科学(32)
「自然をつかむ7話」

amazon以前ムツゴロウさんが「佐藤さん、私このごろ、いろんなものがどんどん結びついてきましてね」と語ったことがある。日常の些細なことと生物学者的研究と動物の行動と経済と政治と犯罪と教育と……世界で起こる様々な事象がすべてつながって感じられるようになった、というのである。
海洋研究所所長を経て初代気象予報士会会長でもある著者が書いたこの本をひと言でいうとそういうことかなぁと思う。
著者の学者的視点が、趣味や日常の些細な出来事・疑問に結びついて1話をなしている。そういうのが7話入っている本なのだ。著者は「日常のなにげない事件から話を始めて、ふつうの人には思いつかないような点に目をつけ、話を大きくふくらます」寺田寅彦の手法をまねた、と本の中で書いているが、まさにそれ。そういう本が面白くないわけがない。わけがない。わけがないのだが、ちょっと平易さと魅力に欠けるんだよなぁ(がくっ)。雑談レベルの日常の出来事の描写が魅力的じゃないのだ、残念ながら。惜しいなぁ。岩波ジュニア新書なので、そこらへんは特に大事なはず。惜しいのだ。
2003年7月 1日(火) 12:00:00・リンク用URL
「海馬」

amazon副題は「脳は疲れない」。ほぼ日ブックス第二弾の一冊。
東大薬学部の気鋭の学者である池谷氏と糸井氏の対談をまとめたもので、脳についての最新研究における池谷氏の成果と糸井氏のクリエーターとしての視点がコラボレーションして、実に興味深い内容になっている。
少し挙げるだけでも「脳はいくら使ってもまったく疲れない」「30歳過ぎてから頭は飛躍的に良くなる」「睡眠時間は脳の疲れを取る時間なのではなく、脳が情報を整理する時間である」「夢は整理の過程でいろんな情報をランダムに結びつけてみることから起こる」「脳細胞は一秒に一個死んでいくが、もともとの容量が莫大なので無視していい」「使えば使うほど脳は成長する」……などなど、いままでのいろんな胸のつかえがおり、現41歳のボクに自信と勇気を与えてくれる内容がゴマンと入っている。
各章ごとにまとめも作ってあり、記憶をきちんと整理したあとの脳の中身みたいな印象に本が仕上がっているのもいい。あとはこのまとめ(記憶)をなにと結びつけて、読者自身がブレイクスルーを起こすか、である。
発見は多かったが、特に「脳は疲れない」ことと「睡眠とは脳の最適化作業なのだ」と気づかされたのは大きい。もっともっと脳を酷使しようという気になったしね。うはは。んでもって、ちゃんと睡眠しないと、整理されない雑然とした脳になる、というのも実感としてわかる。インプットがそのまま積み重なっているようなあの徹夜明けの気分。なるほど、ちゃんと寝よう。
などなど、目から鱗の発見が多く、味読したい事実が多い本であった。
池谷氏が最前線で研究する31歳の学者であるというのもいい。糸井氏の先輩風を全く吹かせない謙虚で好奇に満ちた姿勢もいい。ふたりとも論の掘り起こし方は天才的だ。脳を知り、脳を刺激するために読むべき一冊。
2002年9月 1日(日) 12:00:00・リンク用URL
「天文学者の虫眼鏡」

amazon毎日新聞で古館伊知郎が「目から鱗の名著」と書いていたのを思い出して本屋で購入。
1999年出版の本で、内容自体は96〜97年に「図書」に連載されていたもの。著者は自称「文系」天文学者。様々な文学作品をひもといたエッセイなのだが、着眼点が非常に面白く、知的興奮度は抜群である。
例えば「コップ一杯の水にニュートンの脳細胞を作っていた原子が4000個も含まれている」とか「超自然的な力が働くように思える予知夢であるが、偶然に予知夢を見る人を確率論で計算していくとたった一日で日本に26人もいるはず」とか、文学を起点にこんな面白い話まで発展していくのか、という話が満載なのである。漱石の猫を分析した章も興味深いし、カエサルのローマ暦の話もわかりやすい。
新書はこうあるべし、という見本のような本である。面白い章と面白くない章の差が顕著なのが残念だが、かなり楽しめる。おすすめだ。
2002年7月 1日(月) 12:00:00・リンク用URL
「暗号解読」

