旅(78)
「アフリカにょろり旅」

amazon幻の熱帯ウナギ捕獲のためにアフリカ奥地に入り込んだ東大の研究者による冒険記。
とはいえ研究の書ではまるでなく(題名でわかるか)、いわゆる「爆笑紀行」的趣き。特殊すぎるその体験のすべてが事細かく書かれてあり、読者は日本のベッドで彼らの地獄の日々(そーとー地獄)をウヒヒと笑いながら追体験できる。なんていい世の中なのだろうか(笑)
世界に存在するウナギは全18種類。東大の研究室はそのうち17種を採集し終わっていた。だがアフリカに生息するラビアータという種類だけがどうしても手に入らない。それを採集するために、著者青山潤と相棒の渡邊俊がふたりで灼熱のウナギ捕りツアーを敢行する。マラウイ、ジンバブエ、モザンビーク。アフリカ南部奥地でひたすらウナギを探す毎日。次々に起こるアクシデント。灼熱。危険。焦燥。体力の限界。友情。それら全部引っくるめて「にょろり旅」。ひたすら明るい筆致が救いとなり、読者は気楽に旅を楽しめる。著者は意識していないかもしれないが、もう少しでも筆致が暗かったらと意外と読んでいて厳しかったかもしれない。そのくらい過酷さが行間に感じられた。
この本はお笑い系ではあるが、実はこのウナギ研究班、ちゃんとスゴイ。世界で初めてニホンウナギの産卵場をほぼ特定したりしている。そういう理系学者がこういうハードルの低い本を書いて研究の現場を面白おかしく紹介してくれたこと自体が素晴らしい。こういった本がもっともっと増えるといいなぁ。最先端の研究の現場ほど面白いものはない。ちゃんとボクら素人にもわかるように翻訳して楽しく書いてくれれば、これほど知的冒険に満ちた題材はないだろう。
2007年4月10日(火) 18:26:29・リンク用URL
「ポルトガル夢ホテル紀行」

amazonポルトガルの素晴らしいホテルの紹介を目的とした紀行文。臨場感溢れる軽快な文章と美しい写真で、普通のガイドブックとは一線を画している。
ポルトガルにはポウサーダ(Pousada:ポサーダ、ポウサダと読むガイドブックもある)という国営のホテルがある。スペインにあるパラドールと一緒で、古城や古い修道院などを改装して泊まれるようにしたもので、大都市から地方の小都市まで国内隅々まで広がっている。この本はそのポウサーダを中心に紹介している。
2007年3月末にボクたち家族はポルトガル旅行をした。そのときにずいぶんお世話になった本である。この中に紹介されているホテルのほんの数軒行けただけであるが、おかげで満喫できた。ポルトガルの日本語ガイドブックは少ないし、内容もいいので、ポルトガルを旅行する人にはオススメしたい。地方の小都市のポウサーダに泊まらずしてポルトガル旅行をしたとは言えない。いや、マジで。
2007年3月20日(火) 19:07:39・リンク用URL
ジャンル:旅
「モーレツ! イタリア家族」

amazonある宿命的な出会いをもって、イタリア人の旦那さんを持つことになった漫画家ヤマザキマリさんの「イタリア嫁生活体験記」漫画。
著者のスタンスは「まぁイタリアは日本で大人気のようっすけど、実態はこんな感じっすよ」である。愛しつつも冷めている。客観的に「ありえねー」と思っている。その距離感が笑える。爆笑系エピソードも多く、何度も楽しめる内容。巻末にはご丁寧にも簡単なイタリア語会話集がついている。
著者が嫁いだのはイタリアの大家族。お金持ちの家のようだが、登場する人がそれはそれは個性的で、その中にひとり飛び込んだ日本人妻の苦労が実に偲ばれる内容。が、読者はしんみりするわけではまるでない。著者による客観的な俯瞰視点が随所に活かされているので、明るく笑って軽快に読み進められる。実際この漫画は登場人物たちにも読まれちゃっているらしいが、彼らを怒らせない程度にデフォルメして描いているバランス感覚が読者にもちょうどいい。これ以上すると読者も引くかも、のギリギリラインを上手に渡っていく。うちでは中一の娘が特に気に入り、一時は始終持って歩いていた。
実はこの本を読んだ後、著者のマリさんと知り合う機会があり、ポルトガルの自宅(現在ポルトガル在住)に遊びに行った。
彼女の周りには「漫画的エピソード」が溢れている。そういう人生を送る人っているのである。存在が面白い人の漫画はそりゃ面白いのだ。続編が待たれる。
2007年3月20日(火) 17:54:47・リンク用URL
「フェルメール全点踏破の旅」

amazon現存するフェルメールの絵は、疑わしいモノも含めて37点しかないと言う。だからこそ成立した全点踏破の企画。美術誌ではない一般雑誌「UOMO」創刊号でのこの企画を一冊にしたものということもあり、著者は丁寧にフェルメールを読み解いてくれている。そういう意味で(多少詳しすぎる部分もあるものの)フェルメール入門者にもいいし、フェルメールを詳しく知りたいヒトにも良い本になっている。
もうひとついいのは、所蔵されている美術館順に話を進めていること。そのせいで紀行文的になっているのもいいが、絵の制作年が前後することで逆に読者の理解が深まるところがある。もしフェルメールの初期から後期に向けて順を追って構成していたら、(教科書的になって)逆に頭に入らなかったことが多くなった気がする。あぁずっと前のページで言っていたことはこういうことか、みたいな気づきが脳を活性化させるのだな、とか思った。
ボクはフェルメール初心者だ。まずは細かい研究記述をすっとばしてざっと読んだことにより(そして掲載のカラー写真で確かめたことにより)、フェルメールを概観でき、彼の絵の特徴、様式、盛衰などを理解できた。もっと好きになったらまた再読して詳しく読めばよい。そういう意味で、ボクには至極役にたった一冊。ボクは美術館では走るように絵を見て、なんか気になった絵の前だけで長時間過ごすような見方をする。有名絵画でも気持ちに引っかからなければ無視するタイプだが、そんな「走り見」系のボクにはとても合っている一冊だった。
2007年3月11日(日) 8:37:25・リンク用URL
「ニライカナイ 神の住む楽園・沖縄」

amazon上記「岡本太郎の沖縄」が昔の名作だとすると、この三好和義の撮った沖縄は現代の名作かなと思う。
彼の写真集を買ったのは3冊目。例によってリゾート系の彼の写真はきれいすぎるほどきれいで毎回見とれてしまうのだが、この写真集にはきれいだけではない迫力みたいなものがある。深みと言っても良いかもしれない。ボクはもう数十回沖縄に出かけているが、三好和義の目で切り取った沖縄は、ボクの目では見えてなかった沖縄だ。さすがである。
著者13歳〜16歳(1972〜75)のときに沖縄を写した写真も巻末に載っているのもよい。これがあることでとてもプライベートな魅力が出た。彼の中で成長した沖縄が見られる。なかなかオススメな写真集かも。
2003年6月 1日(日) 12:00:00・リンク用URL
「岡本太郎の沖縄」

amazon岡本太郎が1959年と1966年に撮った写真をまとめた名作写真集。
ずっと手に入らなかったのだけど、復刻されたのか、普通に手に入るようになった。沖縄ブームのおかげかも。
鮮烈。衝動。慄然。とにかくどの写真も芸術家岡本太郎の目がそのまま生きている名作だ。
写真とは技術ではないと思い知らされる。トリミングもなにもしてないのに、そこにある時間・不可思議さ・愛・年輪などを余すところなく切り取っている。すごいなぁ。有名なイザイホーの神事を写してスキャンダルになった写真群(彼の行動に対しては虚実いろいろ言われているが、結局神域には入らなかったというのが今の定説らしい)で語られることの多い写真集であるが、1960年前後の沖縄の人々の生活を知るにはこれ以上ない文献となっている。少なくともボクは何時間も飽きずに眺め続けられる。第一級史料にして、歴史的名作。
2003年6月 1日(日) 12:00:00・リンク用URL
「温泉教授の温泉ゼミナール」

amazonこの本はショッキングだった。もう温泉になんか入れない、とすら思った。
だって、なんの疑問もなく浸かっていた温泉たちが、実は「ヘドロのような単なる汚いお湯」だったなんて…(!)。
問題は循環湯である。温泉の使い回し。人が入ったあとのお湯を濾過して何度も何度も使っているのである。で、夜中に循環装置を止めると、湯船のお湯はヘドロ状になるという。そして朝にまたスイッチ入れると30分ほどで透明なお湯になるというのだ。うげげげげ。そこに入って顔とか拭いてたのかよーーー! 循環装置が湯船もしくは排水溝についている温泉宿はほとんど全滅。ヘドロ湯に浸かって「はぁ〜極楽ぅ〜」と言っていたと思って良い。また、源泉量が少ない温泉地帯で必要以上に温泉宿があるところもやばい。町をあげて循環している場合が多いというのだ。うあー。なんということ……。
もう二度と温泉なんか行かない、とすら思い込んだが、日本にもまだまだ循環湯に侵されてないちゃんとした温泉宿があるという。それはどこなのだー!と思っていたら、同じ著者がちゃんとそういう本を出していました。それが次に取り上げた「カラー版温泉教授の日本全国温泉ガイド」。
2003年5月 1日(木) 12:00:00・リンク用URL
「カラー版温泉教授の日本全国温泉ガイド」

