食・酒(117)
「シェフ、板長を斬る悪口雑言集」

amazonこの本の趣旨はボクが7年前にジバラン(自腹覆面レストランガイド)で提示したものとほぼ同じなので、他の人はともかくボクには特に新鮮なものではない。徹底的に一般人側にスタンスを置いてみると、どうしてもこういった内容になっていく。ボクもジバランを始めた直後は過激に一般人側に立っていた。でもボクも5年ほど経験を積み、ネガティブな言葉だけでは何も伝わらないことに思い至り、いまはスタンスを変えている。とはいえ、著者が言うように、食評論家たちのスタンスのぬるさ、偽善さ、読者裏切りに近い書きっぷりには相変わらず辟易している。もうこのごろでは食雑誌すらあまり読まないくらいである。
だから基本的に著者の趣旨には賛成する。
ただ、この本にはいろいろ難点がある。まず題名。悪口雑言ではなく意見なのだから、きちんとそういうスタンスを貫く題名にすべきだ。インパクトを狙ったのはわかるが…。シェフ・板長は敵ではなく、楽しい食の時間をいっしょに作り上げる味方なはず。それなのに切り捨てすぎる。一般人側に立ったいい評論がいいシェフ・板長を育てることもままあることを忘れてほしくないと思う。
また、中で「自分はこういうひどい扱いを受けた!」と強く主張している部分がいくつかあるが、ここの書き方を少し工夫してポジティブにしてほしかった。題名とこのあたりの書き方が違うだけでこの本は鋭い問題提起本になるのに惜しい感じ。ネガティブに書いている限りその問題提起はマイナーに落ちてしまう可能性がある。ある程度著者とスタンスが近いと思うからこそ、そこがなんとかならなかったかなと残念に思う。難しいことなのだけど。←同じようなことをやってきたからこそわかる難しさ。
2004年1月 1日(木) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:食・酒
「蕎麦の蘊蓄」

amazon蕎麦のあれこれについて、コンパクトにわかりやすくまとめてあるいい本である。様々な要素をまとめてあるので既知のこともたくさん出てくるが、ある意味「蕎麦の蘊蓄網羅本」なので仕方がないだろう。コンパクトに網羅してある分、幾分内容が薄くなっているが、まぁでもこれ以上の知識は素人にはいらないだろうなぁ。程のよいマニアックぶり。選定してある蕎麦店が少し偏っているかなとも思うが、まぁそこからは読者の好みということで。
ただ、蕎麦喰いや蕎麦打ちってどうしても求道者的イメージが出てしまうのがイヤなのだが、どうもその辺の匂いがこの本からもしてくるのが個人的にはなんだかなな感じ。蕎麦ってどうしてそうなるのだろう。うどんはそうならないのに。もう少し肩の力を抜いてくれ、とちょっと思った。
2004年1月 1日(木) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:食・酒
「甘露なごほうび」

amazon渡辺満里奈が「Hanako」で連載している食べ歩きエッセイみたいであるが(Hanakoは読まないので知らない)、なかなか達者でおもしろい。タレント本かぁと思いつつ期待せず買ったのだが、様々な店の食べ歩きをミーハーになりすぎず、落ち着きすぎず、偉そうなところもまるでなく、身の丈で語っていて気持ちいい。ふわふわと漂いつつ気持ちよく読了。
ボクも食べ歩きエッセイを朝日新聞に連載していたことがあるのでわかるのだが、毎週毎週食べ物について書き続けるしんどさはまた格別なものだ。どうしても切り口が似てくるし、事件も起きないし、紹介するの値しない店も多くてセレクトに困るし。著者はそのへんの苦労を感じさせず、天然な明るさで書ききっている。なかなかだなぁ、と感嘆しきり。意外と難しいのだ、こういう技。
2003年12月 1日(月) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:食・酒
「シェリー、ポート、マデイラの本」

amazonいままでなかったんですよね、こういう本。世界三大酒精強化ワインである、スペインのシェリー、ポルトガルのポートとマディラのガイド本。それぞれに現在の姿から歴史、作り方、主要メーカーの主要商品までカラー写真や図を多様してわかりやすく書かれており、これ一冊持っていればだいたい用は足りる。
ボクはシェリーが大好きで週2〜3回は飲む。ワインに比べて酒精強化ワインは日本ではさげすまれる部分もあるが、飲み慣れるとこんなに気楽でおいしい飲み物もない。著者はその辺の楽しさを含めて、いい感じで布教してくれている感じ。全体に装丁や紙質、写真の写りなども上品な出来。手元に置いて調べるのに、こういうおしゃれな本はうれしいかも。
2003年12月 1日(月) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:食・酒
「蕎麦屋の系図」

amazonこれはかなりマニアックな本。系譜系が好きなヒト(たとえばボク)にはとてもいいが、一般的ではないだろうなぁ。
ただ、興味ないヒトもさすがに「蕎麦屋って更科とか砂場とか藪とか、どうも系列があるらしい」ということくらい気がついているだろう。その系図を歴史的に丁寧に追い、名店を紹介したのがこの本なのだ。とりあげているのは5つの系図。前出の3つと東家、一茶庵の5つ。北海道系に広がる東家は行ったことがないが、その他の4つはお馴染みである。もう蕎麦蘊蓄などはやらないが、興味ある人はこれ一冊でずいぶん頭の中が整理できるだろう。
2003年11月 1日(土) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:食・酒
「もっとコロッケな日本語を」

amazon東海林さだおを好きな人は多い。ボクももちろん好きだが、どちらかというと消極的に「嫌いではない」といったスタンス。なんかね、決して敵を作らない内容と文章が、どこかでウソっぽく感じられてしまい、好きになりきれないのだ。とかいいつつ、たまにこうして彼の本を読むとやっぱりうひゃうひゃ笑って楽しんでしまう。うーむ。結局嫉妬に近い気持ちがあるのかもしれない(笑)。
この本は「オール讀物」に連載されたものをまとめたもので、例によって食事関係の章も多いが、この本に限ってはそれ以外が面白い。特に好きなのは「ドーダの人々」シリーズと「なにわ七低山めぐり」。大笑いである。また、対談も面白かった。イラストも絶品。そう、結局とても面白い本なのです。まぁなんというか、老後に取っておきたい作家ではあるなぁ…。
2003年9月 1日(月) 12:00:00・リンク用URL
「沖縄発、山野草のおいしい話」

amazon沖縄で野草?と疑問に思われる方もいらっしゃるかもしれないが、実に豊かに野草が生え、それをおいしく食べる技も発達しているお土地柄。リゾートと海だけではない豊かな沖縄がそこにある。
著者は沖縄本島の本部半島、今帰仁(なきじん)で「ファームハウス」という宿を経営しており、そこの売りは山野草料理。四季それぞれの野草をおいしく料理して食べさせてくれる。そんな野草の話や、レシピ、沖縄エッセイ、そしてファームハウスを作るに至るこぼれ話などを収めたのが本書。イラストも豊富で、手作り感溢れた親密な本に仕上がっている。
実はファームハウスにはボクも泊まったことがある。
「胃袋で感じた沖縄」(のちに「沖縄やぎ地獄」と改題して文庫化)を出版する前、本部半島の野草料理の取材と称して家族で遊びに行ったのだ(もちろん自腹旅行)。1章わりふるほどの取材量にならなかったので結局本には書けなかったが、その晩は実に楽しい晩だった。おいしい料理と自家製リキュールと楽しい会話。素朴な宿ではあるが忘れられない思い出だ。そんな楽しい晩を思い出させるに十分な親密さを持った本書。出てくる食材などはなかなかマニアックだが、経営する著者夫婦の本音や人生観が行間から滲み出ていて味わい深い。
2003年7月 1日(火) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:食・酒
「至福のナポリピッツァ」

amazon東京では数年前からナポリピッツァが流行っていて、このごろずいぶん市民権を得てきた。
ピザといえばアメリカから伝わったタイプ(シェーキーズ系とか宅配ビザ)の味と食感、と思っていたヒトがずいぶん「へー、ピザってナポリが発祥の地で、そこではこんな味と食感なんだぁ」とわかってきた感じ。まぁ実際別物と言っても良いくらい違うもんな。あのモチモチ感はいままでのピザと同じとは思えない快感だ。また、ピザという言葉もだんだんピッツァという言葉にとって変わられてきた気がする。ピッツェリアも普通の用語になってきた。
この本は広尾の「パルテノペ」の料理長が書いたオールアバウト・ピッツァの本。
ピッツァの歴史から食べ方、ナポリピッツァの条件や料理法、こぼれ話まで、これ一冊読み終われば即ピッツァ通な本なのである。すげー内容が濃い、というわけではないが、知りたいことは短く簡潔にわかりやすく書かれているし、発見も多いので、ピッツァ好きな方にとっては必読書かもしれない。
個人的に「ピッツァのナイフ・フォークでの食べ方」がめっちゃ参考になった。いっつもどうやって食べればいいか迷うのだ。なるほどなるほどこうやって食べるのが本場ではスマートなのね♪ 教えて下さってどうもありがとう。
2003年7月 1日(火) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:食・酒
「ニッポン全国マヨネーズ中毒」

amazon食について興味あるヒトはネット上のMSNジャーナルで連載されている筆者の「ニッポン食事情咄」はご存じだろう(※追記:残念ながら連載終了)。その鋭い視点と展開は毎回実に見事だった。だからファンだった。だもんで、それが本になったと聞いたときは即買い。これがその本である。ある連載回を取り上げて表題にしたもの。でも個人的には「ニッポン食事情咄」のままでよかったかなと思う。なんかこの表題にして読者層が狭くなってしまった気がする。というか、なんだかありがちな感じになってしまった。
それにしても…ファンとしては残念だが、連載時はあんなに面白かったのに、が感想。やっぱり時事モノってまとめてしまうと薄い感じになってしまうのかな。もしくはハードカバーが似合わないということであろうか。ソフトカバーでもっと軽い感じで出版した方が良かったかも。もともと「咄」なのだから、その方が読者もうれしい。1600円はちと高い。
2003年6月 1日(日) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:食・酒
「広島快食案内」

amazon広島のうまい店ガイドである。
自分で探したうまい店1200軒の中から255軒を厳選掲載して星の数で評価しコメントしている労作。ページ構成もわかりやすく読みやすい。ひとりの素人が自分の考えを素直に表明し手作りで作ったガイドとして近来まれに見る出来の良さだと思う。文章が少々一辺倒なのと店の全体像への言及が少し少ないのが難かな。細かい描写が多く店全体の感じが掴みにくいところがあるのだ。各章末のコラムはとても面白い。
プロのライターが書いた本には生活がない。生活を書けないから料理へのコメントに傾斜していく。そして料理を芸術とまで昇華し評価してしまう。本当にレストランの料理とは芸術なのだろうか。レストランの料理とは生活の中の句読点的「食事」ではないのだろうか…。
ボクは「生活」や「食事」の視点がないガイドが嫌いなのだが、この一素人が書いた本にはちゃんと生活の匂いがある。生活の食事の延長に店がある、と考える人にとっては信頼に足る唯一無二のガイドになることだろう。逆に、料理の何たるかを知らない素人が書いた本なんか信頼できるか!と考える人にはまるで信頼できない本だろう。でも、個人的には、後者のタイプの人とはお友達にもなりたくないからどうでもいいや。
著者の人気ウェブ「快食.com」の単行本化というとお気楽そうだが、実際にこういう風に一冊の本としてまとめることの大変さは(ジバランなどをまとめた経験から)自分のことのようにわかる。
マスコミの東京偏重により東京の店ばかり取り上げられる昨今だが、地方の一都市にもすばらしくも愛すべき店がいっぱいあることを肌感覚で教えてくれるこの本は貴重だ。レストラン好きなら、広島に行く予定すらなくても、本棚に並べておくと幸せな気分になれる。そんな一冊である。
2003年1月 1日(水) 12:00:00・リンク用URL
「勝見洋一の美食講座」

amazon日本を代表する美食家である著者が正面切ってこういう題名で出してきたからにはこれは読まねばなるまい。
読めば読むほど、美食は才能である、との思いがひしひし。金持ちも才能であると同じ意味で。うはは。ほとんど嫉妬してます。まぁ正直ボクには彼と同じレベルの美食は無理だな。財布的にも環境的にも人生的にも。
ま、それは置いておくとして、内容的には「美食講座」という題名から予想されるものではなく、著者の美食遍歴の一端が上質なエッセイとして披瀝されているもの。こういう食べ方・生き方を美食と呼ぶのだよ、という静かな主張が行間ににじみ出ている。けど、文章がいいので嫌味ではない。そこらへんがこの著者の強み。
場所によって味が変わって感じられるワインの話や、ラセールでのダリの話など、印象的な話も多い。各章最後に書かれているおまけの文章もとても良い。全体にオススメな本なのだが、うーん、題名がちょっとなぁ。もっとエスプリの効いた題名にしてくれたらバイアスかからず読めたのにな、と、少し残念。
2002年12月 1日(日) 12:00:00・リンク用URL
「調理場という戦場」

