音楽(31)
「リンボウ先生のオペラ講談」

amazonオペラの本数々あれど、代表的なオペラについて微に入り細を穿ちその「あらすじ」を書き込み、解説してくれた本は他にはないだろう。なんだかんだいっても異国の異文化であるオペラはやっぱり理解しにくい。音楽だけでなく、まず筋自体が理解しにくい。それを林望が著者特有の親切さでしっかり頭から追いつつ理解させてくれるのである。あらすじを追うだけでなく、解説や感想をいいタイミングで入れてくれているのがいい。
取り上げられているのは「フィガロの結婚」「セヴィリアの理髪師」「愛の妙薬」「ラ・トラヴィアータ」「カルメン」「トスカ」の6作品。オペラを観る前にこの本で筋と見所を予習しておけば、あとは心おきなくすばらしい音楽に浸れるのだ。
こういう本が欲しかったし、意外となかった。こういう目の付け所が著者っぽいな。巻末に著者お勧めの音源一覧もついている。アリア別なのがちょっと煩雑だけど。
2004年1月 1日(木) 12:00:00・リンク用URL
「チャイコフスキーのバレエ音楽」

amazonモスクワ、サンクトペテルブルグのバレエ観劇に行く前に、予習として「白鳥の湖」全幕をCDで聴き直した。そしてビックリした。こんな名曲だったとは!
そして改めてバレエ音楽を俯瞰してみると、そこに「悲愴」などで中学時代からお馴染みだったチャイコフスキーの姿が燦然と輝いているのが見えるではないか。へぇ〜チャイコってそうだったのね、と、個人的に気づかされた気分(詳しいヒトにとっては何言ってるのって感じだろうけど、バレエ音楽が眼中になかったボクからするとちょっと驚きだったのだ)。そんなことを思っているときにこの本を書店で見つけたら、そりゃ買うわな。
内容は「白鳥の湖」「眠れる森の美女」「くるみ割り人形」といったチャイコフスキー三大バレエをくわしく取り上げており、CDを聴き込んだボクにはわりとうれしい構成。作曲者側の論理が見えてくるのも(踊る側の論理から書いたバレエ本が多い中)とても参考になる。まぁ興味あるヒトにしか楽しくない本だろうけど、まじめできちんとしており、なかなか良い。
2003年10月 1日(水) 12:00:00・リンク用URL
「坂崎幸之助のJ-POPスクール」

amazonTHE ALFEEの坂崎の、フォークや歌謡曲に対する並々ならぬ知識と情熱を知ったのはボクがまだ高校時代(25年近く前)、吉田拓郎のラジオ(「ヤンタン」)とか聞いていてたまにゲストで出てきて拓郎のマネをしつつその周辺をパロったりしていたあたりから「こいつ何者?」という感じであった。背景に深いものを持ったオタクしか出来ない技と話題を持っていた。
そんな著者が書いた「自分の半生記とそれにシンクロするJ-POPの流れ」がおもしろくないはずがない。はずがない。はずがないのだが、異様に期待した分、ちょっとはずしたかも。
もっともっともっとオタクに書いてよかったのだよ坂崎ぃ〜!という叫びが読後に出てしまった感じ。読者に日和らなくてもいいのだ。もっとオタクに書けばいいのだ。誰もついてこれなくてもいいのだ。ものすごく美味しい味噌汁なのに、わざわざうすーく薄めて減塩にしてしまった感じ。ちょっと惜しいなぁ。新書ではなく、単行本で濃ゆ〜〜いのを読ませて欲しいと切望する次第。
2003年4月 1日(火) 12:00:00・リンク用URL
「ウィーン・フィル 音と響きの秘密 」

