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スポーツ(17)

LV4「DIVE!!」

森絵都著/角川文庫/上580円下580円

DIVE!!〈上〉
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「飛び込み」という全く縁がなかったスポーツの実際を教えてくれる青春小説。
「一瞬の風になれ」で陸上に親近感を持ったように(そういえば佐藤多佳子はこの文庫の解説を書いていて、こんな本が書きたい、と言っている。その後「一瞬…」が生まれたわけね)、この本以降、ボクは飛び込みという競技をかなり注目して見るだろうな。世界が広がった。それだけでも読んだ価値があったと思う。

もちろんこの本の魅力はそれだけではない。
知己、飛沫、要一という3人の少年の気持ちによりそうように丁寧に描かれていて、思春期小説としても秀逸である。3人の視点、そして最終章では脇役たちによる客観視点、と、視点をぐりぐり変化させる手法もよい。いろんな青春を体験できるお得感もあり、楽しい。いろんなタイプの読者の共感を引きつける構成とわかりやすいエンタテインメント感がいい意味でテレビっぽい印象だった。

逆にそこがこの本の弱いところでもある。テレビドラマっぽすぎる。それぞれのエピソードがステロタイプぽすぎる部分があり、ボクみたいなスレっからし読者にとっては物足りない。もう少し突っ込みようも深めようもあると思うのだ。惜しいなぁ。

でも、ハッキリ言ってボクはターゲットじゃないので仕方がない(笑)。基本的に児童&若者がターゲットだろう。彼らに読みやすく理解しやすい展開にわざとしていると思う。若者に対する強い応援歌にもなっている。その辺、さすがだなぁ、と思う。若者はもちろん、ちょっと昔の熱い気持ちを思い出したい人や飛び込みを知りたいという人、サッと読めるスポーツ小説で時間を潰したい人などに最適。

2007年3月 1日(木) 9:20:32・リンク用URL

ジャンル:小説(日本) , 児童・ティーンズ , スポーツ

LV5「一瞬の風になれ」

佐藤多佳子著/講談社/第一部1470円, 第二部1470円, 第三部1575円

一瞬の風になれ 第一部  --イチニツイテ--
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三巻に渡る、ものすごく真っ直ぐでイノセントな陸上短距離一人称小説。
ちょっと前に買ってあったのだが、直木賞候補になったと知って慌ててこの連休に読んだ。直木賞とれるかな。どうなんだろう。シンプルすぎる気もする。

「走る」実感をここまで感じさせてくれる本もめったにない。ベッドで読んでいる間、何度もカラダが無意識に動いた。一緒に走っているような共有感。登場人物と同じトラックに立っているようなリアリティ。そして最後は少し泣かされてしまった。仕方ないな、この展開では(笑)

登場人物がみんな魅力的。よく書き分けられている。軽すぎるくらいの文体。凝った表現は出てこない。でもそれが不思議にマッチしている。だから混乱もなくあっという間に三巻読めてしまう。若い読者には向いているかも。
ただ、出てくる人がみんな良い人すぎるのがちょっと…。大人が考える理想的な高校生すぎ。健全すぎるんだよなぁ。でも(たぶん)あえてそれを狙って書いているのだろう。この時代、このように真っ直ぐ性善説的に夢を見られる小説は必要だ。あと、どうせここまで真っ直ぐに書くなら、ラストの観客席に健ちゃんは来て欲しかったと思う。予定調和でもいいから。

ちなみに、副産物的にだが、この本を読むと陸上(特に短距離)にくわしくなり、とても見たくなる。陸上競技の魅力が余すところなく描かれているのだ。スラムダンクを読んだ後に「高校バスケ冬の選抜」を見に行ってしまったみたいに、陸上のインターハイとか見に行きたくなる読後感。家族に読ませて一度一緒に見に行こう。