amazon三田の名フレンチレストラン「コート・ドール」のシェフである著者はいままでに数冊名著を残している。特に「十皿の料理」は名作で、レシピとその思い出を語っているだけなのに、何度もの再読に耐える深みを持つ。その「十皿の料理」が横軸だとすると、この本は著者の修行店を順番にたどることで縦軸で彼の人生を鳥瞰できるようになっている。両方読むと欠けているパーツが埋まっていき、見事にひとつの人生が見えてくる感じだ。
前半は傑作に近いと思う。
が、中盤から後半に向けてお説教めいた人生訓が出てきてしまい、ちょっと鼻白む。著者の持ち味は(その料理も含めて)淡々として客観視だと思うのだが。 歳を経て、そろそろ言ってもいいか、という部分はあるのだろうが、少々くどく、謙虚と声高主張の入り交じり方がバランス悪く、前半に感じた感動が色あせていくのを読んでいて感じた。惜しい。
著者のレストランは3回ほど行っているが、最新では去年の今頃行き、そのときはちょっとがっかりさせられた。ハズレがない店(シェフ)と信じていただけに「カラダの調子でも悪いのではなかろうか」と心配した。が、この本を読んでちょっと理由がわかった気がする。人生を語り、説教を始めてしまうと、ある意味自分の言葉に縛られて、人間「守りに入る」場合がある。「自己模倣しだす」場合もある。とても難しいことだとは思うが、まだそうなってほしくないシェフである。
2002年10月 1日(火) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:食・酒
「新・パリでお昼ごはん」

amazonフランス出張中にパリに寄るので、パリでひとりで入れるレストランガイドはないものかと探していた。そしたらお誂え向きにこの本を見つけたのである。パリ好きにはかなり有名な本みたいだ。1997年に出た本を2002年用に構成しなおしたもの。42軒のお昼がとてもいいレストランが載っている。
ま、ガイドではあるのだが、42軒それぞれの紹介が4ページに渡るエッセイになっているのがこの本のミソ。これ一冊読み終えると、ランチを通してパリの様々な断面が疑似体験できるようになっている。そこが秀逸。特にボクみたいな食いしん坊には、そこらのパリエッセイより頭に入りやすく血肉になりやすい。
実際にはこの中の一軒にしか行けなかったが、東京に帰ってからもなんとなくパリを感じたくなったらこの本を開くかもしれない。そんな本である。
2002年7月 1日(月) 12:00:00・リンク用URL
「旅行者の朝食」

amazon名エッセイスト米原万里。「彼女のエッセイにハズレなし」はすでに定説で、ボクは過剰な期待をもって読み始める。この本もその例に漏れず。期待が過剰すぎてちょっとガクッと来たが、エッセイとしての出来はほぼ完璧。いつもはあるはずの哄笑する部分が今回はない、というところだけが不満なのである。気楽に読み流すエッセイとしてはとてもいい時間をボクたちに与えてくれるだろう。
いつもの如くロシアの話題が中心であるが(だって著者はロシア語通訳だから)、今回は「食べ物」に焦点を絞っている。不勉強にもジャガイモの普及の話は知らなかったのでその章が特に印象に残っているな。話題を食に絞ってしまったせいか、いつものキレがない部分もあるが、楽しいエッセイ集ではある。
2002年7月 1日(月) 12:00:00・リンク用URL
「フランス料理を料理する」

amazonフランス料理分析の本は巷にわりとある。が、この本がわりといいのは、フレンチにあまり詳しくない異分野学者(比較文明史)である著者が、詳しくないからこそ書けるわかりやすさでフレンチのいろんな魅力に踏み込んでいるところ。門外漢的であるからこそ気がつく切り口もあり、ボクにはとっても新鮮であった。
フレンチに詳しい人にはすでに知っている話題も多いだろうが、頭を整理する意味で非常に役に立つし、新たな発見も多かった。そして、西洋史的なものがフレンチという切り口でスッと整理できるのも快感。
個人的には、スープに関する諸考察、もともと料理とは見せ物であったという事実、カトラリー系の歴史的ブラウズに目を開かれた。
なるほどーである。ま、個人的興味としての二つ星なので、あまりフレンチに興味がないひとにはもとより面白くない本かもしれない。ただ、内容的には非常に優しく書いてあるのでフレンチ初心者でも楽しめる。
2002年6月 1日(土) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:食・酒
「田中康夫が訊く」

amazon副題が「どう食べるか どう楽しむか」。
雑誌「BRIO」に99年5月〜01年6月まで連載したレストラン見栄講座的連載を再構成した本。連載中も意識して読んでいたが、著者のイイトコロが出たいい連載だった。
著者に「ソムリエに訊け」という田崎真也をインタビューした本があるが、構成はほぼ同じ。著者が初心者のボクたちに成り代わっていろんな質問をプロにしていくというインタビューものだ。その質問が、素人すぎず玄人すぎず、非常にバランスがいいのである。そうそうソコが知りたかったのよー的ポイントをしっかり突いてくれる。著者独特の向上心がいい方に作用した「格好いい客になるためのマニュアル集」とも言えるかも。
青柳から始まって、寿司幸、楽亭、味満ん、燕楽、ふじおか、アカーチェ、タイユバン、バーラジオ、福臨門、スタミナ苑、俵屋旅館など、取材という立場を最大限利用していい思いしやがったなぁとうらやましくなるようなラインナップに細かくインタビューしていく。
注文上手になるためにはどうすればいいか、なにからどう食べるのが正解か、粋な食べ方とは何か、何が本当においしいのか、など、読者に成り代わって丁寧に質問してくれている。初心者よりある程度知っている人の方が「目から鱗」が体験できるかもしれない。
個人的には中華ととんかつに目鱗。中華は知っているようで知らなかった分野。ほーこういうことになっているのかーと素直に感動した。こうやって楽しむべしというマニュアルに使うより、行間をちゃんと読んで、より食べ巧者になるために活用したい。そんな本である。
2002年5月 1日(水) 12:00:00・リンク用URL
「食物語」

amazon副題は「フードストーリー」。
著者の本はずいぶん前に「キャンティ物語」を読んだことがある。とても印象的だった。その著者がいろんなレストランや旅館、バーなどで生きてきた人間くさい人々を書いているノンフィクション。料理人がほとんどであるが、ブリュッセルの豆腐職人や熱海のレストラン兼業医師、沖縄のバーのオーナーなど、変わり種も多い。とても静かで落ち着いたタッチのノンフィクションで、その人の人生がじんわり伝わってくる。
料理人を取材して書いた本はゴマンとあるが、その中でも出色の出来だと思う。必要以上に崇めていないのが気持ちいい。いい距離感なのだ。職人の半生として等身大に描けている。だから泣ける。特殊の才能がある職人ではなく、ひとりの人間の人生として書いてあるからだ。題名が普通すぎるのが難な気もするが、この普通さは狙いかも。そういう本だ。
2002年4月 1日(月) 12:00:00・リンク用URL
「美食家列伝」

amazon帯に「グルメの元祖、ここにあり!」とある。
読んで字の如く美食家の列伝であるが、そこにはほとんど文学者が並んでいる。それも古ーい人たち。明治大正昭和の作家有名人の食のエピソードとかが満載されている本。だからブンガクもビショクも好きという人にはいろいろ面白いと予想されるのだが、これがまた意外なほど面白くないのである。だいたい彼らは美食家なのか?とハテナハテナが頭を渦巻く人選だし、エピソード的にもたいしたことないことを大仰に書いていたりする。へーあの地味な古い店にこんなエピソードが!と驚く部分が少々あったのが救いか。
題名も誤解を呼ぶ。美食家というより「食いしん坊文化人列伝」程度な気がする。美食のエピソード的には「あまから抄」とかの方がよほどよく出来ているし、本当の美食家を集めるなら人選を誤っていると思う。かなり不満。
2002年3月 1日(金) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:食・酒
「舌づくし」

amazon季刊誌「四季の味」での著者のコラムを集めたもの。
すべてのコラムが料理や味の思い出に収束しているから一見食べ物が主役の本のように思えるがさにあらず。テーマは確かに「味」ではあるが、ある時はメインディッシュになり、ある時は付け合わせになり、ある時は調味料になり、著者の半生というお皿を様々に彩る役目しか得ていない。であるから、味エッセイと括ってしまうと的を射ないことになる。というか、そう括ってしまいたくない魅力に溢れた名エッセイ集だ。
フルブライトで留学し、毎日新聞社を経てサンデー毎日の編集委員などを歴任した著者は、とにかく経験豊富。世の中の見方も一元的ではなく、たいへん「大人」である。そしてまたそれを静かで味わい深い文章に託せる筆力を持つ。菊池寛賞や日本推理作家協会賞、新潮学芸賞などを受賞しているのもうなずける文章力。一読魅了されてしまった。
ほとんど半生記に近い構成である。このエッセイを読むことで著者の半生は浮き彫りにされてくる。淡々とした名文で綴られたそれは季節と味と様々な人生が交錯して飽きさせない。決して派手ではないが、着飾らない素朴で滋味溢れる食事をしたあとに感じるような深い満足感。折に触れ読み返したい本になった。
2002年2月 1日(金) 12:00:00・リンク用URL
「贅沢入門」

amazon著者がWebマガジン「JUSTICE」に連載していた「福田和也の『目』」というコラムをまとめたもの。
食・遊・知・旅といった分野での著者のいろんな贅沢趣味を少々の嫌味を顧みず書いたもので、ウェブ上のコラムということもあり、かなり気楽にプライベートに書いている印象を受けた。独善的にすら感じられるコラムもあるが、実用的な贅沢に役に立つことはもちろん、ある種精神的ハイソに毎日を送る術がしっかり書いてあって面白い。
しかし、かなり「贅沢」ではある。読んでいて鼻白む部分もずいぶんある。きっとくだらないことには徹底してお金を使わないのだろうが、ある意味お金の使い方として迫力を感じた。そしてそういう「贅沢」が自らを刺激し、自らのクオリティも高めてくれることを著者はしっかり自覚している。自らを高めるためにちゃんと贅沢しなさいよ、と読者に語りかけている本でもあるのだ。
2002年2月 1日(金) 12:00:00・リンク用URL
「恋する料理人」

amazon徳島、そして東京の日本料理店「青柳」「婆娑羅」「basara」の総料理長として著名な著者の料理エッセイ。別に彼の恋物語が書いてあるわけではなく、料理に恋した料理人の現段階での総決算的エッセイという感じだ。
そう、総決算と取れるのは、かなり自信に満ちたエッセイだからだ。謙虚な料理エッセイが多い中、異例と言ってもいいくらい自信に満ちている。自分は料理技術的に頂上にいるんだということをそろそろ表明してもいいでしょ?的スタンスで書かれている。日本人的にウェットに読むとこれはかなり嫌味だが、ドライに読めば、だからこそ面白いということになる。両面あるなぁ。ただ、自信を前面に押し出した料理は、客のための料理ではなく自分のための料理であることが多い。文章もまたそういう面はあるだろう。客(読者)のために心を尽くされた感はあまりなかった。でも面白いことは面白い。だって頂上の人では確かにあるから。
いくつか共感した一節がある。例えば「一年中あらゆる野菜が溢れ、旬がなくなってさみしいということがよくいわれます。しかしそれは間違いだと思うのです」という一節。わりとボクも同じことを考えていた。四季を通じてさまざまな野菜に出会えるのは、昔を考えればバラダイスであるよね。
2002年2月 1日(金) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:食・酒
「ラーメンを味わいつくす」

amazon「TVチャンピオン第7回ラーメン王選手権」で優勝した著者のラーメンエッセイ+お奨めラーメン店350店リスト。
ボク個人は、実は、あまりラーメンに固執していない。世のラーメンブームでいわゆる「天才ラーメン職人」が多々輩出しているのをかなりネガティブに見ているくらいで、なんというか、ヒトが言うほどラーメンに「舌の上の芸術」的深みを感じないのだ。経験不足もあるだろう。まだラーメンにビックリさせてもらったことがないのが大きい。早くラーメンでビックリして、世のラーメン好きといろいろ話をしてみたいとは思うのだが…。
ということもあって、ラーメン本というよりは、ある食に凝った著者のエッセイとして読んだ。
さぬきうどんや沖縄に凝った経験上、その方向性は共感たっぷりである。で、この手のラーメン本がほとんどラーメン道みたいなものに偏りすぎているのに比べて、この本はわりと客観的に凝った軌跡が書かれているので、ラーメンの味自体に共感持てないボクでも胸焼けせず非常に面白く読めたのである。
巻末の350店リストを見ると、行っている店もわりとある。うーむ…。これは!と思わされるラーメンを探してもうちょっと食べてみよう。淡々とした文章だがなんとなくラーメン欲が出るいいエッセイであった。
2002年2月 1日(金) 12:00:00・リンク用URL
「ファストフードが世界を食いつくす」

amazonアメリカでベストセラーになった本である。
マクドナルドに代表されるアメリカの巨大ファストフードチェーン産業が目指す「世界中同じ味」「安価であるための効率至上主義」の経営方針が、伝統的な食文化や多用な農業形態を壊し、食の工業化を招き、産業構造自体を破壊し、他国の文化をも破壊していく過程をじっくりと描いて、読者に戦慄を与える本だ。
マクドナルドやケンタッキーがいかに生まれいかに大きくなったかの伝記的部分はわりと面白い。
そしてそれが目指す効率主義のため、食が工業化されていく実態、食肉処理場の劣悪かつ不衛生な現状、人間の労働環境を根底から変えるシステムの是非、フライドポテトに使われる天然香料のウソなどが、どんどん白日の下に晒されていく。そして、ファストフードが安価であることのカラクリも見えてくる。見た目は安価だが(だって65円だもん)、肥満解消にかかる費用や医療費、廃棄物が川や海を汚し牧場が森林をなくしていくことによる環境破壊による負の費用など、社会が負担するコストの高さも明らかにしてくれる。
問題意識を喚起するという意味においてこの本は素晴らしい。ただ、後半、問題点が分散してしまい、印象が散漫になってしまった。導入はいいのに詰めが甘い。題材はいいのに収束点がぼやけている。話題性十分なのにイイタイコトが伝えきれていない。せっかくいい本なのに~と地団駄踏みたくなる。また、巨大ファストフード産業がやったイイトコロももっときっちり評価して、そのうえで冷静に結論を導いて欲しかった。と、いろいろ惜しい本だけど、興味がある方にはとっても面白いと思う。
2001年12月 1日(土) 12:00:00・リンク用URL
「ケーキの世界」