amazonクラシックにあまり興味がない人たちは共通してこんな疑問を思う。「なぜ同じ曲なのに指揮者とか演奏者とかが違うだけでマニアたちは騒いだり解釈がどうのと言うのだ? 楽譜通りに演奏しておけばいいのではないのか」。ある程度好きになってからでも、指揮者によるまとめ方の違いの意味やオケによる音色の違いの必然性などが見えなかったりする。
そういう疑問にすべて明解に答えを出すだけでなく、クラシック音楽とは何なのかということにも(結果として)すべて答えてしまっている本がこれ。別にQ&A本ではないのだが、結果的にすべてが書いてあるのだよ、この薄い新書に。
いやー、長年いろいろ疑問に思っていたことがコレ一冊でほとんど解けてしまった気分。
ウィーン・フィルに焦点を合わせてはいるものの、ほとんど「ウィーンフィルのエピソードを通してみたクラシックの魅力の秘密」みたいな感じ。楽団員のエピソードによって解き明かされていく指揮法の違いやその重要性、オケの音色や個性の成り立ち、これからのクラシック音楽の問題点など、これほど明解に解き明かしてくれる本はない。かといって難しい本ではない。クラシック初心者でも十分楽しめる。なにしろエピソードから解き明かしているので。
これを読むとひたすらクラシックが聴きたくなる。
それもフルトヴェングラーやボスコフスキー、ミトロプーロス、カラヤン。いままで何を聴いていたのだろう。もう一度ちゃんとすべての音楽を聴き直したくなってきた。表題が「ウィーン・フィル」としているので、マニアしか買わない可能性も高いが、それではもったいなさすぎる評論だとボクは思う。
2003年2月 1日(土) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:音楽
「クラシックCD名盤バトル」

amazon帯に「『名曲・名盤』幻想を一蹴する、類書真っ青の『読むCDガイド』!」とある。
1965年生まれの許光俊氏と1970年生まれの鈴木淳史氏が先攻後攻としてクラシックの決定的名盤を挙げてバトルしていく本であるが、そのバトルは、潜在的にいままでの名盤紹介に向けられている。「名盤紹介本こきおろし精神」が原点にあるのがおもしろい。つまり、いままで類書で取り上げられた名盤などまず出てこないと思った方がよい。そして著者同士のバトルもすさまじく、また時にのどかで妙な味を持ち、読んでいてとても楽しめた。つか、自分のクラシック鑑賞質量のあまりの情けなさにがっかりすることがまず先に立つのだが。
そもそも客観的に誰もが認める名演奏などないのではないか、という視点は共感する。誰もが認めるものはある意味芸術ですらないだろう。そこで徹底的に自分の視点で「これぞ名盤!」を推してみるという作業に著者たちは挑んでいるのだが、それについては読んでいて実に晴れ晴れする。著者がわがままであればあるほど晴れ晴れする。よくまぁそこまで自信を持って言えるなぁという思いもありつつ、著者たちがバトルに選んだ「名盤」を聴いてみたくなること必定。
2002年9月 1日(日) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:音楽
「47歳の音大生日記」

amazon1999年に「ぶってよ、マゼット」という題で出された単行本の改題文庫化。
同じ内容だとしたら文庫の題名の方が数倍わかりやすく内容を言い当てている。つまりは、あの「ベルサイユのばら」「オルフェウスの窓」の池田理代子が47歳にして一念発起し、東京音大の声楽を受験し、受かり、4年間の学生生活を送る顛末が書かれている本なのだが、その間、彼女は結婚もし旅もしライブもし病気もする。かなりハードな4年間である。その4年を主観的すぎず客観的すぎず、威張りすぎず謙虚すぎず、とても上手に描写している。
読者的には「47歳から始めて人生を変えた大御所漫画家の熱意と勇気の物語」的に期待しちゃったりする人が多いかもしれない。実際はもっと気楽な本だ。
冒頭のあたりにこんな文章がある。「『自由であるっていうことはね、何も一切期待しないということよ。期待するから、人間は捉われてしまうの』 この言葉で私は、捨て身になって人事を尽くしきる勇気を与えられた」 この本の芯はここにあると思う。著者は「自分が47歳にして何かを成した」ということから自由だ。何にも捉われていない。だから教訓くさくなく、読んでいて気楽なのだ。この辺の「読者に教訓・説教と思わせない筆致」って実は高等な技だと、ボクは思う。
2002年8月 1日(木) 12:00:00・リンク用URL
「若山弦蔵のバックグラウンドミュージック」