amazonということで、上の「温泉教授の温泉ゼミナール」の著者が書いた温泉ガイド本。
宿のホスピタリティとか食事とかを無視して温泉の質だけを考えた場合、この本だけ読んでいればいいのかもしれない。いや、もちろんホスピタリティや食事もいいところが選ばれているのだが、優先順位の一は「温泉の質」なのだ。著者が肌で選んだ227湯378軒。この中で、この数年で循環湯化する宿もあるかもしれないが、とりあえず2002年(初版)では上質な温泉だ。あとは読者である我々がこの温泉宿たちを育てていくしかないのだろう。温泉好きには必携かも。
2003年5月 1日(木) 12:00:00・リンク用URL
「広島快食案内」

amazon広島のうまい店ガイドである。
自分で探したうまい店1200軒の中から255軒を厳選掲載して星の数で評価しコメントしている労作。ページ構成もわかりやすく読みやすい。ひとりの素人が自分の考えを素直に表明し手作りで作ったガイドとして近来まれに見る出来の良さだと思う。文章が少々一辺倒なのと店の全体像への言及が少し少ないのが難かな。細かい描写が多く店全体の感じが掴みにくいところがあるのだ。各章末のコラムはとても面白い。
プロのライターが書いた本には生活がない。生活を書けないから料理へのコメントに傾斜していく。そして料理を芸術とまで昇華し評価してしまう。本当にレストランの料理とは芸術なのだろうか。レストランの料理とは生活の中の句読点的「食事」ではないのだろうか…。
ボクは「生活」や「食事」の視点がないガイドが嫌いなのだが、この一素人が書いた本にはちゃんと生活の匂いがある。生活の食事の延長に店がある、と考える人にとっては信頼に足る唯一無二のガイドになることだろう。逆に、料理の何たるかを知らない素人が書いた本なんか信頼できるか!と考える人にはまるで信頼できない本だろう。でも、個人的には、後者のタイプの人とはお友達にもなりたくないからどうでもいいや。
著者の人気ウェブ「快食.com」の単行本化というとお気楽そうだが、実際にこういう風に一冊の本としてまとめることの大変さは(ジバランなどをまとめた経験から)自分のことのようにわかる。
マスコミの東京偏重により東京の店ばかり取り上げられる昨今だが、地方の一都市にもすばらしくも愛すべき店がいっぱいあることを肌感覚で教えてくれるこの本は貴重だ。レストラン好きなら、広島に行く予定すらなくても、本棚に並べておくと幸せな気分になれる。そんな一冊である。
2003年1月 1日(水) 12:00:00・リンク用URL
「アッシュと歩いたヨーロッパ」

amazon帯に「あなたも愛犬を連れて海外に行ける!」とあるように、これは著者が愛犬(ミニチュア・シュナウザーのアッシュ)とともにヨーロッパを65日間旅した記録である。
「おー、犬をつれて海外旅行に行けるんだー!」という驚きがまずあり、そのやり方やノウハウを読んでいくうちに自分もやってみたくなり、最後にはヨーロッパ人の犬文化の深さにため息をつく。そんな本。ちなみにサイトはこちら。サイトもとてもすばらしい。
基本的に旅エッセイ。
フランスやイタリアを旅したことのある人(もしくは興味がある人)にはとても楽しい旅エッセイになっているうえに、もちろん犬と旅行するための実用情報が盛りだくさんに入っている。読んでいくうちに自分にも出来る気になってくるのがいい。そういう読者気配りがかなり上手な著者である。愛犬と海外旅行が出来たらいいなぁと少しでも思う人は読んで損はない。ただし、この本には「海外旅行に堪えられるように犬をしつける方法」だけは書いてないので、まずはしつけないといけないが。
2002年12月 1日(日) 12:00:00・リンク用URL
「勝見洋一の美食講座」

amazon日本を代表する美食家である著者が正面切ってこういう題名で出してきたからにはこれは読まねばなるまい。
読めば読むほど、美食は才能である、との思いがひしひし。金持ちも才能であると同じ意味で。うはは。ほとんど嫉妬してます。まぁ正直ボクには彼と同じレベルの美食は無理だな。財布的にも環境的にも人生的にも。
ま、それは置いておくとして、内容的には「美食講座」という題名から予想されるものではなく、著者の美食遍歴の一端が上質なエッセイとして披瀝されているもの。こういう食べ方・生き方を美食と呼ぶのだよ、という静かな主張が行間ににじみ出ている。けど、文章がいいので嫌味ではない。そこらへんがこの著者の強み。
場所によって味が変わって感じられるワインの話や、ラセールでのダリの話など、印象的な話も多い。各章最後に書かれているおまけの文章もとても良い。全体にオススメな本なのだが、うーん、題名がちょっとなぁ。もっとエスプリの効いた題名にしてくれたらバイアスかからず読めたのにな、と、少し残念。
2002年12月 1日(日) 12:00:00・リンク用URL
「南の島に暮らす日本人たち」

amazon小さな会社を経営し走り回って生きてきた37歳の著者がある日偶然に癌の可能性を指摘され、いつかはこうしようと考えてきた長期的人生計画を狂わされると同時に、「走り回っただけで終わるのか、こんなはずではなかったのに」と絶望する。結果的には良性腫瘍だったのだが、「もうしたいことを我慢しない、もう自分をみじめにも不幸にもしない」と誓う著者は「すでに南の島でやりたい人生を臆面なく選んでいる人たち」に興味がふくらみ、手術後ひとり南の島に旅に出る。そして、サイパン、テニアン、ロタ、パラオ、ヤップ、と、そこに住む日本人たちの人生に次々に触れていく、というノンフィクションだ。
南の陽光のもとを旅しているのに、とても内省的で静かな文章だ。
著者の人生と日本軍の過去と南の島で生きる孤独などが行間から浮かび上がって来る分、ちょっと重めなのだ。が、しかし、この旅は沈んだまま終わらない。希望をしっかり見せてくれる。最終的に「人はなんでも出来る」という強い自信とともに帰京するのである。ある種「いろんな人生を選んでいいんだよ」という読者励ましの本にもなっている。
2002年10月 1日(火) 12:00:00・リンク用URL
「フランス田舎めぐり」

amazonフランスの田舎を旅行するための適切なガイド、なのだけど、同時によく出来たエッセイ集にもなっていて、読み終わると実用的知識プラス「フランスの田舎で数日過ごしたような満足感」に浸れる。
こういうサービス精神満点の本にもともとボクは滅法弱い。書いている人のメンタリティまで想像できて「うー惚れそう」くらいまで行ってしまう。うはは。ちゅーことで、LOVE!なのである。
いや、でもボクのそういう趣味は置いておいてもいい本である。フランス好きや旅行好き、田舎旅のエッセイなどが好きな人はもれなく満足するであろう。文章もいいし構成もなかなか良い。ボクはプロバンスのリュベロン地方を回って帰ってきた後これを読んだのだが、先に読んでおけば良かったとずいぶん悔やんだ。普通のガイドでは教えてくれない、コアでエンスーな旅がこれを読めば体験できるであろう。
2002年8月 1日(木) 12:00:00・リンク用URL
「『極み』のホテル」

amazon2001年3月の時点で日本全国に8220軒のホテルが営業しているそうだ。この中で(ってすべてを回ったわけではもちろんないだろうが)著者が厳選した113軒が静かなエッセイとともにここに載っている。
「超高層を極める」「リゾートを極める」「高士を極める」など、テーマ別になっているのもわかりやすく、地方別ホテル別に構成するのとまた違った味が出てとてもいい。
意外なホテルが取り上げられていたり、近くにそんなホテルがあるのかと驚いたり、いろいろ発見しながら楽しんだ。
日本には日本旅館という別の形態があり、高級ホテルと高級日本旅館のどっちを選べと言われたら後者かなぁと思うボクではあるが、この本を読むと日本のホテル文化もずいぶん成熟してきたようである。ちょっとホテルに泊まるための旅に、出かけてみようかな。
2002年7月 1日(月) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:旅
「新・パリでお昼ごはん」

amazonフランス出張中にパリに寄るので、パリでひとりで入れるレストランガイドはないものかと探していた。そしたらお誂え向きにこの本を見つけたのである。パリ好きにはかなり有名な本みたいだ。1997年に出た本を2002年用に構成しなおしたもの。42軒のお昼がとてもいいレストランが載っている。
ま、ガイドではあるのだが、42軒それぞれの紹介が4ページに渡るエッセイになっているのがこの本のミソ。これ一冊読み終えると、ランチを通してパリの様々な断面が疑似体験できるようになっている。そこが秀逸。特にボクみたいな食いしん坊には、そこらのパリエッセイより頭に入りやすく血肉になりやすい。
実際にはこの中の一軒にしか行けなかったが、東京に帰ってからもなんとなくパリを感じたくなったらこの本を開くかもしれない。そんな本である。
2002年7月 1日(月) 12:00:00・リンク用URL
「旅行者の朝食」

amazon名エッセイスト米原万里。「彼女のエッセイにハズレなし」はすでに定説で、ボクは過剰な期待をもって読み始める。この本もその例に漏れず。期待が過剰すぎてちょっとガクッと来たが、エッセイとしての出来はほぼ完璧。いつもはあるはずの哄笑する部分が今回はない、というところだけが不満なのである。気楽に読み流すエッセイとしてはとてもいい時間をボクたちに与えてくれるだろう。
いつもの如くロシアの話題が中心であるが(だって著者はロシア語通訳だから)、今回は「食べ物」に焦点を絞っている。不勉強にもジャガイモの普及の話は知らなかったのでその章が特に印象に残っているな。話題を食に絞ってしまったせいか、いつものキレがない部分もあるが、楽しいエッセイ集ではある。
2002年7月 1日(月) 12:00:00・リンク用URL
「謝々!チャイニーズ」

