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アート・舞台(34)

LV3「フェルメール全点踏破の旅」

朽木ゆり子著/集英社新書ヴィジュアル版/1000円

フェルメール全点踏破の旅
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現存するフェルメールの絵は、疑わしいモノも含めて37点しかないと言う。だからこそ成立した全点踏破の企画。美術誌ではない一般雑誌「UOMO」創刊号でのこの企画を一冊にしたものということもあり、著者は丁寧にフェルメールを読み解いてくれている。そういう意味で(多少詳しすぎる部分もあるものの)フェルメール入門者にもいいし、フェルメールを詳しく知りたいヒトにも良い本になっている。

もうひとついいのは、所蔵されている美術館順に話を進めていること。そのせいで紀行文的になっているのもいいが、絵の制作年が前後することで逆に読者の理解が深まるところがある。もしフェルメールの初期から後期に向けて順を追って構成していたら、(教科書的になって)逆に頭に入らなかったことが多くなった気がする。あぁずっと前のページで言っていたことはこういうことか、みたいな気づきが脳を活性化させるのだな、とか思った。

ボクはフェルメール初心者だ。まずは細かい研究記述をすっとばしてざっと読んだことにより(そして掲載のカラー写真で確かめたことにより)、フェルメールを概観でき、彼の絵の特徴、様式、盛衰などを理解できた。もっと好きになったらまた再読して詳しく読めばよい。そういう意味で、ボクには至極役にたった一冊。ボクは美術館では走るように絵を見て、なんか気になった絵の前だけで長時間過ごすような見方をする。有名絵画でも気持ちに引っかからなければ無視するタイプだが、そんな「走り見」系のボクにはとても合っている一冊だった。

2007年3月11日(日) 8:37:25・リンク用URL

ジャンル:アート・舞台 , , 写真集・イラスト集

LV5「仏像のひみつ」

山本勉著/朝日出版社/1470円

仏像のひみつ
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あ〜全部わかっちゃったよ、仏像のこと。すっきりしたなぁ。

全部ってオーバーか。もともと東京国立博物館に勤務していた著者が「親と子のギャラリー 仏像のひみつ」展を企画しその内容を本にしたもので、つまりは子供にもわかるように書かれていて、枝葉末節は省略してある本なのだ。だから1時間もあれば読めてしまうし、もちろん「全部」はわからない。とはいえイイタイコトが極限まで絞ってあり実にクレバーに整理してあるので、スコンッと頭に入っちゃうのである。

いままでこの手の本をいくつか読んだことがあったが、学術的すぎたり詳しすぎたりで、どこかボンヤリした部分が残ったものだ。わかったつもりになったというか。理解してもすぐ忘れちゃったというか。
でもこの本はもう最低限のことしか書いていない。最低限なんだけどココがちゃんとわかるとすべて理解できるという部分を短くわかりやすく書いてある。ここまで絞って整理してくれるとイヤでもわかっちゃうなぁ。もう忘れない気がするなぁ。下手に詳しいよりこういう方が結局役立つんだよなぁ。この著者、受験参考書とか書かせてもきっと名人だぞ。

もともと般若心経を覚えてしまうくらいは古寺仏閣少年だったボク。
仏像も大好きで、たとえば奈良法華寺の十一面観音なんかはアイドル視していてわざわざ何度も会いに行ったくらいなのだが(というか部屋に小さなポスター貼っていた:笑)、まぁなんと長いこと仏像のことを理解せずにいたことか。近場の鎌倉でも行って、もう一度いちからいろいろ見てみたい気分。この本と「仏像は当時のロックスターだ」という珠玉の切り口の「見仏記」あたりを娘に読ませて、一緒に古寺仏閣めぐりをしてみたいものだ。めっちゃ老人くさいけど。

2006年12月27日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:アート・舞台 , 哲学・精神世界 , 雑学・その他

LV3「リンボウ先生のオペラ講談」

林望著/光文社新書/850円

リンボウ先生のオペラ講談
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オペラの本数々あれど、代表的なオペラについて微に入り細を穿ちその「あらすじ」を書き込み、解説してくれた本は他にはないだろう。なんだかんだいっても異国の異文化であるオペラはやっぱり理解しにくい。音楽だけでなく、まず筋自体が理解しにくい。それを林望が著者特有の親切さでしっかり頭から追いつつ理解させてくれるのである。あらすじを追うだけでなく、解説や感想をいいタイミングで入れてくれているのがいい。

取り上げられているのは「フィガロの結婚」「セヴィリアの理髪師」「愛の妙薬」「ラ・トラヴィアータ」「カルメン」「トスカ」の6作品。オペラを観る前にこの本で筋と見所を予習しておけば、あとは心おきなくすばらしい音楽に浸れるのだ。
こういう本が欲しかったし、意外となかった。こういう目の付け所が著者っぽいな。巻末に著者お勧めの音源一覧もついている。アリア別なのがちょっと煩雑だけど。