amazonパーソナリティ:若山弦蔵、スクリプト:かぜ耕士、選曲:大江田信。副題「365日にんげん歳時記」。
この本はTBSラジオの長寿番組「若山弦蔵のバックグラウンドミュージック」の放送で使われた「今日はこんな日」的歳時記ネタを、1日1ページとして365日分集めたもの。放送を知っている人はもちろん、放送を聴いたことない人も楽しめる雑学の集大成となっている。
たとえば4月1日のページを見てみると、「ザ・ピーナッツ」が生まれた日として、彼女らの履歴やカバー曲、映画「モスラ」における小美人役などについても詳しく触れられていて、その舞台がインファント島であるなどという細かいこともきっちり調べられて書かれている。細部に神が宿ることをしっかり知っているプロフェッショナルなスクリプトライターの存在が大きい。しかもこれは本文で、その下にある脚注にはもっと詳しい情報や、4/1に生まれた有名人書かれていたりする。選曲から参考文献まで、心配りが異常な本。超労作だ。
こう書くと辞典的に思われるかもだが、そうでは決してない。読んで面白い本になっている。一日ひとつ、ゆっくり楽しめる本なので1900円はお得に感じる。読んでいると人生のいろんな話題がキレイにつながって感じられてくる。単なる辞典ではない証拠であろう。実は出版に当たって出版社を紹介するという協力をしたので書評しにくいのだが、雑学やネタ本が好きな方にも、小さな読み物が好きな方にもオススメ。
2002年4月 1日(月) 12:00:00・リンク用URL
「同じ年に生まれて」

amazon1935年に生まれたふたりの巨人、小澤征爾と大江健三郎の対談集である。副題は「音楽、文学が僕らをつくった」。
小澤と武満徹や、小澤と広中平祐の対談のおもしろさに比べると、ちょいと落ちる印象。大江健三郎という人はいまひとつアドリブが利かず、話し出すと論文調になってしまい(校正の段階でいっぱい赤を入れたからそうなったのかもしれないが)、巨人ふたりのセッションというよりは、かわりばんこに独奏しているという印象。それではつまらない。なんかふたりの話が盛り上がっている感じがあまり伝わってこなかったのが残念。
もちろん上手にセッションになっているところもあって、そこは面白かった。
闊達な小澤が特に良く、大江も素直な部分を見せていたりして良い。小澤が音楽の本質を語るあたりが特に印象的。大江もなにかを発見したような感嘆を見せる。でも、全体に触発されるといったところが少ない本であった。大江のペースでたんたんとした謙虚な対話が進むだけ。含羞があって気持ちは良いが、刺激と触発を望んでいる読者には物足りないだろう。
2001年11月 1日(木) 12:00:00・リンク用URL
「超ジャズ入門」