amazon「フェルマーの最終定理」を書いたサイモン・シンが、今度は暗号に取り組んだ……というだけで「フェルマー…」を読んだ人にとっては是非とも読みたい一冊になるだろう。
そのくらい「フェルマー…」は面白かったし、著者の取材力と再構成力は信頼がおけるのである。ただ、前回と違うのは、「暗号」というメソッドの複雑さがボクの理解をかなり超えるということだ。「暗号理論を学びながらその歴史と現状を理解し最前線を知る」ということが、数学得意でないボクにはどうにも苦痛になってしまうのである。
「16歳のセアラが挑んだ世界最強の暗号」も暗号を扱っていたが、これは非常に簡略化して素人でもわかるように書いてあり、ボクは「暗号の現状ってこうなんだぜ」と知ったかぶりしてヒトに話したくらいである。が、サイモン・シンのこれは、確かにわかりやすく咀嚼して書かれてはあるものの、玄人の領域まで突っ込んだ記述になっていて途中で混乱してしまう。つまり詳しすぎてわからなくなっちゃうのだ。うーむ。
こういう題材が好きな人には大オススメ。相変わらずの構成力と筆力で粘り強く語られているそれは感動的ですらある。暗号のことが(具体的数式を除いて)すべてわかると言っても過言ではない。が、ご自分の数学的素養に疑問を抱いているヒトにはあまり薦めない。分厚いし、苦痛なだけだと思う。
2002年5月 1日(水) 12:00:00・リンク用URL
「怒りのブレイクスルー」

amazon不可能と言われた青色発光ダイオードの画期的発明で、いまノーベル賞に最も近い技術者として著名な著者が書いた半生記と日本告発の書。
彼はいま日本を捨ててカリフォルニアに住んでいる。胸が圧迫されるような閉鎖感に満ち満ちた日本で、その状況を疑いもせずサラリーマンとして働き続けた半生、徳島の片田舎の小さな会社でたった一人で成し遂げた数々の研究開発のブレイクスルー(現状打破的飛躍)、会社とのケンカ、報酬の少なさ、そして、日本への絶望と海外雄飛……ノーベル賞に最も近い男と言われるにはちょっと記述が幼く、構成もスッキリしてなく、イイタイコトも分散してしまってはいるが(編集者の責任だと思う)、彼の心の奥からの怒りは真っ直ぐに伝わってくる。
彼ははっきり書いている。「外から眺めてわかったこと。それは、日本がむしろちっぽけで、くだらない国だという事実でした。社会の価値観も画一的。しかもそれを無理矢理に押しつけてきます。人を見かけで判断し、肩書きが幅をきかせています。民主主義が機能せず、真の意味の自由はありません……」 そしていま著者は会社を相手に20億円の賠償訴訟を起こしているらしい。
確かに例えばイチローの技術に対する対価に比べて世界的発明の対価はお話にならないくらい低すぎる(特許料2万円のみ!)。企業は技術者を優遇すると言いながら搾取しかしていない現状。著者はむしろ温厚な家畜的サラリーマンであった。その著者をここまで怒らせてしまった日本というシステム。
著者も、そして例えばイチローも、日本というシステムを憎んでいる。もう日本には帰ってこないだろう。同じ時期に読んだ「コリア驚いた! 韓国から見たニッポン」と共に、かなり落ち込まされた。が、著者の本意は「もっと怒れ!もっとキレろ!」である。諦めてしまうことこそ、一番愚かな結論なのだろう。
2002年1月 1日(火) 12:00:00・リンク用URL
「トンデモ本の世界R」

amazonトンデモ本シリーズの最新作である。相変わらず痛快であるし、情報を鵜呑みにせず何事も疑ってみるという「知性の第一歩」をあらためて認識させてくれる本である。
UFO本や宇宙人本、超能力本が特に取り上げられがちのトンデモ本の世界であるが(もちろんそれらは定番として取り上げられているが)、この本では、小林よしのりの「戦争論」や週刊金曜日の「買ってはいけない」をはじめ、大藪晴彦や落合信彦、果ては三島由紀夫までトンデモ本として取り上げられている。
論旨は明快。活字や映像を信じがちな自分たちの意識に猛省を迫られる。と同時に、このトンデモ本解釈自体がトンデモである可能性もちゃんと持たないといけないことにも気付かされる。つまり「自分の知性でちゃんと調べ、信じたこと以外、ぜ~んぶ疑ってかかれ」ということだ。情報に溢れているこの世の中を生き抜いていくに必要な最低限のリテラシーなのかもしれない。大変だけどねー。
2001年12月 1日(土) 12:00:00・リンク用URL
「いやでも楽しめる算数」