amazonテレビ東京系「TVチャンピオン」で準優勝した後、大手乳業メーカーの製菓担当を辞め、フリーの菓子愛好家/菓子コーディネーターになった著者によるALL ABOUTケーキな本。
ティラミスーなどのブーム菓子の裏事情や洋菓子発展記、各国ケーキ図鑑など、内容は果物がぎっしり詰まったタルトのように濃い。もっとメレンゲのようなフワフワさを予想していたボクはちょっとビックリ。だってこの手の本って表面をさっと撫でただけの本が多いんだもの。
そういう意味ではなかなかいい本だ。菓子ブームの裏事情はオモシロイし、ケーキの歴史も一度さらっておくにはいいし、各国ケーキ図鑑もフレンチでデザートに目覚めたボクにはとっても参考になった。オススメのケーキ屋さんが載っているのもうれしい。ただ、全体的に資料集的な雰囲気を醸し出してしまったのが興味本位の読者にはつらいかもしれない。ケーキ好きの人には読み応えがあるだろうが。
2001年11月 1日(木) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:食・酒
「東京広尾アロマフレスカの厨房から」

amazonゴマンとある東京のイタリアンレストランの中で、ボク的にトップな一軒と思っている「アロマフレスカ」。そのシェフと食ライターとの対談(というかかなり独白に近い構成)を一冊にしたもの。シェフの修業時代の話や、料理、マナー、ワインの話の合間に要所要所で彼のレシピが挿入され、いいテンポで話は進む。レシピもエッセイ風に書かれておりいい感じ。
ただ、帯に書かれているような「いま最も予約のとりにくいイタリアン--人気の秘密がここにあります」というような内容ではない。秘密はわからない。食ライターのツッコミが足りないのかもしれない。単に人気シェフの四方山話に終わってしまっているのが残念。東京というある意味先端な大都市で大人気を博しているリストランテである。もっとその秘密に迫れば、ニューヨークやローマの先端シェフも読みたくなるような本に仕上がる可能性もあったはず。そういう意味では非常に中途半端な本になってしまった。いい素材を使ったのに料理の仕方をミスした感じ。
個人的に「へー」と思ったのは、肉は骨付きでないと熟成が進まないというところと、スパゲティはフォークを反時計回りに回した方がはねなくて食べやすいというところ。些末な部分だけどね。
2001年11月 1日(木) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:食・酒
「星をつかむ料理人」

amazonフレンチレストランファンなら一度は聞いたことがあるだろう、小田原の幻の名店「ステラマリス」のシェフだった吉野氏の半生と日本人初のミシュラン一つ星への挑戦(正確に言えば中村勝宏シェフが取っているが)を、本人とテレビディレクター(星が取れるかどうかの取材番組を作った)が、主観と客観で書きつづった本。
章ごとに料理名を配した構成、素直な主観でつづったシェフの文章、短くも簡潔な源氏のフォロー、それぞれがきちんと絡み合い、とてもいい本に仕上がっている。
料理人の想い、完成された料理、レストラン業界の表と裏、挫折、雌伏、そして常に上を見つづける視線・・・すごく盛り上がりのある本というわけではないが、志の高い静かな料理を食べたような、そんな読後感。料理やレストランが好きな人ならかなり楽しめる本だと思う。
2001年9月 1日(土) 12:00:00・リンク用URL
「もしも宮中晩餐会に招かれたら」

amazon副題は「至高のマナー学」。
一見堅苦しいマナー集のようだし、だいたい「宮中晩餐会になんか招かれるかい!」ってな感じで、なんか読む気も失いそうであるが、読み始めるとそんな先入観を覆し、なかなか楽しめる。
ええ、ボクだって宮中晩餐会に招かれる可能性は確実に0%だ。でも、ここまでちゃんとシミュレートしてくれると、なんか新しい世界が開けたみたいで興味深いのだ。
そう、実用なんか関係ない。なるほど日本の頂点たる宮中晩餐会ってこういう風に進行し、こういう風に料理が出て、こういう用意がいって、こういう喜びがあるのね、と知れるだけでも楽しいではないか。
著者は元宮内庁管理部大膳課主厨。晩餐会で料理を作った彼によるバーチャル晩餐会。知らない世界を知れるという意味だけでもなかなか面白いよ。
2001年6月 1日(金) 12:00:00・リンク用URL
「旨いメシには理由がある」

amazon副題は「味覚に関する科学的検証」。
著者は九大のシステム情報科学研究員教授で「味覚センサー」を開発(びっくりするほど原始的な機械だが、非常によく出来ている)。それにより、人間がおいしいと思う感情は食品のどこで起こるのか、がしっかり分析されていて面白い。うん、面白いのだ。かなり面白い。特に要所要所で出てくる具体例は目から鱗がたくさん。豚骨とかビールとか牛乳とかの分析や「プリンに醤油でウニ味」とかの例示も興味深いものがある。なるほどー、味ってこういうことなのか、がよくわかる。
でも、でもでも、ちょいと専門用語多すぎ!
専門用語(化学用語)が多いからこそ価値がある、とも言えるが(同じ主題で専門用語なしだったらなんともいい加減チックなものになるだろうし)、読んでいて苦痛になるほど多いとちょっと考えもの。内容的にはとっても面白いのに、再読したくないのはこういうところ。専門用語が苦痛じゃない人には三ツ星な本であろう。きっと。
2001年5月 1日(火) 12:00:00・リンク用URL
「板前修業」

amazon数々の名店で修行したあと「銀座しも田」という店(ボクはまだ行ったことない)を開いた板前が書いた「板前修業紙上体験」である。
そう、読者はいうなれば「板前修業」というカルチャースクールの講座を受けている生徒、というような設定。著者は軽妙洒脱な話し口調で、板前の様々な技を披露し、教えてくれる。語りかけがやさしいから専門的な部分も抵抗なく読み進められ、隅々まで退屈せず読めるからこそ見えてくる全体像みたいなものが、板前の本当の姿をより浮き彫りにしてくれている。専門的な部分と全体像のバランスを取る、というとっても難しいことがスラリと出来ているのがこの本の出色なところであろう。
個々の料理法や魚の見分け方さばき方なども参考になるから、そういう興味がある方にもいいかもしれない。
2001年3月 1日(木) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:食・酒
「美味しい方程式の原点」

amazon「美味しい方程式」シリーズ三冊目。
シリーズ最終なのかな。人気シリーズなのでまだ続く可能性もあるけど、続くとしても薄く引き延ばしたものになる気がするので個人的にはこれを最終にした方がいい気がする。
ボクはこれをベッドで寝転がりながら読んだ。まさに「読ませる料理本」として成功している。読んでいるだけで料理の本質が見えてくる。そういう意味でこの本はいまから料理を覚える方が手を動かす前に読むべき本かもしれない。
また、「考えさせる料理本」としても成功している。このレシピはこうすべき、というレシピ紹介本とはまるで違う。特に三章などは方程式の応用問題で読んでいて楽しい。ただ惜しむらくは応用問題にもっと贅沢にページを割いてほしかった。「かつお」を使って何作ろう、と考える余裕を読者にもっと与えて欲しい。すぐに答えを与えずいろいろ考えさせて欲しい。いろいろ考える過程に著者もついてきて欲しい。そこが惜しい。
難点はデザインが中途半端になってしまったこと。レシピ紹介と読ませる部分が両立していない気がする。シリーズ的にデザインは一貫して斬新だが、今回は読ませる部分が多かったせいか、横組み縦組みの入り交じり具合や写真の入れ方、大きなフォントの使い方が多少心地悪くなってしまっていた。惜しい。
2000年12月 1日(金) 12:00:00・リンク用URL
「ロスト・ジェネレーションの食卓」

amazon「ロスト・ジェネレーション」って良く使う言葉だけどどういう意味かわかっている人はわりと少ない。
調べたら、これは第一次大戦後の若者をさす言葉。正しい礼儀作法を身につけるべき18から25歳に軍隊暮らしをした男をさして、しつけが出来ていない世代という意味でフランスの誰かが言った「ジェネラシオン・ペルデュ」という言葉をヘミングウェイが英語に直訳した、ということらしい。だからそれを「失われた世代」と邦訳するのは二重に間違いを犯していることになる。失われた世代、って訳語は格好いいけどね。でも意味的にはまるで違うニュアンスになってしまった。
副題は「偉大な作家・芸術家たちは何を食べてきたか」。
ヘミングウェイ、フィッツジェラルド、ピカソ、ガートルードなどのロスト・ジェネレーションの有名アーチストたちのエピソードを紹介し、そのエピソードに出てくる料理をくわしいレシピとともに紹介した本である。
全部にレシピがついているのが良い。また訳注も充実していて素晴らしい。例えばシルヴィア・ビーチとジェイムズ・ジョイスが初めて出会った夜の料理のレシピをくわしく読む、それだけでまるでタイムマシンに乗ったようにその夜にボクたちは行けるのである。このリアリティはなんなんだろう。急に親近感がわき、その夜の会話の雰囲気まで眼前に浮かび上がってくるではないか。おもしろいなー。
料理に興味があり、文学にも興味がある方はぜひ読んでみると良い。日本では嵐山光三郎が「文人悪食」を書いているが、あれもくわしいレシピがあったらもっと良かったなぁ。難を言えばこの本、値段が異様に高い。意味もなく巻頭に観光ガイドみたいなカラー写真がついているからもあるだろう。再現した料理の写真ならわかるが、こんな写真は無駄。その分1000円は安くして欲しい。だって360ページほどの普通の本なのに3500円! 許せないでしょ?
2000年10月 1日(日) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:食・酒
「駅弁学講座」

amazon日本独自の食文化「駅弁」についての考察本。
JTBの月刊誌「旅」で16年間駅弁行脚をした名コンビが書き下ろした駅弁雑学集でもある。駅弁にどんなものがあるかといった初心者系ではなく、駅弁こぼれ話的マニア話が多く読んでいて面白い。中途半端に妥協してないし。
ただ、その分、総花的な資料部分と講義的お話部分が混在してしまい、全体にごちゃごちゃしてしまったのが残念。
知りたい情報を後から探そうとしてもなかなかたどり着けなかったりする。構成をもうちょっとすっきりさせたらより良くなったと思う。イイタイコトが多い時になりがちなパターンなんだけど。
個人的には「幕の内弁当の条件」がわかってスッキリした。正しい幕の内弁当とは「ご飯は小さな俵型に握ってあること」「おかずに煮物がしっかりついていること」が必要条件らしい。うーむ。俵型が必要条件とは知らなかったー。
2000年10月 1日(日) 12:00:00・リンク用URL
「回転スシ世界一周」

amazonこの頃の回転スシの世界制覇のイキオイはすごいものがある。
この本は著者がパリ、ロンドン、アムス、NYC、ロスと16日間に渡って海外の回転スシを食べまくった記録である。果たして回転スシを海外の人はどう捉えているのか。回転スシ文化はどう根付いていくのか。どうしてこんなにスシが流行っているのか…。そういう問題を考察しつつ、著者はとにかく食べまくっているのである。
現地のスシ事情やインタビューなどは興味深いし、世界がどうスシを捉えているのか、読むに従って理解できてくる。
ただ、それ以上のものはここにはない。ちょっと気のきいたライターでも、現地コーディネーターに恵まれれば同じようなものが書けるだろう。ボクは「玉村豊男がそれをどう感じどう消化しどう発信するか」がもっと読みたかった。そういう意味での突っ込みが足りない気がする。著者独特の匂いがない本に仕上がってしまった。そこが残念でならない。企画も題材も著者もいいのに惜しい一冊。
2000年9月 1日(金) 12:00:00・リンク用URL
「趣味は佃煮」

amazon副題は「ある大学教授の『無趣味』からの脱出」。
無趣味だった大学教授が佃煮をはじめとする乾物系珍味製作にはまっていく様子を飄々と書いている。この飄々さ加減が、予想外に面白く、わりと楽しめた。
こういった本はありがちで、だいたいが自慢に終始するのだが、この著者の自慢は嫌味にならないし、自慢自体もそうはしていない。だから楽しめたのだろう。林望や玉村豊男など、自慢上手はいろいろいるが、自慢すること自体を著者自身が笑っている感じがどの著者にも共通して言えるうまさなのだろう。この著者も結局自分を笑う技術に長けている。
佃煮をはじめこの本に出てくるもろもろのレシピは、ちょっと作ってみたくなるものばかり。ただ、干物にするには空気が悪すぎる環境にいまボクは住んでいるので、そういう系統は出来ない。残念だ。
2000年9月 1日(金) 12:00:00・リンク用URL
「もっと食べたい 私の好きなすばやー物語2」