amazon元「スイングジャーナル」編集長の著者の本を読むのはこれで3冊目かな。
ビーチボーイズを再発見できたのは著者のおかげである。マイルスを真剣に聞き始めたのも著者のおかげである。そういう意味である種の信頼関係が読者であるボクと著者の間で出来上がっているので、読む方は楽である。
ジャズは怖くない的論から本ははじまるが、この辺はやっぱりジャズが詳しい人の書き方になっていることは否めない。ジャズをこれから聴いてみようという人にはいまいち空気感がわからないだろう。超入門としてはそこが残念。ジャズ=怖い、となるのは中級者の前である。初級者の後半。そしてそれはスイングジャーナルを読もうと思うようなコアな入門者である。普通はもっと気軽に聴き始めるものだ。著者はロックに限界を感じてジャズに入ったという理論派なのだが、そういう理論派はごく少数なのだ。
とかいう細かいことは置いておいても、結局マイルスを聴けと持っていくあたり(いい意味で)笑ってしまった。これはもう「芸」である。そんでもって、最終的にはお勉強みたいに100枚ほど聴かないといけない。うーむ。これを読み終わった読者は結局「ジャズって怖い~、難しそう~」と思うのではないだろうか。疑問。個人的にはオモシロイ本であったが、超入門として考えるとハテナもいろいろある本だった。
2001年11月 1日(木) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:音楽
「クラシック名盤ほめ殺し」

amazonほめ殺し、というか、まぁ言いたい放題に近い内容ではある。
名盤といわれるものを独自の評価で切ったものなのだが、天使と悪魔に役割を与え、その対談にしたことで毒が薄らぎ、しかもそこに知識を詰め込みすぎ、ギャグまで詰め込んでいたりするから、一読ではなにをどう誉めているのか貶しているのかよくわからないのが難。結果として「マニアックな人に対する内輪受け的言いたい放題」になってしまい、ボクみたいに中途半端な位置にいるものにとっては詰まらない内容になった。
もうちょっと整理されているとわからないなりに面白かったりするし、この著者の全体スタンスが見えてきたりして、読者は著者にしっかり付いていけるのだが、これではちょっとついて行きにくいなぁ。もっとたくさん知識があった上で読むと、行間のニュアンスや「わかるひとだけわかればいいや」的ほのめかしにも反応できて楽しいのだろうけど…。そういう意味では上級者向きか。
2000年7月 1日(土) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:音楽
「クラシック千夜一曲」

amazon先月に続いてクラシック紹介のいい本に出会った。
著者はご存知のように中国古代史系の作家。音楽は専門外である。しかし、だからこそ素直でしがらみのない音楽評が読めるのである。全部で10曲しか紹介していないが、著者はそれぞれに複数(時には10枚強も)のCDを聴き比べ、それぞれについて「自分の言葉」で論評してくれている。自分の実体験を交えつつ、一門外漢として「外への言葉」として論じてくれているのだ。
専門家たちによる専門用語の羅列されたライナーノーツやCD選集とはひと味もふた味も違ったクラシック推薦盤エッセイ。自分の言葉・視点で物事を表現することがいかに大切か、再確認させられた気がする。
2000年1月 1日(土) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:音楽
「クラシックCDの名盤」

amazon久しぶりに読んで楽しい名盤案内が出た。
いや、読んで「楽しいように作ってある」名盤案内は他にもあるか。エッセイ風にしたりお笑い風にしたりマンガを入れたり…。でもそういうのが楽しかった試しがない。そういう意味の楽しさではなくて、この本のいいところはそれぞれ個性と一家言ある書き手が一曲についてそれぞれベストのCDを挙げ、対抗しあっているところ。対話形式ではなくそれぞれ独立したコラムなのだが、たぶん書く順番を決めているのであろう、最初に書いた人の選択を批判したり後に書く人の選択を牽制したりされておりなんだか楽しくなるのだ。
例えばメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲など、中野氏が一番最初に書いたのを受けて宇野氏が「なんじゃアレを紹介しないのならワシがする」とばかりに書くものを変更しつつ「福島氏はチョン・キョンファか」と牽制する。福島氏は「はずれてすいません」とクーレンを推薦する、といった具合。
もちろんバッティングしないものを紹介する場合も多いが、それぞれに曲への捉え方、選択の基準、自宅で使用しているオーディオ機器によって演奏の好き嫌いが変わってくるところなどいろいろ見えて、それなりに知っている人には非常に楽しい名盤案内だろう。そんなに詳しくないボクでもかなり楽しめるし、いろいろ聴いてみたくなる。あー、しばらくはクラシックにもはまりそうだ。
1999年12月 1日(水) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:音楽
「指揮のおけいこ」