amazonこのふたりが組んで5冊目、かな? 理科エッセイ2冊、社会科エッセイ2冊と来て、ついに算数エッセイである。
先生役の清水とサル役の西原が非常にうまく絡み合うこのシリーズをボクはたぶん2冊読んだことあるが、この「算数篇」はちょっと中途半端な印象を持った。ある意味このシリーズで一番熱心に説明はなされているものの、算数に関するおもしろ本は世界的に数多くあり、レベルも高く、しかもそれらをわりとボクは読んでいるので、比較しちゃうとどうにも辛い。清水がとうとうと述べている面白い算数の命題とかも、他の本で読んだものがほとんどだった。うぅ、こりゃアンフェアかも。そういうのに触れたことのない人が読んだらもっともっと面白いのかもしれない。
西原は今回、別の勝負をしている感もあり、ほぼ算数に関しては清水の独壇場。
ボクはもともと算数大嫌い派なのでイイタイコトとかよくわかるのだが、「算数を嫌っている人にも楽しく読めるように書くからね、ゴメンね」という引き気味のスタンスが表面に出過ぎて、小さくまとまってしまった感があるのがやっぱり惜しいな。そんなの無視して「算数ってこんなに楽しいの!」と自信たっぷり書いてくれれば良かったのに。そこに西原が暴力的にツッコんできた方がよっぽど面白かったと思うのに。
2001年12月 1日(土) 12:00:00・リンク用URL
「新・トンデモ超常現象56の真相」

amazon正式には「と学会」の出版物ではないのかな。まぁ著者のうちふたりが「と学会」であるし、題名もトンデモが入っているからそう取ってもいいだろう。トンデモ本のファンであるボクとしては不覚であるが、この本の前に「トンデモ超常現象99の真相」という本が出ていたらしい。その続編にあたる本書だが、続編でもこんなにオモシロイ。
「と学会」のイイタイコトはひとつである。「メディアを信じるな!」である。活字もTVも絶対信じるな、である。それらは我々を愚弄している。その証拠上げがこの本のようなシリーズなのだ。
なにしろTVのバラエティ番組のウソのつきかたは尋常ではない。視聴者をバカにしているどころの騒ぎではない。「ここまでウソついて何のおとがめもないの?ウソでしょ?」の連続だ。超有名な霊能者(クロワゼットやカスタネダら)の経歴の真っ赤なウソさ加減も絶句もの。どうしてこうぬけぬけとウソがつけるのだろう? UFOや宜保愛子の大ウソ、涙を流すマリア像や新しいところでは岐阜県富加町のポルターガイスト事件への疑問まで非常にクリアに晒してくれる。
ある意味大変な労作であるが(資料の裏取りとか)、この本が言うように活字を信じるなであれば、この本の内容も疑ってかかるべきであり、一概にすべてを信じるわけにはいかない。ただ、何事も疑ってかかる、という知性的な習慣をつけるいいキッカケになるという意味では大オススメである。
2001年11月 1日(木) 12:00:00・リンク用URL
「16歳のセアラが挑んだ世界最強の暗号」

amazonEU青年科学者大賞を暗号の研究でとった16歳のレディの顛末記というか自伝というか(数学的説明の一部は父親と一緒に書いたようであるが)。
彼女が純粋なる数学的興味のもとに開発してしまった暗号は世界最強の暗号と言われているものを凌ぐ可能性すらあり、暗号専門家の度肝を抜いた。数学との出会いから、その暗号を提出課題にし研究するまで、達意の文章でやわらかく読者を導いていってくれる。文章はとても良い。
特に数学との出会いの辺りは素晴らしい出来。例に上げられているクイズも興味深く、知的興奮に満ちている。ただ「mod」に言及する辺りからかなーり難しくなってくるので、数学音痴としては辛かった。でもそこらの章は読み飛ばしてもなんら大筋に影響ないので、音痴さんでも大丈夫。
原題は「In Code : A Mathematical Journey」。
邦題、オーバー過ぎないか? なんというか邦題イメージほど「挑んだ系ド根性の物語」ではなく、ずっとスマートな物語なので、読者は(邦題のせいで)少し肩透かしを食わせられるところがあるかもしれない。もっとなにげなく成功しちゃうのだ。しかも成功かどうかもまだ判断保留だったりするのだ。
行間から感じられるアイルランドののびのびした教育環境がかなりうらやましい。移行年やアルバイト制度など学ぶべき点はいっぱいある気がした。
2001年11月 1日(木) 12:00:00・リンク用URL
「動物の言い分 人間の言い分」