2004年1月 1日(木) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:アート・舞台 , 音楽

LV3「西麻布ダンス教室」

桜井圭介・いとうせいこう・押切伸一著/白水社/2600円

西麻布ダンス教室―舞踊鑑賞の手引き
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バレエ系の本や情報をあさっていると、この本を絶賛する評がとても多いのに気づき、遅ればせながら熟読。基本的に「やさしくわかりやすく神髄まで」な本だし、先生役の桜井圭介と生徒役のいとうせいこう・押切伸一の3人のぶっちゃけた対話で章が進んでいくので読みやすいのだが、やっぱり初心者にはつらいかも、というのが感想。だって固有名詞(人名)がドカドカ出てきて初心者はこんがらがりまくるんだもの。でも、経験を積んで1年後とかに読んだらきっととてもいい感じに読めるのだろうと思う。中級者には最適な本だと思われる。というか、こういう「油断すると難解になってしまうことを平易に説いてくれるセンスのいい本」というのは大好き。1年後再読候補本。

2003年12月 1日(月) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:アート・舞台

LV0「バレエ入門 〜バレリーナの手紙」

川路明著/土屋書店/1800円

バレエ入門―バレリーナの手紙
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もうバレエの入門書はお腹いっぱいで読みたくなかったのだが、著者の名前を見て考えを変えた。
川路明って、あの知る人ぞ知る名著「江戸前にぎりこだわり日記」の著者じゃないですか! ほー、本職ではこんなことをやっていたのね、といきなり関心と愛と親近感が生まれ購入。
ただ、いかにも古い装丁なのとムック版の大きさ、バレエ・ダンサーに向けてのバレエ入門であること、バレリーナである姉が妹に話しかけるという設定……などなどで「きっとボクには合わない」と確信しつつの購入だったのだが、その心配はまさにあたり。んーつまらなかった。というか、古い。写真も悪い。絵もデザインも昭和30年代な感じ。やっぱつらかったかなぁ…。

2003年12月 1日(月) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:アート・舞台

LV1「バレエ・テクニックのすべて」

赤尾雄人著/新書館/1600円

バレエ・テクニックのすべて
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バレエを観るヒトのためのバレエ・テクニック解説書。まぁ少しバレエを観だすと「この型はよく出てくるけどなんだろう」とかいろいろ知りたくなってくる。そういう初・中級者には実にためになる本である。
この本のいいところは、わりと写真(のモデル)がいいこと。解説自体は、極力わかりやすくしてくれた努力のあとは見えるのだが、やっぱり少しマニアック。中級者以上じゃないとついていけないかもしれない。が、初級者が「あぁあの踊りはグラン・ジュテ・アン・トゥールナンと呼ぶのか」などと理解するには十分かも。資料として持っているにはいい本。読むにはつらい。当たり前か。

2003年12月 1日(月) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:アート・舞台

LV4「食わず嫌いのためのバレエ入門」

守山実花著/光文社新書/740円

食わず嫌いのためのバレエ入門
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「バレエに連れてって!」と同じ著者による新書。あの内容がより手軽に、という感じ。
「バレエに連れてって!」を持っているヒトは「なんだ同じ内容じゃん」と思うかもしれないが、こっちの方がより古舘伊知郎チックになっており、なにやらテンション高めミーハー度爆発なのである。
構成は「なぜあなたは食わず嫌いになったのか」の処方箋から始まり、「まずは作品について知ろう」と作品概観があり、劇場デビューの詳細、いま旬のダンサーや振付家たちの紹介、世界の劇場紹介、と続く。それらがミーハー度高く読みやすく書いてある。この著者は、バレエは楽しければいいのだとりあえず観に行こう、という姿勢で一貫されていて気持ちがいい。かなり具体的な実用ガイドになっているので、少し興味がある人などいいかもしれない。

2003年11月 1日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:アート・舞台

LV2「バレエの見方」

長野由紀著/新書館/1800円

バレエの見方
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この本は初心者には少しきつい。
10月にロシアの本場で立て続けに8演目観る前にこの本を読んでいたら、そのマニアックな感じに「やっぱボクにバレエは無理かも」と思ったと思うのだ。いろいろ観ていろいろ知ったあとに読むと、書いてあることが少しずつわかってきて、楽しめる部分も出てくる。それでも中級者上級者が読んだ方がきっと面白いんだろうなぁ。振付にいろんな版があって、同じ演目でどう変わってくるかを実際に知ったあとに読むべき本かもしれない。それも頭でバレエを見がちな人のみ。

こう書くと小難しい本と思われるかもしれないがそうでもない。
代表的バレエを14演目選んで、その筋、見所、版の違い、演者の違い、歴史、音楽などがコンパクトにわかりやすい文体でまとめてある。全体に分析的で「楽しもう!」という方向性ではないので、合う人と合わない人がいると思うだけ。