amazon「転がる香港に苔は生えない」で大宅賞を取った著者のデビュー作。写真集をふくめて著者の本はほとんど購入しているボクであるが、デビュー作が一番最後になってしまった。
で、感想はというと「一番おもしろいじゃん!」である。よくデビュー作にはその著者のすべてが入っているというが、まさにそんな感じ。訥々とした静かな語り口と、若くして人生の軸がぶれない安定感が全編を貫き、読者は安心して星野博美ワールドの中に埋没していくことが出来る。
副題は「中国・華南、真夏のトラベリング・バス」。
ベトナム国境の街東興(トンシン)から上海までバスを使って彷徨っていくノンフィクションだ。トラブル続きのバス旅行。いまの流行で行けば、ハイテンション・カルチャーギャップ紀行文にするのが一番お手軽なのだろうが、著者は性格の暗さ(?)もあって、じっくり足を踏みしめる。そのことが、この本を「こんな旅行をした」という単なる紀行文ではなく「こんな人生を生きた」という著者自身の物語にしている所以だろう。何度か読み返してみたくなる名ノンフィクションである。
2002年6月 1日(土) 12:00:00・リンク用URL
「東京育ちの京都案内」

amazonコンセプトはとてもいい。京都初心者として京都に住んだ著者の、初心者だからこそわかり、そして書ける京都入門なのだ。東京から見て不思議に思える数々の京都伝説。そういうものをひとつひとつ解読してくれ、読者を京都の日常に連れて行ってくれる。
ボク自身、関西に15年住んだので、京都を少しは知っている。が、改めてこうして解説してくれると頭の中の靄がどんどん晴れていくようでとても気持ちがいい。京都を全く知らない人にとっては尚更だろう。これから京都で遊ぼうという人など一読してから出かけるとより深く遊べるかもしれない。
ただ、全体にグルーブ感にちょいと欠けるのが惜しい。よそ者として書いているわりには、(現在京都に住んでいることもあってあまりにバカなことや悪口は書きにくいからか)遠慮しいしい書いちゃっている。だから文章に勢いが出ない気がする。いっそ割り切って書いてくれたらもっともっと面白くなったのに、と、ちょっと残念である。ま、京都人の仲間として生きていきたいという気持ちがある限り難しいことなのだろうが。
2002年6月 1日(土) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:旅
「石垣島スクーター遊々記」

amazon4月に石垣島へ行って来た。
ボクは現地限定的出版物に非常に弱いので行けば必ず何冊か購入する。そのうちの一冊がこれ。重度の皮膚病を患い、治療法として日光浴が必要な著者が、51歳のときに東京から沖縄は石垣島へ移り住み、スクーターを移動手段としつつ南の島の生活を楽しんでいる様子を描いたエッセイである。琉球新報や八重山毎日新聞に書いたコラムをまとめたものらしい。
なんというか、ゆったりと著者の日常に浸れるいい本だ。ただ、ゆったりさ加減もおもしろさ加減もさすがにちょっとプライベートすぎて読んでいてつらいところはある。でも決して嫌いな本ではない。というか好きである。遠き石垣に著者が毎日暮らしていることが感じられるだけで、心にほのかな灯りが点る。嗚呼、石垣島、また行きたいなぁ。
2002年5月 1日(水) 12:00:00・リンク用URL
「贅沢入門」

amazon著者がWebマガジン「JUSTICE」に連載していた「福田和也の『目』」というコラムをまとめたもの。
食・遊・知・旅といった分野での著者のいろんな贅沢趣味を少々の嫌味を顧みず書いたもので、ウェブ上のコラムということもあり、かなり気楽にプライベートに書いている印象を受けた。独善的にすら感じられるコラムもあるが、実用的な贅沢に役に立つことはもちろん、ある種精神的ハイソに毎日を送る術がしっかり書いてあって面白い。
しかし、かなり「贅沢」ではある。読んでいて鼻白む部分もずいぶんある。きっとくだらないことには徹底してお金を使わないのだろうが、ある意味お金の使い方として迫力を感じた。そしてそういう「贅沢」が自らを刺激し、自らのクオリティも高めてくれることを著者はしっかり自覚している。自らを高めるためにちゃんと贅沢しなさいよ、と読者に語りかけている本でもあるのだ。
2002年2月 1日(金) 12:00:00・リンク用URL
「転がる香港に苔は生えない」

amazon2000年4月初版の本で、大宅賞もとっており、前から読みたかったのだが本屋で見つけてやっと読んだ。581ページの大部。中国返還の前と後、激動の香港の、現地人でも住むのをためらうような地域に2年間住み込んだ著者の貴重なノンフィクションである。
取材目的で入ったのではなく人生生活として香港に入ったことがノンフィクションに厚みを与えている。しかも著者は現地語(広東語)がある程度しゃべれる。危ない場所や汚いところもあまり物怖じせず入っていく。そして現地の人とかなり濃いふれあいを重ねている。そういう貴重な体験を、ちょっと内省的だが素直で精緻な文章で表現し、ボクたちに伝えてくれている。対象を客観的かつ肌感覚で捉えられ、それを静かな筆致と心地よいリズムで表現できる日本人の書き手があの時期の香港にいたことを、同国人として幸せに思う。
題名がいい。動的で勢いのある題名なので中身もそうかなと思って読み始めるが、中身はわりと静かで分析的。そのギャップに戸惑いながら読み進むと、だんだん著者が題名に込めた思いが見えてくる。そして「さざれ石の巌となりて苔のむすまで」変わらない安定を望む日本人との鮮やかな対比が(結果として)見えてくる。
これはあの時期の香港を語った都市的ノンフィクションというよりは、「苔むす」日本人である著者が「苔の生えない」香港人の中に混じることで自分を見つけていく(もしくは見失う)、模索と喪失の物語だ。だから美しく切ない。堪能した。著者の視点と同化して他にもいろんなものを見てみたい。他の作品も読んでみよう。
2002年2月 1日(金) 12:00:00・リンク用URL
「星をつかむ料理人」

amazonフレンチレストランファンなら一度は聞いたことがあるだろう、小田原の幻の名店「ステラマリス」のシェフだった吉野氏の半生と日本人初のミシュラン一つ星への挑戦(正確に言えば中村勝宏シェフが取っているが)を、本人とテレビディレクター(星が取れるかどうかの取材番組を作った)が、主観と客観で書きつづった本。
章ごとに料理名を配した構成、素直な主観でつづったシェフの文章、短くも簡潔な源氏のフォロー、それぞれがきちんと絡み合い、とてもいい本に仕上がっている。
料理人の想い、完成された料理、レストラン業界の表と裏、挫折、雌伏、そして常に上を見つづける視線・・・すごく盛り上がりのある本というわけではないが、志の高い静かな料理を食べたような、そんな読後感。料理やレストランが好きな人ならかなり楽しめる本だと思う。
2001年9月 1日(土) 12:00:00・リンク用URL
「八重山列島釣り日記」

amazon副題は「石垣島に暮らした1500日」。
石垣あたりを八重山諸島とか八重山列島とか言うが、そこらへんを根城にした気楽で気ままな釣り日記である(一部小笠原やフィリピンの日記もある)。肩に力の入らない随筆で、これはこれでダラダラと楽しめるので良いのだが、世界の名著たちと比べてしまうとまぁもうひとつかなぁ。比べにくいんだけどね、こういうのって。
この本は石垣島の本屋で購入した。だからボクは石垣島で読んだわけ。あの極楽とも言うべき空気の中で読むと、こののんびり進行具合がとても気持ちがいい。なかにはシンミリさせる話しも入っているのだが、それすらも八重山の空気が昇華してしまう。あー、八重山に行きたいなぁ。八重山で逝きたいなぁ。
2001年8月 1日(水) 12:00:00・リンク用URL
「南島ぶちくん騒動」

amazon石垣島で買い、石垣島で読んだ。
著者の監督により、石垣の白保海岸で撮った映画「うみ・そら・さんごのいいつたえ」のロケ日記的趣きの本である。120ページ程度の薄さにモノクロ写真ふんだん、という体裁なので、あっっっという間に読める。でも椎名節は八重山ののんびり空気に合っていて、薄くてもあっという間でも不満はあまりないのであった。
文中、「南の島の魅力はなにか?ひとつだけあげよ」という命題で、著者は「沖縄の子供たち!」としている。卓見、そして共感。あの目の輝き、あの身体中から発散される楽しいぞオーラは尋常ではない。たぶん著者も自分の子供時代に重ね合わせて見ているのだろう。つか、重ね合わせて見られる子供が東京にはもういない、ということか。著者撮影の写真はそんな子供たちをよく捉えている。目線が近いせいだろうか。
2001年8月 1日(水) 12:00:00・リンク用URL
「ビビンバ家族」