amazonこの手の自然科学系もしくは動物科学系の本は興味深くて好きなのだ。日常から遊離できるし想像も膨らむ。この本も導入部はなかなかに良かった。お、面白いなと思った。人間の論理から見たものではなく、動物独自の論理を追っていくように見えた。でも、なんとなく拡散していってしまうのが残念。途中から普通の「事典」風になっていってしまうのだ。
動物のコミュニケーションの仕方をわかりやすく書いてくれているのは興味深い。事実がいろいろ書いてあるのはいいのだ。でもそれだけなのが残念。事典を読みたいのではなくて、そこから導き出せる動物の言い分について、もうちょっと主観的なコメントを多く欲しかった。もう一歩こちらの想像力を刺激する部分がほしいのだ。新書ならでは、の。
学者さんがおもしろ優しくテーマを掘り下げた、にとどまっている気がする。それでいいじゃんと言われればその通り。でもボクはそこにもうひとつエンターテイメントの付加を求めたい。テーマを掘り下げるのは、もうネット内でタダで読めるような時代になってきた。売るからにはプラスワンがほしいのだ。
2001年10月 1日(月) 12:00:00・リンク用URL
「ツキの法則」

amazon先月読んだ「『社会調査』のウソ」が面白かったので、同じ著者の本を購入。
クレバーで的確な切り口、そして分析は相変わらず面白い。ボクが賭事好きであれば読み方も変わり、当然三ツ星ってことになったかもしれない。でもいかんせんボクは現在ほとんど賭事に手を出していないので、中盤の各ゲーム別具体的分析あたりがちょっと退屈であった。仕方ないけど。
科学的、統計学的に巷で言われているいわゆる「ツキ」というものを次々切り捨てていく展開は見事。ツキの正体が豊富な実例と考察でしっかりあばかれている。そして「確実に勝つ方法はないが確実に負ける方法」はある、と断定し、ギャンブル本来のスリルや楽しさを損なわずに「大負けしない方法」は存在すると導く。
著者が統計バカでないのもうれしい。筋金入りのゲーマーなのだ。コントラクトブリッジ全日本学生リーグ委員長だった経歴すら持っているのである。そういうゲームの流れの機微を知ったうえでのツキの科学。興味ある向きにはオススメである。
2001年5月 1日(火) 12:00:00・リンク用URL
「旨いメシには理由がある」

amazon副題は「味覚に関する科学的検証」。
著者は九大のシステム情報科学研究員教授で「味覚センサー」を開発(びっくりするほど原始的な機械だが、非常によく出来ている)。それにより、人間がおいしいと思う感情は食品のどこで起こるのか、がしっかり分析されていて面白い。うん、面白いのだ。かなり面白い。特に要所要所で出てくる具体例は目から鱗がたくさん。豚骨とかビールとか牛乳とかの分析や「プリンに醤油でウニ味」とかの例示も興味深いものがある。なるほどー、味ってこういうことなのか、がよくわかる。
でも、でもでも、ちょいと専門用語多すぎ!
専門用語(化学用語)が多いからこそ価値がある、とも言えるが(同じ主題で専門用語なしだったらなんともいい加減チックなものになるだろうし)、読んでいて苦痛になるほど多いとちょっと考えもの。内容的にはとっても面白いのに、再読したくないのはこういうところ。専門用語が苦痛じゃない人には三ツ星な本であろう。きっと。
2001年5月 1日(火) 12:00:00・リンク用URL
「『社会調査』のウソ」

amazon新聞や雑誌、テレビはもとより学会誌に至るまで、「○○の調べによると△△が□%にものぼることがわかった」みたいなデータが横行しているが、それの過半数はゴミである、と断言している本。ゴミというか「ウソ」だな。
例を実名を上げて豊富に紹介し、そのいちいちをどこがどうウソなのか分析し、巻末には「じゃーこのデータはどこがウソだかわかりますか?」みたいな例題までついている。
データを解釈者の都合のいいように解釈している例が世の中にここまで多く存在し、それをわれわれはいかに疑いもせず信じ込んでいるか、がよくわかる本である。つうか、大新聞やテレビが堂々と発表しているんだから、まぁ端から疑わない人が多いよなぁ。でもよく考えたら確かにデータなんて作為を持たせればいくらでも作為を作れるもんなぁ。いままで疑わなかった自分の方が悪いのだ(たまにトンデモ的なデータもあるから疑うことは疑うが、ここまでしっかり考えたことはあまりなかった)。
とある掲示板で勧められて読んだが、面白かった。
この著者の他の作品も読んでみようと思う。副題は「リサーチ・リテラシーのすすめ」。リテラシーという言葉はこの頃よく使うね。直訳すれば「読み書き能力」。基礎能力、みたいなことかな。
2001年4月 1日(日) 12:00:00・リンク用URL
「クモの糸のミステリー」