2003年11月 1日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:アート・舞台

LV3「チャイコフスキーのバレエ音楽」

小倉重夫著/共同通信社/1300円

チャイコフスキーのバレエ音楽
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モスクワ、サンクトペテルブルグのバレエ観劇に行く前に、予習として「白鳥の湖」全幕をCDで聴き直した。そしてビックリした。こんな名曲だったとは! 
そして改めてバレエ音楽を俯瞰してみると、そこに「悲愴」などで中学時代からお馴染みだったチャイコフスキーの姿が燦然と輝いているのが見えるではないか。へぇ〜チャイコってそうだったのね、と、個人的に気づかされた気分(詳しいヒトにとっては何言ってるのって感じだろうけど、バレエ音楽が眼中になかったボクからするとちょっと驚きだったのだ)。そんなことを思っているときにこの本を書店で見つけたら、そりゃ買うわな。

内容は「白鳥の湖」「眠れる森の美女」「くるみ割り人形」といったチャイコフスキー三大バレエをくわしく取り上げており、CDを聴き込んだボクにはわりとうれしい構成。作曲者側の論理が見えてくるのも(踊る側の論理から書いたバレエ本が多い中)とても参考になる。まぁ興味あるヒトにしか楽しくない本だろうけど、まじめできちんとしており、なかなか良い。

2003年10月 1日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:アート・舞台 , 音楽

LV1「バレエ入門」

三浦雅士著/新書館/1600円

バレエ入門
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入門と銘打ってはいるが、かなり教科書的正攻法な入門なので、少し「お勉強」的雰囲気が漂ってしまう。バレエを観る、バレエを楽しむ、という目的であるなら、「バレエに連れてって!」「バレエの魔力」の方がずっと入門として相応しい。これはバレエ評論家入門に近いかも。
個々人の捉え方もあるだろうが、バレエが「お芸術」になってしまっている原因のひとつはバレエ業界のお高い方々の存在だと思う。バレエをずっと育ててきた苦労と歴史には敬意を表するが、一方でバレエの敷居を高くしたのも確か。この本にはその匂いがする。良い意味でも悪い意味でも。

2003年10月 1日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:アート・舞台

LV2「Made in LONDON」

熊川哲也著/文春文庫/667円

メイド・イン・ロンドン
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バレエ予習の6冊のうちの1冊。英国ロイヤルバレエでプリンシパルまで上りつめた熊川哲也の半生記である。ロイヤルバレエを退団して自らのバレエ団を旗揚げする直前に書かれた自伝なので、全体に少々チカラが入っているのは仕方がない。かなり自己陶酔的だし自慢的だが、バレエでトップを張るダンサーはそうであっても全く構わないと思う。というかそうあるべきかも。という感じで、わりと微笑ましく読んだ。

自伝であるが、苦労しました、という感じは微塵もないのがいい。なんかスルスルとここまで来てしまったのが当然な感じで描かれている。スルスル来たのに敢えて苦労をオーバーに描きがちな自伝という分野で、ここまで素直にそのスルスル感を書いているあたり、なんだか野球の新庄を思い出したり。きっとこのふたり、似てるぞ。
ま、薄い本だし、スルスルっとした内容だし、バレエや熊川哲也に興味がないひとにはオススメしない。でもちょっとは興味がある人なら、そこそこ楽しめる。そんな感じ。

2003年10月 1日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:アート・舞台

LV4「バレエの魔力」

鈴木晶著/講談社現代新書/680円

バレエの魔力
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守山美花の「バレエに連れてって!」と本質的には同じテイストだが、こちらは著者が男である分、少しミーハー度が減少している。
テーマ的には「おじさんたちよ、バレエをみよう」である。バレエが好きなんていうオジサンは確かに超少数派であり、口にするのも恥ずかしい現実はあるのだが、そうでもないよ楽しいよ一度は見てみようよ、という視点で書いてある。しっかり理屈や歴史も入っている。理屈っぽくて蘊蓄好きのオジサンたちには上記「バレエに連れてって!」よりこっちの方が読みやすいかもしれない。新書だから薄いし、持ち歩くのも恥ずかしくないし。

この本と上記「バレエに連れてって!」が結局一番わかりやすかった。初心者はこの2冊でいいかも。あとは2002年7月に読んだ「ユカリューシャ」あたりを読んでおくと、ダンサー側の見方もわかって楽しいかも。

2003年10月 1日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:アート・舞台

LV2「バレエ誕生」

鈴木晶著/新書館/3200円

バレエ誕生
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バレエの歴史の本。他の入門編の本でも簡単な歴史を読める。が、ここでこの400ページにも及ぶ専門書(?)をざっと読んでおくとより理解がしやすくなるのも事実。こういうのはざっとでいいのだ。
書いたのは上記「バレエの魔力」の著者ゆえ、わかりやすく平明にツボを示してくれている。労作だと思うが、バレエ好き以外の人にはつらい本かもしれないなぁ。というか、まぁバレエに関心があるヒト以外はまず手に取らない本なのでこれでいいのか。敢えて言えば、昔の舞台演出の具体例みたいのがわかりやすく絵で示されて講評されているといいなぁと読みながら思った。時代とともにあったバレエの姿をもう少し体感したかったかも。