amazon副題「それでも妻は韓国人」。
著者が韓国人の妻を持つまでそして持ったあと、のノンフィクションである。
題名が良い。購入動機はそれ。かなりの期待を持って読み始めたが、題名の勢いが本文にはなく、そういう意味では少し残念。
わりとボソボソ語る文章でそれなりに味はあるし、語っている内容も肌で感じた等身大の韓国という感じで好ましいし、赤裸々に綴られた妻の姿や姑との確執もよく伝わるし、なかなかいい本なのだが、題名の勢いを潜在的に求めてしまう分、全体に弱く感じるのが難。
内容的に「妻が韓国人」というところに留まっていて、もっとビビンバ的に「混ぜた方が美味しくなる感じ」のところまで突っ込まれていないのも惜しい。混ぜた結果どうなったのか、のところまで書かれていないのだ。やっぱりビビンバみたいに混ぜてこんなに美味しくなりましたー!という結論が欲しい気がする。
2001年7月 1日(日) 12:00:00・リンク用URL
「ロシアは今日も荒れ模様」

amazon前に読んだ「不実な美女か貞淑な醜女か」も相当面白かったけど、デビュー作のそれにくらべてこれは慣れてきたのかもっとこなれていて、なんか安心して楽しめた感じ。
相変わらずどのエピソードも選り抜きで、ロシア人とロシアという国の素顔をよく伝えてくれていると思う。著者自身の感性に「ロシア的小話」が深く入り込んでいるようで、小話的「我を笑う」視点がそこここに出ているのが特によい。そういう感性もなく、文章も下手な人がこういう題材を書いたら(ありがちだよね)、自慢めいてめちゃめちゃつまらないものに仕上がっただろう。ボクたちは「ロシアという文化の翻訳者」に米原万里を得て、実に幸せなのである。
それにしてもこのなかにたくさん描かれているロシア人の酒量についてのエピソードには愕然とした。
その中のひとつ、実話らしいが、ソ連宇宙総局の幹部3人(というとわりとお年寄りだろう)が六本木のあるバーの飲み物を最後の一滴まで飲み干したというエピソードには特に。だって「ウィスキー15本、ウォトカ5本、ブランデー5本、ワインとビール数知れず」だって言うんだから……。3人で、だぜ。うーむ、ボクは若い頃「ウィスキーのボトル1本なら軽いです」って自慢してたけど、井の中の蛙とはまさにこのことだなぁ。
2001年3月 1日(木) 12:00:00・リンク用URL
「Sydney !」

amazon村上春樹によるシドニーオリンピック観戦記である。
いや、観戦記というよりシドニー街紀行の趣の方が強い。ちゅうかシドニー滞在日記、かな。その滞在期間中にたまたまオリンピックがあった、みたいな距離感で書かれている。その距離感がボクには心地よかった。オリンピック賛歌にしてないし、熱くもなっていないし、無理矢理感動もしていない。
著者自身告白しているが「オリンピックは退屈である」という認識が原点になっているので(共感するなぁ)、作家の好奇心は当然別のところへ広がる。コアラや食べ物や潜水艦やオーストラリアの歴史へ。その辺の広がりをそのまま書いていることが実にいい効果を上げている。そして、ある感動的な出来事によりシドニーの街(オーストラリア人の意識)が変質化していく様の捉え方は、「アンダーグラウンド」以来醸成され続けてきた彼の主題に近いせいなのか、ちゃんと深く掘り下げてあって面白かった。
導入部と〆の部分もとっても良い。これらがあったからこの本は「作品」になったのだと思う。オリンピック選手という「オリンピックを最大の非日常」と置いている人たちの描写で、「オリンピックは退屈な日常」と思っている著者の日記を挟み込む、というその構成。それによって、この本は単なる日記と違う緊張感を得ている。
全体に軽妙でいいテンポ。習作的比喩の多用が作家の日常の努力をかいま見るようで興味深い。それにしてもあれからたった半年なのに、もうすでにずいぶん遠い昔みたいだね、シドニー五輪。
2001年3月 1日(木) 12:00:00・リンク用URL
「駅弁学講座」

amazon日本独自の食文化「駅弁」についての考察本。
JTBの月刊誌「旅」で16年間駅弁行脚をした名コンビが書き下ろした駅弁雑学集でもある。駅弁にどんなものがあるかといった初心者系ではなく、駅弁こぼれ話的マニア話が多く読んでいて面白い。中途半端に妥協してないし。
ただ、その分、総花的な資料部分と講義的お話部分が混在してしまい、全体にごちゃごちゃしてしまったのが残念。
知りたい情報を後から探そうとしてもなかなかたどり着けなかったりする。構成をもうちょっとすっきりさせたらより良くなったと思う。イイタイコトが多い時になりがちなパターンなんだけど。
個人的には「幕の内弁当の条件」がわかってスッキリした。正しい幕の内弁当とは「ご飯は小さな俵型に握ってあること」「おかずに煮物がしっかりついていること」が必要条件らしい。うーむ。俵型が必要条件とは知らなかったー。
2000年10月 1日(日) 12:00:00・リンク用URL
「回転スシ世界一周」

amazonこの頃の回転スシの世界制覇のイキオイはすごいものがある。
この本は著者がパリ、ロンドン、アムス、NYC、ロスと16日間に渡って海外の回転スシを食べまくった記録である。果たして回転スシを海外の人はどう捉えているのか。回転スシ文化はどう根付いていくのか。どうしてこんなにスシが流行っているのか…。そういう問題を考察しつつ、著者はとにかく食べまくっているのである。
現地のスシ事情やインタビューなどは興味深いし、世界がどうスシを捉えているのか、読むに従って理解できてくる。
ただ、それ以上のものはここにはない。ちょっと気のきいたライターでも、現地コーディネーターに恵まれれば同じようなものが書けるだろう。ボクは「玉村豊男がそれをどう感じどう消化しどう発信するか」がもっと読みたかった。そういう意味での突っ込みが足りない気がする。著者独特の匂いがない本に仕上がってしまった。そこが残念でならない。企画も題材も著者もいいのに惜しい一冊。
2000年9月 1日(金) 12:00:00・リンク用URL
「南へ」

amazon1992年から1995年まで「本の雑誌」に連載した文章の文庫版。
「新・放浪記2」と副題にある。最初の「放浪記」は単行本で読んだ記憶があるが、「新」は読んでなかったと思うので、「新・放浪記1」は読み損なっている気がする。まぁいいや。特に筋がある本ではないし。
野田知佑はやっぱり半年に一回は読まないといけない作家のひとりであるなぁ、というのが読後感。
こういう暮らしの記録を継続的に読まないと、東京というシステムがいかに異常なものか、都会というものがいかに狂乱なものか、生きていく目的とはなんなのか、自分のためだけに気持ちいいことをなにかしているか、などという根本的なものを忘れてしまう情けなさなのだ。
あ、日本の河川問題についても。河川問題についてはボクはなにもしていないに等しい。読んで理解しているだけならバカでもできる。激しく共感しているのだからなにかすればいいのだ。現地に出かけて活動するのはとても無理だから、なにかボクの立場で協力できることを探していきたい。
・・・などと、ちょっと精神が思わぬ方向に開かれる。そんな効き目が彼の本にはあるのである。
2000年8月 1日(火) 12:00:00・リンク用URL
「もっと食べたい 私の好きなすばやー物語2」

amazon「わたしの好きなすばやー物語」という名作がまずあって、これはその、久々の第二巻。沖縄そば(現地では「すば」という。つまりそば屋はすばやー)のガイドブックである。副題は「沖縄じゅうの美味しいそば屋さん大紹介と沖縄そばの真実にカラム!」。
沖縄中の店を多数紹介しつつ、それぞれの紹介文が単独なエッセイになっている。著者は複数。どっちかというとレポート集に近いかな。第一巻の手作り感はここでも健在で、それがとても心地よい。なんとなく全体に漂う「てーげー感」が気持ちよいのだ。それと、東京のマスコミにあるような「誉めるために誉める臭さ」がここにはないのもいいな。
それにしても沖縄そば屋の屋号(名前)はバラエティに富んでいるなぁ。面白すぎ。去年、この本をはじめとするいろんなガイドを見つつ沖縄そば屋を80軒ほど廻ったボクだが、また行きたくなってくる。むー、食べたい。
2000年7月 1日(土) 12:00:00・リンク用URL
「中国料理の迷宮」

amazon薄らぼんやりしている中国料理の全体像とその複雑怪奇さなど、普通に中華を食べている分には伺いしれない部分が浮き彫りにされてくる本である。
雑然としていた中華料理という引き出しにきっちり仕切りが入り整理が出来た感じである。あー、なるほどそうなのか、ふーん、なるほどこういう歴史があるのか・・・そう、この本は中華料理を題材に中国の歴史を紐解こうという新しい試みでもあるのだが、そう欲張ってしまったのがちょっと欠点にもなってしまっている。
中国体験豊富な著者のそこここに入ってくる体験談は面白い。ただそれと資料的書き連ねとのバランスが悪いのがこの本を読みにくくしている。歴史や資料の部分をもっと読みやすくしてくれればずいぶん印象が変わったと思う。
2000年6月 1日(木) 12:00:00・リンク用URL
「サラリーマン転覆隊 門前払い」