amazonクモ。不思議な生物だ。興味はわりと前からあった。なので書店で見つけて即購入。
副題は「ハイテク機能に学ぶ」であって、クモの糸の科学的分析などのサイエンス系新書ではあるのだが、実際には小難しいことは何もなく、クモをめぐる体験エッセイみたいな趣になっている。わかりやすく、おもしろく、好奇心をいろいろ満たしてくれる。佳品だ。
ただ、読んでいくに従ってクモへの好奇心がどんどん高まっていくのだが、そうなればなるほど「クモの写真が見たくなる」のである。白黒でもちろんいいから、クモ自体の写真をもっといろいろ載せてくれていないのが不満である。つうか、クモを好きにさせておいてそれはないだろう、みたいな憤慨すらある。上手に興味を湧かせているのだから、読者の身になって、興味の収まりどころまでケアしてくれていたらもっと良かった。贅沢かな?
2000年9月 1日(金) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:科学
「虫の目で人の世を見る」

amazon副題が「構造主義生物学外伝」。難しそうだし題名的にも哲学的だが、内容は全然そんなことはない。
以前「昆虫のパンセ」という著者の本を読んだことがあるが(いま再読中)、この本はその時の印象よりかなり軽妙。非常に程のよいエッセイ集になっている。いいなぁ、こういう感じのエッセイ。新しい視点・経験を与えてくれつつ、お気楽・適当に読み飛ばせる。そして読後には世の中が読む前よりほんの少しだけ豊かに見えてくる…。簡単そうに見えて、こういうエッセイは実は難しいのである。
で、さりげなく「イイタイコト」を混ぜ込んである。「客観は普遍ならず。主観の中にこそ普遍はある」…。なるほど。確かに虫やら猫やらに人間の客観(例えば科学・数学)は通じない。つまり客観が普遍だというのは人間の大いなる傲慢なのであるか。なるほどなるほど。
虫屋という言葉があるのは知っていたが、それにしてもすごい世界だなぁ。その昔(小学生低学年)、昆虫博士と友達から呼ばれていたボクであるが(ホント)、あの世界を年寄りになるまで引きずって歩いている人がいっぱいいるのだねぇ。はっきり言って素晴らしいと感嘆しつつ読み進んだのでありました。なお、終盤は河童の話になるが、これは洒落っぽくクソ真面目に書いてある。
2000年7月 1日(土) 12:00:00・リンク用URL
「放浪の天才数学者エルデシュ」

amazon先月読んだ「フェルマーの最終定理」が面白かったから今月も数学者ものを探した。そこにちょうど新刊。藤原正彦の数学に関するエッセイ(「心は孤独な数学者」とか)はほとんど読んだりしていたから、もともと好きなのかもね、数学者噺。
で、エルデシュ。ファインマンなみに変人として有名な人だけあって、エピソード満載。そのエピソードを追っているだけでめちゃくちゃ面白い。ここまで破天荒な人も珍しい。これだけの素材、上手に扱えばそのエピソードだけで人は読む。
が、「フェルマーの最終定理」は数学がわからない人でも楽しく読めるのに対して、この本は中盤かなり数学的に突っ込んだ記述もなされていて、それが辛い人には辛いかもしれない(辛い人=ボク)。
このぐらい突っ込まないとつまらないという人もいるかもしれないが、その論がエルデシュと遠いところでなされているのが問題だ。エルデシュ周りの定理とかなら読者ももっと我慢しただろう。最終定理を解いたアンドリュー・ワイルズに対する記述もかなり出てきて、個人的には先月とうまく繋がって面白かったけど、もう一息って感じの本。
2000年7月 1日(土) 12:00:00・リンク用URL
「フェルマーの最終定理」