2003年10月 1日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:アート・舞台

LV5「バレエに連れてって!」

守山実花著/青弓社/1600円

バレエに連れてって!―簡単楽々入門書
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ロシア個人旅行では8泊のうちバレエを6舞台観る予定なので(追記;結局8泊8舞台観た←バカ)、予習は欠かせない。
というか、バレエについては初心者に近いボクが、いきなり本場でボリショイバレエを観まくるのだ。吸収できるものはすべて吸収したいと願うのも無理はない、よね? ということで、今月はバレエ本を6冊も読んでいる。

その中で初心者のボクにとって一番タメになり面白かったのがこの本。つまり、これからバレエを観たいと思っているアナタにもこの本はトップクラスに有効と言っても過言ではない。
この本のいいところはバレエを「有り難い高級芸術」の域から引きずり降ろして、いかに楽しいものか、という観点からすべてを描いているところ。ある種、仏像を中世のロックスターに見立てたみうらじゅんの「見仏記」と近いテイスト。そしてホイチョイの「見栄講座」も少し入っている。とにかく読者を騙してでもバレエを見せたい!見せちゃえば勝ち!みたいな精神で書かれている感じ。いいぞいいぞ。こういう本が読みたかったのだ。

そんでもって、バレエなんてそれでいいのだ、とボクも思う。あそこのパがどうのとかアラベスクがどうのとかほとんど関係ない。ただ心を開いて素直に楽しめばバレエはこんなに面白い、でいいと思う。それを再確認させてくれる本である。

2003年10月 1日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:アート・舞台

LV3「落語と江戸風俗」

つだかつみ・中沢正人著/教育出版/1700円

競作かわら版 落語と江戸風俗
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ムック本。
江戸のかわら版みたいな構成にしてあり、代表的な落語の解説を江戸風俗解説にからめながら豊富なイラストとわかりやすい文章で実に事細かに教えてくれる親切な本。

有名な落語の筋はわかるわ、背景はわかるわ、当時の道具やファッションもわかるわ、遊郭や髪結床の仕組みも絵付きでわかるわ、土地勘までつくわ、名人たちのくせまでわかるわ、まぁなんつうか、おせっかいなくらい親切な本だ。
イラストがアイデア豊富にまとめてあるので、たとえば当時の吉原の地図と現代の地図が比べてあったり、落語に興味ある人にはとっても役立つ本。帯で林家たい平が「師匠のこん平はこんなに優しくていねいには教えてくれなかった。皆さんにはそっと教えます。私の本当の師匠はこの一冊です」と書いているが、確かにそんな感じの本である。落語好きはわりと必携かも(ただし初級者中級者)。

2003年8月 1日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:アート・舞台 , 雑学・その他

LV3「現代アート入門の入門」

山口裕美著/光文社新書/750円

現代アート入門の入門
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アート・プロデューサーである著者による現代アート入門。
よく出来た新書である。ちょっと小難しく感じがちな現代アートの現状を知る入門書としても、アート自体の見方を養う教科書としても、現代アートとのつきあい方を知る実用書としても、アート美術館はどこへ行けばいいのかを知る旅行書としても、アートを蝕む現代風潮の告発書としても、現代アートとは何かを知る哲学書としても、すべてにそれなりに使える。広範囲にサービス精神を発揮したところがこの本の良さでもあり弱さでもある。ボクには少々物足りなかったが、表題にあるとおり「入門の入門」としてはとてもよく出来ている。

著者は「現代アートのチアリーダー」として現代アートを応援するウェブを立ち上げているが、その中の「トウキョウトラッシュ宣言」が素晴らしい。是非読んで欲しい。その中の一節に「アートは問いかけであり、答えや結果ではありません。」とある。個人的に肝に銘じたい言葉である。

2003年3月 1日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:アート・舞台

LV5「落語的生活ことはじめ」

くまざわあかね著/平凡社/1400円

落語的生活ことはじめ―大阪下町・昭和十年体験記
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副題は「大阪下町・昭和十年体験記」。
著者は落語の台本を書く仕事をしている。で、「台本書いていてカンテキや火鉢、箱膳などの道具の細かい点がよくわからない。他の小道具でも使ってみてはじめてわかる発見があるのではないか…。それじゃぁ落語的な古い生活をしてみようではないか!」と思ったがこの本のキッカケ。