amazon傑作シリーズの最新刊。
サラリーマン転覆隊の面々が日本そして世界の様々なる川をカヌーで下っていく(今回は富士山をMTBで滑落していく章もある)お笑いカヌー紀行であるのは前作と変わらない。相変わらずのおもしろ文体と上手なデフォルメでしっかり笑わせてくれる。まぁ川は変わろうがネタ的には変わらないので、だんだん吉本新喜劇を見ているような趣になっていくが、「サラリーマンの生き方とはなんだ? 元気に生きたっていいではないか! もっと遊ぼうぜ日本のサラリーマン!」みたいなプレゼンテーションが読者に伝わってきて「よくやるよ」と思いつつ知らず知らずに元気になっている自分に気がつく。
ただこれは良し悪しで、あまりに「サラリーマン」を強調しすぎて、今回は少し説教くさくなっているかもしれない。
あとがきに「サラリーマンの応援歌として書く」とあったが、そういう匂いが前面に出てくるとシリーズの爽快さが消えてしまうかもしれない。結果論的に応援歌になるならいいのだが、意図を持ってそのように書くのはやめた方がいい気がする。ちなみに著者はボクと同じ会社のヒトなんですね。お会いしたことないけど。
2000年5月 1日(月) 12:00:00・リンク用URL
「ただの私に戻る旅」

amazon副題が「自転車でゆくアイルランド・私の愛した街」。
1995年に出た本だからもうずいぶん前という感じ。アイルランド好きなもので、なんとなく買ってあった本。やっと読んだ。
歌手である著者が20周年記念コンサートを終えて抜け殻になったココロをアイルランドのひとり旅で癒していく過程を書いたもの。
著者が感じたこと、気付いたこと、悟ったこと・・・そういったものになるべく寄り添って静かに読んでいったのだが、結局「自分に対してだけ書かれた自分本位の独白」の域を出ていないから、なんというか読者が入り込む余地がないのが残念。自費出版の本などによくあるような自己完結型文学に近い感じ。それの良し悪しは一概には言えない。ただ著者は読者になにを伝えたいのだろう? アナタは確かに苦しんだ。ひとりでよくがんばった。なにかを掴んだ。それはよくわかった。でも、それでどうしたの? で、だから何なの? 皮肉でなく、真剣にそう問いかけたい。
歌手なら心に届かせる術を知っているはず。それが文章に活かされていないのが残念。
2000年4月 1日(土) 12:00:00・リンク用URL
「もし僕らのことばがウィスキーであったなら」

amazonなぜか秋くらいからシングルモルトに凝りだしている。そしたらこんな本が本屋に並ぶようになった。やっぱり流行っているのかな。それともボクが流行の先端を…(やめなさい)。
サントリークォータリーに97年に掲出したアイラ&アイルランド訪問記を一冊にまとめたもの。
奥さんである村上陽子の写真を多用してページ数を稼いでいるが、本文は値段を非常に高く感じる短さ。
文章は清潔で真摯でシングルモルトが行間から香り立つようだが、正直な読後感は「ものたりない」である。長く書けばいいというものではないが、やっぱりストレートグラス3杯くらいで終わっちゃう量だと詰まらないのだ。せめて一晩、ゆっくり飲みながら楽しみたいではないか。こういう本であればこそ。
2000年1月 1日(土) 12:00:00・リンク用URL
「カープ島サカナ作戦」

amazon週刊文春に連載しているエッセイ「新宿赤マント」をまとめたシリーズの最新刊。
わりと文春は読んでいるからここに収録されたものもほとんど読んでいたが、海外出張の友としては軽く読めるので助かるのだ。
そう、椎名は海外出張にとてもいい。読み捨てられる上にテンションが上がるのだ。話題も縦横無尽に広がるし、文体も気分も安定しているし、なによりも面白いから。マンネリという声もこのごろある。が、著者はマンネリを一番畏れているみたい。文体の節々にそれを感じる。で、椎名誠はそれに成功しているとボクは思うぞ。こんなに多作なのに、たいしたものなのだ。
1999年9月 1日(水) 12:00:00・リンク用URL
「決定版快楽温泉201」

amazon「週刊現代」にグラビア連載していた温泉紀行が一冊になった。
写真もふんだんな実用書だが、あれを読んだことがある人はわかるだろうが単なる温泉紹介ではない。作者の視点がしっかりそこに根付いていてちょっと文学的ですらある。卓越した温泉人生論だ。
前書きに「私は大学を中退してどこかの山の湯の下足番でもやろうと考えていた。いまでも、私と同年代の湯守りに会うと『ああ、この人は私だったかもしれない』と思う」とある。『ああ、この人は私だったかもしれない』という感慨はボクの中にも常にあって、そういう感慨で温泉を見られる人の書く文章は普通以上にボクの中で響くのである。
本にまとめるにあたって「とびっきり8」という大オススメ温泉を抄出したのも感じが良い。どの温泉も結局気持ちがいいのだ、というような予定調和で終わっていないところが特に。
1999年7月 1日(木) 12:00:00・リンク用URL
「渡辺文雄のどこへ行っても美味珍味」

amazon「食いしん坊俳優」という職業柄であろう(どんな職業や!)、いろんな体験を積んでいる著者の日本全国美味紀行エッセイ。
わりと「体験総まとめ」風に書いてあるのでわかりやすく読みやすい。
ただ、その分イキオイはない。ぐぐっとつり込まれて「うぅ、食べたい!」と思うような描写や表現がない。その点がちょっと残念と言えば残念。こういうエッセイは「どこまで上手に自慢するか」がキーだと思うのだが、著者はちょっと枯れて書きすぎているかもしれない。
面白い章はあるのだが、全体に「そそられない」のが食エッセイとしては弱いところ。まぁ目新しい事実が特になかったせいもあり、ちょっと内容が薄く感じられた。
1999年6月 1日(火) 12:00:00・リンク用URL
「新潟はイタリアだ」

amazon副題「躍る食材テンコ盛り」。
新潟の食を「イタリア」に見立てて詳しく深く掘り下げている本で、内容的には興味ある人には面白い部分も多い。新潟を見直すにも役立つ。行ってみたくなる。
ただ、惜しいのは「レポーター文体」だ。
きゃーきゃー騒いでいるテレビのレポーターがそのまま紙の上に乗り移ったかのようである。なんというか、バラエティ文体とでも言うのか…。まぁ実際に著者はBSN新潟放送のレポーターなのだから、それが個性だと言われればそれまでなのだが、読んでいてちょっと辛い部分が多かった。マイクを筆に持ち替えてここまで書くのはかなり大変であったと推察させられるのだが、全体にもう少しだけトーンを抑えて欲しかったかも。新潟に行ってみたくはなるのだが…。
1999年5月 1日(土) 12:00:00・リンク用URL
「貧乏だけど贅沢」

amazon著者がテレビに出ないのは正解である。
だって紙上対談ですらこんなに面白くない。アドリブの人ではないのだ、沢木耕太郎は。これはたぶん対談相手のことを調べすぎていることも一因だ。対談に際して準備しすぎ。著者自身も「納得するまで相手の作品を読んだり見たりしたうえでないと安心してその人に会うことができない」と書いている。うーん…それでは対談でも対話でもなくてインタビューだろう。
内容は「旅をめぐる対談集」といったところ。
井上陽水、阿川弘之、高倉健、群ようこ、田村光昭など、魅力的な人選なのだが…。対談者のことはいっぱい調べているかもしれないけど、著者自身はわりとワンパターンなしゃべりだから、なんだか読んでいてつまらない。インタビューでもない、アドリブ的な対談でもない、中途半端さ。
1999年4月 1日(木) 12:00:00・リンク用URL
「アジア菜食紀行」

amazonインド、中国、ベトナム、タイ、そして日本…。文字通りアジアを菜食という切り口で旅して調べた労作。
紹介ば多くちょっと総花的なところはあるが全体としてわかりやすい。世界でも異色の菜食文化が育ったアジアがゆっくり立ち上がってくる。ただ、ちょっと文章が生真面目すぎるのが難かな。著者の驚きが伝わってこないのだ。
ジャイナ教の厳格なる菜食主義はタマネギなど、根の植物も「食べることによって植物を殺すから」食べない、というのは知らなかった。この、殺さずに「分けてもらう」という思想から見た菜食と自身の健康目的だけの菜食との隔たりは大きい。
1999年3月 1日(月) 12:00:00・リンク用URL
「入浴の女王」

amazon簡単に言うと「全国銭湯巡りエッセイ」である。
銀座金沢新潟大阪…とにかく街に密着した銭湯を味わいその街のエッセンスをしっかり栄養としていく道中。文章は独特のリズム感。ここまで著者に蕩々と遊ばれちゃうとなかなか読んでいて気持ちがいい。特に酔って浸かって騒いだあげく、ふやけきった文章を書いている部分がところどころにあるのだが、これがまたいい。行間に湯気・色気まで漂ってとってもぬくもるのである。
別に「銭湯を無くすな」と声高に叫ぶことはしていないしそういうつもりもないのであろうが、読み終わったあとの「銭湯衝動」は結果的に銭湯保存に役立つだろう。
ちなみに銭湯は小学生以来行っていない。子供を共同風呂に慣らすためにもちょっと行ってみようかな、と思って調べてみたのだが…、歩いていけるところにはないようだった。減っているよねぇ。
1999年3月 1日(月) 12:00:00・リンク用URL
「見仏記 海外編」