amazon「わたしの好きなすばやー物語」という名作がまずあって、これはその、久々の第二巻。沖縄そば(現地では「すば」という。つまりそば屋はすばやー)のガイドブックである。副題は「沖縄じゅうの美味しいそば屋さん大紹介と沖縄そばの真実にカラム!」。
沖縄中の店を多数紹介しつつ、それぞれの紹介文が単独なエッセイになっている。著者は複数。どっちかというとレポート集に近いかな。第一巻の手作り感はここでも健在で、それがとても心地よい。なんとなく全体に漂う「てーげー感」が気持ちよいのだ。それと、東京のマスコミにあるような「誉めるために誉める臭さ」がここにはないのもいいな。
それにしても沖縄そば屋の屋号(名前)はバラエティに富んでいるなぁ。面白すぎ。去年、この本をはじめとするいろんなガイドを見つつ沖縄そば屋を80軒ほど廻ったボクだが、また行きたくなってくる。むー、食べたい。
2000年7月 1日(土) 12:00:00・リンク用URL
「中国料理の迷宮」

amazon薄らぼんやりしている中国料理の全体像とその複雑怪奇さなど、普通に中華を食べている分には伺いしれない部分が浮き彫りにされてくる本である。
雑然としていた中華料理という引き出しにきっちり仕切りが入り整理が出来た感じである。あー、なるほどそうなのか、ふーん、なるほどこういう歴史があるのか・・・そう、この本は中華料理を題材に中国の歴史を紐解こうという新しい試みでもあるのだが、そう欲張ってしまったのがちょっと欠点にもなってしまっている。
中国体験豊富な著者のそこここに入ってくる体験談は面白い。ただそれと資料的書き連ねとのバランスが悪いのがこの本を読みにくくしている。歴史や資料の部分をもっと読みやすくしてくれればずいぶん印象が変わったと思う。
2000年6月 1日(木) 12:00:00・リンク用URL
「食べる--七通の手紙」

amazon七人に宛てた手紙型エッセイ。叫ぶ詩人の会のドリアン助川が、食べ物に触発されて書いた手紙エッセイなのだ。
宮沢賢治、川崎のぼる、ポル・ポト、兼高かおる、青島幸男、チャールズ・ダーウィン、そして無名のギンズバーグに似た釣り人…。
語りかけ文体と独白文体が混ざり合って不思議な手紙になっているのだが、体温の高いその文章は読者にある種の昂揚感をもたらす。著者の個人的体験と読者の個人的体験が重なったときは特に強いカタルシスを感じさせる力がある(ボクにとっては川崎のぼるの項)。おもしろい。
でも、リズムに乗り切れないときもあって、そういうときは著者は平気で読者を置き去りにする。残念といえばそこらへんが残念。リズムにだけは乗せてほしかったな、と思うのだ。
2000年3月 1日(水) 12:00:00・リンク用URL
「食の女」

amazon副題は「食のプロと呼ばれる女性十人の生きる知恵」。
岸朝子、今田美奈子、本間るみ子などの著名な食の女(ひと)を生き方、そしてその半生をさらりとルポタージュした本だ。
読めばその人の大ざっぱな半生や考え方は知れる。それはそれでこの本の目的は達しているのだと思う。十人の中に無名な人もいるから、そういう意味では総花的にその人を紹介せざるを得ないのもわかる。字数が限られているという事情(雑誌の連載コラムをまとめたものらしい)もわかる。それらをわかった上で書くが、その総花的さ加減がやっぱり物足りない。手のひらでさらりと撫でるだけなら履歴の域を出ない。食の女ばかり十人インタビューしたのだから、あるテーマを持って(たとえばそれは「なぜ食なのか」でもいいし「男社会を生き抜く辛さ」でもいいし「プロ根性」についてでもいい)掘り下げて欲しかった。
求心力があまりなくて、さらりと他人の半生を読まされて、読み終わっての印象がほとんど残らないのが残念。
2000年2月 1日(火) 12:00:00・リンク用URL
「もし僕らのことばがウィスキーであったなら」

amazonなぜか秋くらいからシングルモルトに凝りだしている。そしたらこんな本が本屋に並ぶようになった。やっぱり流行っているのかな。それともボクが流行の先端を…(やめなさい)。
サントリークォータリーに97年に掲出したアイラ&アイルランド訪問記を一冊にまとめたもの。
奥さんである村上陽子の写真を多用してページ数を稼いでいるが、本文は値段を非常に高く感じる短さ。
文章は清潔で真摯でシングルモルトが行間から香り立つようだが、正直な読後感は「ものたりない」である。長く書けばいいというものではないが、やっぱりストレートグラス3杯くらいで終わっちゃう量だと詰まらないのだ。せめて一晩、ゆっくり飲みながら楽しみたいではないか。こういう本であればこそ。
2000年1月 1日(土) 12:00:00・リンク用URL
「料理研究家たち」

amazon題材よし。藤野真紀子、有元葉子、上野万梨子、北村光世、枝元なほみというそれなりに名前のある料理研究家をインタビューして、その生き方をルポしたものだ。近頃人気の職業だけに時事性には申し分ない。また、ルポとしては浮ついてなく静かな筆致でしっかり書かれており、ある種の好感は持てる。
が、問題は、なんか読んでいてときめかないことだ。静かすぎる。暗い、と言ってもいい。5人の料理研究家たちはそれなりにはずんだ人生を送っているのだが、どうもそれが伝わってこないのが致命的だ。表現的にも、ちょっと純文学調も入ったりして、どうも自己陶酔的ニュアンスを感じてしまう。題材はいいんだけどなぁ。
1999年12月 1日(水) 12:00:00・リンク用URL
「江戸前ずしの悦楽」

amazon副題が「次郎よこはま店の十二ヶ月」。
つまり銀座の名店「すきやばし次郎」から分かれた店を、著者が3年以上毎月一度通い続けて食べ続け、寿司の本質に迫っている本なのだ。面白い。
以前「すきやばし次郎 旬を握る」(里見真三著/文藝春秋)という本を読んだが、ああいう「取材本」よりもやっぱり個人の視点・味覚・感想が入った本の方が面白いよね。そういう好例ではないだろうか。特に味覚表現がとてもいい。素直で実感がこもっている。寿司が食べたくなる。あー、また個人的寿司ブームがきそうだよー。
水谷八郎という職人の素晴らしさもこの本の魅力。ただところどころに彼がタバコを吸うらしき記述が出てきているのが気になるな、個人的には。タバコを吸う人が握る寿司はなんとなく生理的に受け付けないから。
著者の本は「ミネラル・ウォーターで生まれ変わる」「東京名物」に続き三冊目だが、どの本も実に誠実。ただ、きちんと「自分」を出してきているのはこの本が初めてかもしれない。これからの動静が楽しみなひとり。ちなみに著者の本業は映画監督。
1999年12月 1日(水) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:食・酒
「すしの歴史を訪ねる」

amazonうーん。この本を面白いとか面白くないとか言うのは筋違いなのかもしれない。だって基本的に「資料」なのだから。
でも、資料とはいえ、新書版で広く売っているからには少しはエンターテイメントもいるだろう。
よく調べてはあるから興味がある人にはかなり面白いのかもしれないが、ボクだって寿司にはかなり興味がある方なのだ。そのボクが読んでいて退屈した。その辺が新書としてどうなのか、などと議論を始めても仕方がないが、もうちょっとなんとかなったのではないか、と思う。生意気かもしれないけど。
1999年12月 1日(水) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:食・酒
「服部幸應流うまい料理の方程式」

amazon野崎洋光著の名作「美味しい方程式」の題名に似すぎていてちょっとイヤだったけど、内容的にはわりと興味深い項目もあった。
「塩梅の方程式」「旬の食材の方程式」「調理・味付けの方程式」「絶対味覚の方程式」「うまい店の方程式」の各項目別に、著者の秘中の秘を公開しているカタチになっているのだが、良くできている項目とそうでない項目の差が激しいとはいえ、面白い項目もちゃんと存在する。ある程度料理や食べ歩きの経験があった方が面白いが、それなりにわかりやすくまとめてあるので興味がある向きにはいいだろう。
ただ、ショルダーコピーの「達人だけが知っている味覚の黄金律を初めて明かす!」や、帯の「あなたの食の常識がガラリと変わる!」はずいぶんオーバー。ちょっと誇大。
1999年11月 1日(月) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:食・酒
「ウナギの科学」

amazon副題に「解明された謎と驚異のバイタリティー」とある。
まぁウナギ学の最先端がここで読めるわけだ。
こんなにポピュラーな魚なのにほとんどその実体が解明されていないことで有名だったウナギだが、なるほどなるほど、こういう魚だったのね。でも・・・かなり興味がある人でないと読めない。ほとんど学術論文。かく言うボクも興味のある項を拾い読みしただけ、かも。寝る前の睡眠薬にはなったのだけど。
それにしても、魚の中で最も硬い、というウナギの生身、一度囓ってみたいなぁ。ゴムと同じ硬さだというから噛みきれないのだろうけど。
1999年9月 1日(水) 12:00:00・リンク用URL
「TOKYO RESTAURANTS」
ニューヨークなどでいつもお世話になっているザガットの東京版がついに出来た。ジバランの団長をやっている身としてはなかなかに複雑だが、冷静に考えて次のことを思う。
さすがだなと評価できる点は次の3つ。
労作であること。地区別索引、目的別索引、地図などが充実していること。コンパクトな外観であること。
それに対して全く評価できない点は次の3つ。
客の年齢層やレベルを徹底的に無視して平均点を取ったこと。5000円を高いと思うかどうかのレベルも合わさずどうやって評価するのだろう。20才のお嬢さんと40才のオヤジでは舌や雰囲気に対する印象もまるで違う。それらを無視して平均してしまったことで「ぴあランキンググルメ」とさして変わらない内容になっていると思われる。
二つ目は最新データとはとても言えないこと。ザガットのアンケート用紙を見る機会があったが、文中に小さく「最近一年の」とは書いてはあるが、記入者はそんなこと気にせず「いままで行った店すべてについて点をつける」であろう。まぁ表題に1999年版と書いてないのでいいのかもしれないが、10年前に一回行っただけという店を平気で書いている人がいっぱいいると思う。いいのか?
三つ目は同じくアンケート用紙で「評価基準がまるで定かでないこと」。適当に気軽に「あー、味は6点かな、雰囲気はそうね8点!」とかつけちゃえる。そんな適当な評価を人々から集めたとしてもその結果はいったい何かを語るのであろうか。
アンケート用紙もわりと業界系若手に多く流れており、レベルも金銭感覚もばらばら。まぁスノッブ版ぴあランキンググルメと思っていれば間違いはないだろう。でもまぁ労作だしコンパクトな電話帳がわりにはなる。
1999年7月 1日(木) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:食・酒
「デパートB1物語」

amazon帯に「デパ地下ファン、必読! シビアな商戦、泣き笑いのドラマ。デパート食料品売場の全貌と魅惑がここに!」とある。うーん、読みたくなるでしょ? ならない? でもまぁそんなに興味がわかなかったら読まなくてもいいかも。
作者は渋谷の「ブールミッシュ」という洋菓子店の社長で、彼の一人称で書かれているのが新書的ではなく面白いと思ったけど、内容的には一人称な分ちょっと中途半端になってしまった。
最終章の「世界の名店たち」がわりと個人的には興味深かったけど、それ以外はなんだかあり得る展開で、もっといろんな客との確執やら事件やらなにやらで盛り上げてくれる物とばかり思っていたボクはまるではぐらかされてしまった。総花的すぎる気がする。
でも、ドラマとかになるかもね、この題材。表題は魅力的だし。
1999年7月 1日(木) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:食・酒
「灰に謎あり」

amazon沖縄の本を書いていて(「胃袋で感じた沖縄」さとなお著/コスモの本/1500円/6月20日頃発売)、沖縄そばの項で「灰汁」の不思議にぶちあたった。
それで灰に興味を持って、本屋で見つけた本がこの「灰に謎あり」。
灰と生い立ち、灰と料理、灰の恵み、灰の効能、灰の恐怖などなど、灰にまつわることをかなりの専門性をもって追っており、昔から人はこんなに灰に関わって生きてきたんだなぁ、と感慨を持つことは持つのだが、それ以上でもそれ以下でもない。研究論文とエッセイの中間の中途半端さも手伝って、なんだか物足りない。読んでいて快感がないのは題材が地味なせいかな。よく調べて書かれてはいるのだが…。
ちなみに「沖縄そばと灰汁」についてはまるで触れていなかった。そのことも個人的には残念。
1999年6月 1日(火) 12:00:00・リンク用URL
「渡辺文雄のどこへ行っても美味珍味」

amazon「食いしん坊俳優」という職業柄であろう(どんな職業や!)、いろんな体験を積んでいる著者の日本全国美味紀行エッセイ。
わりと「体験総まとめ」風に書いてあるのでわかりやすく読みやすい。
ただ、その分イキオイはない。ぐぐっとつり込まれて「うぅ、食べたい!」と思うような描写や表現がない。その点がちょっと残念と言えば残念。こういうエッセイは「どこまで上手に自慢するか」がキーだと思うのだが、著者はちょっと枯れて書きすぎているかもしれない。
面白い章はあるのだが、全体に「そそられない」のが食エッセイとしては弱いところ。まぁ目新しい事実が特になかったせいもあり、ちょっと内容が薄く感じられた。
1999年6月 1日(火) 12:00:00・リンク用URL
「新潟はイタリアだ」