amazon世界的指揮者である岩城宏之が指揮に関するいろんなエピソードを軽妙に語ったエッセイ集。
「オーケストラとの確執」「大物指揮者に見せるには」「楽譜の覚え方」「カッコイイ燕尾服の作り方」などなど、とにかくいろんな職業上のヒミツを照れながらも素直に語っていて好感が持てる。
本当に指揮者になりたい人やマニアが読んでも役に立つような専門的な内容も適度に入れ込んであるが、基本的には一般クラシック・ファン向けで読んでいて楽しい内容。指揮に対して長年疑問に思っていたことどもが次々氷解していき、ボクにはとても役に立った。
ちょっと文体が軽すぎるかなとも思ったけど、一般向けならこういうことでもいいのかもしれない。
1999年6月 1日(火) 12:00:00・リンク用URL
「歌謡界一発屋伝説」

amazonいつか誰かにやって欲しいなぁ…誰もやらなかったら自分でやろうかなぁ、と思っていた企画。やっと出たか、という感慨だ。
70年代・80年代の一発屋たちをテーマ別に取り上げ詳しく検証している物で、題材によっては突っ込み不足と思われるが(ボクみたいなオタクに言わせると、だけど)全体的にはとてもよく出来たバランスいい仕上がりだ。
詳しすぎる人には不満だろうけど、上手に一般向けになっているのだ。ただ、じゃぁ詳しい人より一般人の方が買うのか、と言うとそれは違う気もするので、もっともっとマニアックに走ってみても良かったかもしれない。
とにかく、懐かしくなってしまってカセットを家捜しして聴きまくってしまった。
1999年3月 1日(月) 12:00:00・リンク用URL
「日本フォーク私的大全」

amazon60年代~70年代に若者達が持っていた唯一の言語「フォークソング」。
その創世記からずっとフォーク界にいる著者がエピソード満載で書いた「内部から見たフォーク史」である。
高石ともや、高田渡、遠藤賢司など、そのころを少しでも知っている人には懐かしすぎる名前がどっさり出てきて、いつしか読者は中津川フォークジャンボリーの会場にいたりするのである。フォーク大全としながらも著者の半生記になっているところもなぎら健壱っぽくて好ましい。
とにかく知ってる人ほど楽しめる名作だ。コレクターでもある著者のジャケット・コレクションも見事。
1999年3月 1日(月) 12:00:00・リンク用URL
「JAZZオーディオ快楽地獄ガイド」

amazonああ、ずいぶんと冷めたはずのオーディオ熱が再燃しそうだぁ! 感想終わり(わからんて!)。
いやいや、これを読むとオーディオにのめり込むことがどれほどおそろしくも哀しいものかがよくわかります。
そのうえオーディオの奥深さ、再生芸術の凄さが臨場感を持って体感できるから「オーディオってさぁ結局ライブにはかなわないんじゃないの〜」とかほざいているオーディオ無知人間に読ませてやりたい本でもありますね。それに、なかなかオーディオの表現って難しいのによく書けているよなぁ。
ボクは著者のジャズ本をいろいろ読んでいるから彼の偏見的毒舌は笑って読めるんだけど、著者の本これが初めての人にはちょっと鼻に付くかもしれません。前半はなかなかの名著。後半はちょい散漫。前半のみで終わったなら三ツ星。
1998年8月 1日(土) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:音楽
「絶対音感」