amazon「見仏記」のファンとしては海外編も当然読む。
古寺仏閣少年だったボクは仏像に対してある種の愛情を捧げてきたが、みうらじゅん氏のような卓越した仏像の捉え方は、自分の中の仏像観の崩壊であり、そしてなにより「物事を自分の視点で見ること」の象徴でもあった。それまで世間一般的な仏像の見方をしていたボクは、それほど彼の仏像の見方にショックを受けたのである。そのショック以降、「見仏記」はボクの中である種特別な位置を保っているのだが、これはその海外編。韓国・タイ・中国・インドと、仏像伝来逆ルートを歩いて行く。
いとうせいこう氏の文章が海外取材のせいかがんばっちゃっていて少々理屈っぽくなった気もするが、みうら氏は相変わらず肩の力が抜けていて良い。今月タイに出張しておきながら(仕事の忙しさにかまけて)仏像をあまり見なかった自分が疎ましくなる。
1999年2月 1日(月) 12:00:00・リンク用URL
「リンボウ先生ディープ・イングランドを行く」

amazonボクたち夫婦は新婚旅行でイギリスを24日間に渡ってレンタカーで旅した。
そういうこともあって、かなりイギリスびいきである。
だから、ということもあろうが、かなりこの本は楽しめた。著者自身の手による写真も素晴らしく、ディープ・イングランドが存分に楽しめる。ただ、意外とすぐ読めてしまうことと(こういうエッセイはだらだら長く楽しみたい)、イギリスにほとんど興味がない人を惹きつけるようなインパクトにはかける気がするのが残念。
でも次にイギリスに行くとき行ってみたいところが出来たのがうれしいな。個人的には。
1999年1月 1日(金) 12:00:00・リンク用URL
「表現者」

amazon星野道夫の死に捧げるオマージュ本。
400ページにも及ぶ長大な弔辞のようなもの。まぁ写真がたくさん掲載されているからすぐ読めてはしまうけど。
星野道夫を好きだった人なら時間を忘れて楽しめるだろう。
「ひとりの人間が亡くなることは、ひとつの図書館が焼け落ちること」 文中に彼の言葉としてこんな言葉が紹介されているが、まさにそう言わざるを得ないような彼の死であった。
彼の死を悼む人達と、しばし一緒に語らいたい。そんな読者にはうってつけの本。まぁ難を言えば題名がどうだろう。彼なら、こういう含羞がない言葉を、使わなかったと思う。
いい言葉に出会った。著者の好きな言葉だったらしい。「人生とは、何かを計画している時起きてしまう別の出来事のこと」~Life is what happens to you while you are making other plans.
1998年11月 1日(日) 12:00:00・リンク用URL
「さぬきうどん全店制覇攻略本」
名作「恐るべきさぬきうどん」シリーズの第4作にして別巻という位置づけか。宝探しにも近い「製麺所・セルフの店・一般店」を香川県全域にわたりほとんどすべて地図に落したという労作。その苦労と情熱にはぜひとも三ツ星を差し上げたいが、なんというか、ちょっとこの企画はやめてほしかったかも。こうして詳細地図になってしまうとさぬきうどん巡りの魅力のひとつである「迷う」という部分が消えてしまうのだ。え、読まなければいいって? んー、まぁそうなんだけどねぇ…。
まぁTJ KAGAWAがやらなければどこかがいずれやっていたかもしれないから、しょうがないかな。超便利だし。ただし、お店の一覧で麺通団としてのひと言コメントをもっとしっかり載せてほしかった。
1998年11月 1日(日) 12:00:00・リンク用URL
「サラリーマン転覆隊が行く!」

amazonある会社のサラリーマンたちが日本の様々なる川をカヌーで下っていくお笑いカヌー紀行である。
ロードムービーのような臨場感がありいつのまにか読者は登場人物たちと一緒に泣き笑いをしながら読む続けることになる。全体に非常におもしろい。これは著者のおもしろ文体と、上手なデフォルメによるものが大きいと思う。
ただボクは下巻の北山川の項のところでのあまりの無反省ぶり・脳天気ぶりにちょっと気分がしらけてしまった。
同じトーンで書き続ける狙いはわかるが、落ち着く所は落ち着かないと読んでいる方はなかなかつらい。それと、サラリーマン、サラリーマンとあまり強調しなくても十分面白い。なにか最後の方は説教くさく聞えてくるのが惜しいところ。
1998年8月 1日(土) 12:00:00・リンク用URL
「辺境・近境」

amazon辺境がなくなってしまった時代の辺境旅行記。
重い筆致と軽い筆致を取り混ぜながら、メキシコやらノモンハンやらさぬきうどん(!)やらアメリカやら神戸やらを著者が旅した記録である。時間をかけてじっくり書く小説群については超絶なる比喩や展開を軽々とやってのける著者であるが、このようにわりと軽く書いている本が思いのほか面白くないと感じるのはボクだけであろうか。例えば椎名誠や嵐山光三郎の紀行文を読むとその本を片手に同じところを旅してみたくなる。が、村上春樹のそれはどうもそういう気が起こらない。そこがこの本の問題点かもしれない。
最後の辺境は自分自身の内部だとしたら、村上春樹というヒトにはそこを旅してもらいたいものである。やはり小説が読みたい。紀行文にはあまり魅力を感じない。ちょっと厳しいか。
1998年7月 1日(水) 12:00:00・リンク用URL
「ユーコン漂流」

amazonアラスカのユーコン川をカヌーで下った著者のエッセイ。
on my own、つまり自分の幸福も不幸もすべて自分のせい、という著者の姿勢がすべての行間に滲み出ており、読者は彼とともに長い孤独の川を行くことになる。
安心できるのは、著者自身、孤独についてストイックではないこと。淋しくなったら淋しいと言い、長く何週間もアラスカの村にとどまる。孤独に縛られる修行のようなカヌー行でないところがいいではないか。自然である。そこらへんが著者の真骨頂であろう。
彼の本を読むと「人間の実力とはなにか」というような想いにいつも駆られる。サバイバルという意味の実力ではない。性別、国籍、実績、肩書きなどをすべて取り払ったときに残る裸の人間としての実力…。そして自分を見返して見たとき呆然唖然…。これを思い知るために、またボクは野田知佑を読み返すのだ。
1998年7月 1日(水) 12:00:00・リンク用URL
「沖縄いろいろ事典」

amazon「とんぼの本」シリーズの一冊。大変良く出来た沖縄事典。
ナイチャーズとは「ナイチャー」(内地のヒト)から来ている。そう、沖縄に住んでいない人々が書いた沖縄である点がこの本の特徴であり成功点であろう。内地から見た沖縄を縦軸に、沖縄に対する遠い憧れを横軸に、とても豊かな沖縄紹介がなされている。
寄稿している人もなかなかバラエティに富んでおり、各項目の紹介の仕方も自由闊達。これは事典というより沖縄についての読んで楽しいエッセイ集だ。アタマから最後まで楽しく読み通せる。こういう百科事典、できないだろうか。
1998年7月 1日(水) 12:00:00・リンク用URL
「日本の居酒屋をゆく~疾風篇」

amazon「ニッポン居酒屋放浪記」の続編みたいな感じである。
もう居酒屋紀行として定着した感があるが、相変わらず臨場感豊かで一緒に旅をしているような感じだ。
ただ、単に居酒屋に飲みに行くだけの旅であるだけに、こう巻が多くなってくるとそれぞれの土地の違い、店の違いが読んでいる側からは眺めにくくなってくる。居酒屋という一幕ものの積み重ねなので、飽きが来ないと言えば嘘になるのだ。このままこの手で行くかどうかを再考するべき時期なのか。いや、まだもうちょっと読みたいかな。微妙に迷う。そんな感じ。
1998年7月 1日(水) 12:00:00・リンク用URL
「二都物語」

amazonボクの尊敬する人の一人である著者がソウルとピョンヤンを訪れて絵を描き文を書いている本。
彼の絵も文も常にボクにナニカを与えてくれるのだが、今回もそれは期待を裏切らなかった。内臓をそのままさらけ出してくるような彼の画体・文体はいつも直接に心を刺激してくれる。
ピョンヤンでの彼の絵はニンゲンを意識していっぱい描いている。それだけピョンヤンのニンゲンが見えなかったからなのだろう。必死にニンゲンを探している彼の絵が線が、結果としてピョンヤンの現在を浮き彫りにしていてとても面白い。ソウルにしてもピョンヤンにしてもたぶん彼の言葉を活字にせず彼の字で印刷した方がより良かった気がする。それはそうと、彼の絵はこうして本にするとどうしてもチンマリ見えるのはなぜだろう。実物はあんなにパワフルなのに。
1998年6月 1日(月) 12:00:00・リンク用URL
「初年兵の沖縄戦記」

amazon第二次世界大戦の沖縄戦で戦った兵隊さんの手記。負傷しながらほぼ奇跡的に沖縄南部戦線で生き残った初年兵の戦記である。淡々と事実を綴っているが、非常に感動的。もちろん文章を生業としている著者ではないのでかなりこちらの想像をたくましくしないといけない部分はある。が、実体験の迫力がそれを補って余りあるのだ。
こういう本を読んだからって「戦争はいけない」などと大声で叫ぶ気はない。ただ、こういう汚辱にまみれた戦争の現場を生の声で聞いておくのは戦争の次の世代である我々の義務でもあるかな、と思う。
1998年5月 1日(金) 12:00:00・リンク用URL
「ひめゆり平和祈念資料館公式ガイドブック」
「私のひめゆり戦記」「初年兵の沖縄戦記」「ひめゆり教師の手紙」などをテキストに、ボクは沖縄戦の跡を実際にたどった。
まずひめゆりの塔に行き、同じ敷地にある資料館に入ったが、ここの公式ガイドブックがとても良く出来ていたのでここで紹介する。ひめゆり関係だけでなくいろいろな証言がいろいろな人から集められていて、貴重な資料になっている。
まぁ、涙なしでは読めないガイドブックというのも珍しい。
1998年5月 1日(金) 12:00:00・リンク用URL
「平和への証言」
ひめゆりの塔から東に数キロ。玉砕地に平和祈念公園があり、その中の資料館の公式ガイドブック。
「ひめゆり平和祈念資料館公式ガイドブック」と同じように証言がたくさんおさめられている。
こちらの方が大人の文章が多く長い手記が多いので読みごたえがある。宿に帰って熟読したが、腰が抜けそうな迫力であった。丁寧に作られておりそこらのおざなりのガイドブックとは一線も二線も画す出来である。これも涙なしでは読めないもの。
1998年5月 1日(金) 12:00:00・リンク用URL
「私のひめゆり戦記」