amazon副題「躍る食材テンコ盛り」。
新潟の食を「イタリア」に見立てて詳しく深く掘り下げている本で、内容的には興味ある人には面白い部分も多い。新潟を見直すにも役立つ。行ってみたくなる。
ただ、惜しいのは「レポーター文体」だ。
きゃーきゃー騒いでいるテレビのレポーターがそのまま紙の上に乗り移ったかのようである。なんというか、バラエティ文体とでも言うのか…。まぁ実際に著者はBSN新潟放送のレポーターなのだから、それが個性だと言われればそれまでなのだが、読んでいてちょっと辛い部分が多かった。マイクを筆に持ち替えてここまで書くのはかなり大変であったと推察させられるのだが、全体にもう少しだけトーンを抑えて欲しかったかも。新潟に行ってみたくはなるのだが…。
1999年5月 1日(土) 12:00:00・リンク用URL
「さらに、美味しい方程式」

amazon名作「美味しい方程式」の続編。
前作であそこまで完璧に方程式化している分、続編はどうしても細かく各論的になってしまい、なかなかつらい。ものすごく整理してくれた前作に比べて、シンプルさが壊れてしまっているのである。文字数も思ったより多くて、前作のシンプルさを愛していた者としては違和感がある。
内容的には「美味しい二次方程式」といった感じで、より難易度が高くなっている。それはいいと思うのだが、難易度が高い部分を強烈に整理してくれた前作との差がその分明確になりすぎてしまったかもしれない。
それと、どこに何が書かれているのかがわからないから(目次のつけようがなかったのかもしれないが)、あらこれは1ページ目からしっかり読む暇がないと読めないな、と思ってしまってちょっと気が重くなるところが難である。各論的に展開するなら、方程式ごとに見出しをつけて、目次かなにかでわかりやすくしてくれないと、山がどのくらいの高いのかがわからない。そこもちょっと残念だ。いっそのこと「チャート式」参考書的にするとか。
逆に言うと、腰を据えてじっくり読み出すと、かなり面白い。台所に立って実験してみたくなる。そこらへんはさすが。
次は画期的な「応用問題集」「練習問題集」を期待する。なにしろこちとら受験世代にて、方程式を覚えたら問題集がやってみたくてしょうがないのだ。
1999年5月 1日(土) 12:00:00・リンク用URL
「それでも真っ当な料理店」

amazon前作「いまどき真っ当な料理店」の最新版。なかなか粘着質な批評で思わず「真っ当ではなくて納豆か」と思ったりしたりして(ツマラン!)。
相変わらず言いたい放題であり、その視点の中に共感できるもの、納得できるものがあるのも認める。
が、ちょっとイヤな部分も目につく。例えば、シェフなどの私生活的裏話をして、それをもってそういう姿勢でやっている店もダメ、みたいな評価の下し方。そのスタンスは頷けない。また、ある項で「僕が来たから力を込めて作ったんだと友人に言われた」みたいな記述が出てくるが、著者ならそれは当たり前である。そういうことが他の店でも十分起こりえ、また実際に起こっていることにどのくらい気がついているのであろうか。基本的に著者と一般人とでは出てくる料理は違うと思った方がいい。なのにどこをもって「真っ当」の判断をするのだろうか。わからない。
シェフの腕がいい、とかの判断は出来よう。でも「真っ当」となるとまた別ではないか。辛口批評が存在しない日本においてこの本の功績は認める。が、前作よりも、ちょっと一般人の「真っ当」と著者の「真っ当」の視点がズレ始めていると感じる。
1999年5月 1日(土) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:食・酒
「味覚の探求」

amazon4年前の出版物だが、初読。
著者の本はいままでに何冊か読んでいるが、これが一番読んでいて楽しく面白かった。
食に関するルポルタージュで、旨いの基準を探ったり、食べる仕事の本音を語ったり、美味しいとはなにかをさぐったり、とても興味深い掘り下げが随所にある。労作だと思う。こういう本を書くのは大変だろうなぁと素直に感じる。著者が素直に語っているからだろう、内容的にいろんな本音がかいま見られて、共感するところも多かったし、へーと驚くことも多かった。
あぁ、なんだか小学生の感想文みたいになってしまった。いや、なんだかちょっと他人と思えなくて。なんとなくですけど。
1999年5月 1日(土) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:食・酒
「アジア菜食紀行」

amazonインド、中国、ベトナム、タイ、そして日本…。文字通りアジアを菜食という切り口で旅して調べた労作。
紹介ば多くちょっと総花的なところはあるが全体としてわかりやすい。世界でも異色の菜食文化が育ったアジアがゆっくり立ち上がってくる。ただ、ちょっと文章が生真面目すぎるのが難かな。著者の驚きが伝わってこないのだ。
ジャイナ教の厳格なる菜食主義はタマネギなど、根の植物も「食べることによって植物を殺すから」食べない、というのは知らなかった。この、殺さずに「分けてもらう」という思想から見た菜食と自身の健康目的だけの菜食との隔たりは大きい。
1999年3月 1日(月) 12:00:00・リンク用URL
「コンビニ ファミレス 回転寿司」

amazon思ったより面白かった。
表題の3つの食を手がかりに現代日本の食事情を紐解き、農業やら残飯やら自給率やら子供の食やらに言及している。目線がかなり「お年寄り」なので(著者は64歳)、20代30代の人間には当然のことにも驚きを表明したりしているのはご愛敬だが、その分(ボクたちにとっては)新鮮な視点で探求している部分もあって、いろいろ考えるきっかけとなった。
「飽食」と言われて久しい日本であるが、「豊食」を経て「放食」になったわけですね(まぁそんなことはこの本のどこにも書かれていないのだけど)。食はその国固有の文化であると思うけど、確実に「崩蝕」しつつあるようです。
1999年2月 1日(月) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:食・酒
「食べ物情報ウソ・ホント」

amazon新聞の雑誌広告などは相変わらず「○○で△△が治った!」などの健康食品宣伝文で埋まっている。確かに治った人もいるのだろうが、実際に科学的に分析したらどうなのか、知りたくない?
本書は副題が「氾濫する情報を正しく読みとる」とあるように、そういう宣伝文のウソをある程度暴いてくれる(もちろんまだ科学的に良いとも悪いとも言えないものもある)。
コラーゲンを食べると肌がつるつるになる、とか天然酵母は体にいいとか、一見科学的に読めるいわゆる「フード・ファディズム」について科学的検証を加えているのだ。内容自体は知りたかったことだしとても有益だったが、難点はこの本に書かれている告発情報と、先の宣伝文とがだんだん区別が付かなくなってくることである。いったいどっちが正しいのか…。まぁそれを自分で比較検討できる目を養えるところが、この本の最大のイイトコロかもしれない。
1999年1月 1日(金) 12:00:00・リンク用URL
「料理の鉄人名勝負十二番」

amazonフジTVの「料理の鉄人」の名勝負を、鉄人・挑戦者の舞台裏の駆け引きや感情の動きを追いつつ再現したもの。
TVを見ていたボクとしてはわりと楽しんだのだが、TVのアンチョコの域を出ておらず、本というメディアの特性をまだ活かし切っていないのが残念。
TVの補佐にまわるのではなく、もうちょっとその料理人(特に挑戦者)の生い立ちや経験にしっかり踏み込んで、TVでの勝負までの人生を本的にドラマタイズし、ある種の料理ノンフィクションに仕立てることが可能だったと思うのだ。
勝負も12本もいらない。
3本くらい、きっちりした書き手に書き下ろさせていたら出版界でもある種のムーブメントを起こせた企画になった気がする。惜しい。
1998年12月 1日(火) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:食・酒
「美味しさの力」

amazon副題が「生命あふれる奇跡の食材」。
著者の作り出す農作物の評判は聞いていた。いわゆる緑健のトマトが一番有名だが、こうして「永田農法」としてまとめて読むとなかなか圧巻である。今すぐにでも彼の農作物を口に入れたくなるし、汚染された偽物の食卓に別れを告げたくなる。
「福岡正信の自然農法」に興味があって何冊か読んだことがあるが、あっちが哲学がらみなのに比べるとこちらは哲学をあまり語らない分たいへん平易で逆に信頼性を増している。ただ、題名が普通なのが残念だ。例えばずばり「永田農法」とかした方が彼の農法は普及すると思う。そして普及してほしいとボクは願う。
それにしても、彼の作った野菜は当然だが、特に卵とワインには惹かれるなぁ。手に入らないかなぁ。
1998年12月 1日(火) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:食・酒
「世界ワイン大全」

amazon講談社が出している「世界の名酒事典」は便利だが、すべての洋酒に言及しているのでワイン部門が浅かった。どこかでワインに絞って「名酒事典」みたいなことしてくれないかなぁ、と思っていたらやっと出た。分厚いムック版。
監修の渋谷氏は実はあまり好みのソムリエではないのだが、まぁ労作には変わりない。14000本を収録していて、生産者別に分類、生産者の解説があるのも便利。特に現時点での一般小売価格がわかるのがうれしい。いっそのこと全ワインが写真付きだとなお良かったのだが。
1998年12月 1日(火) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:食・酒
「フランスワインガイド」

amazonフランスに限定して生産者別にワインを分類したもの。
写真はまるでないが、事典としてはかなりの充実。分厚いが、それでもすべての生産者を網羅するわけにはいかなかったようだ。ただ、各地区において著名・老舗・新鋭など、重視できる生産者はすべて載せていると書いてあるだけに、ラベルを見てこの本で検索し、その生産者が載っていればまぁちょっとだけ安心、ってなところだろうか。簡単な紹介文も載っているが、これはすごく便利というほどのものではない。これまた労作ではある。値段もかなりだが。
1998年12月 1日(火) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:食・酒
「野崎洋光の和食でおもてなし」

amazon名作「美味しい方程式」を出した「分とく山」の野崎氏による丁寧で温かい料理本。
この著者のいいところは前作と変わらない。わかりやすく丁寧にすべてのコツを開陳するところだ。
多くの料理本は、料理数を競うことに汲々としているせいか、「なぜそうするのか」の視点が決定的に欠如している。彼の本は料理数を最低限に絞ってでもその部分の解説にページ数を割き、出てくる料理も応用が利くものを選んでいる。だから読んでいて目からウロコが一杯。彼が丁寧に書くコツをゆっくり読んでいるだけで、「料理とはいったいなんなのか」みたいな大きな地平までもが見えてくる。
1998年11月 1日(日) 12:00:00・リンク用URL
「ミネラルウォーターで生まれ変わる」

amazonボクが水に凝る原因となった本。
おかげで家ではヴィッテル、外ではエビアンが必需品になってしまいました。「単なる水」としか思っていなかったミネラルウォーターだけど、成分を見ていくとこんなに効果の違いがあり、カルシウムを取るにしてもマグネシウムとのバランスだと牛乳よりも優れた飲料なんだねぇ(もちろん商品による)。しかも煮沸殺菌やフィルター濾過をしていないヨーロッパのものがこれだけ優れているとは。
実はミネラルウォーターを効果的に飲んで8キロやせたという人を知っていて、それもあって買ったんだけど、かなり佐藤家の生活に影響を及ぼしましたね、この本。コントラックスにしようかなぁ…。でもアレちょっと飲みにくいんだよなぁ。カルシウム多すぎて。
1998年11月 1日(日) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:食・酒
「メニューは僕の誇りです」

amazon東京は三田のフレンチの名店「コートドール」料理長である著者が書いた第二作目。
前作「十皿の料理」はシェフが書いたエッセイとしてはベストと呼べるものだが、今回も味わい深く楽しめた。文体が素っ気なく素朴で稀薄なのだが、コートドールの料理の演出と似ていてなんだか微笑ましい。シェフの人柄が出ていてあの店に行ったことがある人ならとても楽しめると思う。
あとがきで「前作と多少のダブりがある」と書いてあるが、ボクとしてはもっともっとダブってほしかったところだ。
前作が出てずいぶんになるし読者も同じとは限らない(既読の読者だって前作の内容を覚えているとは限らない)から前の本と合体させるくらい繰り返しが多くても読者は喜ぶと思うのだ。というかはしょっている部分がわりと興味深いところだったりするので(フランスでの体験など)、前作で言及しているのかもしれないがもっともっとそこを読みたくなるのである。そういう意味でちょっと消化不良が残るのが残念。
それにしても、同じように自分のメニューのことを語っているのに、数カ月前に読んだあるシェフの本とはどうしてこうも読後感が違ってくるのだろう。料理への姿勢の違いなのであろうか。
1998年11月 1日(日) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:食・酒
「さぬきうどん全店制覇攻略本」
名作「恐るべきさぬきうどん」シリーズの第4作にして別巻という位置づけか。宝探しにも近い「製麺所・セルフの店・一般店」を香川県全域にわたりほとんどすべて地図に落したという労作。その苦労と情熱にはぜひとも三ツ星を差し上げたいが、なんというか、ちょっとこの企画はやめてほしかったかも。こうして詳細地図になってしまうとさぬきうどん巡りの魅力のひとつである「迷う」という部分が消えてしまうのだ。え、読まなければいいって? んー、まぁそうなんだけどねぇ…。
まぁTJ KAGAWAがやらなければどこかがいずれやっていたかもしれないから、しょうがないかな。超便利だし。ただし、お店の一覧で麺通団としてのひと言コメントをもっとしっかり載せてほしかった。
1998年11月 1日(日) 12:00:00・リンク用URL
「マダム・ルロワの愛からワイン」