具体的には(江戸時代的生活はさすがに無理なので)昭和十年と設定。
冷蔵庫なしテレビなし電話なし。電球は40ワット。昼は着物。寝るときゃ浴衣。銭湯使って足りない物はご近所や大家さんに助けてもらう。ご飯は羽釜、おかずはカンテキ(七輪)で作る。机の横には火鉢があって、かけてあるヤカンからは常に湯気がシューシュー……それを一ヶ月やってみようというのだ。すばらしい。そういう発想大好き。で、そういう発想をするヒトだもの、本も当然おもしろい。日記風のルポになっていて一緒に昭和十年に生活しているようである。厳しく言うと、終わり方が中途半端なのと、どうせなら最低半年、そして厳冬も体験してほしかったと思うのだが、読者のわがままだな。充分おもしろいし、自分でもやってみたくなる。

たった65年前、日本人はみなそういう生活をしていたのだが、 いまそれをしようと思うとぶち当たる壁が非常に多いのもよくわかる。死語かつ死道具のいかに多いことか。日本が過去の豊かな価値観をいかに惜しげもなく捨ててきたかをわかると同時に真の豊かさとは何かを考えるキッカケになる。はやりのスローライフ的読み物としても秀逸。オススメ。

2003年2月 1日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:エッセイ , アート・舞台 , 雑学・その他

LV5「なにも見ていない」

ダニエル・アラス著/宮下志朗訳/白水社/2600円

なにも見ていない―名画をめぐる六つの冒険
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副題は「名画をめぐる六つの冒険」。
帯は「いまもっとも注目される美術史家によるスリリングなエッセイ。文献学的な方法論を越えた新しい絵画解読法を提唱する」。

うはは。文献学とか解読法とか言われるとちょい難しい専門書的な感じだ。でも絵画素人のボクでも楽しく読めたから大丈夫。なにが楽しいって「見る」ということの本質がここに書かれているから。
絵を見るのに美術史的知識もなにもいらない。そういうのを持っている人は結局「なにも見ていない」ことが多いのだ。よーくこの絵を見てご覧? ほら、こんな風に画家は描いているんだ。美術史的にはこう解釈されているが、そんなのなにも見ていない。先入観を捨ててよーく見てご覧?……簡単に言えばこういう感じ。

ボクたちはどんなことについても目では見ず脳で見ることが多い。
道端のタンポポでも「あ、タンポポか」とわかった時点で見ることをやめてしまう。もう見知らぬ花としてよーく見るという行動は起こさない。絵もいっしょ。「あ、受胎告知か」とわかった時点で見ることをやめてしまう。見ているようでなにも見なくなる。でも、そんなことではなくてちゃんと見てみる。遠近やリアリティや絵の端の風景までよーく見てみる。大画家が描いた絵でもおかしいところはおかしいと思ってみる。そうするとこんなにいろいろ見えてくる。

実はこういう態度自体が人生を楽しむコツというか真髄だったりすると個人的には思っているので、この本は意義深かった。文体が妙に気取っていて、いらない工夫とかをいろいろしているのが読みづらいが、わからないところはさっと飛ばしてでも読む価値あり。実に示唆に富んでいる。

2003年2月 1日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:アート・舞台 , 評論

LV5「三人噺 志ん生・馬生・志ん朝」

美濃部美津子著/扶桑社/1400円

三人噺―志ん生・馬生・志ん朝
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中野翠がどこかで「美濃部一家こそ日本のセレブ」みたいなことを書いていたが、志ん生(美濃部孝蔵)とその息子である馬生(清)・志ん朝(強次)の人生を、志ん生の娘である美津子が書いたこの本を読み終わるとまさにその感に満たされる。

落語の世界そのままのどん底貧乏長屋生活を送った志ん生の半生を中心に、美濃部親子の人生が淡々と綴られている。貴重な話も笑えるエピソードもいろいろ出てくる。ゆっくり味読するにたる実に魅力的な本だ。ラストの志ん朝の死の場面では涙を通り越して嗚咽を漏らしてしまった(←歳ですな)。

中身とは直接関係ないが、口絵の写真を何度見ても見飽きない。特に志ん生。こんな顔のジジイになりたいと熱望する。無理だろうが。

2002年12月 1日(日) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:自伝・評伝 , アート・舞台

LV5「ユカリューシャ」

斎藤友佳理著/世界文化社/1575円

ユカリューシャ―奇跡の復活を果たしたバレリーナ
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副題は「奇跡の復活を果たしたバレリーナ」。
著者は東京バレエ団のプリマ・バレリーナで、この世界では有名な人。題名のユカリューシャはロシアにおける著者のニックネームだ。

著者の、バレエに賭けた半生の記である。
バレエとの出会い、ソ連のボリショイ劇場での日々、ボリショイのプリンシパル・ダンサーであるニコライ・フョードロフとの結婚、出産、致命的なケガ、復活の「ジゼル」…と、話の前後がたまにわからなくなる部分があるのだが、劇的な人生が冷静な主観で書かれており、とても興味深い。バレエを真剣に観た回数が少ないボクにも内容はわかりやすく、また、もっといろいろ観てみたい気にもさせる。