amazon沖縄戦の第三外科壕、今のひめゆりの塔がある場所で奇跡的に生き残った著者の手記である。
沖縄出張の予定が入ったボクは沖縄戦についてあまりに知らないのを恥じて、まずこの本を読んだのだが、途中つらくて読めなくなるところが数カ所。淡々と綴ってある分だけ文章の意味は重く心にのしかかってくる。もし手に入ったらぜひ読んでほしい本だ。
ただ、これを読むとわかるのだが、彼女らは立派な戦士であった。女学生だからということで後生の人がお涙頂戴的に「ひめゆり」などと名を付けてたたえたことについてはちょっと違和感が残る。
1998年5月 1日(金) 12:00:00・リンク用URL
「ひめゆり教師の手紙」

amazon第二次世界大戦の沖縄戦で、「私のひめゆり戦記」の著者である宮良ルリなどと同じ壕にいて女子学生などを指導した教師・玉代勢秀文。宮良ルリと共にガス弾からは奇跡的に助かったがその後消息を絶ったこの教師が宮崎に疎開した妻に送り続けた手紙を中心に、妻がその想いを綴っている。
「私のひめゆり戦記」や「初年兵の沖縄戦記」などと比べるとどうしても逼迫した感が薄いのだが、切々とした想いが静かに伝わってくる。沖縄戦の現実を外から感じることが出来て、これも必読だろう。
1998年5月 1日(金) 12:00:00・リンク用URL
「リンボウ先生遠めがね」

amazon高尾慶子著の「イギリス人はおかしい」という「本当はイギリス好きだけど今のイギリスやっぱり嫌いよ」という内容の本(ちょっと違うか…)を読んだらなんとなくイギリス好きの大家の本を読みたくなり、続けてリンボウ先生の新刊を読んだ。
ここにはイギリスの話題はほんの少ししか出てこないが、彼が愛するイギリスは「古いイギリス」なのである。そういう意味では上記著者も同じなんだな。
この新刊は著者のいろんな好奇心を気軽な文体で表明しているもの。特に旅における食べ歩きの様が非常にボクの気分に近く面白かった。ただ、全体的にちょっと新鮮味が薄れているのも確かで、好奇心が細かいところ・わかりやすいところに入っていきすぎている気がする。もうちょっと大きな題材、独自の題材に取り組んで欲しいし、それを読みたい。贅沢だろうか。
1998年4月 1日(水) 12:00:00・リンク用URL
「イギリス人はおかしい」

amazonイギリス礼賛の本ばかり出ているし、またそういうのを好んで読んでいるので、たまにはイギリス非難本も読みたいと思い、探して読んだエッセイ。
副題に「日本人ハウスキーパーが見た階級社会の素顔」とあり、帯に「英国ベタ誉めはもう沢山!」とある。なかなか面白そうではないか。
内容は、著者がリドリー・スコット監督の家でハウスキーパーをした数年を中心に長年イギリスで暮らした経験を書いたリアルな英国生活体験記なのだが、スタンスが思ったよりも中立でもう少しエキセントリックなものを期待したボクにはちょっと大人しかった。
が、イギリスのいろんな問題点が一般人の目からきれいに浮き彫りにされており、日本という社会の良さをそれなりに見直す契機ともなる。サッチャー政権に対する批判もかなりしつこく展開されていて、ちょっとサッチャーの政策を調べ直してみたいなぁと向学心をくすぐられたりもした。
1998年4月 1日(水) 12:00:00・リンク用URL
「東京観音」

amazonアラーキーが写真を撮り、杉浦日向子が小文を書きながら東京の街の姿と観音像を巡っていく。その企画にまず拍手。
相変わらずアラーキーの視点がいいので飽きない。彼に撮られると観音様も急に人間味を持ち出すから面白い。杉浦日向子の文もいい。妙に色気がある。アラーキーに触発されている感じ。
という風に至極面白かったんだけど、この二人のそぞろ歩きであるならばもっともっと濃厚な構成でないと読んだ気がしない部分がある。もうお腹いっぱいってくらい写真と文を載せて濃厚きわまりなく構成してくれてこその二人だと思うのだが。ちょっと欲求不満が残るかも。
1998年3月 1日(日) 12:00:00・リンク用URL
「天涯 ~第一 鳥は舞い光は流れ~」

amazon沢木耕太郎初の写真集。
短文がほんの少しついてはいるが、まぁ写真集と言ってもいいだろう。旅をしながら著者がどういった視線でモノを見ているのかが実によくわかる写真集だ。
天涯=地の果て。常に自分を天涯に置き、自分と世界との距離感を客観的に見つめている彼の写真は実にさめている。雄弁さはまったくなく、どちらかというと寡黙だ。ボクはその寡黙さを愛するが、少々物足りないのも事実。ただ、見終わって「耕太郎ブルー」と言ってもいいような「青」が目に焼きつくのが印象的ではある。これは「第一」となっているので次作が出るのだろうが、それを買うかどうかは微妙。
1998年1月 1日(木) 12:00:00・リンク用URL
「心は孤独な数学者」

amazonわかりやすい文体とワクワクさせる切り口でいつも楽しませてくれる著者(本職は数学者)が3人の天才数学者の生涯をたどる紀行エッセイ。
取り上げたのはニュートンとハミルトンとラマヌジャン。
ニュートン、ハミルトンはともかく、インドの大天才ラマヌジャンについては初めて知った。それを知っただけでも収穫だ。残念ながらボクは数学の美しさを知らないまま数学を諦めた口であるが(しかも早くも中学生のときに)、こういう本をあの頃読んでいたらまた数学に対する見方が変わっていただろうなぁと残念に思う。ただ、惜しむらくは、紀行文としても数学エッセイとしてもそれぞれ突っ込みが中途半端だ。惜しい。
表題もちょっと疑問。数学者の孤独はわかるのだが、それを表題にするのは違うと思う。著者も数学者だけにちょっとナルシスト的な嫌らしさが匂ってしまう。内容がいいだけに残念。
1998年1月 1日(木) 12:00:00・リンク用URL
「行きそで行かないところへ行こう」

amazon3年前に出た単行本の文庫化である。題名通り行きそうで行かない場所に行ってみる旅行記である。
でも思ったよりその場所に意外性がなくてがっかり。この企画の面白さはそこにかかっているというのに! でも「行きそうで行かない場所」ではないエピソード(つまり本筋から離れたエピソード)がわりとおもしろいので許す(例えば元マネージャーに会いに行くところとか)。文体も椎名誠と東海林さだおを足して2で割ったような語り口で、視点はとても宮沢章夫ぽい。そしたら解説を宮沢章夫本人が書いていたのでびっくり。やっぱり編集者もそう思ったのね。
面白いことは面白いがよくありがちなエッセイかも。まぁオリジナリティが出る前の面白くなりかけのオーケン、という感じかな。
1997年11月 1日(土) 12:00:00・リンク用URL
「温泉旅行記」

amazon残念な本だ。前半、特に第1話など「こ、これは紀行文学の新たなる傑作誕生か!?」と色めき立つほどの衝撃を持って読んだ。でもこの緊張は2話目あたりから崩れていき最後の方は「普通に面白い旅行記」になってしまった。
これはたぶんネタ(文人はなぜ温泉に泊まるか、とか、山口瞳の思い出とか)を適度に入れ込みながら書いているからだろう。著者のサービス精神のたまものであろうが、ネタなど入れずに淡々と書いたほうが結果的には良かったと思う。第1話はそれで成功している。あれは傑作である。あの調子で通してくれたら……まことに残念な本なのである。
1997年11月 1日(土) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:旅
「東京ステーションホテル物語」

amazon東京駅はよく利用する。丸の内の改札口で吹き抜けを見上げ、川端康成の部屋はどれだ?などと探すくらいはこのホテルのことを知っていた。
長い歴史とエピソードでは事欠かないこのホテルに泊まったことはないが常に興味津々であり、店頭でこの本を見つけたときは迷わず買ったものだ。そして、読んだ。
エピソードは満載だし正確にその歴史を追ってはいる。が、それだけ。東京駅という超特別な立地を持つこのホテルの人間臭さも洗練も苦悩も全然伝わってこない。表面をサッと撫でたという感じ。ちょっと残念。
1997年7月 1日(火) 12:00:00・リンク用URL
「マンハッタン・ルールブック」