amazon副題は「ブルゴーニュ 土の味・風の香り」。
ブルゴーニュの英才、マダム・ルロワのワインに対する真摯な取り組み、そしてビオディナミの考え方はよくわかった。
でも読後感はそれだけかも。
なにしろ著者が素材(マダム・ルロワ)を崇め奉っちゃっているから、なんだか読者は引いてしまうのだ。
なかなかいい素材なのだから、それを冷静に客観的に取り上げてしっかり書いてほしかった。
マダム・ルロワを賞賛し、彼女が言っていることをただ単に書き写しているだけの本なのだ。ええ、そういう本の存在価値は認めます。でもそこからは生身のマダム・ルロワは匂ってこないし、彼女の作った素晴らしいワインを飲むときの付加価値も浮かび上がってこない。もう二歩も三歩も踏み込めばとっても面白いものになるのになぁ。惜しい限り。
1998年10月 1日(木) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:食・酒
「味と香りの話」

amazonなかなか面白い。食べることが好きな人は一回こういう「おいしく感じる仕組みの話」は読んでおいても損はないだろう。
味・匂い・香りの科学的エッセイなのだが、専門用語を多用しているわりには、エピソードのまじえ方がうまいのだろうか、わりと最後までスラスラ読み通せる。ただ、初めの頃のきさくさが、後の方ではなくなっているのが惜しい。
でもあれだな。こういう新書系の科学書って読んだ端から内容を忘れていくな。いったいなんでだろう。
1998年10月 1日(木) 12:00:00・リンク用URL
「フランス美味の職人たち」

amazon雑誌「danchu」に連載されていた「フランス食ものがたり」を一冊にまとめたものである。
どうもフランスものは気取った題名・文体になってしまうようで、それがボクはいつも気になる。書いている内容はとてもいいのだが、全体に「高級でスノッブな香り」がだだもれしてくるのだ。もちろんそれを望む読者もいっぱいいるのだろう。でも十年一日のごとくそれなので、少なくともボクは飽き気味。な
あ、ここまでは一般論含む。わりと著者の本は読む機会が多いが、この本は嫌いではない。著者も嫌いではない。よく取材して書いてある。が、まぁ、上記のような文句がやっぱりあるのである。どうにかこのへんの「常套内容」を打破してほしい。
1998年9月 1日(火) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:食・酒
「懐石料理の知恵」

amazon懐石料理についていろいろ知りたいとずっと思っていたので、新書判で手軽に知識が得られるこの本は最適だった。通勤途上の電車で読めるからね。とにかくその精神、しくみ、さまざまな茶事などがギュッと詰め込んであるので資料としてはなかなかいい。
が、詰め込もうとした分だけ読みづらい。
新書にするのだったらもう少しイイタイコト・伝えたいことを絞ってやさしく書いてほしいと思う。あれもこれもと(グラフなどの資料も含めて)言及しすぎている。捨てるところは捨てて、ボクみたいな初心者でもその根本的精神にじっくり触れられるような仕組みにしてほしかったと思う。贅沢かな。
1998年8月 1日(土) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:食・酒
「メニューの設計図」

amazon著者は東京の有名高級フレンチレストラン「アピシウス」の総料理長。出版社は柴田書店。題名が「メニューの設計図」。こう3つ揃えば、メニューの構築についてのかなり専門的で経験に即した興味深い内容であることが察せられる。少なくとも買う側はそれを期待して1300円払う。
が、残念なことにそれは裏切られるであろう。どういう気持ちでメニューを設定しお客に対してどうアピールしていくのか、という著者ならではの視点があまりになく、一般的なフレンチの話、物価への愚痴、素材への愛などに終始している。もちろん多少深い突っ込みはあるが、それもそんなに目新しい話ではない。メニュー(題名)に偽りあり。そんな感じである。
1998年7月 1日(水) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:食・酒
「日本の居酒屋をゆく~疾風篇」

amazon「ニッポン居酒屋放浪記」の続編みたいな感じである。
もう居酒屋紀行として定着した感があるが、相変わらず臨場感豊かで一緒に旅をしているような感じだ。
ただ、単に居酒屋に飲みに行くだけの旅であるだけに、こう巻が多くなってくるとそれぞれの土地の違い、店の違いが読んでいる側からは眺めにくくなってくる。居酒屋という一幕ものの積み重ねなので、飽きが来ないと言えば嘘になるのだ。このままこの手で行くかどうかを再考するべき時期なのか。いや、まだもうちょっと読みたいかな。微妙に迷う。そんな感じ。
1998年7月 1日(水) 12:00:00・リンク用URL
「文人悪食」

amazon労作にして名作。日本文学好きには堪らない本だ。
近代文学史を文士たちの食の嗜好によってたどってみようとするもので、まずその切り口に目丸。作家の食の嗜好はその作品と密接な関係があり、それを作者ごとにじっくり見ていくその労力に口開。そしてそしてそれぞれが非常に優れた作家論になっているその技に舌巻。
取り上げている作家は37人。それぞれに絶妙の作家論が展開されるが、それはそれ名手嵐山光三郎であるから、ひとつも小難しくなく読者を上手にその作家の世界にいざなってくれる。各作家ごとにかなりの文献・資料を読むせいだろう、著者の文体が微妙に違っていてそれもオマケ的に楽しめるよ。 なおこれは去年の3月初版のもの。
1998年6月 1日(月) 12:00:00・リンク用URL
「最後の昼餐」

amazon根津りえの絵と俳句がとてもいい。この挿絵がなければこの本の魅力は半減であろう。まぁこの絵自体が執筆動機なのだからそんな仮定はありえないのだけど。
根津りえが描いているのは、著名な建築家である著者との「料理絵日記」である。
どちらかが料理を作りそして彼女が描く。それがある程度まとまったので著者が文章をつけたわけだ。大変楽しそうな食卓がページに広がっていて読んでいるこちらも楽しくなる。では文章も浮かれきっているかと言えば、これはそうでもない。透明で静かな文章が続く。これは本の最後の方でわかるのだが、著者が癌に侵されてから書いたものだからだろう。
静かで充足したセンスのいい日常が終息していく様がここにある。まだ著者は健在だが、「一番愛していた時間」をこの本に凍結保存しておきたかったのではないか。読み終わってそう思った。
1998年6月 1日(月) 12:00:00・リンク用URL
「全国380軒 ラーメン鑑定書」

amazon労作である。
全国380軒のラーメン屋を食べ歩きその味を5段階で評価している。
ある種「どんな店でも誉めまくるマスコミへのアンチテーゼ」であると思う。その姿勢はボクとかなり近いところにあるし、独断具合も好きであるが、ちょっと筆圧が強く読者が引いてしまうところがあるのが残念。ここまでするなら筆を押さえて冷静に書いた方が効果的であったと思う。後半の「ラーメン紀行」なる紀行文も期待したほどではなかった。惜しい感じ。
1998年5月 1日(金) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:食・酒
「孤独のグルメ」

amazon漫画である。
主人公がいろんな場所で「何食おうかなぁ」とふらりと街の安飯屋に入る、それだけの物語だが、意外と面白かった。というかものすごくボクの気分に近かった。わりと出張が多く、いろんな街で昼時を迎えることが多いボクだが、一人で飯屋にはいるのがまったく苦にならないどころかどっちかというと好き。そして、その、店がなかなか決まらない「腹はすっからかん、心は宙ぶらりん」の感じ、そのどうにも解決できない突然な食欲、そのなにからも自由な気分、そしてその奥底から癒される感じ……。それらのすべてにとても共感できた。
ストーリー自体たいしたことないので共感もてない人にはつまらないだろうが、こういう「漫画エッセイ」はこれから増えていくんではないかな。空気感がとてもいい佳作。
1998年3月 1日(日) 12:00:00・リンク用URL
「ソバ屋で憩う」

amazonこの本は72軒のソバ屋を紹介した本だが、いわゆるソバ屋ガイドではない。大人のための憩の空間ガイドなのだ。
ソバを愛する人を無理やり二つに分けると「勢い余って自分で打っちゃう求道オヤジ」と「夕方4時の熱燗&蕎麦オヤジ」に分かれると思うが、この本は後者のためのみに書かれている。ボク自身は蕎麦も打つが求道家ではない。どちらかというと後者なので、なんだか共感しつつ読み終えた。
そんな楽しみを追及する人にはうってつけの本ではないだろうか。対談もよく出来ているし、セレクションも妙に納得がいく(地方の店についてはソバという料理に少し寄りすぎている感があるが)。こういう風に視点を絞ってある本って好きだなぁ。
1998年2月 1日(日) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:食・酒
「東京エピキュリアン」

amazonフレンチレストランのガイドブックである。
毎年、見田盛夫が審査して星をつけていたのだが、今年は見田盛夫以外の6人の調査員が「調査員であることを秘して調査にあたり、もちろんきちんと料金を支払いました。こうすることによってこそ、調査の公正さ、正確さを保証できると信じているからです」らしい。そう帯に書いてある。いままでは公正・正確ではなかったということでしょうか? なんかボクが主宰しているジバランを意識していると思うのは自意識過剰かな?
内容はというとあまり去年と記述が変わっていないところも多く、覆面で行って本当にこの星の数?と、個人的には疑問に思うレストランも多い。なんだか視点が中途半端なのだ。これなら「フレンチの大御所見田盛夫個人が審査するフレンチガイド」の方がずっと読みたい。
なお、いままでのしっかりした装丁から一転して安っぽく読みにくくなってしまった。これも実用性を狙ったのかな? はっきり言って読む楽しさが減ってしまった。また、いままで載せていた関西の店もカットし東京に絞った。フレンチの東京集中を助長する行為だと思う。この2つに関しては非常に悲しく思っている。
1998年2月 1日(日) 12:00:00・リンク用URL
「うまいもの職人帖」

amazon題名通り、うまいものを作り続けている職人たちを取材したものである。
なかなかいいなと思うのは料理人だけを取り上げたのではないというところ。
例えば別海の牛乳屋さんだったり和歌山の醤油屋さんだったり山形のワイナリーだったり丹波篠山の黒豆だったり南青山の珈琲だったりするのだ。人選は著者の人脈によるのかな。もっとうまいのがありそうだったりするのだが、それはそれ。職人たちがこのくだらない我々消費者たちを見捨てずにこれからも頑張ってくれることを願いたくなるような本だ。なかなかなごめます。
1998年1月 1日(木) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:食・酒
「今日からちょっとワイン通」

amazonワイン本乱立。でもろくな本がないよなぁとぼやきながら一応すべてチェックするようにしているが、この本は久しぶりの快著であった。
ワインはおいしいけどこの頃のブームはなんだか違う気がするなぁ、本当にこんなことが大事なのかなぁなどと思っていたもろもろのことがすべてこの本に書いてある。するどくも痛快な切り口と書き味。ワインうんちくのウソがいっぱいわかると同時にワインの本当もいっぱいわかるのだ。著者はサントリーで長くワインに携わっている人。その本音のトークがわかりやすい文体と共に好感が持てる。おすすめ。
1998年1月 1日(木) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:食・酒
「エチケット1994」

amazonエチケットというのはフランス語でラベルのこと。つまりワインのボトルについているラベルのことをエチケットというわけ。
この本は、著者がまったくのワイン初心者だった頃の話から、フランスソムリエ協会にもぐり込み、しまいには権威あるワイン試飲会で優勝しそのテーマワインのエチケットに自分の名前が印刷されるに至るまでを書いた、女性ひとりでのフランスワイン修行記なのだ。
どんな著者かわからないままに物語が進むのでなかなかカタルシスが得られにくいのが欠点だが、その素直な目線で書かれたワインのあれやこれやは新鮮で趣すら感じられる。またフランスのシャトーやソムリエ達の描写もおもしろい。雑誌などで脚色されて伝わってくるのとはずいぶん違うまさに生の情報だ。ワイン好きならきっと楽しめる本だろう。
1998年1月 1日(木) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:食・酒
「シャンパンの教え」

amazon前著「ワイン道」はスノッブでくだらない日本のワイン文化を逆手にとった傑作であった。ワインを思いっきりスノッブな位置に祭り上げて的確な効果を出していたのである。
この本は同じ著者がシャンパンについて書いたものだけにかなり期待してしまったが、もともとシャンパン自体ワインよりかなりスノッブであるせいか、前作で使った疑似スノッブ化の効果があまり出ず、ちょっと苦しかったかも。
難しいことではあるが、シャンパンについてはド初心者の読み手(ボク)でも笑えて楽しめる内容までは行き着けなかったようだ。惜しい感じ。
1998年1月 1日(木) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:食・酒
「すきやばし次郎 旬を握る」

amazon東京の名店「すきやばし次郎」の鮨職人・小野二郎の寿司語りを季節ごとに収録。美しい写真と共にその握りの技術を徹底的に踏み込んで取材してある。驚くのはわりとカンタンに小野二郎がその技を明かしているところ。もうちょっともったいぶると思ったが非常に素直に語っている。著者との人間関係もあるのだろう。
「すきやばし次郎」へは一回だけ行ったことがある。非常にオーソドックスな握りで安定しているが驚きにちょっと欠ける気がした。この本を読んでその理由がわかった気がする。基本的には高打率狙いの人なのだ。本塁打を狙った大振りはまったくしない。そこらへんを僕は誤解していたようだ。ちょっときっちり通ってみたくなってきたなぁ、すきやばし次郎。貯金しなければ……。
1997年12月 1日(月) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:食・酒
「おいしい水の探求」