2007年1月 3日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(日本) , スポーツ

LV5「Gファイル ー長嶋茂雄と黒衣の参謀」

武田 頼政著/文藝春秋/2000円

Gファイル―長嶋茂雄と黒衣の参謀
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TVで移籍会見する日ハムの小笠原道大選手に向かって「よりによって巨人に行くな〜!」と叫んでしまうのは、今年になって妙に北海道と縁が深くなったからだけではない。このところの巨人に嫌気がさしているからでもない。どうせなら阪神に来て〜というファン心理でもない。この本を読んだからである。
まぁどのチームに行っても実はそんなに変わらないのかもしれないが、読売ジャイアンツという巨大泥船にわざわざ選んで乗り込むことはない。このチームはどうやっても変わらない。変われない。いったん浮かび上がるかもしれないが、また必ず沈んでゆく。この本に書かれていることが本当ならば。

この本は、アメリカ仕込みの最新スポーツ理論をもとに(ちょっと「マネー・ボール」を思い出した)、長嶋巨人のメークミラクルを長嶋茂雄の陰の参謀として完璧に演出した、河田弘道という人間のノンフィクションである。彼が「誰にも知られていない長嶋茂雄の陰の参謀」として在職した期間(94〜97年)に実際に長嶋監督(当時)に指示・提供した5000ページにも及ぶ膨大な「G FILE」を元に書き起こした労作だ。

長嶋茂雄の快活・苦悩・成功の裏側・実像、 選手・他チーム監督達の素顔、 優勝の裏側・確執・ドタバタ、 選手トレードの暗闇、 読売ジャイアンツという伏魔殿の裏の裏、 今後も変われないであろう組織の疲弊と老害、などを粘っこい筆致で活写している。というか、読み終わってまず感じたのは、日本の組織のどうしようもない閉塞感みたいなもの。結局改革に挫折していく河田弘道の絶望感がもう少し濃く描かれていれば、もっと普遍的なテーマになっていたかもしれない。

長嶋ファンは一読ちょっと呆然とするだろう。
でもボクは彼が「常勝軍団として勝ちにこだわる監督」から「日本中で愛される長嶋茂雄」を演ずる方に方向転換&妥協したことを責められない。家族よりも自分を取ったことも責められない。天性の性格、しがみつき、義理など、いろんな要素があるとは思うが、あえてその役目を負った部分もあると思うのだ。それはそれで立派なことである。日本は彼の笑顔でずいぶん救われても来たし。

勝つための冷徹なサイエンティストとしての河田と、娯楽&人気商売&自分を優先したエンターティナーとしての長嶋。彼らふたりが完璧な二人三脚で歩いていたこと自体が奇跡であり、その後の決別は必然だったのだろうと思う。ま、そこに渡邉恒雄氏が絡んでくるので大変複雑な様相を呈すのだが。

個人的にはPNFという最新スポーツ医科学(手技)が興味深かった。PNFを受けた日の松井秀喜は実に7割の打率を残したという。いまもアメリカで受けているかなぁ…。

2006年11月23日(木) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ノンフィクション , スポーツ

LV3「自転車生活の愉しみ」

疋田智著/東京書籍/1700円

自転車生活の愉しみ
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自転車通勤を夏以来続けているボクはもちろん著者のサイトを何度か見ている。自転車通勤の世界では有名な人である。で、この著者、TBS「ブロードキャスター」のディレクターらしいが、国会私的諮問機関である「自転車活用推進研究会」(←京都議定書に対応したもの)の唯一の民間人メンバーだったりもするのである。

だからだろう、この本には個人的自転車普及視点と公人的自転車普及視点とが混在している。まだまだ低い自転車の社会的地位を向上するためにも自転車普及的な発言は必要だし有効だ。ただ「本」としての魅力だけを考えると、スタンスがちょっとお上的な分、どうしても少し魅力が落ちてしまう。ヨーロッパの自転車生活と比較して大上段に振りかぶられた途端に、ひそやかな愉しみ的に読み進んできた気持ちが妙に萎える。たぶん、自転車仲間の目をかなり意識した主張になっているのだとは思うが(オピニオン・リーダー的に)、自転車初心者に向けての啓蒙書とすると、そこに矛盾が生まれてくる。自転車生活を愛する個人の視点で貫いてくれた方が結果的に読者に届くものが多くなった気がする。

