ方がガンガンだったせいもあり、期待に胸膨らましすぎてしまったというのが実際のところかも。充分愉快で奇想天外で印象的な本だが、おかしみの方向性や、読者(子供)イジリの仕方がボクの好みと少しずつズレている感じ。ハマる人にはハマるかもしれない。

英国でもっとも権威のある文学賞ブッカー賞を受賞した作家ロディー・ドイルのはじめての童話らしい。
破天荒な章構成と「子供にひどいことをした大人は、ギグラーという生き物によって犬のうんちを踏ませられる」というテーマが秀逸なのだが、読んでいる子供たちへのサービスの仕方がちょとくどい。はしゃぎすぎ。同じ英国の子供向けでも、ハリー・ポッターのはしゃがなさの方がボクは好きである。ま、対象年齢が少し違うのだろうけど。

2002年5月 1日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:児童・ティーンズ , ファンタジー

LV1「サンタのおばさん」

東野圭吾著/杉田比呂美絵/文藝春秋/1333円

サンタのおばさん
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先月読んだ東野圭吾の「片想い」の中に出てくる逸話がそのまま本(童話)になっている。
性差別的な主題に沿った劇中劇だったので、サンタのおじさんならぬ「おばさん」なのである。テーマとしても題名としても面白いのでかなり期待したのだが、なんだか童話として昇華しきれてない印象。理屈が勝ってしまったようで惜しい感じ。悪く言えば説明的なのだ。説明もなく、エンターテイメントで引っ張ったあげくに、読み終わってから性別とは何かを深く考えさせてくれるような、そんな贅沢な希望を勝手に思っていたのだが…。
「片想い」の中で描かれていた劇団の劇の方がずっと面白そうであった。ちょっとがっかり。

2002年4月 1日(月) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:絵本 , 児童・ティーンズ

LV5「華胥の幽夢 ~十二国記」

小野不由美著/講談社文庫/648円

華胥の幽夢(ゆめ)―十二国記
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「かしょのゆめ」と読む。現代日本が誇る名作、とそろそろ断言してもいいであろう十二国記シリーズの最新作にして、十二国記初(だったと思う)の短編集である。

十二国記ファンにとって、周辺エピソード満載の短編集はうれしすぎ、ワクワクして読んだ。ただ、シリーズが長大なのでもう忘れてしまっているところも多く、幾多の個性的登場人物たちのつながりがわからなくなっていたりして、楽しみも半減。全巻再読したいよ~。嗚呼どこかのんびりできる温泉でも行って十二国記全巻を再読したい、というのがボクのささやかな夢なのだ。

長編と短編では使う筋肉が違う、と言ったのは村上春樹だったか。十二国記の長編執筆の合間にこうした短編を書き上げるのは著者にとってなかなかたいへんな頭脳労働だったと思う。が、基本的に著者は長編作家なのだな、とこの本を読んで思う。短編なのだが、長編的構成のものが多く、展開の仕方も長編っぽい。特に表題の「華胥」などは長編的ストーリーで、助走やエピローグがない分、逆に冗長感やお説教くささが出てしまった。こういう展開の仕方は長編の方が向いている。

それにしても著者は泰麒が好きなのだなぁ。長編、外伝などを含めて、泰麒のエピソードがパズルをはめるように次々出来上がっていく。次の長編も泰麒編の続編のはずだから、この短編はその予告編にもなった感じだ。

2001年8月 1日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ファンタジー , 児童・ティーンズ

LV5「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」

J・K・ローリング著/松岡佑子訳/静山社/1900円

ハリー・ポッターとアズカバンの囚人 (3)
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シリーズ3作目。
2001年5月現在で全世界1億部突破というからものすごい(印税を考えると卒倒しそうである。定価の10%としても…ひぇ~)。テレビやゲームから子供たちを取り返した、という世評そのままに、本のチカラを再認識させてくれる名シリーズとなった。全8巻。まだまだ継続していくハリー・ポッターの物語をリアルタイムで読める我々は後生うらやましがられるかもしれない(シャーロック・ホームズものをリアルタイムで読んだロンドン市民みたいにね)。

危機、試練、興奮、友情、そして意外な結末、を毎巻きっちり用意し、展開し、きちんと収束させる著者の力量はたいしたもので、この成功はもうフロックとは言えまい。今回はシリーズ3巻の中で一番面白いと評判であるが、ボクもそう思う。後半、厳しく言えばちょっとだけ不満があるのだが、十分面白い。ストーリー展開が子供には難しすぎるかもしれないと思えるところも気に入っている。著者は子供を子供扱いしてはいないのだ。

さて、第4巻は、これまでの3倍の長さだと言う。我が娘は小一。第4巻発売までに、ハリー・ポッターの世界に導引させてみようっと。

2001年8月 1日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ファンタジー , 児童・ティーンズ

LV5「黄昏の岸 曉の天」

小野不由美著/講談社文庫/714円

黄昏の岸 暁の天―十二国記
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十二国記シリーズ5年ぶりの新刊である。
リアルタイムでこの名シリーズが継続していく幸せよ! 読み始めればそこはもう小野不由美ワールド。美しい漢字と想像力の羽ばたき、オーバーすぎない会話、キャラ設定の絶妙、すべてがバランス良く連関し合って、見事な世界を築いているのである。