amazon電通総研の社員が描いたニューヨーク。
新しい視点を期待したが特に目新しいものはなかったのが残念。マンハッタンってこんなところよ、と解説しつつ論を展開していくのだが、エピソードがそれぞれ普通の出来事ゆえ解説もどうしても普通になってしまう。いまやニューヨークは既知の人が多い時代。もう少し突っ込んだ分析とか体験を書いてほしかった。
ガイドブックの域を出ない印象。
1997年5月 1日(木) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:旅
「ニッポン居酒屋放浪記」

amazon著者による「居酒屋大全」「精選・東京の居酒屋」に続く三部作完結編。完結編と言っても別に完結しているわけではないが。
ウェットで格調ある文体を持つ居酒屋探訪記の巨匠は健在である。
今回は地方での飛び込み取材を敢行しているがその「鼻」は相変わらず絶好調。一緒にぴたっと来る居酒屋を探している気分になり、なかなかスリリングだ。いい居酒屋を探しいい時間を過ごす旅。これが人生と重なって見えてくるところがこの著者と「グルメ評論家」の違い。文体と姿勢と人生観の違いである。
1997年4月 1日(火) 12:00:00・リンク用URL
「ホテル・ジャンキー」

amazon副題が「ホテルが大好きでやめられない」。
利用者サイドから見たホテル辛口エッセイではあるのだが、批評とエッセイと紀行文と半生記が混じりあってどうにも中途半端な感をいだかせる。世界の高級ホテル61軒について言及されているのでお好きな向き(ボクも嫌いではない)には楽しいかもしれないが、もう少し焦点を絞って書いて欲しかったかも。ホテル批評を目指して頓挫した女性誌的エッセイ、という感想。惜しいのだけど。
1997年4月 1日(火) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:旅
「ライオンは寝ている」

amazon独自の世界を持つシンガーソングライターである著者が、ガラパゴス、南極、アフリカと旅をして書いた紀行文。というかエッセイ。
彼女の歌はなんか人を無口にさせる作用があるけど、この本もそんな感じ。
静かで自然体。ちっともはしゃがない(前半は少しミーハーなところもある)その文章は彼女の静謐な歌のように心地よい。こういう時、ヒトは環境がどうの、と大声で語りがちだが、著者はもっと含羞があって素敵だ。でもひとつ、前書きだけはちょっと説教くさかった。残念。3つの話の中ではアフリカでのエピソードが一番気に入った。
1997年1月 1日(水) 12:00:00・リンク用URL
「恐るべきさぬきうどん 1~3」

amazon副題に「誰も書かなかったさぬきうどん 針の穴場探訪記」とある。
つまり香川県にあるさぬきうどんの穴場的名店を巡ったガイドブックなのだが、ガイドブックなのに読んでて異様に面白いのである。大笑いなのである。大変良く出来た「さぬきうどんエッセイ」でもあるのだ。
「月刊タウン情報かがわ」に連載していたコラムの単行本化。
香川でしか手に入らないと思うが取り寄せてでも読んでほしい傑作。かくいうボクは1ヵ月ほど前に香川を旅行したときに香川の本屋で手に入れたのだが、これを読んではじめて今まで食べていたのは「うどん」ではなかったのだと知らされた。この本を読まずして「うどん」を語るべからず。
なお、この本を読んだら香川に行かずにはいられなくなるので、本自体は安いけど交通費など考えると結構高いものにつきますので要注意。
1996年11月 1日(金) 12:00:00・リンク用URL
「ハルビン回帰行」

amazon著者が生まれた地、ハルビン。そこを訪ねる旅を静かに綴った小品。
地味な内容。盛り上がりもないし中国残留婦人に対する記述など内省的で、読んでて肩身が狭くなる。が、この本は読者を引きつけて離さないのだ。この本を読んで以来ボクの心の中にもハルビンが常にある。読者をそんな気持ちにさせる本はそうはない。
いったい著者は何者? その筆力からしてベテランだろうが他の著作など聞いたことないし…。と思っていたら新人みたいなものだった。というか、椎名誠の奥さんだった(笑)。だからって著作経験は新人なのだから関係ないが、うまい人ははじめからうまいんだなぁと唸った。オススメ。
1996年10月 1日(火) 12:00:00・リンク用URL
「チベットを馬で行く」

amazon「ハルビン回帰行」があまりに良かったので、他の作品もと思って読んだ。
この本もとてもいい。チベットを馬で旅をした毎日を日記のように綴って555ページ書き切り、しかも読者を全然飽きさせない。たいした筆力なのだ。チベットの旅が事件だらけならまだ書ける。宗教だの自然だのテーマがあればまだ書ける。でも著者は単にチベットが好きというだけでその単調な旅行の日々を555ページ読ませちゃうんだから。凄いでしょ。しかも教訓だの蘊蓄だのを少しも語らない。偉い!
著者は椎名誠の奥さん。その尋常でない行動力は夫の影響もあるのだろう。でもこうなるともう「だれそれの妻」と呼ぶこと自体失礼に当たるな。下手すると夫を超えたかもしれない、とっても魅力的な紀行文だから。
1996年10月 1日(火) 12:00:00・リンク用URL
「魔の島漂流記―ガラパゴス諸島を行く」

amazon御存知ムツゴロウさんの新作。
TVでの姿しか知らない人がほとんどなのであろうが、ボクは彼の著作とともに青春を過ごした。ムツゴロウをバカにする人は彼の「青春記」「結婚記」などを読んでからいって欲しい。と、力みつつ、今回は去年の10月にこの欄で取り上げたこともあるジェルミとの共作である。短編が交互に出てくる体裁でガラパゴスをレポートしている。
文体が全く違うだけに最初は読みにくいが途中から文章が心を通わせ合いだすのが醍醐味。テンションが双方同時に上っていく感じ。共著的な甘さもあるが、ボクは好き。
1996年9月 1日(日) 12:00:00・リンク用URL
「星に憑かれた男」

amazonフランスはブルゴーニュ地方の三ツ星レストラン「ラ・コート・ドール」のシェフ、ベルナール・ロワゾーの半生記。
ただヨイショするだけの伝記物ではないところが買い。シェフの成り上がり物語だけでなく、厨房での毎日やチーズ、ワインの仕入れ、ソムリエをはじめとするサービス陣の裏側、ミシュランやゴーミヨなどの取材の実際など、適度な平易さで丹念に書き込んであり、あまりこの世界に興味ない人が読んでも十分楽しめる。
料理についての記述に突っ込みが足りないと思ったが、構成上この方が良かったのかもしれない。知識もつくし楽しめる一冊。
1996年6月 1日(土) 12:00:00・リンク用URL
「ラブ&キッス英国」

amazon著者を知ってます? 実はあの伝説のロックバンド「サディスティック・ミカ・バンド」のミカなのだ。
この本は、彼女が加藤和彦と別れてイギリスのアッパーミドルに嫁に入り、そこも飛び出てあげくの果てフレンチのシェフになるまでを書いた「半生記」。
う~ん、すごい人生。
とはいえ、個々のエピソードはどれも表面的で食い足りない。おまけに英国の話を書きたいのか、自分の生き方を書きたいのか、シェフの話を書きたいのか(巻末にレシピが21も載っている)全然テーマが絞れていない。でもね、なんだか勢いがあって面白い本だった。特にアッパーミドルの生活はよく書けていると思う。英国好きのボクには特に興味深かった。
1996年5月 1日(水) 12:00:00・リンク用URL
「ハウステンボスの挑戦」

amazon4月のはじめにハウステンボスを訪れたおりに、現地で売っていたこの本を軽い気持ちで買い求め軽い気持ちで読み始めたのだが、その面白さに眠れなくなり、せっかくのハウステンボスでの休日も寝不足で頭ガンガンという状態になってしまったのだった。
著者はハウステンボスを無から作り上げた人物。
村上龍曰く「夢をいかにして実現するか。すべてこの本に書いてある」と。ハウステンボスというテーマ都市に興味がない人でも十分面白く感動できる内容になっているのが立派。94年1月初版なので注文しないと手に入りにくいと思うが。
1996年5月 1日(水) 12:00:00・リンク用URL
「新・放浪記」

amazon真の「自由」を求め続けた著者の半世紀。
『何でも見てやろう』(小田実)や『深夜特急』(沢木耕太郎)を思わせる青春放浪記だが、「とらわれない」ということに関しては著者が一枚上手だ。なにしろ「100%自分のルールで生きること」こそ彼の生きがいだからだ。
そして彼の愛する川下りのように絶えず風景が変わっていく人生を生きている。自分の人生はどうだろう。遠くまで景色が見えちゃってないか。自由の何たるかも知らずに死んでいくんじゃないか…呆然と見つめ直させる力を持った一冊。
1995年12月 1日(金) 12:00:00・リンク用URL
「旅をする木」

amazonアラスカを撮り続けているカメラマン・星野道夫の最新エッセイ。
人を静かな気持にさせるその文体で、今回も極上の時間を提供してくれる。都会でこうして忙しくしている今この瞬間にもアラスカの海では鯨が飛び上がってるかもしれない、そんな「もうひとつの時間」を居ながらにして感じたかったら、星野道夫に限る。ウィスキーと彼の写真集と本一冊あれば、あっという間に目の前に繊細な自然と豊かな時間が流れ出す。
ちなみに、彼のエッセイの中で一番好きなのは「イニュニック」(新潮社)。
彼の写真集はいろいろあるが、とりあえず「風のような物語」(小学館)が良いと思う。
1995年9月 1日(金) 12:00:00・リンク用URL
@satonao310