出だしが素晴らしい。自転車の絵の描き方から始まり、「この本の目的は、一言で言うと、この絵をソラで描けるようになることにある」と続く。うーむと唸って喜々として読み進んでいったのだが、結果から言うとこの目的は中途半端に終わってしまった。もちろん得たものはいっぱいある。自転車のメンテはもちろん、ヨーロッパの自転車事情についてもモグラの目を開かれた。が、至極親密に始まった著者との自転車行の楽しみは読むに従って消え、自転車をソラで描けるようになる、という素敵な目的(自転車との恋愛の始まり)は達せられなかった。惜しい。題名も普通すぎるのが惜しい。全体に惜しいなぁと何度も感じた本である。

2002年1月 1日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:エッセイ , スポーツ

LV1「イチローUSA語録」

デイヴィッド・シールズ編/永井淳・戸田裕之訳/集英社新書/660円

イチローUSA語録
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帯に「全米が感動! 日米二カ国語同時収録」とある。対訳付なのだ。英語の勉強にもいいかもね、と思って買った。アメリカのメディアに載った彼のコメントを、シアトル在住の作家が丹念に拾い集めた本である。

2001年のイチローは、大リーグ初挑戦にして、首位打者、MVP、新人王、盗塁王など、輝かしい戦歴を残した。アメリカでは、そこまで成功した彼の寡黙な一言一言を「サムライ・プレイヤーの深遠なる言葉」として受け取っている人が多いらしい。まぁあぁいう謙虚さはアメリカでは新鮮なのだろう。いや、もっともっと自己主張すべきところで全くそれをしない彼の言動は、新鮮を越えて理解不能なのかもしれない。

わりとガッカリさせられるのは、2001年の6月頃までのイチローの言葉しか載っていないことだ。2001年のシーズンを通しての語録じゃないと意味ないじゃん。6月頃までの語録でもアメリカでは十分面白いのだろうが、やっぱ首位打者とか取った後どういうことを言っているか、もないとねぇ。アメリカ版でなかったのなら、出版が12月であったこの日本版では付録にでも「その後のイチロー語録」として載せるべきである。付録には「2001年イチロー全打席データ」がついているが、それより語録でしょう、この本を買った読者が期待するのは。

2002年1月 1日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:スポーツ , ノンフィクション

LV5「6月の軌跡」

増島みどり著/文春文庫/514円

6月の軌跡―’98フランスW杯日本代表39人全証言
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副題「'98フランスW杯日本代表39人全証言」。
アジア予選を劇的に突破してW杯初出場し、3戦全敗で敗退したサッカー日本代表。その本戦のためのヨーロッパでの合宿、22人枠のために現地でカズや北澤がはずされた経緯、本戦での選手の気持ち、戦い終わっての岡田監督の辞任……98年6月に起こった様々な出来事を、著者が選手・監督・コック・コーチ・ドクター・サプライヤーなど全39人に詳細にインタビューし、時系列で構成しなおした労作。
スタッフはもちろん、言葉少ない選手達にまで、しっかり話を聞き、きちんと記録に残したことは最大限に評価されてもいいと思う。著者による日頃のコツコツとした信頼の積み重ねを感じる。信頼を勝ち得た著者にしか出来なかった仕事である。

ボクはもともとラグビー派なのでサッカーにはいまいち思い入れがないが、この本は2002年W杯前に読んでおいて良かったなぁと実感している。ピッチでなにが行われているか、どういう心理で選手・監督たちが戦っているか、どういうスタッフがそれに関わっているか、が非常によく理解でき、ちょっと感動すらした。
39人のインタビューの中では、相馬、中田、名波、そしてコックの人のものが印象に残っている。2002年本戦前に、もう一度再読したい本でもある。

2001年12月 1日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:スポーツ

LV1「セブン・イヤーズ・イン・ジャパン」

D・ストイコビッチ著/祥伝社黄金文庫/580円

セブン・イヤーズ・イン・ジャパン 祥伝社黄金文庫
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副題は「僕が日本を愛した理由」。
名古屋グランパスで大活躍し、日本人に忘れ得ぬ思い出を与えてくれたストイコビッチ(愛称:ピクシー)の自伝である。活字が大きく文章量も少ないので1時間もあれば読めてしまう本だが、ピクシー・ファンなら充分楽しめる本であろう。ボク自身そんなに頻繁にJリーグを観る方ではないが、ピクシーはなぜか好きで彼のプレーはわりと追っていた。そういう意味ではボクにはわりと楽しめた本である。