著者は謙虚なので苦労の部分はそんなに大仰に書いていない。が、日本人ダンサーがボリショイで踊ったりするには並大抵でない苦労があったはず。半生を振り返るに(といっても著者はまだ35歳だが)いい思い出しか浮かばなかったのかもしれないが、ドロドロした内面にもう少し踏み込んでくれたなら、この本はもっとコクのあるものになっていただろう。その辺がちょっとだけ物足りない。

2002年7月 1日(月) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:アート・舞台 , 自伝・評伝

LV5「話の後始末」

立川志の輔・天野祐吉著/マドラ出版/1600円

話の後始末
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おもしろい構成の本だ。
志の輔(ためしてガッテンの人)が絶妙なマクラと共に落語をしゃべり、その後、天野祐吉と世の中についてあーだこーだ対談する、という構成の章が5つ。おふたりによるそういう構成の「講演」を本にしたものらしい。落語と対談はテーマが同じなので、無理なくそのふたつがつながっているのもなかなかいい。帯に「落語つき世相放談」とあるが、そのコピーが一番内容を言い得ているかも。

まず落語がおもしろい。オリジナルもあるが(よくできている)、基本は古典落語。有名なものばかりだが、あらためて志の輔の視点で読まされると非常に笑える。この人、落語うまいかも。また、そのあと天野祐吉が登場して、まずは落語の感想から入っていき、どんどん世相に話が広がっていくバランスが良い。ふたりとも話し上手かつ品がいいので、なんだか気持ちよく言葉の波に乗っていけるのである。そこには笑いだけでなく発見も多々ある。

2002年4月 1日(月) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:アート・舞台 , 対談

LV3「天才アラーキー写真ノ方法」

荒木経惟著/集英社新書/740円

天才アラーキー 写真ノ方法
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アラーキー本人の写真論については、いろんなところで著者自身書き散らしているので目新しくはない。でもこの本はそれらの中でもわりと本音が出ているなと感じるところが多かった。

写真は現実に触発された何か……、被写体と写真を撮る時間を共有する……、写真っつーのはさ生きることなんだよね……、、、たまに出てくるそのような言葉が妙に説得力をもって立ち上がってくる。
ボクは別に写真の専門家でもないので写真技術について読みたいわけではない。写真というものを通して、アラーキーの人生観を、ものの見方を、人への迫り方を、知りたいのである。著者は「写真=人生」と言っているわけで、これはアラーキーの「人生ノ方法」でもある。その点ボクの需要を完璧に満たしてくれる本であった。満足満足。

2001年9月 1日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:アート・舞台 , 評論

LV3「似顔絵」

山藤章二著/岩波新書/940円

カラー版 似顔絵
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なるほどねー。『似顔絵は「そっくり絵」ではありません。盛り場でよく見かける、商売としての似顔絵はそれでいいのですが、自己表現としての似顔絵は別の方向を向いています。相手の方に近寄るのではなく、逆に、自分の手元に全部引き寄せてしまう。「オレにはこう見える」という「人物論」--それがぼくの考える似顔絵です。』(本文より) これにすべてが言い尽くされているなー。「似顔絵=自己表現」。うーん。とっても共感する。そう、どんな発信も自己表現なのだ。結局自分がどう見たかなのだ。

この本を読んでそこらへんの感じが一気にクリアになり氷解した。
ありがとう、わかりやすく解いてくれて。そんな気持ち。
時代を意識したテクニックやジャーナリズムじゃなくて「オレにはこう見える」・・・。そういう目で改めて彼の作品群、似顔絵塾塾生の作品群を見ていくとまた違ったものが見えてくる。「似てるねぇ」と単純な感想ではないものが見えてくる。テレビの物まね選手権がつまらない理由も一気にわかったボクなのであった。

2000年12月 1日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:写真集・イラスト集 , エッセイ , アート・舞台

LV2「山下清のすべて」

サンマーク出版/1700円

山下清のすべて―放浪画家からの贈りもの
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本屋でこの本を見つけ、急に山下清のことが知りたくなった。
山下清・・・裸の大将と言った方が有名か。日本のゴッホと言われ、素晴らしい貼り絵で知られる天才画家。有名である。ドラマでもシリーズになり、いまだに再放送している。でもボクはほとんど彼の実際を知らなかった。立ち読みしてその作品に触れているうちにとにかく知りたくなって買ってしまったと、そういうわけ。

よーく行間を読んでいくと、彼の存在にはちゃんと演出がある。外にも彼自身の中にも。
だが、彼の絵はそういうのを抜きにしても人を惹きつけるパワーを持っている。卓越した観察力と緻密な構成力。印象派の光の捉え方とブリューゲル的世界構築。妹尾河童に通じる細部描写。後期の素描や水彩も素晴らしい。いつまでも見飽きない。そういったものをしっかり紹介しつつエピソードを重ねて構成した本書は、山下清入門としてはとっても良かった気がするのである。
関係ないが、彼の本質は「含羞」なのだろうな、と、ちょっと思った。