amazon友人が面白いよと貸してくれた本。うん、面白かった。
フェルマー系の本は他にもいろいろ出ているが、この本がすごいのはかなりつっこんで数学を書いていること。ある意味フェルマーの最終定理を起点にした数学史になっている。で、その数学史が面白い。身近な命題を持ち出してなんというか「面白い数学の授業を聞いているような」気分になってくる。うーん、数学をちゃんと勉強しておけば良かったよー。こんなに面白い学問、他になさそうな気になってくるではないか。そこらへんがとてもうまい本なのである。ピタゴラスについて突っ込んだ章なんか面白かったな。
もともとはイギリスのテレビ番組のための取材が基本になっている。だから文章も要所要所が映像的で面白い。知的興奮と快感を適度に感じさせるバランス感覚もテレビ的である。そのへんもこの本の成功要因であろう。
日本人の我々にとっては「谷山-志村予想」に深く突っ込んだ章などなかなか愛国心をくすぐられてうれしい。インド系の著者はマイノリティ人種を全く差別しないのも素晴らしい。面白くためになり知的好奇心も満足させてくれる一冊である。おすすめ。
2000年6月 1日(木) 12:00:00・リンク用URL
「私は臓器を提供しない」

amazon「ドナーカードに承諾のサインをしなかったら、それは人道にかなわないことになるのか」というテーマのもと、「私は臓器を提供しない」という立場をとる執筆者が集まり、それぞれの論を展開し、読者が自分の立場を選択するための材料提供をしてくれている新書。
企画とてもよし。執筆者まぁまぁよし。ヒューマニズムという美名のもと「なんとなくいいこと」と思われ押し進められている「臓器提供」をもう一度考え直すきっかけになる。
が、どうも読後感が散漫だ。もちろん複数執筆者が好き勝手自分の意見を書いているだけなのだから散漫になるのは仕方がないし、いろんな切り口でこの問題を切っていこうという編集方針も正しい。ただ、ことは「死とはなにか」という根本的問題にぶちあたらざるをえないため、それぞれの執筆者の死生観が中途半端な枚数で中途半端に語られてしまう。それがこの本をとても居心地の悪いものにしている。もうちょっと執筆者の数を絞って(10人書いている)、じっくり書かせてみてもよかったのではないだろうか。
個人的には橋本克彦による論の展開が一番しっくり来た。そう、そうなのだ。肉体にも自我は宿っているのである。うん。
2000年5月 1日(月) 12:00:00・リンク用URL
「建築を語る」

amazon建築家安藤忠雄の東大大学院での講義を一冊にしたもの。第一講から第五講まで。
彼の建築に対する考え方が、その半生と共に語られていて、実に面白く含蓄に富んでいる。いまだ「大センセイ」になるのを拒否しているその精神で語られた言葉は、全体の構築がしっかりしている上にケレンもあり、細部はシンプルにまとまっていて、著者自身が作る建築物を彷彿とさせるようである。
まぁ建築についてはド素人なので、わからない専門用語・専門家名なども出てきたが、そういう部分はすべて飛ばし読みしてもとても面白かった。個人的に特に面白かったのが、若い頃に考えた都市建築計画の案をぶっつけで役所に持っていったり、歳をとったいまでも当時の案にこだわっていたりといった「精神的若さ」みたいなもの。ボクなんか良い案だなと思っても、否定されると妙にオトナになってバランスを取り直して作り直したりしてしまう。それではなにも残せないのだ。そんなこと今頃わかったりした。まぁここでは多くを語れないけど。
まぁそういうような心の部分を刺激してくれる内容を持った名講義。一読をオススメします。
それにしても素朴な疑問なのだけど、なぜ建築家の書く文章はみな句読点が「,」と「.」なの? 建築雑誌とかでもほとんど「,」と「.」だ。あまり好きではないのだけど。
2000年4月 1日(土) 12:00:00・リンク用URL
「科学鑑定」

amazon最近読んだ「ボーン・コレクター」は科学捜査を駆使したミステリーだった。こういうのを読むと俄然「科学捜査」や「鑑定」についていろいろ読みたくなる性分のボクは、早速本屋に出かけていき、まさに読んで字のごとし、希望にピッタリの本をここに見つけたわけです。
が、一読するのに時間がかかったことといったら!
なにせ専門的すぎる。漢字も多い。読み慣れない専門用語にキョトキョトしながら読み進めるが、その専門用語自体が画数の多い漢字で、そのうえ著者が熟語を多用するからなんか文章がめちゃめちゃ詰まった感じになって非常に辛かった。ボクに読解力がないといえばそれまでだが、学術論文でも専門書でもなく「新書」でしょ? もっと噛み砕いてよ、もっと平易に書いてよ、興味ある初心者に対してもっともっと易しく書いてよ…つうのは贅沢なのか? 内容は誠意あるものだったが、やっぱり読者に対しての親切に欠けると思う。
ちなみに著者名の「いく」は日かんむりに立。漢字検索でもなかったのでご勘弁。
2000年2月 1日(火) 12:00:00・リンク用URL
「ウナギの科学」