とはいいつつ、この巻ではちょっと散漫な部分も見える。人民の苦しみや謀反者の心の動きや汕子らの変容など、書き込んだら物語により深みが出そうな部分がいろいろ抜けているのだ。でもまぁもしかしたらこれは次巻への伏線かもしれないな。どう考えてもこの巻の続編は出るだろうから。

いままでの既刊をすべて読みなおしてから読みたくなる気持ちを抑え読み始めたから(だって時間ないんだもの)、最初は泰麒や陽子のキャラを細かく思い出せなくて苦労した。なんとかはなったが、もう一度アタマからシリーズを再読したい気持ちは変わらない。

あぁ、いまからこのシリーズを初めて読み出す人が本当にうらやましい。
人生にまだ十二国記を初読する喜びが残されているなんて!(初めての人はこの巻からではなく、最初の「月の影 影の海」から続けて読んでね)

そういえば、この巻ではシリーズで始めて、「天」という神についての言及をしている。これがどんな展開を示すのか、今後も興味は尽きない。

2001年5月 1日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ファンタジー , 児童・ティーンズ

LV5「ハリー・ポッターと秘密の部屋」

J・K・ローリング著/松岡佑子訳/静山社/1900円

ハリー・ポッターと秘密の部屋 (2)
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ハリー・ポッター・シリーズの第二巻。
面白い。世界観を思い出すために、前回の「賢者の石」を再読した上で一気になだれこんでみたが、二冊いっぺんに読んだせいもあるのだろう、その世界観構築の見事さと、事件やエピソードの巧みさに(前回の印象より)かなり感心させられた。大ヒット作の二作目というのは難しいだろうと思うが、非常に成功した例ではないだろうか。

前作も初読時より面白く感じた。つまり再読に耐えるシリーズということか。今作「秘密の部屋」に限ると、前作よりもずっと恐怖感の演出がうまく、想像力豊かな子供なら読むのをやめてしまうかもしれないレベルの怖さまで行っている。子供用に書くという手加減をしていないあたりの気骨さが、全編に渡って感じられ、それがこの物語をより深いものにしているのだろう。

それにしても・・・全世界で3600万部とは! 今年は映画化もされるらしい。謎解きがあって、困難や障害物があって、仲間がいて、魅力的な救助者がいて・・・と、ヒットすべき文法を忠実に守っているだけという感じもするのだが、それぞれが半端でなく完成されているだけに、これからの作品もまず期待を裏切らないであろう。第三巻「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」は今年夏に発売らしい。楽しみである。

2001年2月 1日(木) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ファンタジー , 児童・ティーンズ

LV5「ハリー・ポッターと賢者の石」

J・K・ローリング著/松岡佑子訳/静山社/1900円

ハリー・ポッターと賢者の石 (1)
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全世界で800万部売れていて、来年夏にはワーナーが映画化すると言われている話題のファンタジー。
全7巻完結らしく、これから順々に読んでいけるわけですね。まぁ面白かったからそれはそれで楽しみだ。ちなみに初邦訳。日本では無名小出版社が世界的超ベストセラー本の翻訳を勝ち取ったことでも話題になった。

ひと言で言えば、ロンドンの子供魔法使いの話。魔法学校に通って魔法を覚えていくうちにまき起こる事件の数々…。こう書くとちょっと「ゲド戦記」を思い出す。硬派な「ゲド戦記」をリンドグレーン風に料理して、ディズニーのスパイスを散りばめた、みたいな印象をボクは受けた。

ストーリーはよく出来ている。夢中で読める。一巻完結ならちょっと「ぬるいな」と思う構成も、七巻続くならもちろん許せる。いまひとつカタルシスを感じられない主人公もだんだんに成長していくのだろう。子供の活字離れを嘆く前に、そう、こういう風にテレビゲームに勝てるような本を大人は書くべきなのだ(活字離れを嘆くなら、ね)。

まぁ童話的なものなので比べようもないが、日本にも小野不由美の「十二国記シリーズ」という「世界的ベストセラーになったっていいじゃん的大名作ファンタジー」があるんだがなぁ…と読後に思った。ハリー・ポッターに全然勝っているぞ、十二国記!

2000年2月 1日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ファンタジー , 児童・ティーンズ

LV5「おじいちゃん 戦争のことを教えて」

中條高徳著/致知出版社/1400円

おじいちゃん戦争のことを教えて―孫娘からの質問状
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全日本国民は刮目して読むべし! などと書くと右翼っぽいか。えーと、もしあなたがボクの言うことを少しでも信頼してくださっているのなら、絶対読んでください。っていうか、読め! 必読! 日本に少しでも愛があるなら、読め! いや、愛がない人こそ、読め!