2000年12月 1日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:アート・舞台 , 写真集・イラスト集

LV4「岡本太郎の世界」

岡本敏子・齋藤愼爾責任編集/小学館/2800円

岡本太郎の世界
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自分を「異化」したい、と、切実に思う今日この頃。岡本太郎の芸術にたどりつくのは必然であったのだろうと思う。

「芸術は気持ち悪くあるべきだ」という彼の主張が、この歳になってやっとわかってきた。理解できてきた。ずっと「ただ美しくあればいい」と思ってきたが、違和感なくしてなんの芸術であろう。見ている人の心を異化し、そこに二次的ななにかを生み出すこと。技術に頼った芸術や安易な感動を呼ぶアートとは一線を画す岡本太郎の凄み。彼のすごさを味わうなら、この本は過不足なく出来ていると思う。

この写真集&研究書&伝記を熟読した後、車窓から太陽の塔を眺める機会があった。年月が経ち、妙に景色と同化してしまった太陽の塔。これは太郎の意思と反するのだろうな、と妙な感慨を覚えたのである。

2000年5月 1日(月) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:写真集・イラスト集 , アート・舞台 , 自伝・評伝

LV5「建築を語る」

安藤忠雄著/東京大学出版会/2800円

建築を語る
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建築家安藤忠雄の東大大学院での講義を一冊にしたもの。第一講から第五講まで。

彼の建築に対する考え方が、その半生と共に語られていて、実に面白く含蓄に富んでいる。いまだ「大センセイ」になるのを拒否しているその精神で語られた言葉は、全体の構築がしっかりしている上にケレンもあり、細部はシンプルにまとまっていて、著者自身が作る建築物を彷彿とさせるようである。

まぁ建築についてはド素人なので、わからない専門用語・専門家名なども出てきたが、そういう部分はすべて飛ばし読みしてもとても面白かった。個人的に特に面白かったのが、若い頃に考えた都市建築計画の案をぶっつけで役所に持っていったり、歳をとったいまでも当時の案にこだわっていたりといった「精神的若さ」みたいなもの。ボクなんか良い案だなと思っても、否定されると妙にオトナになってバランスを取り直して作り直したりしてしまう。それではなにも残せないのだ。そんなこと今頃わかったりした。まぁここでは多くを語れないけど。

まぁそういうような心の部分を刺激してくれる内容を持った名講義。一読をオススメします。
それにしても素朴な疑問なのだけど、なぜ建築家の書く文章はみな句読点が「,」と「.」なの? 建築雑誌とかでもほとんど「,」と「.」だ。あまり好きではないのだけど。

2000年4月 1日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:アート・舞台 , 科学

LV4「のり平のパーッといきましょう」

三木のり平著/聞き書き・小田豊二/小学館/2100円

のり平のパーッといきましょう
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今年の1月25日に亡くなった喜劇役者三木のり平の「聞き書き一代記」。のり平の言葉がしゃべり言葉でそのまま書かれているのがユニークかつ素晴らしい。そのしゃべり言葉のリズムを読むだけでも儲けモノの一冊だ。

三木のり平に特に思い入れのない人々(ボクを含めて)が読んでもピンと来なかったり面白くなかったりする部分は確かに多いが、その豊富なエピソードから浮かび上がる昭和という時代がとにかく面白いのだ。書かれているギャグとかはイマイチずれちゃっているんだけど、そんなこと読んでいる間はまるで気にならない。

後半の手紙の引用や途中で出てくる芸事に対する一家言、喜劇やネタに対する考え方など、彼でなければ語れない言葉も多く、なるほどこういう人を失ったのだな、と改めて残念な気持ちになる。ひと言で言えば非常に「粋」な本だ。

1999年12月 1日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:自伝・評伝 , アート・舞台 , 映画・映像

LV4「見仏記 海外編」

いとうせいこう・みうらじゅん著/角川書店/1900円

見仏記 海外篇
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「見仏記」のファンとしては海外編も当然読む。

古寺仏閣少年だったボクは仏像に対してある種の愛情を捧げてきたが、みうらじゅん氏のような卓越した仏像の捉え方は、自分の中の仏像観の崩壊であり、そしてなにより「物事を自分の視点で見ること」の象徴でもあった。それまで世間一般的な仏像の見方をしていたボクは、それほど彼の仏像の見方にショックを受けたのである。そのショック以降、「見仏記」はボクの中である種特別な位置を保っているのだが、これはその海外編。韓国・タイ・中国・インドと、仏像伝来逆ルートを歩いて行く。

いとうせいこう氏の文章が海外取材のせいかがんばっちゃっていて少々理屈っぽくなった気もするが、みうら氏は相変わらず肩の力が抜けていて良い。今月タイに出張しておきながら(仕事の忙しさにかまけて)仏像をあまり見なかった自分が疎ましくなる。

1999年2月 1日(月) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル: , エッセイ , 雑学・その他 , アート・舞台

LV3「インド ミニアチュール幻想」

山田和著/平凡社/3400円

インド ミニアチュール幻想
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ミニアチュールというインド独特の細密画を御存知ですか? 