子供の頃の話や、日本に来てからの様々な出来事への感想も親近感を持って読めた。ただ、彼しか書けないことはきっともっとあったはずだし、日本に対する言及も表面的でありがちな内容だし、読み終わっての残尿感がかなりあったことも事実。サッカーの本質、Jリーグへの提言、W杯の彼なりの捉え方、などなど、もっと腰を据えてしっかり書いてもらいたかった。

2001年12月 1日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:自伝・評伝 , スポーツ

LV1「『タンポポの国』の中の私」

フローラン・ダバディー著/祥伝社/1600円

「タンポポの国」の中の私 ― 新・国際社会人をめざして
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副題は「新・国際社会人をめざして」。
いつもサッカー日本代表監督トルシエの横にいる背の高い謎の外国人が、著者である。題名は、彼が伊丹十三の映画「タンポポ」を愛するあまり来日したことに由来する。日本への愛が、そのあまりの憎も含めてよく書かれている本である。訳者がついてないのを見てもわかるとおり、ちゃんと日本語で彼自身が書いているようだ。すばらしい。

内容的にはイイコトは言っている。でもどの命題についてもちょっと表面的な言及になっているので欲求不満は残る。数年の日本滞在&日本語勉強でここまで言及できれば充分というのはわかっているが、本として読むとやっぱり説得力が足りない。もう少し自分のなかで醸成させてから出版した方がよくはなかったか。
サッカーやラグビーへの想いはよく伝わってくる。でもここらへんについても、もう少し深い話が聞きたかったなぁ。

2001年11月 1日(木) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:エッセイ , スポーツ , 評論

LV4「オールド・ルーキー」

ジム・モリス、ジョエル・エンゲル著/松本剛史訳/文藝春秋/2000円

オールド・ルーキー―先生は大リーガーになった
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副題は「先生は大リーガーになった」。
アメリカの田舎の35歳の高校教師が大リーグの最年長ルーキーになった、という実話を、本人であるモリスともうひとりの著者エンゲルが組んで書いた本。ディズニーによる映画化も決定しているらしい。いかにも映画になりそうなストーリーだからねー。

ま、先生、というところがわりと強調されている分、学園感動ものかと思われるが別にそうでもなく、実は先生であるというよりは「いままですべてに中途半端だった主人公の、野球をめぐる半生記」みたいな趣。学校がからんでくるのは最後の頃だけである(大リーガーになったあと、思ったより生徒たちが登場しない。なぜだろう?登場させたらより感動的なのに…。映画ではもっと絡むことであろう)。

淡々と正直な著者の記述も好感もてるし、いたずらにお涙演出していないところも心地よい。まぁまぁなのだ。でもまぁまぁ止まり。ノンフィクションとしてはいい話しだし、全米でも話題になったトゥルーストーリーらしいが、なんか物足りないなぁ。

2001年9月 1日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ノンフィクション , 自伝・評伝 , スポーツ

LV2「八重山列島釣り日記」

高橋敬一著/随想舎/1400円

八重山列島釣り日記
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副題は「石垣島に暮らした1500日」。
石垣あたりを八重山諸島とか八重山列島とか言うが、そこらへんを根城にした気楽で気ままな釣り日記である(一部小笠原やフィリピンの日記もある)。肩に力の入らない随筆で、これはこれでダラダラと楽しめるので良いのだが、世界の名著たちと比べてしまうとまぁもうひとつかなぁ。比べにくいんだけどね、こういうのって。

この本は石垣島の本屋で購入した。だからボクは石垣島で読んだわけ。あの極楽とも言うべき空気の中で読むと、こののんびり進行具合がとても気持ちがいい。なかにはシンミリさせる話しも入っているのだが、それすらも八重山の空気が昇華してしまう。あー、八重山に行きたいなぁ。八重山で逝きたいなぁ。

2001年8月 1日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル: , スポーツ

LV4「アウェーで戦うために」

村上龍著/光文社/1500円

アウェーで戦うために―フィジカル・インテンシティ III
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週刊宝石に連載したサッカー・エッセイを編んだもの(三巻目)。
単なるサッカー観戦エッセイとも言えるのだが、これがどうして非常によく出来た「日本というシステム」批判になっている。