amazon素敵な出だしを持つノンフィクション。
絶対音感について様々な角度から調べてあり労作である。
が、評判ほどには面白く感じなかった。いや、面白くはあったのである。絶対音感というものに対する認識も新たに出来たしそれについて何日も夫婦間で話題になったりした。いろんな意味で良く出来たルポタージュであると思う。
ただ、絶対音感がある人の哀しみだったり、絶対音感がない人の苦労だったりを、人間ドラマとしてもう少し読みたいと思うのはボクだけだろうか。全体に優れた報告書ではあるがいまひとつ血が通っている感じがしない気がする。人間のヒダヒダに触れる部分の突っ込みがもう少し欲しいと思った。
1998年7月 1日(水) 12:00:00・リンク用URL
「ピアノ レッスンズ」

amazon51歳になって突如ピアノを弾くことを志した著者(アメリカで一番人気があるラジオパーソナリティらしい)の悪戦苦闘ピアノ物語。
そのエピソードの数々はそれなりに読ませるし、ピアノをある程度の歳から始めた(もしくは始めようとしている)読者にとっては共感も多いと思う。が、訳が悪いのか原文が悪いのかわからないが、全体に稚拙で散漫な印象。もっともっと盛り上げられるしもっともっと共感を呼べる題材なのに。残念だ。
同じ様なレベルのピアノ弾きとして個人的にはいくつも参考になるところがあったのだけど。
1998年6月 1日(月) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:音楽
「スイングジャーナル青春録~大阪編~」

amazonジャズ専門誌「スイングジャーナル」の元編集長がその音楽遍歴を中心に書きつづった青春記。
などと聞くと、音楽遍歴のすごさとか自分のセンスの良さとかをひけらかす内容が想像されるが、さにあらず。平明な文章で実に等身大なる快作に仕上がっている。この等身大というのは実はとても難しい技だと思うのだが、著者は嫌味にもならず冗漫にもならず実に素直にそれに成功している。敢えて言えば、ちょっと笑いをとるのが下手みたいだけど。
ただ、「大阪編」とあるように下巻として「東京編」が秋に発売されるらしいのだけど、「このまま等身大だけで終わるんではないだろうな?」とちょっと心配にもなる。雑誌「スイングジャーナル」の編集長としてのボクたちにない視点も(読者とは勝手なもので)求めてしまうからである。「東京編」が待たれる。
1998年4月 1日(水) 12:00:00・リンク用URL
「Portrait in Jazz」

amazon和田誠のイラストに村上春樹の文章でジャズを描く、となれば冬の一晩を楽しく過ごせること請け合いだ。
まず和田誠によるジャズ・プレイヤーのイラストありきで、それに村上春樹がエッセイを乗せていっているのが普通の本と逆。プレイヤーの個性をつかんだ上質のイラストに刺激されて(プレイヤーの人選がまたすばらしい)、実にリズミカルにエッセイがスイングしている。村上春樹はこういう企画ものでも大変丁寧に書き込む。しかも新しい視点を各編ひとつは読者に与えてくれる。やっぱりすごい文筆家なのだなぁ。
というか、ジャズを好きに書く、という場を得て、イキイキしている感じ。すばらしい。
1998年2月 1日(日) 12:00:00・リンク用URL
「伊丹由宇のビデオでROCK」

amazon著者には「こだわりの店不親切ガイド」という食べ物系の著書があって、そちらはわりと文体も切り口も好きだったのでこれも買って読んだ。
音楽ビデオのレビューなのだが、例えば村上春樹にあるような独自の目線による解析が少ないし、妙に読者に媚びたようなミーハー文体も混ぜていたりしてなんだか読んでいて落ち着かなかった。ビデオをもとに時代を切るということ自体はユニークなのだからもっとしっかり書き込んで欲しかったと残念に思った。
1998年2月 1日(日) 12:00:00・リンク用URL
「ロッシーニと料理」