amazonこの前牛乳についての本(「日本の牛乳はなぜまずいか」)を読んだから、今度は順序としてやっぱり水だろう、って感じで気軽に読み始めたのだが、これはなかなか味のある本で思わず熟読してしまった。
まぁおいしい水道水をつくるための技術論に終始するのだが、わりと趣があって堅苦しくなくスルスル読める。
「おいしい水(おいしく感じる水)」そして「水道水の仕組み」について知りたい方は必読ですね。なんだか不思議な雰囲気の本。著者の器かな。
1997年11月 1日(土) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:食・酒
「ロッシーニと料理」

amazon副題は「オペラを作曲した美食家の生涯・逸話・音楽・書簡・料理」。
かなりの有名作曲家ながらボクにはあんまり馴染みのないロッシーニ。彼は実は異様な美食家であったのでした。
その美食家ぶりを数多いエピソード、実際に残っている彼のメニューや楽譜などから浮き彫りにし構成したのがこの本。と書いてしまうと堅苦しく思われるかもしれないがさにあらず。軽い筆致で気楽に読ませてくれる。なんとも人間的なロッシーニだ。
それにしても書いてあることが本当ならロッシーニは異様な大食家でもある。すごいなぁ。獣みたい。
1997年11月 1日(土) 12:00:00・リンク用URL
「骨の髄までうまい話」

amazonいろんな「うまい話」のオンパレードである。
ボクもささやかながら「うまい話」をホームページに載せていたりするから、その描写の難しさはわかっているつもりである。うまい、というのは結局とても個人的な体験だから、共感を得るというのは意外と大変なのである。
だからこそ言うが、まったくこのコバクラという著者は上手だ。うまい話がうまい。舌を巻く。小心でワンパターンの食評論家たちの文章とは一線も二線もかくす格調の高さ。そして適度の下品さ。まずい飯を食うなら一食抜いてでもこの本を味わうべし。
1997年10月 1日(水) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:食・酒
「虫の味」

amazon怖い本である。
著者(医学博士・昆虫専門家である)が自らを実験台に、そこらへんの昆虫をすべて料理して食べてみよう、という本なのである。
ハエやゴキブリやムカデやトンボやオケラやカブトムシやミノムシや……それぞれバター炒めしたりジュースにしてみたりふりかけにしてみたり串焼きにしてみたりお粥にしてみたり、とにかくバラエティに富んだ料理法で食べている。
まぁレシピ本とも言えるものだが、これを読んで感じるのは「日常の異化」であり「既成概念の破壊」である。食べられるはずがないと思っているものを食べてみる。それを読むだけでまた違った日常が見えてくる。本の効用のひとつだろう。
1997年10月 1日(水) 12:00:00・リンク用URL
「納豆大全!」

amazonもっともっともっと期待した。
納豆がどれだけ偉いか、という記述については知らなかった新事実も知ることができて(個人的には)面白かったが、この程度なら「おもいっきりテレビ」でみのもんたが偉そうにしゃべってくれるかも。本にするからには、そして「納豆大全!」なんていう題名をつけるからにはもう少し多角的に突っ込んだ新しい切り口が欲しいのである。
なお、著者によるコレクションは面白かった。
1997年9月 1日(月) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:食・酒
「パンとワインとおしゃべりと」

amazon玉村豊男による食エッセイ。
パンについてのエッセイはわりと面白かった。パンの蘊蓄について書かれた本って意外と少ないから新鮮なものもあった。
でもそれは前半1/3くらいで終わってしまって、あとは普通の玉村節である。それはそれで面白いし、著者ファンのボクとしては楽しいのだが、彼の著作はほとんど読んでいる身としてはちょっと飽き気味でもある。新機軸を打ち出してくれないと、そろそろ買わなくなりそうだ。読みとばすにはなかなか気持ちいい本なんだけど。ちょっと厳しく一つ星級。
1997年8月 1日(金) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:食・酒
「天皇家の食卓」

amazon「エリゼ宮の食卓」という名作に対抗したような題名だったので期待して読んだ。天皇家の食事を通してニホンとニホン人を燻り出してみせるものと思ったのだ(帯にもそれらしきことが書いてある)。
だが……まぁ天皇家の食事体系は究極の健康食で和食は世界的に優れていて、みたいな展開どまりでどうにも食い足りない。古代の食事の形態や宮廷言葉など興味深いところもあったが、だからなに?って感じがちょっと。題材はいいのだが著者の視点がちょっとぼやけぎみだからそうなるのかも。
1997年8月 1日(金) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:食・酒
「日本の牛乳はなぜまずいのか」

amazon知らなかったぜ、日本がこんなに牛乳後進国だったとは!
ここに書いてあることが本当ならば(本当っぽい)大手牛乳メーカーはものすごい罪を犯しているなぁ。
厚生省や大手メーカーと単身闘った藤江才介という技術者のエピソードを中心に綴られていてなかなか面白いのだが、構成が悪く何度も同じ話に行き着いてしまうのが難。しかも要点がよくわからなかったりする。
が、全体には新しい発見に満ちた本だ。そうか、あの独特の粘っこい香りは「こげ臭」だったのか……あなたもこれを読んで日々飲んでいる牛乳に対する認識を新たにしてください。
1997年8月 1日(金) 12:00:00・リンク用URL
「美味しい方程式」

amazon料理本である。ボクは料理本はたくさん読むがめったに取り上げない。新鮮な視点が決定的に欠如しているものが多いからだ。でもこの本は違う。レイアウトも画期的に素晴らしいが、それよりも中身に感心した。
この本が他の料理本と一線を画すのはその「方程式」というコンセプト。西麻布の名店「分とく山」の主人である著者は、料理という手品の種を至極シンプルに読者に披露してしまう。舌の経験を必要とする調味料の比率を「8:1:1」という風にあっさりと提供してしまうのだ。まず基本にこれさえ覚えれば応用はこうこう簡単です、ってな具合。その単純な構図がまず新鮮。権威的でなくまことに賞賛に値する。
そしてそれ以上に素晴らしいのは、核家族化により日本から消えてしまった「おばぁちゃんの味」(つまり口伝による料理文化)の連環をこの方程式によって取り戻そうとしているのではないか、ということ。
いや著者がはっきりそうと書いているわけではないが「こうやって調味料の塩梅をしっかり覚えてほしい。日本の文化として残して欲しい」という切実な願いをボクは感じる。受験世代・マニュアル世代が理解しやすいように翻訳された、これは「おばぁちゃんの味」の現代風「口伝」なのだ。
1997年7月 1日(火) 12:00:00・リンク用URL
「夢ワイン」

amazonワイン・マニアならいざ知らず、一般の人は読まなくてもいい本かも。
優れた野球人だった著者に対して何の偏見もない。ないからこそ平明な気持ちで読んだのだが、その内容のなさに唖然とした。作文的文体については何の文句もない。ただ、もっと著者独特の視点でワインを語っているのだと思っていたのだ。「ワインをこういう風に好きになって、こういう風に飲んできて、こんなに高いのもいっぱい飲んで、こんな名誉も受けたよ~」というだけの本。別に「自慢」が嫌なのではない。それがどうした!だからなんだ!としか言い様がないのが嫌なのだ。こういう人に「名誉ソムリエ」を与える日本ソムリエ協会っていったい、という印象が最後に残ってしまったなぁ。残念。
1997年7月 1日(火) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:食・酒
「ワインの言葉」

amazonソムリエ兼コピーライターの著者が書いたワイン用語の優しい解説集。
初心者を相手にしているがなかなか目のつけ所が良いと思う。「猫の小水」「火打石」「キューピー」などわけわからないワイン表現用語の解説をしつつ読み終わるとわりと通ぶれる仕組みになっている。
これ以上噛み砕けないというところまで表現を優しくしてはいるし、下手な入門書より「近道」を通れるとは思うが、読後感が薄いのが残念。構成面でメリハリがあればもっと印象的な本になった。
1997年6月 1日(日) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:食・酒
「ニッポン居酒屋放浪記」

amazon著者による「居酒屋大全」「精選・東京の居酒屋」に続く三部作完結編。完結編と言っても別に完結しているわけではないが。
ウェットで格調ある文体を持つ居酒屋探訪記の巨匠は健在である。
今回は地方での飛び込み取材を敢行しているがその「鼻」は相変わらず絶好調。一緒にぴたっと来る居酒屋を探している気分になり、なかなかスリリングだ。いい居酒屋を探しいい時間を過ごす旅。これが人生と重なって見えてくるところがこの著者と「グルメ評論家」の違い。文体と姿勢と人生観の違いである。
1997年4月 1日(火) 12:00:00・リンク用URL
「チョコレートを1.2トン食べました」

amazon今年度題名大賞ノミネート作品だな。題名に惹かれて思わず買ってしまった。でもボクなら「チョコレート1.2トン食べました」と「を」を抜くな、どうでもいいけど。
チョコをいままでに1.2トンは食べた69歳のチョコ好きおじさんの半生記なのだが、この人チョコ以外にもいろいろやっていてなかなか興味深い。が、文章が作文レベルなのでちょっと辛い。きっちりした編集者がついてじっくり書いて行ったら倍は面白くなっただろうに。惜しいなぁ。ま、でもなかなか楽しみました。
1997年4月 1日(火) 12:00:00・リンク用URL
「食べる」

amazon副題は「店の流儀、客の心得」。食の両巨頭といってもいいふたりによる食談義である。
たとえば太田和彦の「ニッポン居酒屋放浪記」などに比べると、食べることから透けて見える人生みたいなものが描かれていない浅さがどうしても気になってしまう。本の構成がそうなっているので一概に比べられはしないし、そういう狙いでもないだろうから仕方ないのだが、こういう食の体験談の切り売りってそんなに読者の共感を呼ばないのだなぁとあらためて思った。ふたりの味に対するこだわりとセンスはわかるのだが、その後ろにある深みが見えてこない。食の本ブームでもあるが、もう少しじっくり書き物をしてほしいおふたりではある。
1997年4月 1日(火) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:食・酒
「そば打ちの哲学」

amazon趣味で蕎麦を打ち初めて半年になるけど、どんな本を読んでも越えられなかった「畳んだら折り目で切れちゃう」問題をこの本は明解に解決してくれた。
そういう意味では実用書でもあるが、あくまでもこの本は哲学書。
哲学読みには中途半端かもしれないが、ボクにはちょうど良かった。大学の教授である著者も趣味で蕎麦を打っているわけだが、哲学者というスタンスを見事に蕎麦打ちに取り入れており、まさに「哲学とは‘哲学すること’である」を実践している。
蕎麦を入り口に古今の哲学に言及し蕎麦を出口として人間の欲望に迫る。その筆、平明にして深遠。蕎麦を打つ人も打たない人もぜひ触れてみて欲しい個性的名著。
1997年3月 1日(土) 12:00:00・リンク用URL
「ぼくが料理人になったわけ」

amazon月刊「料理王国」の連載の単行本化。
道場六三郎、高橋徳男、井上旭、中村勝宏、片岡護など一流(と言われる)料理人を13人取り上げ、その半生をインタビューして仕上げてある。が、全体を通して散漫な印象はぬぐえない。せっかくこれだけの人達をインタビューしたのだから著者オリジナルの視点で構成し直して料理人像を浮き彫りにして欲しかった。この頃どこにでも転がっている料理人賛歌の評伝で終わってしまっている気がする。
もちろん好きな人には資料的な価値があるのだが。
1997年2月 1日(土) 12:00:00・リンク用URL
「はじめての夜・二度目の夜・最後の夜」

amazon「料理小説」と銘打っている。ボクも好きなフレンチレストラン、長崎はハウステンボスにある「エリタージュ」を舞台にして主人公(著者がモデル)と幼馴染みの女性の3つの夜を描いている。おのおのの夜がフルコースの経過と共に描かれていて好きな人にはたまらないだろう。
ただ、なんとなくだが、「エリタージュを舞台に小説書くよ」と上柿元シェフと約束してしまったから無理矢理ストーリーを広げたみたいな感じがある(あくまで想像)。著者のエリタージュ好きは知る人には有名で毎月のように通っているらしいし、故郷の佐世保は目と鼻の先だし。もしかしたらハウステンボスの機関誌とかに発表したものなのかもしれない。
そういう意味でちょっと後付けっぽいストーリーなのだが、そこは力技が得意な著者ゆえなかなか素晴らしい。細部に著者の「生き方のスタイル」についての本音が散りばめられているのが面白い。
1997年2月 1日(土) 12:00:00・リンク用URL
「ワイン道」

amazon薄くちっちゃな本。
このごろ雨後の竹の子のようにワイン本が出版されていて、ボクはその大抵を買って読んでいるのだけど(笑)、まぁほとんどは紹介に値しない。ワイン本って単に事実の羅列だけで終わっている本ばかりだから。
でもこの本はわりといい。ワイン版見栄講座って感じの作りだけど説明のわかりやすさ、比喩の的確さなどただものではない。ブルゴーニュやローヌをネゴシアンを選んで買うようになったくらいのレベルの人が読むと特におもしろいと思う。目から鱗がわりとあってコストパフォーマンスがいい。イラストが軽いのがまたいい。妙にお高くとまったようなイラストつけてる本多いし。たかが酒なのに。
1997年1月 1日(水) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:食・酒
「ワイン通が嫌われる理由」