素材は主にアウェーで戦う中田ヒデ。
彼や海外のサッカーゲームを題材に、著者の思いは日本への嫌悪に近い感情吐露、そして日本という「チーム」を変えるためにどうすべきかという考察へとつながっていく。

帯に「アウェーで戦えない人材は、ホームでも使えない」とある。
このコピーは素晴らしい。本当のアウェーを体感し文章にしてくれたこと、アウェーで戦うということはどういうことかを教えてくれたこと、そしてアウェーで力を発揮するのはホームで力を発揮するのとは次元が違うということを示してくれたこと、それらだけでもこの本は価値がある。振り返って、この国の要人はアウェーで戦えるか、いやそれよりもまず「自分はアウェーで戦えるか」を考え直すいいキッカケになるだろう。
「アウェーで戦えるか?」はボクの中でいま大きな物差しになりつつある。

2001年5月 1日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:スポーツ , 評論

LV5「Sydney !」

村上春樹/文藝春秋/1619円

シドニー!
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村上春樹によるシドニーオリンピック観戦記である。
いや、観戦記というよりシドニー街紀行の趣の方が強い。ちゅうかシドニー滞在日記、かな。その滞在期間中にたまたまオリンピックがあった、みたいな距離感で書かれている。その距離感がボクには心地よかった。オリンピック賛歌にしてないし、熱くもなっていないし、無理矢理感動もしていない。
著者自身告白しているが「オリンピックは退屈である」という認識が原点になっているので(共感するなぁ)、作家の好奇心は当然別のところへ広がる。コアラや食べ物や潜水艦やオーストラリアの歴史へ。その辺の広がりをそのまま書いていることが実にいい効果を上げている。そして、ある感動的な出来事によりシドニーの街(オーストラリア人の意識)が変質化していく様の捉え方は、「アンダーグラウンド」以来醸成され続けてきた彼の主題に近いせいなのか、ちゃんと深く掘り下げてあって面白かった。

導入部と〆の部分もとっても良い。これらがあったからこの本は「作品」になったのだと思う。オリンピック選手という「オリンピックを最大の非日常」と置いている人たちの描写で、「オリンピックは退屈な日常」と思っている著者の日記を挟み込む、というその構成。それによって、この本は単なる日記と違う緊張感を得ている。
全体に軽妙でいいテンポ。習作的比喩の多用が作家の日常の努力をかいま見るようで興味深い。それにしてもあれからたった半年なのに、もうすでにずいぶん遠い昔みたいだね、シドニー五輪。

2001年3月 1日(木) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル: , スポーツ , エッセイ

LV4「サラリーマン転覆隊 門前払い」

本田亮著/フレーベル館/1600円

サラリーマン転覆隊門前払い
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傑作シリーズの最新刊。
サラリーマン転覆隊の面々が日本そして世界の様々なる川をカヌーで下っていく(今回は富士山をMTBで滑落していく章もある)お笑いカヌー紀行であるのは前作と変わらない。相変わらずのおもしろ文体と上手なデフォルメでしっかり笑わせてくれる。まぁ川は変わろうがネタ的には変わらないので、だんだん吉本新喜劇を見ているような趣になっていくが、「サラリーマンの生き方とはなんだ? 元気に生きたっていいではないか! もっと遊ぼうぜ日本のサラリーマン!」みたいなプレゼンテーションが読者に伝わってきて「よくやるよ」と思いつつ知らず知らずに元気になっている自分に気がつく。

ただこれは良し悪しで、あまりに「サラリーマン」を強調しすぎて、今回は少し説教くさくなっているかもしれない。
あとがきに「サラリーマンの応援歌として書く」とあったが、そういう匂いが前面に出てくるとシリーズの爽快さが消えてしまうかもしれない。結果論的に応援歌になるならいいのだが、意図を持ってそのように書くのはやめた方がいい気がする。ちなみに著者はボクと同じ会社のヒトなんですね。お会いしたことないけど。

2000年5月 1日(月) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル: , スポーツ , ノンフィクション