amazon副題は「オペラを作曲した美食家の生涯・逸話・音楽・書簡・料理」。
かなりの有名作曲家ながらボクにはあんまり馴染みのないロッシーニ。彼は実は異様な美食家であったのでした。
その美食家ぶりを数多いエピソード、実際に残っている彼のメニューや楽譜などから浮き彫りにし構成したのがこの本。と書いてしまうと堅苦しく思われるかもしれないがさにあらず。軽い筆致で気楽に読ませてくれる。なんとも人間的なロッシーニだ。
それにしても書いてあることが本当ならロッシーニは異様な大食家でもある。すごいなぁ。獣みたい。
1997年11月 1日(土) 12:00:00・リンク用URL
「ベートーベンの耳」

amazonベートーベンの耳は聞こえていた!
二重構造を持った本で、基本的には著者の難聴者としての半生記。
聴覚障害者の生活を迫真の記述で読ませる。そしてそれと並行して、ベートーベンの耳についての推理が進行していく。
楽聖ベートーベンは実は耳硬化症(著者の病気)であって人の声は聞こえにくくともピアノやオーケストラの音は聞こえていたのだ、ということを自らの経験を元に読みといているのである。たいへん興味深かった。「ベートーベンは耳が聞こえなかった」という史実に何の疑問も挟まなかった自分が情けない。全く聞こえなかったはずがないのだ。
まぁベートーベンに興味がなくても聴覚障害者の実感部分を理解するために読んで欲しい本ではあります。
1997年10月 1日(水) 12:00:00・リンク用URL
「夢を食った男たち」

amazon天才・阿久悠が70年代の歌謡曲界を振り返った快作である。
副題に「スター誕生と黄金の70年代」とあるように、お化け番組「スタ誕」を軸に、花の中三トリオ、伊藤咲子や黒木真由美、岩崎宏美、ピンクレディ、そして都倉俊一をはじめとする仲間たちを描いたもので、歌謡曲という素晴らしい虚構の世界をその鋭い視点で熱く語り尽くしている。
ボクはもともとこの世界が好きだしかなり詳しい。そういう意味で特に楽しめたということもあろう。
が、ちょっと大げさに言えば、これは日本が熱かった時代を音楽で切った貴重な証言集でもあるのだ。まだ戦後という言葉が生きていた時代を、歌謡曲というジャンルがあった時代を、この本で再体験して欲しい。でもあの当時の事情をほとんど知らないヒトにはつまらないかもしれないなぁ。
1997年9月 1日(月) 12:00:00・リンク用URL
「書き下ろし歌謡曲」

amazon歌謡曲をこの本のために書き下ろしているのである(もちろん作曲ではなく作詞で)。
あの天才・阿久悠が、である。しかも100曲も、である。実に新しい企画ではないか! こういう野心的な企画は大好きである。
狂喜して購入した。が、改めて「時代と共に歩けなくなってしまった歌謡曲というジャンルはいかにつらくなってしまったか」ということを確認したにとどまってしまった。すごい詞はいくつもあった。でもそれは「良く出来た詞」であってもはや「時代を先導する詞」ではない。ひょっとしたらもう言葉が時代を踊らせる時代ではないのかもしれない。そんなことを思った。
労作ではある。が、なんだかせつない一冊だった。
1997年9月 1日(月) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:音楽
「星にとどく樹」

amazon恥ずかしながら舘野泉を知らなかった。
フィンランド在住の世界的ピアニストらしくピアノ教師をしている嫁などは「エ!?知らないの?」てな反応を示した。う~ん。でももう知ったもんね。副題は「世界を旅するピアニスト」。この副題に惹かれて買ったわけでそんな有名人とは知らなかった。
内容は、フィンランドのこと、演奏旅行のこと、作曲家たちのこと、などのエッセイなのだが、静かな文体でなかなか心地よい。彼のCDでも聴きながら(早速買いました)寝る前にゆっくりこの本の世界に浸るなんて、なかなか贅沢だ。
1997年8月 1日(金) 12:00:00・リンク用URL
「ジャズと生きる」