ボクはこの本を読むまで実はよく知らなかった。こういう絵があってそれをとりまく世界があってこういう有象無象がうごめいている……という「いままで僕の人生とは全く関係なかったこと」が急に生活に入り込んでくるところが本の醍醐味でもあるよね。テレビ番組だと通りすぎてしまうんだけど、本は少なくとも数日はかけるから心まで入り込んでくる。ミニアチュールはこの本によって確実に僕の人生に入ってきた。ものすごく好きになってしまったのだ。買えないまでも展覧会とかないだろうか…。

あ、書評だったですね。えーと、そうなってしまうくらい面白い本(笑)。ちなみにこの本は1997年度の講談社ノンフィクション賞を受賞している。

1998年2月 1日(日) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:アート・舞台

LV4「私の梅原龍三郎」

高峰秀子著/文春文庫/667円

私の梅原龍三郎
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隠れた名文家・高峰秀子の昭和62年出版本の文庫化。
彼女の良さは客観化がしっかり出来ている平明な視点と含羞の程よさである。そして筋が一本通っている生き方。そう、生き方自体が文章によく表れているのである。

この作品でもそれはしっかり出ている。感動するのは梅原龍三郎との近くなりすぎない距離感。それは彼の死まで変わらない。小説(随筆)的視点と実生活的視点がこれほど近い人も珍しいのではないか。新作が待たれる。

1997年11月 1日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:アート・舞台 , エッセイ

LV1「住宅道楽」

石山修武著/講談社選書メチエ/1456円

住宅道楽―自分の家は自分で建てる
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副題「自分の家は自分で建てる」。

異端の建築家である著者の住宅論であり経験談であり日本の住宅事情への提言でもある。
おもしろいエピソードが続き、なかなかインパクトがある内容なのだが、いかんせん建築業界ドシロウトの僕が読むとわからない専門用語や固有名詞が中盤から出てくるのが残念。せっかくなら「シロウトにも開かれた文章」を書いて欲しかったのである。著者の言葉ぽく言うなら「建築業界の不自由さから文章が自由になっていないんだよう」というところか。惜しい。

1997年10月 1日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:教育・環境・福祉 , アート・舞台

LV5「江戸前の男 ―春風亭柳朝一代記」

吉川潮著/新潮社/1900円

江戸前の男―春風亭柳朝一代記
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副題通り、春風亭柳朝の一代記である。

江戸っ子芸人の生涯を描いた傑作だ。
小朝の師匠である柳朝はもう巷から忘れ去られていてテープなんかもあんまり出ていないようだが、読んでいるとどうしても彼の気っ風のいい落語を聞きたくなってくる。いや面白い本である。含羞と見栄と野暮嫌い。そんな天然記念物みたいな江戸っ子のお話を皆さんもぜひ読んでおくんなさい。
ただ後半、著者はちょっと息切れしたのかな。かなり柳朝に思い入れてしまった読者たちにとってはかなり物足りない描写だった。

1996年12月 1日(日) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:自伝・評伝 , アート・舞台

LV4「私の小さな美術館」

新井満著/文藝春秋/2400円

私の小さな美術館
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著者が長年かけて蒐集した美術品たちを優れたエッセイと共に紹介している、文藝春秋に連載したコラムの単行本化。

美術品と言っても「著者の心を動かした品、思い出に残る品」をそう位置づけているだけなので決して値段的に高いものばかりではない。
でも著者にとっては何者にも代え難いもの達なのだ。これを読んでボク自身の「小さな美術館」に思いを馳せた。誰でも「小さな美術館」をもっている。なんかその回廊を歩きつつお酒でもあおりたくなってくる、そんな本。
なお、著者とは実は会社が一緒なので、共通する体験、共通する知人が出てきたりして、ボクにはそこも楽しめた。

1996年11月 1日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:アート・舞台 , エッセイ

LV5「横尾忠則自伝」

横尾忠則著/文藝春秋/1995円

横尾忠則自伝―「私」という物語1960‐1984
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副題は「「私」という物語1960‐1984」。

画家横尾忠則のまったくもって面白い半生記。
読み始めたら止まらない。この人のすごいのはこんなに成功してもまだコンプレックスのかたまりで、ふつうの感覚を失わないこと。ものすごい交友関係・アート履歴・精神世界を、そこらの兄ちゃんみたいなさりげなさで書いている。でも逆にこれって大変な筆力がいるんだよね。さすがです。個人の青春記でもあり日本のアート青春記でもある傑作。

1996年4月 1日(月) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:自伝・評伝 , アート・舞台

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