amazon副題に「解明された謎と驚異のバイタリティー」とある。
まぁウナギ学の最先端がここで読めるわけだ。
こんなにポピュラーな魚なのにほとんどその実体が解明されていないことで有名だったウナギだが、なるほどなるほど、こういう魚だったのね。でも・・・かなり興味がある人でないと読めない。ほとんど学術論文。かく言うボクも興味のある項を拾い読みしただけ、かも。寝る前の睡眠薬にはなったのだけど。
それにしても、魚の中で最も硬い、というウナギの生身、一度囓ってみたいなぁ。ゴムと同じ硬さだというから噛みきれないのだろうけど。
1999年9月 1日(水) 12:00:00・リンク用URL
「アポトーシスとは何か」

amazon副題は「死からはじまる生の科学」。
アポトーシスという言葉はなんとなく聞いていたけど、友人の薦めでこうして読むまで意識して感じたことはなかった。生の中に死は含まれる、という命題で本を書く作家は多いが、実際に細胞レベルで生と死が共存しているとは驚きだ。
アポトーシスとは「細胞が積極的に死んで行くこと」。
自らの意思で死を選ぶ細胞がいるのだ。この本はその発見とそれによる癌・AIDS・アルツハイマー治療最前線の話とともに、生(性)と死の哲学が語られている。難しいが興味深い本だ。特に興味深いのは第8章「死から生をとらえなおす」。死をちょっと違う観点から捉え直し、それによって生を考えるきっかけを与えてくれる。
1998年11月 1日(日) 12:00:00・リンク用URL
「味と香りの話」

amazonなかなか面白い。食べることが好きな人は一回こういう「おいしく感じる仕組みの話」は読んでおいても損はないだろう。
味・匂い・香りの科学的エッセイなのだが、専門用語を多用しているわりには、エピソードのまじえ方がうまいのだろうか、わりと最後までスラスラ読み通せる。ただ、初めの頃のきさくさが、後の方ではなくなっているのが惜しい。
でもあれだな。こういう新書系の科学書って読んだ端から内容を忘れていくな。いったいなんでだろう。
1998年10月 1日(木) 12:00:00・リンク用URL
「おもしろくても理科」

amazon簡単に言えば「バカでもわかる科学」。
具体的に言えば「西原理恵子でもわかる理科」である。とはいえ、サイバラ画伯は思ったより絡んでこず、清水義範がほとんど論を進める。
この本の問題は章によって題材によって面白さにムラがあることだ。
例えば「慣性の法則」などはとてもわかりやすく面白く書いてあるし「××が東京ドームだったら」も良く出来ている。が、いくつかの章はとてもつまらない。著者もパスティーシュで見られるような切れ味が感じられずちょっとつらいものがあった。
1998年6月 1日(月) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:科学
「腸は考える」

amazon今月「人間ドック」に行って直腸の検査などを受け、にわかに腸に対する興味がわいて読んだ本。
91年初版だからわりと古い。単なる管のように思われている腸だが、その能力たるや脳に匹敵する自主運営器官だったとは…知らなかったのである。
そのような内容をこれまた非常に平易に書いている。比喩もわかりやすく研究過程も臨場感ある紀行文的な趣で好感が持てる。そして研究者たちのいわば青春記にもなっていてなかなか楽しく読み終えた。こういう平明さは岩波新書をはじめとする新書の真骨頂であろう。とにかく気楽に楽しめる腸能力本である。
1998年4月 1日(水) 12:00:00・リンク用URL
「心は孤独な数学者」

amazonわかりやすい文体とワクワクさせる切り口でいつも楽しませてくれる著者(本職は数学者)が3人の天才数学者の生涯をたどる紀行エッセイ。
取り上げたのはニュートンとハミルトンとラマヌジャン。
ニュートン、ハミルトンはともかく、インドの大天才ラマヌジャンについては初めて知った。それを知っただけでも収穫だ。残念ながらボクは数学の美しさを知らないまま数学を諦めた口であるが(しかも早くも中学生のときに)、こういう本をあの頃読んでいたらまた数学に対する見方が変わっていただろうなぁと残念に思う。ただ、惜しむらくは、紀行文としても数学エッセイとしてもそれぞれ突っ込みが中途半端だ。惜しい。
表題もちょっと疑問。数学者の孤独はわかるのだが、それを表題にするのは違うと思う。著者も数学者だけにちょっとナルシスト的な嫌らしさが匂ってしまう。内容がいいだけに残念。
1998年1月 1日(木) 12:00:00・リンク用URL
「ミジンコ道楽」