amazon「世界のアキヨシ」の自伝。
日本で不当に評価されているこの著者の自伝は前から読みたかった。
文章の方は音楽と違い淡々としていてリズム感もスイング感もないが、その分だけ絞り出すような迫力が出てきていている。ただ時系列的な混乱、唐突に入ってくるエピソード、ジャズへの中途半端な言及、など、読んでいて辛いところはいっぱいある。そこらへんがもう少しこなれていればぐっと密度が濃厚になりいい自伝となったのに悔やまれる。
彼女のビッグバンドジャズは「ミナマタ」などのテーマ性の強さで敬遠していたがこれを機にまた聴いてみたい。
1997年5月 1日(木) 12:00:00・リンク用URL
「亜星流」

amazon副題「ちんどん商売ハンセイ記」。
ここでいう「ちんどん商売」とはCM商売のことで、彼が関わったCMソングの仕事を中心に明るすぎるほど明るく軽く、半生を振り返っている。
著者のポジティブな生き方そのものが面白いのだが、この本は少々表層的になりすぎていて正直食い足りない印象。軽く書き飛ばさないで、じっくり腰を据えて書いてほしかったなぁと思う。CM界の貴重な記録になっただろうに。
1997年1月 1日(水) 12:00:00・リンク用URL
「神童」

amazon戦後の廃墟から生まれた一人の天才バイオリニスト渡辺茂夫の、実際にあった物語を丹念に描いている。
「二十世紀のモーツァルト」とまで呼ばれた彼が7歳で初リサイタルを開き、あのハイフェッツに認められジュリアードに留学……筋を追うのは本意ではないが、著者が取り上げなければ一生知らなかったであろうこの少年の物語は感動的だ。
文章から立ち上がってくるバイオリンの旋律も実に魅力的で、読み終わってすぐバイオリン協奏曲を聞きたくなること請け合い。それも渡辺茂夫のをどうしても手に入れたいと思わせるのは著者の冷静な筆致と効果的な引用が功を奏しているからだ。でも手には入らない。その理由はこの本を読めばわかります。もひとつ渡辺茂夫の体臭みたいなものが書き込み不足で匂ってこないのを差し引いても、三ツ星。
※その後渡辺茂夫演奏はCDとして発売された。
1996年7月 1日(月) 12:00:00・リンク用URL
「ラブ&キッス英国」

amazon著者を知ってます? 実はあの伝説のロックバンド「サディスティック・ミカ・バンド」のミカなのだ。
この本は、彼女が加藤和彦と別れてイギリスのアッパーミドルに嫁に入り、そこも飛び出てあげくの果てフレンチのシェフになるまでを書いた「半生記」。
う~ん、すごい人生。
とはいえ、個々のエピソードはどれも表面的で食い足りない。おまけに英国の話を書きたいのか、自分の生き方を書きたいのか、シェフの話を書きたいのか(巻末にレシピが21も載っている)全然テーマが絞れていない。でもね、なんだか勢いがあって面白い本だった。特にアッパーミドルの生活はよく書けていると思う。英国好きのボクには特に興味深かった。
1996年5月 1日(水) 12:00:00・リンク用URL
「さよならバードランド」

amazon副題は「あるジャズ・ミュージシャンの回想」。
村上春樹訳で和田誠の挿画が一杯入っていると言えば雰囲気わかるよね。1950年代のニューヨークで活躍したベーシストの自叙伝で、ジャズの名プレイヤー達の希少なエピソードを淡々と味のある文章で綴っている。ジャズファンにはたまらない本。ボクは読み終わってすぐCD屋に走りビ・バップ創成期のアルバムをいろいろ買い込んだ。とにかくジャズに浸りたくなるのね、この本読んでいると。
てなこと思っていたら!
この本のためのCDがVENUS RECORDから出ているではないか! おそるべし日本の音楽ビジネス業界。
ちなみに、巻末に村上春樹による超詳細レコードガイドがついていて、これだけでもお買い得。
1996年2月 1日(木) 12:00:00・リンク用URL
@satonao310