LV5「投球論」

川口和久著/講談社現代新書/640円

投球論
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会社の先輩が「とてもいいよ」と貸してくれた本。

元広島東洋カープの川口投手がピッチャーについて対戦術について過去の勝負について、そして野球について、真摯に語ったもの。
ピッチャーはアタマがいい人が多いと聞くが、これだけの文章を書ける人はそうはいないであろう。一晩で読める小編だが、実に内容が深く文章も達意。パーンとかパチンとかガチャンとかの擬音も大変適切。言葉ではなかなか通じない投球のコツみたいなことをそういう擬音や達意の文章を通じてしっかり伝えてくれるのだ。しかも偉ぶらない。説教しない。人生を語らない。うーん。川口、キミはすごい。

この頃野球をさっぱり見なくなったボクであるが、ピッチャーはこういうことを考えて投げていて、キャッチャーはああいうことを考えてサインを出していて、バッターはそういうことを意識して打ちにくる、というのがわかってくると俄然興味が湧いてくる。選手が100人いたら100通りの「論」があってそれがせめぎ合っているのだろうなぁ。川口が解説している番組なら見たいぞ。きっと性格的に要所でひと言ぼそっと話すだけなんだろうけど。

1999年12月 1日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:スポーツ

LV5「サラリーマン転覆隊が行く!」

本田亮著/フレーベル館/上下各1600円

サラリーマン転覆隊が行く!〈上〉こいつら日本で一番、過激でヘタなカヌイスト達。
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ある会社のサラリーマンたちが日本の様々なる川をカヌーで下っていくお笑いカヌー紀行である。

ロードムービーのような臨場感がありいつのまにか読者は登場人物たちと一緒に泣き笑いをしながら読む続けることになる。全体に非常におもしろい。これは著者のおもしろ文体と、上手なデフォルメによるものが大きいと思う。

ただボクは下巻の北山川の項のところでのあまりの無反省ぶり・脳天気ぶりにちょっと気分がしらけてしまった。
同じトーンで書き続ける狙いはわかるが、落ち着く所は落ち着かないと読んでいる方はなかなかつらい。それと、サラリーマン、サラリーマンとあまり強調しなくても十分面白い。なにか最後の方は説教くさく聞えてくるのが惜しいところ。

1998年8月 1日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル: , スポーツ

LV2「わが夫、大山倍達」

大山智弥子著/ベースボール・マガジン社/1300円

わが夫、大山倍達
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別に極真空手のファンでもなんでもないのであるが、何となく「空手バカ一代」大山倍達の奥さんは彼をどう見ていたのかが知りたくて買ってしまった。なにせ伝説の大山倍達であるからその私生活の実際も知りたかったし。

著者のインタビューをまとめたものだが、本の性格上、ある程度大山倍達ファンが読むであろうことを前提として書いてある。
だからボクみたいな素人にはちょっとわかりにくい箇所があった。でも、大山智弥子というキャラクターがそんなことを全く気にさせないくらい魅力的なのである。そういう意味では全く突っ込みが足りないインタビューで歯がゆいばかり。題材はいいのに構成が悪い典型かもしれない。

1997年10月 1日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:自伝・評伝 , スポーツ

LV2「山際淳司スポーツ・ノンフィクション傑作集成」

山際淳司著/文藝春秋/4893円

山際淳司―スポーツ・ノンフィクション傑作集成
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先日夭折した山際淳司の傑作選。約80編入っている。高価だがコストパフォーマンスは良い。

「江夏の21球」という超弩級スポーツ・ノンフィクションで実質的デビューを飾って以来、第一線で活躍してきた著者ではあるが、改めてすべてを読み返してみると、誤解を恐れずに言えば「この人は決してうまくない」と言わざるを得ない。もちろん、これは、と言う短編もある。でも「こんなにいい素材だったら他もっと面白くなるはずだ」と思わせるストーリーが意外と多いのだ。

そう、彼は素材採集の天才ではあったがライターとしては素朴なタイプだった。というか、変な「小説的技巧」や「バラエティ的盛り上げ」を排除した文体なのだな。その辺は逆に評価すべきなのかもしれないが、題材がスポーツであるだけに、スポーツ自体の派手さに文章が負けている部分が多いと感じた。そういう意味では、この本は文章より素材を読んで欲しい。「目からウロコ」がいっぱい詰まっている。

1996年1月 1日(月) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:スポーツ , ノンフィクション

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