amazon副題は「その哲学と実践」。
ミジンコに魅入られて果てはモンゴル、ヒマラヤまで行ってしまったミュージシャン坂田明のお話。
題材よし。哲学よし。実践も良し。だけどあとは全部もうひとつだった。「である」と「ですます」が混在する文体は読みにくくって閉口したし、随所にちりばめたつもりのギャグも空振りが多い。ボクは著者の演奏は生で何回も見ているしお人柄も非常に好きだ。だが、演奏に見られる常識にとらわれない縦横無尽さが文にはなく、本人の魅力もイマイチ紙に定着していない。なんだかもったいなかったのである。
1997年12月 1日(月) 12:00:00・リンク用URL
「脳天観光」

amazon真の意味で聡明な知性に難解なことを語らせてみたら、こんなに平明なものになりました、の見本。
地球最後の秘境「脳」がこんなに面白く優しく深くわかっていいのか、とつぶやきながら読んだ。
「頭がいい人」というのはこの著者たち(特に学者・加藤総夫)のような人を指すのだと思う。こんな学者がいるならまだニホンも大丈夫。知的エンターティメントとしても科学啓蒙の書としても満点なる名著。
1997年4月 1日(火) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:科学
「結局わかりませんでした」

amazon副題が「ザ・知的漫才」。
ビートたけしが日本の知性(?)9人(松井孝典、養老孟司、本川達雄、荒川秀樹、ピーター・フランクル、荒俣宏、中原英臣、森幹彦、上野正彦)と対談したもの。知らない人もいるけど(だってただの歯医者もいる)、とにかく勉強したくてうずうずしてくることだけは確かな本だ。
これを読むとビートたけしの本質は「物事の本質をついている人」ではなくて「地にしっかり足がついている人」なのがよくわかる。地に足がついていない人がこういうことをすると対談ではなく単なる「インタビュー」に終わってしまうだろう。自分の視点と土俵からしっかり意見をいうことの大事さを思い知らされました。(ただあとがきは説教臭くてイヤ)
題名が秀逸。もともと論理的でない世界を論理的に論じようとする無意味さを端的に言い表している。教養好きの人は必読。向学心という化石を取り戻してみたい人も是非。
1997年3月 1日(土) 12:00:00・リンク用URL
「ぼくが地球で会った愉快な人たち」

amazon「極値集合論」という数学の最先端を研究していて、その問題について世界に5人くらいしか話を出来る人がいなくて孤独を感じ、大道芸にのめり込んでいったという破天荒な著者の半生記、そしてエッセイ。
なにしろ11か国語を話し、数学オリンピックでは金メダル。大道芸人であり数学者。そんな彼の書くものだけに登場人物は多士多才でエピソードもそこそこ面白い。
が、これだけ数奇な人生を送ってきた人の書くものにしては「もうひとつ」という印象。読者が期待しすぎるのかもしれないけど、もう少し切れ味がほしかった。
1997年3月 1日(土) 12:00:00・リンク用URL
「動物は世界をどう見るか」

amazonハエは世界をどう見ているのだろう。アリは? ねこは? ミツバチは? 100個近い目を持つホタテ貝は? じゃあ人間がハエの目を持ったらどうなる? 動きや奥行きを動物はどう捉えている? 鳩はどうしてあんな視界が届かない遠いところからでも帰ってくる?
ね、面白そうでしょ? 夜寝る前に少しずつ読む、みたいな読み方が適している知的睡眠誘導ブック。
学術用語を減らしてもう少しわかりやすく書いてくれたら完璧なのだけど。
1996年6月 1日(土) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:科学
「犬たちの隠された生活」

amazonこれは動物行動学的体裁を整えているが、実は犬を通して人生を語った書でもある。
なぜなら著者は犬と人を分けて考えていない。「しがらむ」ということにかけては犬も人も同等なのだ。終盤、淡々と愛犬達の死を語ったところなど、下手な小説よりずっと感動的だ。これまたおすすめの一冊。
1995年12月 1日(金) 12:00:00・リンク用URL
@satonao310