正式題名は「〔孫娘からの質問状〕おじいちゃん 戦争のことを教えて」である。ある日、アメリカに住んでいる孫娘から著者のもとに手紙が届く。ハイスクールの歴史の授業課題で「身近な戦争体験者に話を聞く」というのが出て、おじいちゃんが経験した戦争についての細かい質問状が届くのである。これに著者は姿勢を正して真摯に丁寧にわかりやすく答えていく。戦争当時の日本人の考え方、空気、状況が実に細やかに著者の人生を通して書かれていくのだ。

で、これがまたまるで説教臭くなく、押しつけがましくもなく、実に達意の文章で書いてあるのである。著者の目を通して、もやもやしていた近代史が実にクリアに見通せるようになる。まぁ確かにこれは著者という戦争体験者の個人的意見ではあるのだが、ボクはこの意見を、歴史の捉え方を支持する。というか、いままでずっと疑問に思ってきたことがこの本でかなりクリアになったのだ。

自虐史観に陥っている日本人に、いまこそ読んでほしい達意の名著である。少なくとも、戦争とは何か、を考える始点にはなるだろう。

1999年5月 1日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:時事・政治・国際 , 教育・環境・福祉 , ノンフィクション , 児童・ティーンズ

LV3「過ぎる十七の春」

小野不由美著/講談社X文庫/580円

過ぎる十七の春
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ファンタジー・ホラーとでも呼ぶのだろうか。人里離れた山奥での幽霊もの。十二国記シリーズではまりまくった小野不由美はこういうホラー系もいろいろ書いている。というか、そっちがドメインなのかも。

なにしろホラー嫌いなものでこうしてよっぽど気が進まないと読まない。ということで、今回は気が向いたので手にとった。面白かった。怖さはほどほどでボクにはちょうど良かった。
ただ、人物造形が少々甘ったるい部分がある。でもこれは「講談社X文庫ホワイトハート」という少女向け文庫のためもあろう、仕方がないんだろうな。また気が向いたら他のも読む気になるくらいは楽しめた。

1998年7月 1日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ホラー , 児童・ティーンズ

LV5「月の影 影の海」「風の海 迷宮の岸」「東の海神 西の滄海」「風の万里 黎明の空」「図南の翼」

小野不由美著/講談社X文庫/順に、上下各500円、上下各420円、580円、上下各620円、680円

月の影 影の海〈上〉 十二国記 講談社X文庫―ホワイトハート
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「十二国記シリーズ」を一気に読んだ。

小野不由美の評判はずいぶん前から聞いていたんだけど、読んでその魅力がよくわかった。
まぁ一言で言えば東洋風ファンタジーなんだけど、さとうさとるの「コロボックル・シリーズ」に匹敵する出来。「ナルニア国物語」と「ゲド戦記」と「ネバーエンディングストーリー」と「時をかける少女」を足して4で割って東洋風にしたような作りで、設定も筋もキャラクター造形もどれをとっても秀逸。

そのうえ、若年層向け文庫シリーズだけに若者に対するメッセージも平易に気持ちよく織り込まれていて、それがまた通り一遍ではない。著者は平易な語り口で深い教訓をしっかり与えている。ある意味で作家の鑑なのである。うん、ベタボメ。難を言えば題名がみな似たり寄ったりで読む気が起こらないこと。これは本当に残念だ。これから読む人は一巻目の「月の影 影の海」からどうぞ。

物語と関係のないことを言えば、今まで本を読んできてこんなに「漢字」を美しいと思ったことはなかった。
本当に「漢字って美しい。すばらしい」と読んでいて思わせる。それを実感するだけでもこのシリーズは読む価値がある。

それと個人的には、あとがきで「ゾラック」が出てきたのがなんだかうれしかった。それについてはこちら

1998年3月 1日(日) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ファンタジー , 児童・ティーンズ

LV5「少年H」

妹尾河童著/講談社/1500円

少年H (上巻)
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独特の細密イラストレーションで知られる著者初の自伝小説。少年がHするお話ではないですハイ。

上下二巻だが全く飽きさせない展開でものすごく面白い。
好奇心の塊(「河童が覗いた」シリーズの、あの脅威の好奇心!)である著者のルーツがしっかりわかる自伝なのだが、それよりもこの本は日本がどのように戦争に傾いていったか、国民はどのように戦時下を生きていったか、そしてどのように終戦を迎えたか、を神戸に住む子供の目で詳しく平明に綴った貴重な記録文学でもあるのだ。それをあの細密画のような描写で書き込んでいってしっかりエンターテイメントしているんだから、スゴイ! 総ルビというのも見識だし1月17日初版というのもうれしい。よし、ここで予言しよう。この本は「NHK朝の連続TV小説」になる!

本屋で上巻の扉を開けてみてください。そこに少年時代の河童さんがいるのだけど、この写真を見るだけで「この本は面白そう」という気になる。いやぁすごくいい顔しているのですよ、これが。

1997年2月 1日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:自伝・評伝 , 児童・ティーンズ

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