amazon簡単に言うと「ワイン見栄講座」。
ワイン・スノッブ特有の嫌味をウイットに変えて、楽しく展開している。
でもそこここに重要で耳寄りな情報が出てくるのでワイン好きは必読。かなり高等な論議も出てくるのである程度ワインを知ってから読んだ方がより楽しめるかもしれない。でもまぁ「ワイン見栄講座」なので、初心者がワイン通になるための近道もふんだんに書いてあるし、頭でっかちになるには最適の本だろう。
ちなみに著者はあのマエストロとは同姓同名なだけで別人なので注意。なお、1982年刊の本の邦訳(邦訳は1996年刊)なのだがそのことが脚注などで明らかにしていないためヴィンテージや価格の点で混乱が生じる。これは訳者(編集者?)の怠慢かも。
1996年11月 1日(金) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:食・酒
「恐るべきさぬきうどん 1~3」

amazon副題に「誰も書かなかったさぬきうどん 針の穴場探訪記」とある。
つまり香川県にあるさぬきうどんの穴場的名店を巡ったガイドブックなのだが、ガイドブックなのに読んでて異様に面白いのである。大笑いなのである。大変良く出来た「さぬきうどんエッセイ」でもあるのだ。
「月刊タウン情報かがわ」に連載していたコラムの単行本化。
香川でしか手に入らないと思うが取り寄せてでも読んでほしい傑作。かくいうボクは1ヵ月ほど前に香川を旅行したときに香川の本屋で手に入れたのだが、これを読んではじめて今まで食べていたのは「うどん」ではなかったのだと知らされた。この本を読まずして「うどん」を語るべからず。
なお、この本を読んだら香川に行かずにはいられなくなるので、本自体は安いけど交通費など考えると結構高いものにつきますので要注意。
1996年11月 1日(金) 12:00:00・リンク用URL
「うまいもの・まずいもの」

amazon題名に惹かれて買った。
3人の「うまいもの・まずいもの」というお題の対談をそのまま本にしてある。
目新しい情報提供というよりは、雑談に近い感じ。でもこういった雑談本の存在価値は実はもう終わっているのかもしれない。雑談対談であればテレビの方が面白いのである。こういったものを安易に出版するから活字ばなれがおきるのではとすらボクは思っている。面白くない対談でもテレビなら間が持つが、本だとちょっと腹が立つかも。テーマを新しくするとか工夫をしなくてはたまらない。もしくは、椎名誠他が「本の雑誌」で繰り広げる対談を見習うべきである。読み物としてしっかり面白くして発表している。そういう意味でこの本は努力が足りない気がする。毒舌慧眼評論家安原顕の編とも思えない中途半端さである。ちょっと残念。
※リテール・ブックスの本が絶版ぽいので、中央公論新社の本にリンクしました。
1996年11月 1日(金) 12:00:00・リンク用URL
「エリゼ宮の食卓」

amazon副題に「その饗宴と美食外交」とある。
フランス大統領官邸であるエリゼ宮はどんなメニューで米ロ大統領、英女王、天皇、そして日本の歴代首相をもてなしたか、というドキュメンタリーである。つまりフランス食卓外交のすべてを裸にした興味深い本なのだ。誰にどんな料理・ワインを出したか、でフランスがその人をどのくらい重要に考えていたかがよくわかるところが面白い。羽田首相の冷遇のされ方など悲惨だ。
各所に料理、ワインの話があり、エリゼ宮の仕入れや厨房のルポもある。フランス料理やワイン好きにはたまらない本。文章もいたずらに煽情的にならず抑えた筆致でよく書けている。
1996年10月 1日(火) 12:00:00・リンク用URL
「普通の食事」

amazonグルメ評論家を名乗るマスヒロ氏が普段家でどんな食事をしているのか、どうこだわっているのか、などを覗ける仕組みになっている。
評論家としては(個人的には)いろいろ疑問を持ってしまう人なのだけど、彼のこの手の食エッセイはなかなか上質で面白い物が多い。この本もわりと面白く読んだ。この手の内容に興味津々なのだからしょうがない。嫌味も旨味。上手である。
1996年10月 1日(火) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:食・酒
「星に憑かれた男」

amazonフランスはブルゴーニュ地方の三ツ星レストラン「ラ・コート・ドール」のシェフ、ベルナール・ロワゾーの半生記。
ただヨイショするだけの伝記物ではないところが買い。シェフの成り上がり物語だけでなく、厨房での毎日やチーズ、ワインの仕入れ、ソムリエをはじめとするサービス陣の裏側、ミシュランやゴーミヨなどの取材の実際など、適度な平易さで丹念に書き込んであり、あまりこの世界に興味ない人が読んでも十分楽しめる。
料理についての記述に突っ込みが足りないと思ったが、構成上この方が良かったのかもしれない。知識もつくし楽しめる一冊。
1996年6月 1日(土) 12:00:00・リンク用URL
「ポワルの微笑み」

amazon「わがパリ料理修業記」と副題にある。現在東京のホテルエドモントの総料理長である著者の自伝。
見習いが最後には見事独立してフランスで星を獲得するまでを書いていて宇田川悟の「パリの調理場は戦場だった」の自伝版とでもいおうか。ロワゾーの評伝「星に憑かれた男」を含めこの3冊を読むとフレンチ業界の通になれること請け合い。
ちなみにポワルとはフライパンのこと。ちょっと題名が気取っているけど、これもご愛敬。フレンチっぽいし。
1996年6月 1日(土) 12:00:00・リンク用URL
「食味形容語辞典」

amazon辞典とあるけど、エッセイである。
「まったり」「キレ」「コシ」「はんなり」「玄妙」「鮮烈」……
食味を表す独特な言い回し達。それをそれぞれ解説してエッセイにしよう、という着眼点や良し。
でもそれだけかも。辞典的価値やエッセイ的面白さに欠ける出来。あえていえば南伸坊の挿絵が面白い。面白そうな表題に惹かれて買ったが、少しがっかりした。
1996年5月 1日(水) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:食・酒
「天ぷら道楽」

amazon日本橋茅場町の「みかわ」のご主人のうんちく本。というか、自慢本かな。少し自慢が過ぎる出来。
謙虚っぽい言い回しがとても嫌味になる好例かもしれない。自慢したいのなら、玉村豊男や林望の「嫌味になる一歩手前で寸止めする熟達の自慢技」を見習って欲しいかも。自慢というのは相当難しい技なのだ。
個々のエピソードは食べ好きにはなかなか面白い。特に東銀座の寿司屋「とゝや」のオヤジのエピソードが個人的には面白かった。そうか、あそこの陶器はそうだったのか。
1996年5月 1日(水) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:食・酒
「ラブ&キッス英国」

amazon著者を知ってます? 実はあの伝説のロックバンド「サディスティック・ミカ・バンド」のミカなのだ。
この本は、彼女が加藤和彦と別れてイギリスのアッパーミドルに嫁に入り、そこも飛び出てあげくの果てフレンチのシェフになるまでを書いた「半生記」。
う~ん、すごい人生。
とはいえ、個々のエピソードはどれも表面的で食い足りない。おまけに英国の話を書きたいのか、自分の生き方を書きたいのか、シェフの話を書きたいのか(巻末にレシピが21も載っている)全然テーマが絞れていない。でもね、なんだか勢いがあって面白い本だった。特にアッパーミドルの生活はよく書けていると思う。英国好きのボクには特に興味深かった。
1996年5月 1日(水) 12:00:00・リンク用URL
「いまどき真っ当な料理店」

amazon「神戸震災日記」の項でも書いたが、ボクは個人的には田中康夫はそんなに好きではない。
でも、先月に続いて今月も認めざるをえない本を出してきた。帯に「日本初のミシュラン誕生」とあるのでもわかるようにこれはレストラン批評の本なのだが(厳密にいうとミシュランは覆面審査員による審査なので、面が割れている著者の審査とは立脚点が違う)、優れている点が3つある。
1.ヒモ付き褒め合い評論とは一線を画す辛口系。
2.「真っ当」度という新しい評価基準。
3.巻末の「なぜ私はこの店を評価できないか、あるいは評価するのか」というエッセイの切れ味の鋭さ。
個々のレストラン批評に対してはその立脚点も含めて反対意見はあるのだが、本としては非常によい出来だと思う。
1996年5月 1日(水) 12:00:00・リンク用URL
「人はなぜバーテンダーになるか」

amazon現代随一の達文家、海老沢泰久の新作だが、ちょっと期待外れだったかも。取材ノートの域を出ていない印象。
13人のバーテンダーたちに取材して、彼らの人生や生き方、酒への接し方を描いたものなのだが、表題から想像されるほどの深みは特になく、さらりと表面を撫でている印象を持った。 「サントリー・クオータリー」に連載したものを集めたらしいが、単行本化するときはもう少し突っ込んで書き直して欲しいと残念に思う。
バーテンダーの話としては勝見洋一の「怖ろしい味」の中の短編「カクテル・ピアノ」が最近では好き。
1996年3月 1日(金) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:食・酒
「怖ろしい味」

amazon食だけでなく、映画やオーディオ、美術に至るまで、生半可じゃない経験と知識に裏打ちされた凄味のあるエッセイである。
食体験というものがその「時代」や「場所」を食べることに他ならないとするならば、この作者こそ数少ない本当の食通と言えると思う。食のエッセイも見ものだが(特にニューヨークの中華料理を描いたところなど、極上の短編小説の趣きすらある)、真価は「物彩」と称された後半でより発揮される。どこか益田洋介の名エッセイ「オペラ座の怪人たち」を彷彿とさせる上等なキザさがそこかしこに振ってあって、なかなか香ばしく楽しめる。お勧め。
1996年1月 1日(月) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:食・酒
「これを食べなきゃ」

amazon副題は「わたしの食物史」。
これはね、相当自慢に満ちた本である。まぁ渡辺淳一だからなぁ…。もちろんなかなかの蘊蓄と共に読ませるのだが、そのわりに普通の話が多く、自慢の仕方も玉村豊男や林望の方が数段うまい気がする。
24の食材について、一例を挙げるなら「竹林を見ながら筍を食う粋」みたいなことを書いているものなのだが、全体的に共感しにくいのが難である。というか、たぶん先生は「女性にもてるための素材」として書いているので、男性であるボクはターゲットではないのだと思われる。でもそれも著者独特の芸風とも言えるので仕方ないか。
1996年1月 1日(月) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:食・酒
「パリの調理場は戦場だった」

amazonまだグルメという言葉もなく、ミシュランを日本で誰も知らなかった70年代に、単身フランスに渡って料理修行に明け暮れた3人の若者の物語である。
当時の料理界の状況、フランスでの修行の厳しさ、キッチンでの仕事の内容などが目の前に広がるように見えてくる好著で、なかなかのめり込める。フレンチファンならずともお勧めしたい。ただ、全体にストーリーを急ぎすぎているのが気になる。三つのストーリーが一つになっていくところもちょっとギクシャクしているし、う~ん、惜しいなぁ。
1996年1月 1日(月) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:食・酒
「田園の快楽」

amazon副題は「ヴィラデストの12ヵ月」。著者が都会から移り住んだ長野県の田園。ヴィラデストと名前をつけてそこで生活を始めたのだが、その豊かで愉快な生活が活写されている。田園での理想の日々が描かれているのだ。テーマ上ちょっと自慢めくのは仕方ないが(特に都会人にはそう響く)、この著者、もともと自慢がうまいうえに(イヤミにならない)、昔より自慢が少なくなった。人もうらやむ生活を鼻持ちならなくなるギリギリの線で書きつつ、以前より客観的に書いている。とても上手だなぁと思った。んでもってたまらなくうらやましい…。
でも、なんとなく「長続きしないんじゃないかな」という予感もする。どうなんだろうか。
1995年10月 1日(日) 12:00:00・リンク用URL
「飲食男女」

amazonアン・リー監督の同名映画(邦題「恋人たちの食卓」)を、監訳の南條竹則が小説化したもの。
ノベライゼーション自体は台湾の小説家によってなされているのだが、台湾料理についての訳注をこうるさく付けるよりは、いっそのこと日本人で中華に詳しい人で小説に書き起こしてしまった方がよい、という出版社判断があったようである。ノベライゼーションはあまり好きではないのだが、実は映画が先にあった、ということを知らずに題名に惹かれて買ったもの。その後映画を借りて観た。
台湾一の料理人の父親と、恋に揺れる三姉妹のお話。
ノベライゼーションなので、なかなか映像を越えることは難しいのだが(アン・リーだし)、この本の良いところは巻末にレシピが載っていること。ちょっとしたシズル感が味わえて良い。
1995年9月 1日(金) 12:00:00・リンク用URL
「ニューヨーク竹寿司物語」

amazonいまではアメリカにも鮨が浸透してきたが、そんなアメリカ鮨界にも先駆者はいる。
東大を出てサッポロビールに勤めた著者が、会社を辞めて単身アメリカへ。そして1975年春、ニューヨークで最初の鮨屋を開くまでを描いた半生記。まさに裸一貫、NYで成功するまでの物語で、一編の青春記になっている。清々しく、楽しく読めた。誰かが「いま東京よりニューヨークの方がうまい鮨が食える」と書いていたが、その店はココらしい。食材を手に入れるのも大変、アメリカ人に理解されるのも大変、といった中、よくぞここまで辿り着いたものである。勇気と根性に敬服する一冊。
1995年9月 1日(金) 12:00:00・リンク用URL

@satonao310